天海志騎は勇者である   作:白い鴉

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刑「さて、今回は何故そうなった!? 志騎と三好夏凜のまさかのデート(?)回だ。え、クエスチョンマークが付けすぎ? 私だって信じられないんだよ!」
刑「では何が起こるか分からない、ついでに三ノ輪銀の思考もどうなるか分からない第四十五話、楽しんでくれ」


第四十五話 誇り高きK/デート・オブ・ブレイブ

 

 

 志騎が勇者部に夏凜について相談してから数日後の日曜日。

 讃州市の駅前に、一人の少女が緊張した面持ちで佇んでいた。

「………」

 少女――――三好夏凜はソワソワとした様子でスマートフォンを取り出して時刻を確認すると、上着のポケットにしまい込む。と、少女から少し離れた電柱にサングラスをかけた二人の少女がいた。二人の内背が高い方の少女はトランシーバーを取り出すと、小声でトランシーバーに話しかける。

「こちらオキザリス。サツキに動きはないわ。どうぞ」

 するとザザ、というノイズの後に別の少女の声がトランシーバーから聞こえてくる。

『こちらヤマザクラ。し……リンドウの姿はまだ見えません。どうぞ』

 またもやノイズが走ると、別の少女の声がトランシーバーから聞こえてくる。

 のだが、

『こここここここここ』

 トランシーバーから聞こえてくるのは少女の震えまくった声だった。震えまくっているせいで、何を言いたいのかさっぱり分からない。すると、トランシーバーの向こうから最初の少女とは別ののんびりとした声が聞こえてくる。

『こちら蓮~。駅構内からもリンドウの姿は確認できませんでした~。どうぞ~』

 と、のんびりした少女の声を聞いて、サングラスをした少女――――風がため息をつく。

「……乃木。まだ銀動揺してるの?」

『いやいやいや何言ってるんですか風先輩動揺なんて一ミリもしてないっすよ?(びちゃびちゃびちゃびちゃ)』

『わぁ~! ミノさん、缶からコーヒーがこぼれてるよ~!?』

『えっ? あ、本当だってあっつぅ!!』

 ぎゃー! という銀の悲鳴がトランシーバー越しに聞こえてきて、風は思わず額を抑えると天を仰いだ。

 何故勇者部がこんな事をしていて銀が動揺しまくっているのか。時は一昨日の金曜日に遡る。

 

  

 

 

 

 

 

 

 その日、授業を終えた友奈、東郷、銀、園子の四人は一緒に勇者部部室へと歩いていた。いつもなら彼女達と一緒にいる夏凜は、何故か今日授業が終わると早々に席を立ち、先に部室に言っててと友奈達に言い残すと一人でどこかへと言ってしまった。

「夏凜ちゃん、どこに行ったんだろ?」

「もしかして、早急に片付けないといけない依頼でもあったのかしら」

「それはないと思うぞ? 最近はアタシと一緒に部活の助っ人ばっかりだったし、風先輩からそういう依頼があったとも聞いてないし」

 最近勇者部に入った三人の中で一番夏凜と時間を過ごしているのは夏凜だ。二人共運動神経が抜群だし、性格も似ている所があるためよく二人で話している。

 と、話を聞いていた園子が何故かむっふっふ~と奇妙な笑い声を漏らした。

「これは、あれだね~!」

「あれって?」

「ズバリ、告白だよ~!」

「こ、告白ぅ!?」

 それを聞いて声を上げたのは友奈だ。一方、親友の言葉を聞いた銀は戸惑いながらも、

「た、確かにそれはありえるかもな。夏凜って美人だし、何でもできるし、惚れる人がいてもおかしくない。ってか、よくよく考えて見ると何で今まで告白してくる人がいないのか不思議だよな……」

「まぁ、夏凜さんはあんな性格だし勉強もできるから、高嶺の花で手が届かないって思われてたかもしれないわね」

 しかし、この数か月間で夏凜の雰囲気が大分柔らかくなった。以前よりも接しやすくなった彼女に、ここぞとばかりに告白してくる人間が出てきてもおかしくない。

「ど、どんな人なんだろう。夏凜ちゃんに告白する人って……」

 まだ告白と決まったわけでないのだが、よほど強く印象に残ったのか友奈が呟くと、銀が腕を組んで苦笑する。

「まぁ、夏凜に告白するぐらいだからなぁ。よっぽど自分に自信がある人とかじゃない?」

「でもそんな人だったら、夏凜さんだったら断りそうなものだけれど……」

 と、四人がそれぞれ相手の事を予想しながら曲がり角を曲がろうとした瞬間、声が聞こえてきた。

「で、何よ話って」

 話題の中心の人物である夏凜の声が聞こえてきて、四人は思わず足を止めた。

「(も、もしかして告白現場に遭遇したって感じ!?)」

「(ぎ、銀ちゃん声が大きいよ! もう少し小さく!)」

「(ゆーゆもちょっと大きいかな~)」

 まさかの展開に動揺して話す二人を園子がやんわりとたしなめる。ばれないように小声で話してはいるが、このままだと夏凜と話している相手に気づかれかねない。四人は曲がり角の陰に隠れると、バレないようにこっそりと顔を出す。

「(ど、どんな人!?)」

「(ちょっと待って! 今見える!)」

 そして、銀の目に飛び込んできた相手の顔は。

「………え?」

 銀の口から思わず声が漏れる。相手に気づかれたかもしれないなどとは、考えなかった。

 その人物の顔があまりにも予想外過ぎて、思考が一瞬空白になったからだ。

 その人物は。

「………志騎?」

 銀の口から漏れた声に、三人は目を見開くと自分達も相手の顔を見て、愕然とした表情を浮かべる。

 夏凜の目の前にいるのは、間違いなく銀の幼馴染の少年である天海志騎だった。見間違えというのはまずありえない。幼少期からの幼馴染の顔と、彼の特徴である水色がかった白髪を銀が間違えるはずがない。

「ん、ちょっと聞きたい事があってな」

 おまけにこの声も、自分の大切な幼馴染の声だった。もう人違いなどというのは絶対にありえない。今夏凜と話しているのは、天海志騎だ。

「お前今週の日曜日暇?」

「え、まぁ、そうね。暇だけど……」

 突然の質問に夏凜も戸惑っているのか、少々歯切れが悪い。勇者部の活動があれば日曜日も部活動に赴くのだが、ちょうど今週の日曜日には何の活動も入っていなかった。

「そうか。じゃあちょっと日曜日俺に付き合ってくれないか?」

「えっ」

 彼の口から放たれた言葉に、夏凜の頬がほんのりと赤く染まる。突然の事態に完成型勇者を名乗る彼女の頭も少し混乱しているようだった。すると顔を赤くした夏凜の顔を見て志騎は首を傾げ、

「どうした? もしかして、やっぱり何か予定があるとか? もしそうなら別に良いけど……」

「な、無いわよ! ちょうどその日は暇よ!」

「そうか。じゃあ繰り返すけど、付き合ってもらって良いか?」

「えと、その……」

 普段はツーンとした態度を取るくせに、真正面から来られると弱気になってしまうのが三好夏凜という少女の弱点だった。彼女はこの間までライバル心を持っていた少年に対してしおらしい態度を取ると、照れたように言う。

「……別に、付き合ってあげても良いわよ」

「よし」

 志騎が満足そうに頷くと、夏凜が恐る恐ると彼に尋ねる。

「でも、あんたは良いの? 銀じゃなくて、私で……」

「……? どうして銀の名前が出てくるんだ?」

 本当に分からないと言うように、志騎がきょとんとした表情で尋ねる。そして「まぁ、いっか」と呟くと、

「じゃあ今週の日曜日の……十時で良いか。讃州駅の前で待ち合わせな。じゃあまた部活で」

 そう言って志騎は夏凜から離れると部室へと歩いて行った。夏凜の方はというとまだ動揺しているようで、「ど、どうしよう……」と呟いてしばらくその場に佇んでいたが、やがて彼女も部室へと向かって行った。誰もいなくなった後、隠れていた友奈が東郷に困惑気味に尋ねる。

「ね、ねぇ東郷さん。これって……」

「ええ……。これは、つまり……」

「デートね」

 と、自分達の背後から声が聞こえてきて友奈と東郷と園子がびっくりながら振り返ると、そこには神妙な顔をした風と樹が立っていた。

「風先輩、いつの間に!?」

「ちょうどアタシも部室に行くところだったのよ。で、途中で樹と会ったから一緒に歩いてたらアンタ達が何かを必死に覗き込んでから、一緒に覗いてたってわけ」

「い、いつから見てたんですか?」

「ちょうど、志騎さんが夏凜さんに日曜日暇か? って聞いてた所です……」

「つまり、最初から見てたんだ~。全然気づかなかったよ~」

 普段なら最初に気づきそうな園子だったが、彼女の目の前の光景に意識を奪われて二人の接近にまったく気づいていなかったらしい。と、友奈が慌てた口調で風に言う。

「そ、それより風先輩! デートって……志騎君と夏凜ちゃんがですか!?」

「いや、それしか考えられないでしょ。男が女に一緒に付き合えないかって誘うのをデートと呼ばなくてなんて呼ぶのよ」

「で、でも一度も男の人にデートに誘われた事が無い風先輩の言葉を信じるわけにもいかないと思います!」

「いくら何でもそれは失礼過ぎるでしょ!! いや、実際ないけど!」

 よほど混乱しているのか本当ではあるが失礼な事を口走ってしまう東郷に風はツッコミを入れると肩をすくめながら、

「でも、傍から見ると完璧そうでしょ。むしろあれをデートの誘いと呼ばずに何と呼ぶのよ」

「せ、戦闘の訓練とか!」

「さすがに訓練だったらそう言うだろうし、そもそも駅前を待ち合わせの場所に指定しないでしょ」

「た、確かに……」

 風の言う通り、志騎の性格上訓練の誘いだったら直接言うだろうし、その場合駅前ではなく夏凜がいつも訓練に使っている海辺を待ち合わせに指定するだろう。

「つまり、あれは間違いなく……」

「正真正銘の、デートのお誘い……」

 さすがの園子も今回は場を盛り上げる気にはならないのか、やや声が重く聞こえた。

「まさか、志騎の好みのタイプが夏凜だったとは……」

「志騎さん、この前まで夏凜さんが自分に対して当たりが強いって相談してたのに……」

「も、もしかしてあれも、好きな子に嫌われるのは悲しいって事だったんじゃ……」

 会話は続くも、話の終着点は見えずただ困惑に包まれるばかりだ。

 と、そこで東郷がある事に気づく。

「ね、ねぇ銀。大丈夫?」

 先ほどの発言にこの中で一番ショックを受けているのはきっと彼に想いを寄せている銀だろう。東郷が彼女に目を向けると、銀は先ほどまで志騎と夏凜がいた場所をまだ覗き込むような体勢を取っていた。

