"天剣"は鬼を斬る   作:青めだか

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るろ剣の実写も鬼滅の映画も楽しみです。
鬼滅は秋ぐらいか?





プロローグ

 

 

「おばちゃん、お勘定」

「はいよ〜」

 

 道中にあった和菓子屋での一服を終えて、群青色の衣を着た青年は再び歩き始める。季節は春を迎えたばかり、辺り一帯には桜が咲き誇り様々な種類の鳥がさえずっている。旅を続けるには最適な、実に心地の良い日だ。

 

 

「…こんなに良い天気は久し振りだなぁ」

 

 桜並木を抜けて広々とした草原に出る。脚を止めて雲一つない青空を見上げ、思い返すのは…大きな転換期となった出来事の数々。

 

 

 

 

 

 

 

『所詮この世は弱肉強食…強ければ生き、弱ければ死ぬ』

 幼い自分に、誰よりも強くあろうと覇道を突き進む志々雄真実(あの人)はそう言った。その通りだ。強者こそがこの世の真理、彼に身を委ねていれば自分は正しく生きれると確信していた。けれど……

 

 

 

 

『ただ強い者、戦いに勝った者が正しいというのは志々雄の論理!一度や二度の戦いで、真実の答えが出るくらいなら誰も生き方を間違ったりはせぬ!真実の答えは、おぬし自身がこれからの人生の中で見出すでござる!』

 己の奥義を破った、不殺の信念を抱く緋村剣心(あの人)はそう言った。本当にそのような真実が存在するのなら、貴方はどのような答えを持っている?何をすれば辿り着ける?……いや、駄目だ。これは彼の言う通り自分自身で見つけなくてはならない。誰にも頼らず、独りで。

 彼等の戦いを見届けたら旅立とう、真実(ほんとう)の事を確かめる為に—————。

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は明治十四年……元十本刀"天剣"の瀬田宗次郎は、自分自身の真実を見つける為旅を続けていた。志々雄真実の内乱が収まってから実に三年の月日が流れているが、宗次郎は未だに真実(ソレ)を見出せないままだ。歳も間もなく二十歳(はたち)になると思うと時の流れの早さを改めて感じる。勿論この三年間が全くの無駄だった訳ではない。見た事も聞いた事もない様々な地方を巡り、沢山の素晴らしい経験を得る事が出来た。肉体の成長に伴い剣の腕もかなり上達したのだ。だが肝心の真実を見つける為の手がかりは、何一つ掴めていない。

 

 だからと言って焦っている訳ではない。旅を始めた頃から少なくとも十年は流浪(なが)れるつもりで考えていたし、『あの二人』も真実を見出すまでそれ程の時間を費やしているのだ。ゆっくりと気ままに、今度は西を目指して歩いて行こう。必ず新しい何かが待っているに違いない。

 そう思い歩みを再開しようした……次の瞬間。

 

 

 

「………ッ!?!!」

 

 

 "それ"は突如やってきた。

 頭がちくり、と刺激されたかと思えばやがて立ってもいられない程の激痛へと変貌し、頭が割れるような感覚に宗次郎はたまらず膝から崩れ落ちた。呼吸を整えようとするも頭痛は一向に治まる気配が無く、段々と意識も朦朧としてきた。知らぬ間に毒でも盛られたか、或いは突発的な病気を患ってしまったのか。いずれにせよ意識は僅かしか持たない。

 

 ——その時、意識が薄れゆく中で漠然と…()()()()が微かに響いてくる。

 

 

 [……の……に……………]

 

 

 ーー何、だ?誰が喋って………

 

 

 頭の中に響いてきた声の意味を図る事も出来ないまま、徐々に目の前が真っ暗になり…プツン、と糸が切れたように気を失った。

 

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

♦︎

 

 

 

 

 

「はあっ、、ぐ……くそっ!!」

 

 

 暗い闇のような森の中を、ひょっとこを模した奇妙な面をつけた男が息も絶え絶えに走る。

 

 

「クソが!よりにもよって"鍛冶狩り"かよ…!」

 

 

 現在、鬼殺隊で最優先の討伐対象となっている鬼…通称"鍛治狩り"。その異名の通り刀鍛冶のみを執拗に狙っており、既に十七人も犠牲が出ている。単純な戦闘能力も尋常ではなく、先程護衛に付いてくれた(きのと)の隊士三人が瞬殺されてしまった。刀鍛冶は特に警戒するよう本部から通達があったので、気を引き締めていたのだが…こうも簡単に出くわすとは考えてもいなかった。そう思っていた矢先……

 

 

「———ッがぁ!!?!」

 

 

