リリカルでマジカルな世界に来たんだけど、どうしろってんだ...... 作:牡羊座のボク
お久しぶりです、牡羊座です......
ほんっと〜〜〜〜にお待たせいたしました!執筆が二進も三進も行かず、気づけば四ヶ月弱......申し訳なさすぎる......
それでは、どうぞ!
「先遣隊、準備完了しました!」
「......目標はプレシア・テスタロッサの身柄確保です。何があるかわかりません、細心の注意を。では......状況開始!」
アースラの武装局員らが転送ポートから先程突き止めた敵の本拠点、『時の庭園』に転移する。俺達は彼らの切り開いた道を最速で進み、プレシアの元にたどり着けばいいのだが......
「何も出てこないな」
「......どういうことだ?」
局員が庭園内に侵入してから、何の妨害もされずに至って順調に進むことができた。終いには庭園の最奥、おそらくプレシアがいるであろう部屋の前にまで来てしまった
「......ここまでは原作通りなのか、七条?」
「ああ。この後部隊が全滅させられ、ジュエルシードと庭園の魔力炉の暴走が始まる。そこに俺達が突っ込むわけだ」
「おっかねぇなぁ」
ブリッジが忙しなく動いている中———ちなみに、回収された高町とテスタロッサ、アルフもここにいる———俺と七条は隅っこの方でコソコソと小声で話している。『物語』の大まかな流れを再確認して、俺は原作改変を起こすタイミングを思案する。一応の当たりはつけているのだが、前段階が全てうまくいかなければ実現できない希望的観測ガン積みの大博打である。最悪の場合、今回で二つの『奇跡』を使わなければいけなくなるが......その時はその時だ
「おい、聞いてんのか?」
「聞いてるってば」
「ならいいが。で、その時カプセルに入ってるのが......」
「......アリシア・テスタロッサ、か」
自分が関わっていた実験が失敗してしまったが故に亡くなってしまった本当の娘。彼女を取り戻さんとせんがため、ジュエルシードなんてものにまで手を出した。しかも、それを使っても願いが叶わないことは百も承知で、世界を犠牲にしてまでアルハザードなんていう有るかどうかもわからない場所に行くために。七条曰く、大昔には存在したが既に滅亡しているという『設定』がある......らしいが
「プレシアを正気に戻す手段はなんとなく思いついてるけど、そん時にガチンコバトルに発展する可能性があるから援護は任せた」
「どつしてそうなる!?」
小声で叫ぶとか器用な奴だな。そんな風に話してると辺りの探索が終わったのか、正面の扉を開けて武装局員が部屋に押し入る。すると、その先にいたのは気怠げそうに椅子に腰掛けているプレシアの姿だった。局員は素早く目配せをしてから杖を構え、互いの射線が被らないよう扇状に広がりながらプレシアを包囲する
「プレシア・テスタロッサ、時空管理法違反及び管理局艦船への攻撃の容疑で貴女の身柄を拘束します。武装を解除して、こちらへ」
そう呼びかけるも、プレシアはただ虚空を見つめて溜息を零すだけ。しかし、数名の局員がプレシアの横を通り抜け、奥の扉を開き『そこ』に足を踏み入れた瞬間、その態度が豹変した
「こ、これは......?」
「......っ!アリシアに、さわるなぁぁぁァァァ!!!」
————ズガァァァァァァァン!!!!
紫電が走り、プレシアの周りを囲んでいた局員ら全員が体から煙を上げながら倒れ伏す。閃光と爆音に驚き振り向いた局員は目の前に広がる光景に愕然とし、思わず呆けてしまう
油断などしていなかったはずだ。何があっても即座に対応できるはずだった。保たれていると思っていた均衡はたった一撃で崩れ去ってしまった。そして......