「み、ミノさん聞こえてる~?」

 そう言いながら園子がぽん、と軽く銀の肩を叩くと、まるでマネキンが倒れ込むように銀の体は床に倒れた。

「き、気絶しちゃってる……」

「よっぽどショックだったのね……」

「ど、どうしたら良いのかな……」

 樹と東郷と友奈が困っていると、風がため息をついた。

「……とりあえず、保健室に運び込みましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、風が銀を背負い、六人は保健室へと向かった。なお、志騎と夏凜はそれぞれに依頼をメッセージアプリで送ったので、今頃自分達が請け負った依頼に向かっている事だろう。

「……はっ、ここは!?」

「保健室よ。ようやく目が覚めたわね」

 ベッドに横たわった状態で意識を覚醒させた銀に、風が声をかける。体を起き上がらせた銀はしばらくぼうっとした表情を浮かべたが、やがて自分が倒れた原因を思い出すと突然乾いた笑い声を出し始めた。

「まさか、志騎が夏凜をデートに誘うとはなぁ……。これは神樹様も予想できなかっただろうなぁ……。あはは、アタシはまだデートに誘われた事も無いのに……。まさか夏凜に先を越されるとは……あははははははははは……」

「ぎ、銀……」

「なんだい鷲尾さんちの須美さんや。悪いけどアタシは傷心でしばらく口が利けないから、しばらく寝る事にするよ……。風先輩、帰る時間になったら起こしてください……」

(口利けてんじゃない……)

 困った表情を浮かべながら風が心の中で思うが、当然そんな事を今の銀に言えるはずもない。目から光を失った銀は乾いた笑い声を出しながら、ベッドの掛け布団を被って寝ようとする。

「ちょ、ちょっと待ってください銀さん!」

 そんな銀を止めるように叫んだのは、樹だった。布団を被ろうとした銀はその手をピタリと止めると、胡乱な目つきで樹を見る。

「何だよ、樹……」

「そ、その、志騎さんは本当に夏凜さんをデートに誘ったんでしょうか? もしかしたら、夏凜さんと少しでも仲良くなりたいから、日曜日に遊ぶ約束をしたんじゃないでしょうか?」

 すると、それに同意したのは東郷と園子だった。

「確かに、志騎君だったらそうするかもしれないわね。夏凜さんとどうすれば仲良くなれるか、気にしてたみたいだし……」

「あまみんも真面目だから、女の子と二人で遊ぶ事がデートだとは思ってないかもしれないね~。ひょっとしたら、単なる同じ部活の友達との交流ぐらいとしか考えてないかも~」

 二人の言う通り、志騎が夏凜に好意を持っていてデートに誘ったとはまだ分からない。もしかしたら本当に悪くなりつつある夏凜との仲を、どうにか直すために彼女を遊びに誘ったのかもしれない。他の勇者部の面々を誘わなかったのは、自分と夏凜との問題なので他の部員を巻き込むのは良くないと彼が考えたかもしれない。というよりは、きっとそうだろう。……もしもそうだとしたら、夏凜を誤解させてしまっている事にもなるのでそこは迂闊だとしか言えないが。

 三人の言葉に銀は希望の表情を浮かべかけるが、すぐに不安そうな表情に戻り、

「で、でも本当に志騎が夏凜の事が好きだったら? それで夏凜を本当にデートに誘ったら? も、もしもそうだったらアタシは……」

 そしてしゅん、といつもは活発な表情を浮かべている彼女らしくない落ち込んだ顔になる。普段の彼女と今見せる彼女との可愛らしいギャップに東郷と園子は思わず心が動いてしまいそうになるが、どうにかそれを押しとどめる。さすがに時と場所ぐらいは弁えたいし、今は親友が本当に悩んでいるのだ。下手をしたらその場の状況を茶化す事になりかねない。

 二人はその場で深呼吸を数回すると、互いに見合わせて顔を見合わせる。そしてこしょこしょと小声で話し合うと、落ち込む銀に言った。

「ねぇ、銀。だったら」

「本当にあまみんがにぼっしーの事を好きなのか、あれはデートなのか、確かめてみない?」

「……え?」

 二人の提案に銀はきょとんとした表情を見せる。一方で状況を呑み込めていないのは他の三人も同じらしく、三人を代表して友奈が尋ねた。

「ねぇ園ちゃん、東郷さん。それってどういう意味?」

「要するに、二人のデートについていって、志騎君の本心を確かめようって事よ」

「つ、ついていくって……」

 東郷の言葉に樹は困惑した表情を浮かべ、風も似たような表情を見せる。

 それも当然だろう。志騎の本心を確かめようという言葉には納得できるが、同時に一歩間違えればただの野次馬にもなりかねない行為だ。もしもこの事が二人にバレたら後でどんな事をされるか分からないし、下手をしたら銀の秘めたる思いも暴露されかねない。二人が戸惑うのも無理はないだろう。

「つ、ついていくってそれはさすがに……」

 さすがの銀も二人の提案に素直に頷く事ができないのか、非常に悩んでいるようだった。だが一方で志騎と夏凜の事も放っておけないらしく、目がやたらと泳いでいる。と、それを察した園子が銀の肩に優しく手を置いて諭すように言う。

「ミノさん。知りたい事や確かめたい事があったら、自分の目できちんと確かめないと駄目なんよ~。この二年間で、それを知ったはずでしょ?」

「園子……」

「それとも見たくないものから目を逸らして、あまみんを諦める? ミノさんは、それで良いの?」

「……いや、言い出しっぺはあたしだけど、まだ志騎が夏凜の事を好きかどうかは分からないんだけど……」

 冷静に意見を述べる風だが、どうやら神樹館三人組は彼女達の世界に入ってしまっているらしい。おまけに友奈も銀が答えを出すのを固唾をのんで見守っている。

 銀は園子の顔を見てふるふると唇を震わせていたが、やがてぐっと唇を噛み締めると叫んだ。

「あ、諦められるかぁあああああああああああああああっ!! し、志騎は……」

「あまみんは~!?」

「志騎君は!?」

「あ、アタシのものだ!! 誰にも渡すもんかぁあああああああああああああああっ!!」

「よく言ったんよミノさぁあああああああああああああああああああああん!!」

「それでこそ勇者よ銀!!」

「やったぁああああああああああああああっ!! わーいわーい!!」 

 ばんざーい!! とテンション高く三人は両腕を高く振り上げた。どうやら三人とも銀の恋愛が関わって、テンションがいつも以上にハイになっているらしい。友奈と園子だけでなく東郷もテンションが爆上がりしているのを見て、困惑しながら樹が風に尋ねた。

「こ、これどうすれば良いんだろうお姉ちゃん……」

「どうするもこうするも、もう止める事は出来ないでしょ……」

 ため息をつくも、意気消沈していた銀がようやく元気になったので、まぁこれはこれで良かったかな……と風はそっと笑みを浮かべるのだった。

 それから六人は当日の計画を話し合った。すでに待ち合わせ場所と時間については分かっているので、後は二人をどう尾行するかだった。固まっていては二人に気づかれやすく、また周囲にも怪しまれるので二人ずつに分かれて尾行する事になった。ペアは話し合いの結果友奈と東郷、風と樹、銀と園子に。そして連絡は念のためにトランシーバーで取り合う事になり、機器は東郷が用意する事になった。ちなみに東郷がそれを持っていると知った時、どうしてそんな物を持っているのか気になったが聞かない事にした風だった。そして最後に二人に気づかれないように軽い変装もし、さらに園子の提案で通信を取り合っている最中はコードネームで互いを呼び合う事に。コードネームはそれぞれの勇者の紋章の元となっている花の名前になった。

 こうして準備と計画を整えて、六人は志騎と夏凜のデート(?)当日を迎えたのだった。

 

 

 

 

 

 

 樹とペアを組んだ風は電柱の陰から夏凜をこっそり覗き見しながら、腕時計を見て時刻を確認すする。現在の時刻は九時五十分。だがまだ志騎の姿は見えない。

「遅いわね……。志騎を疑うわけじゃないけど、寝坊でもしたのかしら?」

『それはないと思いますよ』

 風が呟くとトランシーバーから、志騎の事を良く知る銀の声が聞こえてきた。

『志騎が約束の時間に遅れたりした事は基本的にありません。あいつを育ててくれた人が時間に厳しい人だったんで、五分前行動は必ずしてました。時間に遅れたりしたのは、アタシと一緒にトラブルにあったりした時だけです』

