不定期刊短編集   作:速川渡

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泥人間

僕は死んだ。そのはずだ。

 

では、何故意識があるのか。当然だ。生きているのだから。

いや、この表現は正確ではない。正しくは、死んで生き返った。

 

この時点で、こいつ何言ってんだ。病院に行った方がいいんじゃないのか。という考えを浮かべた人は、正常だ。或いは、これはそういう話だと知っているから、その最初の混乱を表しているのだろう。というような考えを浮かべた人は、捻くれものだろう。

 

まあ、そんな事は重要じゃない。本題に入ろう。

僕は、大雨の中走って家に帰っていた。傘を忘れてしまっていたんだ。

道中の近所で有名な泥沼の近くを通った時、悲劇は起こった。

まぁ、ベタな展開だろうが雷に撃たれてしまったんだ。

約900万ヴォルトの超高速の奔流は、気付く間も無く僕を包み焼き焦がした。

そして、僕は死んだ。ここまでは普通の落雷死亡事故だ。いや、落雷死亡事故なんて滅多にあるもんじゃないけどね。

 

その後が問題だ。その900万ヴォルトの奔流は泥沼の泥に迸り、何と僕を形作った。

魔法か何かのような復活を果たしたんだ。文字通り死んで生き返った。

泥沼に死んだ僕が沈んで行く。どうやら夢ではないようだ。

 

さて、整理しよう。僕は死んだ。そして、新しい泥から生まれた僕が誕生した。

記憶は引き継いでいるようだ。身体にこれと言った変化はない。

(男だったのに女になったとか、贅肉塗れだったのがムキムキになったとかそういうのは無い)

僕は果たして、誰なんだろうか。先の僕が本物で今の僕は偽物?

或いは、変わりが無い点で言えば本物?

 

混乱しているうちに、身体が冷えて来た。雨に濡れて、風に煽られて体温が下がるのを感じる。

とりあえず、家に帰ろうか。ここでずっと考え込んでしまっていては、風邪をひいて......泥から生まれた僕は風邪や病気に罹るのだろうか。まあ、ここでこうしているわけにも行かない。帰ろう。

 

(故)僕の家は記憶の通りそこに鎮座していた。当然と言えば当然、当たり前のことではあるのだが。

僕はこの家に立ち入る権利はあるのか。見方によれば、この家の長男は先程死にそっくりさんが成り代わったという事になる。

いや、誰もそんなこと知る由も無いのだ。気にする必要もないか?

周りは良いとしても僕自身がそういう在り方を許せる人間だったろうか。故僕から受け継いだ記憶から考えてみる。

思い起こし、想い起こし、考え、悩み、そんな哲学的なこと気にしない人間であったことに気付く。

 

そうだ。しばらくは気にしない事にしよう。僕は僕のままの筈だ。さっきのは幻覚か何かだろう。

死んだそこからすぐ生き返るなんて、ファンタジーやSFじゃあるまいしな。

 

僕はきっと夢でも見たんだ。




スワンプマンを題材にした小説です。
貴方はこの話を通してどう思いましたか?

泥沼から謎の復活を果たした彼は本物か、偽物か。
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