「私の娘にぃぃ............!触るなァァ!!」
悪鬼のような表情でプレシアが迫ってきていた
「ひぃっ......!?」
一番扉に近い———つまり、一番プレシアに近い———局員は思わず小さく悲鳴を上げてしまうが、誰もそれを責めることができなかった。ともすれば自分が悲鳴を上げていたやも知れないからだ
慌ててデバイスを構えようとした局員の顔面を鷲掴み、その細腕のどこにそんな力があるのかと思ってしまうような異常な腕力でそのまま宙に掴み上げた
「......ぁっ、ガァ......っ」
怪力から逃れようと必死にもがくがそれも叶わず、激痛のあまり杖を手から放してしまう。周りの局員達は距離が近すぎるため手出しができなかった。ただでさえ狭い部屋の中での攻撃魔法の行使は危険なうえ、プレシアと仲間は密着している。巻き添えにしてしまう可能性が高かった
————バチィィィン!!!
そうこうしているうちに掴まれていた局員はゼロ距離から電撃を喰らい大きく痙攣しながら失神、そのまま手を放されて地面に崩れ落ちる。自分の起こした惨劇には目も暮れず、プレシアは狼狽えている他の局員らを纏めて吹き飛ばしてしまう
「他愛もないわね......」
先程の剣幕から一転、心底くだらなさそうに呟く。
戦闘が始まってからたった数分、それだけの時間で先遣隊はプレシア一人に敗北した......
「見ているかしら......?聞こえているかしら、管理局......?」
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『見ているかしら......聞こえているかしら、管理局......?』
プレシアがこちらに語りかけている。状況をモニターしているのもお見通しだったのだろう、だが、誰も反応することができない。信じられない光景を目の当たりにした時、人は大抵思考を停止させるものだ。まぁ、数人———"それを知っていた者"と、"ある程度予測していた者"に分かれるが———はそうならず、状況を打開するための一手を必死に考えている
さて、ではいったい大多数の意識を縛り付けているモノはなんなのか?それは......
「フェイトちゃん......?」
「アリ、シア......」
培養槽のような密閉されたカプセル、その中の液体に浮かぶフェイト・テスタロッサに瓜二つ、いや、全く同じ少女......アリシア・テスタロッサ。そして、その口から気泡が漏れていない......つまり彼女が息をしていない、死体であるという事実である。さらに言うのならば、その死体を『娘』と呼び保存している、プレシアの異常性自体であろう......
「......知ってても、流石にキツイな、これは」
そんな小言を思わず呟いてしまったが、誰も気に留めることはない。それほどまでに異質な空気に支配されてしまっている
「......アリシアちゃんって、だれ?」
「プレシアの、実の娘だ」
高町の疑問に答えたのはクロノだった
「プレシア・テスタロッサの娘、アリシア・テスタロッサは数年前にある実験中に起こった事故で......既に死亡している」
クロノは苦虫を噛み潰したような表情をしながら言葉を紡ぐ
「過去、プレシアにフェイト・テスタロッサという名前の子供がいた記録は一切ない。だが一つだけ、関連する『名称』はあった。それが......」
「使い魔を超える、人造魔導生命の研究......『プロジェクト「F.A.T.E」』」
クロノの言葉をエイミィが継ぐように告げる事実に言葉を失う高町と......テスタロッサ本人。あの様子だと全く知らなかったということではないのだろうが、朧げにそう感じていたという程度なのだろう。大きく動揺している様は正直に言って見ていられない
『あら、よく調べたのね。えぇそうよ、私の娘はアリシアだけ。そこにいるのはただのお人形よ』
「......っ」
信じていた母親からの拒絶の言葉にその瞳に涙を浮かべるテスタロッサ。その傍に寄り添いながら強い眼差しで睨む高町......この状況で睨み返せるってやっぱり戦闘民族高町家の血筋なんだなぁって......茶化してる場合じゃないなこれ
『やっとアリシアを取り戻す算段がついたの。だから、フェイト......貴女はもう、要らないわ!』
「っ、もうやめて!」
プレシアの言葉に心を打ち砕かれ、テスタロッサはその場にへたり込んでしまう。慌てて高町が支えるがその目は虚げで、涙を流したまま光を写していないようだった
「てンめえぇぇぇぇぇっ!!」
アルフがギリギリと音が鳴るほど拳を握りながら咆哮する。が、それすらも可笑しいのか高笑いをするプレシアは、さも愉快そうに言葉を吐き出し続ける
『ふふふ、あっはははははは......!フェイト、私はねぇ......貴女を作り出してから......アリシアと同じ顔をした貴女のことが、ずっと、ずっと、ずっと......!!』
プレシアがトドメの一言を告げようとする。その様子はまるで
「そこまでだ!!!」
思わず叫んでしまっていた
「「「........................」」」
『........................』
先程まで一言も発さなかった俺が急に声を上げてしまったせいか、艦内どころかプレシアまでその言葉を中断して皆こちらを見ている。七条に至っては隣でいきなり大声を上げられてうるさかったのだろう、凄い顰めっ面で睨んでくる。ハハ......そんな一斉に俺を見ないでよ、吐いちゃうでしょ......