『さすが幼馴染~! あまみんの事を良く知ってるね~!』

『あはは……。まぁ、その幼馴染にデートにも誘われてないけどな……』

『わ、わわ~! ミノさん、しっかりして~!』

 トランシーバーから沈んだ声と慌てる声が聞こえてきて、風は再びため息をついた。今日を迎えても、銀はまだ本調子に戻っていないらしい。今の声と先ほどの銀の様子がそれを何よりも表している。

 しかしその直後、風の横にいた樹が真正面を指差して言った。

「お姉ちゃん、志騎さんが来たよ!」

 樹の言う通り、彼女が指さした場所には志騎が歩いてきていた。服装は当然私服姿で、遠目なのでよく分からないが首にはネックレスのようなものをつけている。時刻を確認すると、九時五十五分。ジャスト五分前だった。

「こちらオキザリス。リンドウの姿を確認したわ」

『こちらヤマザクラ! 私達も確認しました!』

『蓮も確認しました~』

 友奈と園子も志騎の姿を確認したらしく、トランシーバーから二人の声が返ってくる。六人に見られているとは知らない志騎は夏凜に近づくと挨拶をする。

「よっ、悪いな日曜日に。待ったか?」

「べ、別に。さっき来たばっかりよ」

「いや、あんた三十分も前に来てたじゃない……」

 ツンとすました様子で嘘をつく夏凜に、半眼で風がツッコミを入れる。一方で、今の二人のやり取りを隠れて見ていた銀の方にもどうやらダメージが入ったようで、

『あはは……恋人っぽいやり取り……。前に園子が見せてくれた恋愛小説みたいだ……。こんな事、本当にあるんだな……』

『お、オキザリス! 百日草が二人のオーラに死んじゃいそうになってます~! どうしたら良いですか~!?』

「致命傷には早いでしょうが! まだ始まってすらいないのよ!?」

 風の言う通り、まだ二人は待ち合わせ場所から動いてすらいない。これでは今日一日で銀がどれだけダメージを受けるのか、風には非常に不安だった。

「じゃあ、行くか」

「そ、そうね。きょ、今日だけは付き合ってあげるわ!」

「めちゃくちゃ噛んでるわねー……」

 志騎相手にどうにか優位に立とうと夏凜はしているようだが、その噛みっぷりで全てが台無しになっていた。とは言っても、異性と一緒に遊びに行く事自体が彼女も初めてなのでそれは仕方ないだろう。

「じゃ、置いていかれるわけにもいかないし、私達も行くわよー」

 風がそう言って、トランシーバーから彼女の声を聞いた他の四人も動き出そうとしたその時だった。

「ほほう、私を差し置いて随分楽しそうな事をしているじゃないかクソガキ共」

 声が突然頭の上から降って来て、風の動きがピタリと止まった直後樹の頭に何かが降ってくる。ギギギ……と風がブリキの人形のような動きで振り返って妹の頭の上を見て見ると、そこにはニヤニヤと笑みを浮かべた刑部姫が樹の頭の上に乗っていた。

 ただ、その恰好はいつもの黒を基調にした神官服ではない。シャツの上に革ジャケットを羽織り、ダメージジーンズに編み上げブーツと、人形のような体躯の彼女が着るとあまりに目立ちすぎる格好をしていた。もしかすると、これが刑部姫――――氷室真由理が健在だった時の彼女の私服だったのかもしれない。

「お、刑部姫さん!?」

 突如現れた精霊の姿に樹が思わず声を上げると、彼女の声を聞きつけた他の勇者部の面々がぞろぞろと三人の周りにやって来て、いつの間にか姿を見せていた刑部姫の姿に全員が目を白黒させる。

「ど、どうしてお前がここにいるんだよ!?」

 銀が思わず刑部姫に尋ねると、彼女はふんと鼻を鳴らし、

「昨日の夜、何故か志騎が今日着る服などを念入りにチェックしていたんだ。気になって勇者部の依頼かと聞いたんだが、違うと返された。ならばと思って他の勇者部全員の家に式神くんを飛ばしてみたら、三好夏凜の奴が妙にソワソワしながら今日着る服についてあれこれ悩んでいた。それでてぇんさい美少女精霊の私は閃いた。……こいつらは明日、負け犬の三ノ輪銀を差し置いてデートをするのだと!!」

「言い方ぁ!!」

 身も蓋もない発言をする刑部姫に風のツッコミが飛ぶが、時すでに遅く銀は両膝を抱えてうずくまり、東郷と園子が必死になだめていた。しかしどうやら今のは刑部姫の質の悪い冗談だったようで、銀の姿を見てケタケタと一通り笑うと、「ま、冗談は置いておくとして」などと呟きながら、

「志騎の事だから、三好夏凜と遊ぶ事で関係を縮めようとしているんだろうなと察しはついた。そして私は今日は暇だから二人の様子でも見るかと思っていた矢先に、お前達を発見したんだ。お前ら、二人が何をするのかが気になるのは分かるが、野次馬根性も大概にしとけよ」

「あんたにだけは言われたくないんだけど!?」

 こればっかりはさすがに刑部姫も反論できないのか、珍しく反撃をする事は無かった。しかしその代わりに「ところで」と六人を見ると、にやりと口の端に笑みを浮かべる。

「出会ったのはまったくの偶然だが、折角の機会だ。合同で奴らの動きを今日一日観察するというのはどうだ?」

「あなたと一緒に、ですか?」

 すると案の定と言うべきか、東郷が嫌そうな表情を変える。勇者部は志騎と友奈と樹を除いて、刑部姫に対して好印象を抱いていない。中でも神樹館にいた時から彼女の性格を知っている東郷と園子はなおさらだ。しかし彼女の反応も予想済みらしく、刑部姫は肩をすくめながら、

「悪い話じゃないと思うぞ? あれでも三好夏凜は大赦の訓練を受けた人間だし、志騎も勘が鋭い上にバーテックスの力による五感の強化がある。それに対してお前達は尾行に関してはまったくの素人。奴らを観察しようにも、すぐにバレるのがオチだと思うがな」

「それは……そうかもしれないけど……」

 さすがの東郷もそれには同感らしく、彼女の表情は浮かない。今日まで作戦は考えてきたとはいえ、あの二人を相手に尾行を完遂できるのかというのが六人の不安だった。相手に気づかれないように尾行するのはただでさえ難しいというのに、何らかのトラブルが起きる事だって考えられる。そうすると、確かに刑部姫の言う事を呑んだ方が良いかもしれない。

 しかし……それは悪魔の条件を呑む事と同義なので、東郷達は素直に頷く事が出来なかった。一方で彼女達の心などお見通しなのか、刑部姫はニヤニヤと笑いながら、

「別に今日一日に至っては、条件は無しで構わないぞ? こんな事で貸しを作ってもしょうがないしな。で、どうするんだ?」

 素直にはいと言う事ができず、東郷が困っていたその時。

「……分かった。条件が無いなら、ついてきても良い」

 そう言ったのは、勇者部の中で恐らく一番刑部姫と仲が悪い銀だった。彼女のまさかの返答に五人が驚いた目を向けると、彼女は苦虫を噛みつぶしたような表情で、

「こいつはムカつく奴だし、隠し事もするけど……。こんな事で嘘をつくような奴じゃないって言うのは分かってる。悔しいけど、今回ばかりはこいつの力が必要だと思う」

「ミノさん……」

 言葉とは裏腹に、銀の顔には苦々しい表情が浮かんでいる。刑部姫と相容れない気持ちはあるが、今はそれ以上に志騎と夏凜の事が気になる、という銀の考えが手に取るように分かった。複雑な表情を浮かべる勇者部とは対照的に、自分の敵とも言える相手から了承を得られた刑部姫は満足そうに笑う。

「よし。今回は中々物わかりが良いようで何よりだ。いつもその調子だと私の仕事も減って助かるんだがなぁ」

「うっさい」

 ぶすっとした調子で銀が答えるが、それを気にせずに刑部姫は革ジャケットのポケットから紙の札を取り出すと友奈に手渡した。札の両面には複雑怪奇な模様な書かれており、どういった意味なのか友奈達にはさっぱり分からない。

「これ何?」

「認識阻害の術式を組み込んだ札だ。これを持っていれば、奴らからも周りの通行人からも私達の存在は認識できなくなる」

「ああ、合宿の時に使ったあれか」

 二年前、四人の連携を鍛えるために行われた合宿の時の事を思い出して銀が呟く。あの時使われたものと同じなら、例え七人が集まってどれだけ騒いでも周りの人間や志騎達がこちらに気づく事は無いに違いない。

「では準備も整ったし、さっそく行くとするか」

 こうして刑部姫を加えた勇者部は、志騎と夏凜の後を追うのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう言えばもう十二月だけど、あんたの家って暖房何使ってるの?」

「炬燵。炬燵に入ってアイスクリームは至高だぞ」

「意外に贅沢な事してるわね……」

「この前好きなアイスを冷蔵庫に取っておいて風呂上りに食べようとしたら、刑部姫に食われてたから本気であいつを半殺しにしようかと思った」

「……あいつ、あんたの家でも結構平常運転なのね……」

 夏凜と志騎は取り留めのない話をしながら、歩道をゆっくりと歩いていた。その後方には勇者部と刑部姫が後をつけていたが、前を歩く二人はおろか周りの通行人すら彼女達には目もくれていない。