 右脚に鋭い痛みが走り、派手に転がり地面に激突した。莫大な熱を伴って荒れ狂う患部を見れば、金属製の槍がふくらはぎを貫通している。激通に堪えながら何とか身動きを取ろうとすると……「巨大な影」が男の全身を覆い隠した。

 

 

 

 

「———それでもう、逃げる事は出来まい」

「!!!」

 

 

 至近距離から紡がれた声の方を振り向けば、其処には怪物がいた。自分の倍はありそうな巨体、全身が屈強な筋肉で覆われ金属のような光沢を放っている。頭部には禍々しい角が三本生えており、此方を睨むだけで威圧感を放つ容貌は…正に獲物を狩る圧倒的強者そのものであった。何とか距離を取りたかったが、貫通した槍が足枷となって身動きが出来ない。

 

 

「さて、貴様を喰う前に尋ねたい事がある。答えたら痛みを感じさせず楽に殺してやろう……『刀鍛冶の里』は何処にある?」

「————ッ!」

「拠点の位置を知りたいのだが…生意気にも口を割らん奴が多い。手足を全部引きちぎれば多少は喋るがな。その時の苦痛に満ちた声は本当に傑作

だったぞ…!!!」

「!?、、このっ!テメェェェ!!!!!」

 

 

 先程までの恐怖が一瞬にして掻き消え、はらわたが煮えくり返るのを感じる。男は腰に差していた日輪刀を抜き、足の痛みなどお構いなしに鬼に向かって突撃する。だが、その日輪刀は未完成であった。

 今日は元々この刀を完成させる為に、里から離れた場所にある自分の工房へ向かう途中であった。製作途中の刀であるが故に当然脆く、ましてや自分は直接鬼と戦闘を行う"隊士"ではないのだ。脳裏では理解していても、憎き相手を前に行動を起こさない選択肢は無かった。

 

 

「オオォォォオ!!!」

「フン、鬼狩りでもない貴様に何ができる?」

 

 案の定片手で刀を弾き飛ばされ、もう片方の手で首を掴まれ持ち上げられた。鬼特有の桁外れな握力の強さに、首の骨が耐えられずメキリと嫌な音を立て始める。

 

「が…ぁ、、ご……」

「さぁ何処にあるのか教えろ。いい加減同じ問答は飽きてきたのだ……手間をかけさせるなよ?」

「………ッ…れ」

「んー?何だ、聞こえんぞ?」

「くたばれ!クソ、、——ぐがぁ!!?」

 

 

 

 

「…………」

 

 

 ーーまた、思わず放り投げてしまった。

 

 

 鍛冶狩りは腕をコキリ、と鳴らしながらつまらなそうに前方を見やる。投げた男は枝々を散らしながら面白い程吹っ飛んで、一際大きな樹木に轟音を立てて激突すると膝から崩れ落ちて気絶した。人間とはなんと貧弱なのであろうか、あの程度の衝撃で気を失うなど有り得ない。しかし、これ以上生温いやり方で問い詰めても無駄なのは…今までの拷問(けいけん)で学んでいる。いつものように執拗に痛めつけて、口を割らせてから喰ってしまおう。

 

「クッ、クク……!!!」

 

 笑いが止まらない…全てが順調だ。『刀鍛冶の里』は、今までの刀鍛冶に対する拷問の甲斐あって大方の位置は掴めており、完全に把握するまであと一歩といった所であった。どれだけ多くとも三人、上手くいけばあの男で終わりだろう。

 その過程で何度も鬼狩りと交戦してきたが、未だに無敗。以前も上の階級であろう精鋭が十人がかりで襲ってきたが、全員捩じ伏せて喰ってやった。血鬼術で強化された鋼の肉体は、鬼狩りの刀を通さぬ程に頑丈なのだ。また感覚の鋭さにも自信がある。遠く離れた場所にいる鬼狩りも把握可能で、今日のように奇襲を掛けられるし、格上の鬼狩りから距離を取る事も出来る。

 

 あと少しで必ずあの御方に認めてもらえる。今まで喰った人間の数はもうじき百を超え、強力な血鬼術も獲得出来た。後は明確な手柄を立てれば、確実に「十二鬼月」になれる!!!

 

「さぁ、どのように痛めつけてやろうか…」

 

 鍛冶狩りは軽やかな足取りで、気を失った男の元へ向かう。全ての流れが思い通り、これから先が希望で満ち溢れていた。

 

 

 

 だが…………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「————こんばんは。突然ですが道をお尋ねしても宜しいですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その大きな野望が、自分の()()()から声をかけてきた青年によって、一瞬にして打ち砕かれるとは、この時は思いもしなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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