『......急になんなのかしら。貴方には関係ないでしょ、ぼうや?』
「関係ないことはない。俺だってこの場にいる魔導師の一人だ......それに、心にもないことを言おうとしてる奴がいたら、そりゃ止めるだろ」
『............っ!』
俺は先日見た夢を思い出していた。あの時感じ取った想いはテスタロッサのものだけでなく、プレシアのものもあった。だからこそ俺は、場の流れとかそんなのはお構いなしに、続いたであろう言葉を止めたんだ。それを言ってしまってはどうあっても二人の関係を修復することは不可能になってしまうから......
『ふざけないでちょうだい......っ!私は、あの子の為に、アルハザードに行くのだからっ......!!』
そう言ってプレシアが腕を振るうと、モニターの映像が途切れてしまう
「き、局員の回収、終了しました!」
「それと同時に庭園内部に魔力反応出現、いずれもAクラス!総数六十......八十 ......まだ増えています!」
事態が慌ただしく変化する。庭園に出現したのは土くれとも、鉄の塊とも見て取れる甲冑のような姿のゴーレム。それが百を超える勢いで出てきているという......これは普通にどうしようもなくない?さらには......
「ジュエルシードの発動を確認!次元震も同時に発生、中規模以上......さらに強くなります!このままでは次元断層まで......!」
「っ......、振動防御、ディストーションシールドを!転移可能距離を維持したまま影響の薄い空域に移動して!」
「りょ、了解!」
本格的に不味くなってきたようだ。もしや俺のせいでは?と不安になってきたのでチラリと七条の方を見やると、何か言いたげそうな表情をしながらも首を横に振る。どうやら大丈夫そうだ
「なぁ、アンタ......」
「ん?」
そうこうしていると、高町達の所にいたアルフが声をかけてきた。いったいなんだろうか?
「さっきはさ、ありがとうね。あのまま最後まで言われてたら......フェイトは耐えられなかった」
「あぁ......別にいいんだよ、咄嗟に口に出ちまっただけだしさ。お礼なんていらないわ」
「それでも......ありがとう」
テスタロッサは良い使い魔に恵まれてるんだな......俺もせめて性格の良いデバイスだったらなぁ......
〈なにか言いましたかマスター?〉
『ヴェッ、マリモ!』
コイツナチュラルに俺の思考を読んでんじゃないかなぁ......?って、今はこんなボケかましてる場合じゃないだろうに!
「クロノ!これからどうするんだ?」
「っああ、僕達後発組も庭園に突入する。エイミィ、転送ポート開いて!」
「合点承知!」
七条の声かけでやや放心状態のままだったクロノが復帰、すぐさま指示を飛ばす。ここからが俺達にとって最大の山場である。どうにかこうにかして、ハッピーエンドにもつれ込ませてやる......!
改めましてお久しぶりです!
ジワジワ書いては消し書いては消しを繰り返しているうちに長い時間が経ってしまいました......オマケに受験生になってしまっている始末......トホホ
これからもどうにか空き時間を見つけては執筆を続けていきたいと思いますが、また皆さんをお待たせしてしまうかもしれません......どうかご容赦を<(_"_)>
こんな稚作ではありますが、感想など頂けると嬉しくなって作者が舞い上がります!Twitterの方も良ければフォローしてやってください!
それでは次回もお楽しみに!