「………なんか、これだけの人達が私達に全然気づかないのも、ちょっと不気味だね」

「そ、そうですね。しかもただ気付かないならまだしも、ちゃんと私達を避けて歩いてますし……」

 まるで自分達が透明人間になったみたいで、友奈と樹が呟くと樹の頭の上に乗った刑部姫が言う。

「今の私達は他の人間の認識からズレた形で存在している。人間は認識できないものを見る事も出来ないし、聞く事も出来ない。ただ認識は出来なくても、そこに何かある(・・・・・・・)と無意識に感じ取っているから、私達を避けるように歩いている。本人達はまったく気づいていないだろうがな」

「へぇ……」

 分かっているのか分かっていないのか――――恐らく後者だと思うが――――友奈が呑気な声を上げる。一方で銀の方は二人の様子が気になるのか、じっと目を皿のようにして二人の後ろ姿を見ている。

「で、まずどこにいくつもりなのよ」

「もうそろそろつくよ。っと、ここだ」

 そう言って志騎が立ち止まったのは、なんの変哲もないゲームセンターだった。

「ゲーム……」

「センター……」

 派手な看板を見て、友奈と風が思わずきょとんとした声を上げる。てっきり最初はアパレルショップでも見に行くのかと思っていたので、これは予想外だった。夏凜も目をぱちくりとした様子で、ゲームセンターの看板を見上げている。志騎の方はというと、夏凜の顔を見て二ッと唇の端を上げて笑みを見せた。

「俺が奢るからさ、ゲームしようぜ」

 

 

 

 二人はゲームセンターに入ると、まず両替機に行って千円札を三枚入れて小銭に両替する。機械から大量の小銭が溢れてくるのを見ていると、ふと夏凜が志騎に尋ねた。

「そう言えばあんた、今お金ってどうしてるの?」

「大赦から振り込まれてる」

「あ、やっぱりそうなんだ」

 その口ぶりからすると、恐らく夏凜の方も同様だろう。とは言っても二人共まだ中学生で親から離れて生活しているので、大赦からのサポートが無いと困るのだが。

 志騎は両替された小銭を財布に入れながら、

「でもそれとは別に刑部姫の奴がお小遣いくれるから、今のところは金銭で苦労はしてないな」

「いくらもらってるの?」

「十万」

 ぶっ! と夏凜と彼女達から離れた所で話を聞いていた風が吹き出し、それを見た志騎が訂正する。

「まぁさすがにそれはもらい過ぎだって断って、結局五万円になった」

「それでも多すぎじゃない?」

「それ以上はあいつが譲らないんだよ。俺も今の内から金銭感覚が狂うのは嫌だし、使わない金は今の内に貯金する事にしてる」

 改めて刑部姫の過保護っぷりを知って、夏凜はジト目になると、

「……刑部姫って、過保護?」

「身内に甘いだけだよ。行くぞ」

 そう言って志騎と夏凜が何を遊ぶか……と店内をうろついていると、夏凜の目に入ったのはゲームセンター定番のUFOキャッチャーだった。中には可愛らしいあざらしのぬいぐるみがいくつも入っている。

「……やりたいのか?」 

 夏凜の視線の先にあるものを見て志騎が尋ねると、夏凜はツンと視線を機体から逸らした。

「べ、別に。興味ないわよ!」

「そうか。……まぁ確かにああいうのはアームの力が弱いから何円か入れないとまず取れないし、こういうのにあまり来た事が無いお前じゃまず無理かもな」

 志騎としては悪意も何もない言葉だったのが、どうやら夏凜にはそれが煽りに聞こえてしまったらしい。カチン、と今の一言でムカついた夏凜はピクピクと青筋を浮かび上がらせながら、

「……なるほど。つまりあんたは、私には取れっこないって言うのね?」

「え、いや、そんなつもりじゃ」

「良いわ! 何百個でも取ってあげる!! 見てなさい完成型勇者の実力を!!」

「完成型勇者の実力関係あるの?」 

 志騎が冷静にツッコむも、夏凜の耳には届かない。奢るよと言った志騎の言葉を「いらないわよ!」と突っぱねると機体に百円を投入、ボタンを使ってアームを操作する。

 アームをぬいぐるみの真上まで操作すると、バン!! とボタンを力強く押してアームを下ろす。アームが下まで降りると爪が開き、ぬいぐるみを掴む。それに一瞬夏凜の顔がぱぁっと明るくなるが……、次の瞬間掴んだはずの爪からぬいぐるみが落ちて彼女の動きが固まった。

 無言の夏凜の前でアームが元の位置に戻ると、それを後ろから見ていた志騎が呟く。

「やっぱり無理だったか……。ま、今回はやめとけ夏凜。こういうのは運もあるし、遊べるゲームはまだたくさん……」

 と、励まそうとした瞬間。

「……よ」

「え?」

「――――上等よ!! こうなったら、意地でも一つ取ってやろうじゃないの!!」

 うがー!! と両替機に突っ込むと諭吉を一枚取り出して機械に投入しようとする。それにはさすがに志騎も慌てて彼女に駆け寄ると、後ろから彼女を羽交い絞めにして諭吉投入を防ぐ。

「お、落ち着け夏凜! それはさすがにやりすぎだ! こんなくだらない事で諭吉を使うな!」

「くだらない事ですってぇ!? あんたにとってはくだらない事でもねぇ、私にとっては大事な事なのよ!! 勇者部五箇条!! なせば大抵なんとかなぁあああああああああああああある!!」

「こんな事に勇者部五箇条を使うな!!」

 暴れる夏凜をどうにか志騎が抑えようとし、二人の間の雰囲気はカオスな事になっていた。そしてそれを眺めていた樹が遠い目で、

「……夏凜さんはギャンブルをやっちゃいけない人ですね」

「ムキになる奴とギャンブルの相性って最悪だよな。おい結城友奈、犬吠埼風はどうした?」

「えっと、夏凜ちゃんの言葉を聞いて『勇者部五箇条がギャンブルを促進させるなんて……』って落ち込んじゃって。それで今東郷さんと園ちゃんが慰めてる……」

 困惑した友奈の視線の先には、両膝を抱えてうずくまっている風の頭を東郷と園子がよしよしと撫でて、混乱に陥る勇者部をよそにして銀は乱闘を繰り広げる志騎と夏凜を不安そうに眺めていた。もしも認識阻害の札が無かったら、周りから注目を集める事間違いなしだった。まぁ、話題の中心である二人は現在進行形で周りの客からの注目を集めていたのだが。

「……こっちもこっちでカオスだなぁ……」

 小さく呟いて、刑部姫はため息をつくのだった。

 それから志騎による必死の説得の結果、夏凜は一万円札でなく千円札を投入してUFOキャッチャーに挑戦した。奢るよと志騎は再度言ったのだが、夏凜はやはりそれを突っぱねてプレイする。

 結果は、惨敗。

 百円玉を十枚に投入しても一個もぬいぐるみを取れず、収穫はゼロに終わった……。

「…………」

「…………」

 自信をへし折られ、夏凜は機体の前で立ち尽くし、志騎も何も言えないようだった。さすがの刑部姫も笑えなかったのか、「まずい、悲惨すぎる……」と心から夏凜に同情していた。

「つ、次行くぞ! レースゲームなんてどうだ!?」

 呆然とする夏凜の腕を引っ張って指差したのは、車を運転して最速を競うレースゲームだった。これならギャンブル性はないし、夏凜も楽しめるだろうという判断だ。それに気づいた夏凜は機体に近づくと、運転席を模したプレイヤー席を眺めながら興味深々の声を出す。

「へぇ、楽しそうね……」

「これなら二人で競争も出来るし、運が絡まない純粋な実力勝負ができるだろ。やる?」

 それに対する返答は好戦的な笑みだった。どうやらイエス、という事らしい。現金なものだが、この時ばかりは夏凜のチョロさに感謝する志騎だった。

 二人は隣り合っているプレイヤー席に座ると、硬貨を投入する。今回ばかりは夏凜も志騎の奢りを遠慮しなかった。硬貨を投入すると使う車を決め、目の前の大画面にそれぞれの車の運転席から見た視点が表示される。

「ぶっちぎりで勝ってやるわ! 私に挑んだ事、後悔するんじゃないわよ!?」

「お手柔らかに」

 ふふんと自信満々に鼻を鳴らす夏凜とは対照的に、志騎は落ち着いた表情で返す。が、機嫌が良い夏凜は余裕とも取れるその言葉を聞き流すと、ハンドルを力強く握る。それを見て志騎もハンドルを握ると、すぅっと目を細めた。

 そしてカウントダウンが表示され、数字が減っていく。

 やがて数字が0になり、START! という文字が二人の目に飛び込んできて、レースが始まる。二人は勢いよく足元のアクセルを踏み込み、それぞれの車を発進させた。

 数分後。

「強すぎんのよあんたぁ!!」

「落ち着けよお前……」

 顔を赤くして涙目で志騎を指差す夏凜に、志騎が缶ジュースを飲みながら冷静に言う。

 レースゲームの結果は、志騎の圧勝だった。しかもあと二秒早ければタイムスコア更新。それに比べて夏凜は初心者とは思えない運転さばきで志騎に肉薄したものの、結果は大差をつけられての二着。負けず嫌いの夏凜が納得するはずもなく、こうして志騎に噛みつく羽目になっていた。

「志騎君、ゲーム上手なんだね!」

 二人の様子を隠れて見ていた友奈が驚いたように言うと、彼女の横から様子を伺っていた東郷がふとある事を思いだす。

「そう言えば確か、志騎君はゲームが強いって前に銀が言ってたわよね?」

「うん。志騎めちゃくちゃ強いよ。アタシと鉄男の二人がかりでやった時もあったけど、二人共返り討ちにされた事もあったから。……それにたぶん、志騎の奴本気出してないな」

「どうして分かるの~?」

 園子が尋ねると、銀は夏凜をなだめる志騎を見つめながら、

「志騎が使ってた車、夏凜のと同じ奴なんだよ。前にアタシも志騎と一緒にあのゲームやった事あるんだけど、夏凜のは初心者が良く使う万能タイプ。クセは無くて使いやすいけどこれといった特徴はない。で、志騎が前に使ってたのは上級者御用達の車。使いづらいけど、その分速度がとんでもない奴。それ使って前ハイスコア叩き出してたから、使い慣れてないわけでもないと思う」

「じゃあ、どうしてそれを使わなかったのかしら」

「使いづらいけど、速度がぶっちぎりに早いですからね。夏凜はまだ初心者ですし、初心者相手にそれを使うのも大人げないし不公平すぎるって思ったんだと思います」

「でもハンデをつけられると夏凜さんは怒るだろうから、わざと同じ車を使って技量だけで相手をした、と……」

「う~ん……あまみんも大変だね~……」

 こうして遊ぶだけで色々と頭を使わなければならない志騎に、園子は同情するように言った。勇者部がそんな会話をしているとは露知らず、夏凜はレースゲームの運転席につかつかと歩み寄ると叫び、

「もう一回よ志騎!! コンティニューしてでもクリアしてやるわ!」

「いい加減落ち着けよ完成型勇者!!」

 機体に硬貨を投入しようとしている夏凜を志騎はどうにか引きはがし、再び店内を歩き始めるのだった。

 UFOキャッチャー、レースゲームと自分の情けない姿を立て続けにさらされ続け、夏凜はぶすっとした表情を浮かべていた。仲を深めるためにゲームセンターに誘ったつもりがこんな事になってしまい、流石の志騎もどうしようかと困っている。二人が無言で歩いていると、夏凜がふと立ち止まって志騎に尋ねた。

「ねぇ、これってエアホッケーってやつ?」

「ん? ああ、そうだよ」

 夏凜が指さしたのは、テニスコートのようなネットがかけられたテーブルだった。とは言ってもテニスコートとは違い、ネットの下の部分は盤面に接しておらず少し浮いている。さらに盤面には薄い円盤であるパック、パックを相手のゴールに入れるためのマレットと呼ばれる道具が置かれていた。

「もしかして、これもやった事ないのか?」

「無いわよ。……ねぇ、これ使って勝負しない?」

 え、と志騎が戸惑いの声を上げると、夏凜が二つあるマレットの内の一つを掴んで宙に軽く投げる。くるくる回るマレットを夏凜は見事にキャッチすると、マレットを志騎に突き出して強気な笑みを浮かべた。

「運でも画面越しでの勝負でもない、純粋な動体視力と運動神経の勝負。受ける気あるかしら?」

 夏凜の挑戦に、志騎も思わず笑みを浮かべる。この誘いに乗らないのは、ゲーマーとしても男としても情けない。おまけに志騎はエアホッケーもやった事はあるが、相手は大赦で勇者になるための訓練を積んだ人間。バーテックス・ヒューマンの力を使うなら話は別だが、そうでないならこれは彼女の言う通り、純粋な動体視力と運動神経の能力だ。

「上等。やろうか」

 二人は互いに笑みを浮かべると、機体に硬貨を投入する。じゃんけんの結果、最初は夏凜のサーブになった。二人はマレットを握り、夏凜がパックを目の前に置く。得点板に二つの0という数字が表示されるのを引き金として、試合が始まった。

「はぁっ!!」

 カン!! という乾いた音の直後パックが志騎の方のゴールに向かうが、それを防ぐ形でマレットでパックを弾く。しかし夏凜は素早く動きでパックを弾くと、パックはステージの壁に当たって反射し、志騎のマレットを潜り抜けてゴールに入った。

「っし!!」

 ぐっと夏凜が嬉しそうに拳を握る。このゲームの勝利条件は七点先取。つまり、あと六点取れば夏凜の勝ちとなる。

「やるな。だけど……」 

 失点した志騎からのサーブとなり、志騎は目の前にパックを置くとマレットでパックを弾く。パックはステージの片隅に向かい、夏凜が腕を伸ばしてパックをどうにか弾き返す。しかしその動きを予測していた志騎がパックを真正面に鋭く弾き、それに反応した夏凜は腕を動かすも間に合わずパックがゴールに入った。

「こっちだってバーテックスと戦ってた時は遊んでばかりだったわけじゃないんでね」

 戦いの中で勇者になったとはいえ、バーテックスとの戦いで生き残るために銀達と一緒に訓練を受けた身だ。夏凜が勇者になるため厳しい訓練を受けていたとはいえ、そう簡単に負けるわけにもいかない。

 それを悟った夏凜は上等と言うように笑みを浮かべると、パックを自分の前に置く。今度は夏凜からのサーブだ。夏凜がパックを打ち、二人の激闘が続いた。

 それからはまさに一進一退の攻防だった。二人共勇者であるだけあって身体能力と動体視力が優れているため、互いに点は取りはするが大きな差は出ない。二人の勝負はエアホッケーとは思えないほどに白熱したものになり、気が付くとテーブルの周りには多くのギャラリーが出来ていた。

「なんか、とんでもない事になって来たわね……」

「夏凜ちゃん、志騎君頑張れー!」

 長丁場になりそうだと思った勇者部員達は缶ジュースを飲みながら二人の勝負を見守り、認識阻害で二人に気づかれていない事を利用して友奈が声援を送る。当然二人に友奈の声援が届く事は無く、二人は互いに笑みすら浮かべながらパックを打ちあった。

 そして、三十分後。

「はぁ、はぁ……。さすがにやるな、夏凜」

「ふん、あんたもね……」

 互いに息をつきながら、二人は真正面の敵をまっすぐ見つめる。掲示板に表示された点数には6が二つ並んでいる。つまり、二人共マッチポイント。ここで一点を先取した方が勝ちとなる。

「だけど、これで終わりだ……」

「そうね。最後にしましょうか……」

 今回のサーブ権は志騎のものだ。パックを目の前に置き、深呼吸をして高ぶりそうになる気持ちを落ち着かせる。体は激しく動いても、頭は常に冷静であらねばならない。夏凜の方も唇を舐めて湿らせながら、相手の出方を待つ。そんな二人の醸し出す雰囲気に、周りのギャラリー(と勇者部)達がごくりと唾を飲む。

 そして。

「――――しっ!!」

 カン!! と乾いた音と共にパックが打ち出され、ステージの壁にぶつかって何度も反射しながら夏凜のゴールに向かう。変則的な動きながらも速度は早く、並大抵の相手ならこれで勝負が決まったかもしれない。

「だぁっ!」

 しかし相手は自称とはいえ完成型勇者。パックの軌道を難なく見切ると、力強くパックを弾き返す。ステージの壁に反射しない分速度は凄まじく、すぐに志騎のゴールの目の前まで迫る。

「くっ!」

 それを間一髪弾いて難を逃れると、勝負を振り出しに戻す。

 さすがというべきか二人は高速でパックを弾き返していくが、これまでの戦いで二人共体力を消耗している。長々と勝負を伸ばすつもりはない。

(なら……っ!)

 志騎はマレットを力強く握ると、パックをステージの片隅目掛けて思いっきり飛ばす。先ほど披露したステージの片隅を攻め、パックが返ってきてからゴール目掛けてパックを入れる戦法だ。夏凜相手に同じ戦法を繰り返すのは無謀かもしれないが、今度のパックの速度は先ほどの比ではない。当然彼女の体勢も大きく崩れる事になる。案の定、夏凜は右手を伸ばしてどうにかパックを返すが、体勢が大きく崩れている。それでは体勢を戻すのにわずかに時間がかかる。

(これで、終わりだ!)

 右手を自分の体の前で曲げ、次の瞬間思いっきり右腕を伸ばしながら開こうとする。これが当たれば間違いなく今日一番の速度のパックが放たれ、夏凜のゴールに突き刺さる――――。

「舐めんなっ!!」

 が、そこで志騎は思わず目を剥いた。

 なんと夏凜が右手に持っていたマレットを横に素早く滑らせたのだ。

 その先には、彼女が精一杯伸ばした左手――――。

(ま、ずい!)

 ついさっきから彼女が右手だけ使っていたせいで忘れていたが、勇者としての彼女の武器は双刀なのだ。

 つまり彼女は、右手だけでなく左手も自由に扱う事ができる――――!

 志騎が気づいた時に遅く、パックは間違いなく今日一番の速度で放たれる。だが速度を優先としたため、志騎の体勢は大きく崩れてしまった。ちょうど、志騎が思い描いていたイメージとは反対となる形で。そしてその先には、わずかに体勢を崩しながらも左手にマレットを握りパックを待ち構える夏凜の姿。

「もらったぁっ!!」

 夏凜は左手でパックを弾き返し、無防備な姿となった志騎の目の前でパックがゴールに突き刺さった。

 掲示板の夏凜の得点に7が入り、この時夏凜の勝ちが確定した。

「よぉっしっ!!」

 ガッ!! と夏凜が右手を強く握りしめて力強い笑みを浮かべ、周りで勝負を見守っていたギャラリー達もうぉおおおおおおおおおおおおっ!! と歓声を上げる。

「わーいわーい! 夏凜ちゃんおめでとー!!」

「あまみんもお疲れ様~! 二人共、よく頑張ったんよ~!!」

 ついでに、勝負を見守っていた友奈と園子も叫んでいた。

「はぁ、負けたか。あそこで左手を出してくるとは思わなかったなぁ」

 マレットを置きながら、志騎は苦笑する。普通利き腕とは反対の手を使うとは誰も思わないので志騎が気にする必要はないのだが、勝負ごとに関してはシビアな志騎はそれを考えつかなかった自分が悪いと考える。なので、今回は間違いなく志騎の負けだった。彼は夏凜に近寄ると、

「やっぱりお前は強いな。さすが」

「ふん! 完成型勇者の私には当然よ!」

 と、そこまで言ってから夏凜は少し恥ずかしそうに、

「……で、でも。あんたも結構強かったわよ。私をここまで追い詰めたんだから、それは誇っても良いと思うわ」

「……それはどうも」

 そう言いながら志騎が右手を差し出し、夏凜は最初差し出された右手をきょとんと見ていたが、やがてそれが握手の合図だという事に気づくとやれやれと言いたそうな笑みを浮かべながらも志騎の右手を握り返した。まるで青春ドラマのような光景にギャラリー達が拍手をし、おまけに友奈と園子はうんうんと満足そうに頷きながらギャラリー達と同じように拍手をしていた。

「……なんか、二人の周りだけ随分盛り上がっちゃってるわねぇ……」

「ま、漫画みたいだね」

 風と樹が呟くと、黙っていた刑部姫がスマートフォンを取り出し、

「……ネットにでも流してみるか。再生数稼げるかもしれんし」

「それはやめた方が良いと思います……」

 もしもそんな事を本当にしたら、夏凜が怒り、志騎は刑部姫を半殺しの刑に処する事間違いなしだろう。

 そして、ギャラリー達と勇者部に見守られながらようやく互いの手から手を離した恥ずかしそうな表情の夏凜と、ギャラリー達の反応に苦笑を浮かべている志騎の姿を。

 銀は、どこか複雑そうな表情で眺めているのだった。

 

 

 

 

 

 

 ゲームセンターで時間を過ごしている内に、時刻はお昼時になった。ちょうどいい具合に空腹になった

志騎と夏凜はゲームセンターを離れると、お昼ご飯にある施設に入る。

 その施設とは。

「あんたって、ここに良く来るの?」

「いや、俺はあんまり。銀は本当に良く来るけど」 

 銀がよく来るショッピングモール、イネスだった。二人掛けのテーブルに二人とも座っており、夏凜の目の前にはうどん、志騎の目の前には味噌ラーメンにクリームソーダが置かれていた。志騎がクリームソーダのソフトクリームを美味しそうに食べていると、うどんをすすっていた夏凜が言う。

「ラーメン伸びるわよ」

「すぐに食べるから大丈夫だよ。ここのソフトクリーム美味いんだ。本当ならジェラートの店があったらしいんだけど、もう無いしな」

 そう呟く志騎の視線の先には、シャッターが下ろされている空き店舗があった。きっと元々そこに、彼の言うジェラートの店があったのだろう。夏凜も志騎の視線の先を追いながら、

「あんたと銀が来てたって事は、園子と東郷も?」

「ああ。園子は確かほうじ茶アンドカルピー味で、須美は……ああそうだ。ほろにが抹茶味を食べてた」

「銀は?」

「しょうゆ豆」

「……美味しいの、それ?」

「あいつにとってはそうだったんじゃないのか? 俺や須美に園子には分からなかったけど」

 二人はそれぞれ頼んだものを食べながら、会話に花を咲かせている。どうやらゲームセンターで遊んだ事で二人の仲が縮まったらしく、夏凜の顔にも笑みが増えている。

 そして二人の様子を、勇者部と刑部姫が二人から離れたテーブル席で見守っていた。

「二人共、今日の朝よりすごく仲良くなってますね!」

「そうね。最初はどうなるかと思ったけど、ゲームセンターで一緒に遊んだ事が良かったみたい……って刑部姫! あんたちょっと七味入れ過ぎじゃない!?」

「やかましい。私にはこれが普通だ」

 刑部姫の前のうどんには、七味唐辛子がこんもりと積もっていた。彼女の両手には七味唐辛子のボトルが握られており、それを同時に振ってかけるという所業を平然と行っている。そして両手に握っていたボトルを置くと、箸を持ってうどんを豪快にすすった。ずぞぞぞぞぞっ! という音と共に面と一緒に七味唐辛子が彼女の口内に吸い込まれ、勇者部の面々が顔を引きつらせるが、刑部姫の表情は苦しむどころか満足そうである。……知りたくも無かったが、また刑部姫の新たな一面を知った一同だった。

 やがて勇者部も昼食に、それぞれが頼んだうどんをすすり始める。しかしそこで東郷が銀が少しもうどんを食べていない事に気づき、彼女に言う。

「銀、うどん伸びちゃうわよ?」」

「ん? あ、ごめん……」

 東郷が言っても、銀はうどんにまったく手をつけなかった。ただぼんやりとした目でうどんを見ている。いや、もしかしたら彼女の目にはうどんすら写っていない可能性が高い。それに東郷以外の勇者部も気づき、刑部姫以外の全員の箸を動かす手が止まった。すると、そんな銀に友奈が明るく声をかけた。

「勇者部五箇条! 悩んだら相談!」

「えっ?」

 銀が顔を上げると、友奈はにっこりと明るく笑った。周りを見て見ると、風達も優しい表情で銀の顔を見ている。それだけで彼女達の気持ちが友奈と同じである事に気づくと、銀は少し俯いてためらいつつも、ぼそぼそと自分が抱えていた感情を喋り始めた。

「……突然こんな事言うのはあれだけど、今まで志騎の事を一番知ってるのはアタシだって思ってたんだ。アタシは志騎の唯一の幼馴染だし、志騎とずっと一緒だったから」

 でも、と彼女は両膝の上で拳をぎゅっと握り、

「……夏凜と遊んでる時の志騎を見て、思ったんだ。ああ、あいつってアタシと遊んでる時以外でもあんな顔するんだって。別にアタシだけが見る事ができる笑顔じゃないんだって。そう思ったら悔しかったけど、こうも思ったんだ。あいつを幸せにできるのは、アタシだけじゃないんだって」

「銀、それは……」 

 東郷が何かを言おうとすると、銀はあははと笑いながら、

「だから、正直分からなくなっちゃったんだ。志騎の事は好きだし、一緒にいたいけど……志騎が幸せになる事を第一に考えるなら、アタシじゃなくてアタシよりも志騎の事を考えてくれる人がそばにいた方が良いんじゃないかって。そうすれば、志騎も幸せなんじゃないかなって……」

 そう言う銀の目は、夏凜と話す志騎に向けられていた。だが今の銀の発言は、園子や東郷、さらに友奈達にとっても簡単に許容できる話ではない。

 何故なら今の話は、聞きようによっては彼の幸せのためなら志騎を諦める事も一つの手なのではないか? と言っているように聞こえるからだ。銀の想いを知っているからこそ、簡単に受け入れられる話ではない。それに東郷と園子が口を開こうとした時だった。

「くだらん話だな」

 ドン! とスープを飲み干して「けぷっ」と可愛らしいゲップをしながら刑部姫がテーブルに丼を置く。刑部姫は銀をつまらなさそうに眺めながら、

「三ノ輪銀。お前は火の玉のように直情的な女かと思っていたが、意外に志騎の事になると臆病だな。いや、正確には恋愛事には慎重かつ奥手と言うべきか。ずいぶんとつまらん考え方をする」

「つまらんって……」

 いつもの刑部姫の毒舌に東郷が顔を険しくさせると、刑部姫は腕組みをしながら言った。

「じゃあ聞くが、お前は志騎からお前と一緒にいても幸せになれないとはっきり言われたのか? お前と一緒にいるよりも誰かと一緒にいた方が気が楽だと言われたのか?」

「……それは、言われてない。ってか、聞いても無いし……」

「聞いてもいないのに誰かの心を勝手に決めつけるな。ガキのたわ言を聞くのは不快だが、勝手な決めつけを聞くのはさらに不快だ」

 そう言うと刑部姫は事前に頼んでいたブラックコーヒーのカップを手に取ると、一口飲んで顔をしかめる。「マズいな……」と小さく呟いてカップを置くと、ジロリと銀を睨みつける。

「別にお前を慰めるわけじゃないが、慎重で臆病なのは悪い事じゃない。だが何かを変えたい、知りたいと願うならその足で動け。怖くても相手に聞け。そして伝えたい事があるならどんな形でも良いから伝えろ。そこでようやくスタートラインだ。お前はまだそこにすら立ってない。スタートラインにすら立ってないガキが色々抜かしても空しいだけだ」

「あんたねぇ、そんな簡単に聞けるなら……」

「苦労はしないってか? それなら聞かなければいい。自分が傷つく覚悟もない、自分が可愛いだけの奴に、誰かを愛し愛される資格などあるか。……そもそもこんな事、私よりもお前達の方がよっぽどよく知っているだろうが。私の口からわざわざ言わせるな面倒臭い」

 そう言うと刑部姫は不機嫌そうにコーヒーをぐいっと飲んだ。言葉自体は悪いが、全くの見当外れというわけでもない。むしろ、彼女なりのアドバイスとも取る事ができる。そんな刑部姫を風は珍しい物を見る様な目で見ながら、

「……あんたがそんな事を言うなんて意外ね。『恋愛は精神病だ』ぐらい言いそうなのに」

 すると刑部姫は風の言葉を馬鹿にするように鼻で笑った。

「人間がここまで栄えてきたのは生き残りたいという本能もあるだろうが、それだけでなく誰かを愛し愛されたいという欲求があったからこそ万物の霊長などという大それた名前で呼ばれるようになったんだ。それを精神病などいうのは、人間の感情が生み出す力というものを軽視している愚か者だ。私は人間がくだらない生き物だとは思っているが、人間が生み出す感情の力を侮るほど間抜けになった覚えはない」

 もしも刑部姫が人間の感情の力を侮っていたなら、志騎に感情など育てずに本当にただの殺戮兵器として育てていただろう。つまり彼女も、感情を爆発させた時に信じられない力を生み出すのが人間という生き物という認識は持っているのだ。ただ、だからと言って人間は素晴らしいなどという考え方はしないだろうが。

「も、もしかして刑部姫も誰かの事を好きになった事があるの!?」

「ゆ、友奈ちゃん!? 一体何を!?」

「だ、だってこんなに色々な事を言えるって事は、刑部姫ももしかしたら恋愛経験があるのかなーって……」

「じょ、女子力の塊のアタシを差し置いて恋愛経験ですってぇ!? そ、そんな事が……!」

「お姉ちゃん、落ち着いて……」

 友奈の発言に、たちまち五人が色めき立つ。刑部姫――――氷室真由理は性格は最悪とはいえ、その容姿はまさに美少女そのものだ。彼女の容姿に惹かれて告白などをした男性はいるかもしれない。……彼女の毒舌によって再起不能にされた男性もたくさんいそうだが、それに関しては聞かない方が良いと勇者部一同は思った。

「生憎交際経験は無しだ」

「ほっ……良かったー。あんたもアタシ達と同じで男子からの告白経験0いったぁっ!!」

 風の額に刑部姫が指で弾いたスーパーボールが直撃し、彼女は額を抑えてひっくり返る。風を忌々しく睨みながら、刑部姫はスーパーボールを回収し、

「誰が告白経験0だ九官鳥が。告白された事は何回もあるが全員フッただけだ。私のお眼鏡にかなう男が中々いなくてな」

「お前のお眼鏡にかなう男って、どんな奴だよ……」

「というよりも、そもそもあなたの好みの男性というのはどんな人なの?」

 東郷の質問に、刑部姫はふむと顎に右手を当てながら、

「最低条件として、私と同じぐらいの頭脳か、頭が良い男だな。で、私の面倒をきちんと見てくれる奴で、顔が少し中性的で背が低ければなお良しだ」

「意外と贅沢ねあんた……」

 と、そこで刑部姫の好みのタイプを聞いた銀が戦慄するように言った。

「って、ちょっと待て。お前の好みのタイプからすると、志騎がちょうどストライクじゃんか!」

 その発言に、勇者部一同も気づく。志騎はさすがに園子ほどではないが、東郷と競う事ができるぐらい学校の成績が良い。おまけに中性的な容姿に、背も平均的な中学二年生男子からすると少し低い。……つまり、刑部姫の好みにドストライクなのである。それは本人も否定するつもりは無いのか、こくりと頷き、

「うむ、そうだな。確かに志騎は私の好みど真ん中だ。もしも赤の他人だったら、夜襲っていたかもしれん」

「お、襲うって……」

 もちろん性的な意味でだろう。その場面を想像してしまったのか、友奈と樹の顔が赤くなる。するとその場の雰囲気を振り払うように、銀が両手をぶんぶん振りながら、

「で、でもそうすると良かったぁ! だって、志騎が息子ならそれはないもんなぁ!? 息子相手にそんな事なんてまずいもんなぁ!?」

「確かにそうだ。…………だが」

 じゅるり、と。

 気のせいと思いたいが、涎をすするような音が、刑部姫から確かに聞こえた。

 

 

 

 

「――――正直、今でも襲いたい」

 

 

 

 

 

「あ、夏凜と志騎が行くわよー」

「そうですね~。じゃあ私達も行きましょうか~」

「お、そうだなー」

「う、うん。樹ちゃん、行こうか……」

「はい……」

 どこか光の宿していない目をした風、園子、銀が言うと友奈と樹が立ち上がり、彼女達はイネスを出ようとする志騎と夏凜の後を追った。……一人を除いて。

「むー! むー!!」

 友奈達が座っていたテーブルの下には、両目と口にガムテープを貼られ全身を縄で縛られ、ついでにゴミ袋に入れられるという悲惨な目に遭った刑部姫が放置されていた。さらにゴミ袋には『燃えるゴミ』『性欲獣』『変態科学者』とやけに達筆で書かれた紙が貼り付けられていた。

 のちに、その時の様子を見ていた樹はこう語る。

 あんな、ゴミを見るような目をした東郷と銀と園子と姉は初めて見た、と。

 ちなみに縛られる瞬間、容疑者はこう叫んでいた。

『待て! 私は死んだ時十九だったから歳の差はそんなにない! 親子関係はあるとはいえセーフだろう!?』

『実年齢十一歳を相手に欲情すんな』

 当然、アウトである。 

 

 

 

 

 

 

 その後、志騎と夏凜は色々な所へ行った。

 とは言っても普通のカップルが行くようなアパレルショップや映画館などではなく、バッティングセンターやボウリングなど、どちらかというと同性の友人同士で行くような場所だった。おまけにそこでも勝負をしているのだから、デートのような桃色の光景とはまったくの無縁である。

 だがそれでも、二人は楽しそうだった。

 最初はぶっきらぼうな表情が多かった夏凜だが今ではすっかり楽しんでおり、志騎も夏凜ほど感情剥き出しではないが結構楽しんでいるようだった。もしかしたら夏凜の方も、自分が彼をライバル視していた事など忘れているのかもしれない。

 しかし、楽しかった時間というのはあっという間に過ぎ去るもの

 時刻はあっという間に三時を回り、辺りが夕焼けに包まれ始める。おまけに今は十二月のため、日が落ちるのが早い。勇者とはいえ夏凜も勇者なので、暗くならないうちに早く帰った方が良いだろう。

 そう考え、志騎と夏凜が最後に来たのは夏凜のマンション近くの海辺だった。いつもは夏凜が一人でトレーニングをしているこの浜辺は今日も人はおらず、波だけが潮騒を奏でていた。

「流石に海が近いと寒いなー」

「ふん、情けないわね」

 上着を着ているとはいえ、この時期の海からの風は冷たい。志騎がぼやくと、夏凜が腕を組んで平気そうに言った。

「お前は平気なのか?」

「当然! 私にしたら、この程度の寒さなんてくちゅん!」

「寒いんじゃねぇか」

 強がりを言う夏凜に志騎が呆れると、夏凜は鼻を赤くしながら悔しそうな表情を浮かべる。それに志騎が呆れたような笑みを浮かべた後、「なぁ」と夏凜に尋ねた。

「今日、楽しかったか?」 

「え?」 

 突然の問いに夏凜は戸惑うが、すぐに恥ずかしそうな顔を赤くすると、

「まぁ……悪くはなかったわ」

「そうか。なら良かった」

 素直ではない夏凜の言葉に気を悪くする事も無く、志騎は穏やかに言った。そうしているとなんか自分がやけに子供っぽく感じられ、夏凜はバツが悪い表情を浮かべる。

「刑部姫から聞いたんだ。お前の事や、お前の兄さんの事」

「………そう」

 志騎の口から飛び出した言葉に夏凜は一瞬目を見開くも、声を荒げる事は無かった。それだけで彼がどうして今日自分を遊びに誘ったのか、分かったのだろう。

「大変な訓練を受けて勇者になったお前からしたら、刑部姫から完成型勇者って言われてる俺は気に食わない存在なのかもしれない。だから俺がライバル視されたり、敵意を向けられたりするのは仕方ないと思う。……だけどそれでも、俺はお前とでできる限り仲良くしたいと思ったし、同時にそんな責任を背負うお前がほっとけないとも思った」

「……どうして?」

「うーん……理由を言うなら、お前が銀と似てるから、かな」

 するとその理由が予想外だったのか、夏凜がぱちくりと瞬きをして志騎を見る。

「……私と銀が似てる? 一体どこが? 銀は私と違って明るいし、人付き合いだって良いじゃない」

「まぁ確かに似てない所もあるけど……。一番似てると思ったのは友達の事を大切に思ってるって事かな。お前の場合は少し分かりにくいけど、大切な友達のためならいくらでも体を張る所がそっくりだと思ったよ」

「………」

「だから、大きなお世話と思われてもほっておけなかった。刑部姫のせいでライバル視や敵意を向けられるのは仕方ないけど、少しでも仲良くなりたくて今日遊びに誘ったんだ。……悪いな、今日一日突き合わせちゃって」

 やはり志騎が夏凜を誘ったのはデートなどではなく、単に彼女と交流を深めたかったから計画したものらしい。最初は柄にも無く浮かれていた夏凜だったが、途中でさすがの彼女のそれに気づいた。

 しかしそれで志騎を咎めるような事は決してしない。それどころか、おずおずとした口調で志騎に言う。

「……別にあんたが謝る必要なんてないわよ。……むしろ、こっちの方こそごめん。あんたの事をよく知らないのに、刑部姫の言葉だけで勝手に評価して、当たり散らして……ごめん」

 そして夏凜は頭を下げた。滅多に人に頭を下げる事などしない彼女の珍しい姿を見て志騎は思わず目を丸くしたが、やがてふっと笑うと夏凜に右手を差し出した。

「じゃあ、仲直りの握手でもするか」

「あ、握手?」

「ん」

 差し出された右手を夏凜は困ったように見つめていたが、やがて覚悟を決めたのか右手を差し出すとむんずと右手を掴んだ。

「……あのさ。握手をするのは良いけど、どうしてそんな戦場に行くような顔で握るんだ? ゲーセンでもやっただろ?」

「し、仕方ないでしょ! こういうのにあまり慣れてないのよ!」

「そんなんだから刑部姫にコミュ障女とか言われるんだと思うぞ……」

「なっ!? あ、あの馬鹿精霊~!」

 刑部姫の陰口に夏凜が奥歯を噛み締め、志騎は苦笑する。そして握手を交わした二人は手を振りほどくと再び海を見る。ようやく最近ギクシャクしていた関係を修復する事が出来た二人の顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。

「でもこんな時にまで銀の名前を出すなんて、あんた本当にアイツの事が大切なのね」

「んー、まぁそりゃあ幼馴染だしな」

 そう言いながら、志騎の手は何故かネックレスを握っていた。その挙動が何故か気になり夏凜がネックレスを握る手を見つめながら聞く。

「そのネックレス、大切なものなの?」

「いや、ネックレスって言うか……見せた方が早いか」

 そう言って志騎はネックレスの鎖の部分を引っ張り上げると、服の中にしまい込まれていた部分が夏凜の目に入ってくる。

 ネックレスには、指輪が通されていた。作り自体はシンプルで、恐らくデパートなどで売られているような高級品ではない。中央には夜空の青色の石がはめ込まれていた。

「二年前の夏祭りの時にあいつがくれたんだよ。なんでもこの石が魔除けになるらしい。二年前のバーテックスとの戦いの時に返したんだけど、この前返されてさ。それ以来できるだけつけるようにしてるんだ。学校じゃあ取り上げられたら困るからつけてないけど」

「でも、風はチョーカー着けてるわよ?」

「念のために、だよ」

 そう言って志騎は優しく笑った。それほどまで、その指輪のネックレスを没収されたりするのが怖いのだろう。正確には、幼馴染がくれたその指輪が。

 彼の顔を見て、夏凜は思う。

 普通幼馴染がくれたというだけで、それを持ち歩き、しかも今の志騎のような顔で見たりしない。

 つまり彼にとって三ノ輪銀という少女はただの幼馴染ではなく、それ以上の存在になっているのだ。

 とは言っても今の志騎の様子からすると、彼はまだ自分の気持ちに気づいていない。その理由が彼がバーテックスであるからなのかは分からない。

 ただ、これだけは言える。

 彼にとって大切な存在である少女がくれた指輪を見つめる今の彼の表情は。

 見ている者も思わず微笑んでしまうほど、愛しい感情が込められたものだった。

「……ねぇ、志騎」

「ん、何?」

 志騎が指輪を服の内側に戻すと、夏凜は苦笑を浮かべながら彼に言った。

「次は私じゃなくて銀を誘ってあげなさい。あんたに誘われたら、きっと喜ぶわよ」

「む、そうか?」

「ええ、きっと喜ぶわよ」

「そうだよ~」

「そうか。ならちょっと誘ってみてうぉおおおおおっ!!」

 突然横から聞こえてきた声に志騎が焦って視線を向けると、そこには東郷と園子がニコニコとした顔で立っていた。さらに横には友奈と風と樹が笑顔で並び、一番最後に銀が顔を赤らめて俯いていた。

「な、なんであんた達がここにいるのよ!?」

 彼女達の存在に気づいた夏凜も声を上げるが、帰ってきたのは風の非常に楽しそうな笑顔だった。

「いやー、今日はちょーっと事情があって一日中あんた達の後をついてきてたのよ。まぁ気が付かなくて当然よね、刑部姫から認識阻害の札もらってたし」

「ちょ、ちょっと待ちなさい! ついてきてたって、いつから!?」

「夏凜さんが志騎さんと待ち合わせしてる時からです……」

「な……な……」

 顔を赤らめてパクパクとまるで金魚のように口を開いたり閉じている夏凜に、風は笑顔でさらに追い打ちをかける。

「あたし達も最初はデートかなと思ってたんだけど、行く場所がバッティングセンターだったりゲームセンターだったから、途中でそれはないなって思ったんだけど……楽しそうだったわねぇ、夏凜?」

「は、はぁああああああああっ!? 一体何を言ってるのか分からないんだけどぉ!? ってか、ついて来るって何ストーカーみたいな事してるのよ!? 気持ち悪いんだけど!?」

「あら、楽しそうだったのは否定しないのね~?」

「こ、このぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」

 怒った夏凜が風を追いかけまわし、風が笑いながら逃げる。そんな二人を半眼で見ながら、志騎は東郷に言った。

「で、一体何の用だ?」

「あら、友達に挨拶をする事がそんなに不自然でしょうか?」

「とぼけるなよ。今まで隠れて見てた奴らが挨拶をするために突然出てくるわけないだろ。何か理由があって出てきたんだろ」

 志騎の推理に東郷は満足そうに頷き、

「ええ。実はちょっと銀があなたに伝えたい事があるらしくて」

「銀が?」

 そう言って志騎が銀の方に目を向けると、彼女達は友奈と園子に連れられて志騎の前にやってきた。そしてニコニコ笑顔の友奈と園子が銀の横からずれると、銀は恥ずかしそうな表情で志騎を見上げた。

「あ、あの、その、志騎。じ、実はアタシ、お前に言いたい事があって……」

「何だよ」 

 すると銀はあー、とかうー、とか口の中で呻き出した。何を言いたいか分からず志騎が怪訝な表情を浮かべていると、横から「ミノさん、ファイト!」やら「銀ちゃん、頑張って!」と友奈と園子からの声援がかけられる。銀は顔を赤くしながらも、唾を飲みこんで勇気を振り絞り言った。

「その、今度、アタシと一緒に二人でどこかに出かけないか?」

「それって、今日みたいにゲームセンターとか?」

「いや、そうじゃなくて……。服を見に行ったりとか、映画館とか、あと水族館とか……。そんな場所に、お前と二人で行きたい。……駄目か?」 

 銀が頬を赤らめながら上目遣いで志騎を見上げる。それはかなりの破壊力を持っており、東郷が「うぐ……! 上目遣いの銀、なんて威力なの……!」と戦慄を覚え、園子が「びゅおおおお~……! これでNoを言える男の人はいないんよ~!」と目を輝かせる。銀は顔から火が噴き出そうになりながらも、志騎の返事を待つ。

 それに対する、志騎の返答は。

「ああ、良いよ」

 非常にあっさりとしたYESだった。あまりにあっさりしすぎて、銀が一瞬聞き間違えじゃないかと思ったほどだ。

「良い、のか?」

「そう言ってるだろ? じゃあこの際思い切って、クリスマスイブにでもするか」

 クリスマスと言わなかったのは、もしかしたら勇者部で集まるかもしれないと思ったからだ。銀の望みは確かに大切だが、銀が友達との交流も大切にする少女だと知っているからこその言葉だった。

「……うん……! うん!!」

「何故二回言った?」

「え、その、大事な事だから……?」

 もじもじと銀が照れながら言って、なんだそりゃと志騎が苦笑する。すると遊び……実質デートの予約を取り付けた銀に友奈達が笑顔で駆け寄ってくる。

「銀ちゃん、やったね!」

「クリスマスイブとクリスマス、楽しみだね~!」

 友奈と園子、東郷と樹から祝福の声を掛けられ、銀は嬉しそうに笑う。風と夏凜も追いかけっこを止め、銀を微笑まし気に眺めていた。

 その光景を見て、志騎も口元を綻ばせる。

 一方、その光景を遠くから眺めていた刑部姫がやれやれと言わんばかりにため息をつく。

「ようやくスタートラインか……。ま、あいつがどんな道を辿るのか、精々見守らせてもらうとするか」

 そう言って彼女は海辺から姿を消す。

 残されたのは、デートの約束に喜ぶ少女達と、幼馴染の少女を優しく見守る少年だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、準備は整った」

 誰もいない空間。彼女以外誰も存在しない空間で、白い長髪に赤い目をした少女は一人呟いた。

「ふーふんふーふんふーふーふん」

 軽やかに鼻歌を歌いながら、少女は誰も存在しない空間を楽し気に歩く。

 彼女の鼻歌は赤ん坊を眠らせる子守唄のようにも、聞くものを破滅へと誘う呪歌のようにも聞こえた。

 そしてピタリと止まると両手をゆっくりと合わせ、にっこりと口元に笑みを浮かべながら、ここにはいない誰かに告げるように言った。

「決着をつけようか、人類の皆。そして結城友奈と天海志騎。精々私をすっごく楽しませて、すっごく苦しんで滅びてね?」

 悪意が全くこもっていない、まるで童女のように少女は笑う。

 少年少女達の知らない場所で、ついに終わりへと向かう時計の針が動き出すのだった。

 

 

 

 




 次回から本格的に勇者の章本編に入りたいと思います。まずその前日譚的話である、大満開の章一話から入る予定です。勘の良い方ならもう分かると思いますが、そうです。あのうどんロックの回です。また更新頻度が遅れてしまうかもしれませんが、投稿まで少しお待ちください。
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