悪役令嬢、匿いました。   作:こさきん

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なんかメアリーが悪役令嬢っぽくないので初投稿です。


鶏のから揚げ

メアリー様が食事中に突然涙を流すというトラブルがあったが、それ以外は問題なく昼食が終わった。

 

「お二人、少し宜しいでしょうか」

 

片付けをしようと立ち上がろうとしたとき、突然メアリー様が俺達に話しかけた。

 

「しばらくここに匿って頂くわけですから、私がここへ来るまでの経緯をきちんとお伝えせねばと考えました。

 

少しばかり長話になりますが、どうかお付き合い下さいますかしら」

 

 

***************************************

 

 

 

「そもそもの事の発端は、私の婚約者との婚約破棄から始まりますわ」

 

婚約破棄とか…最初から重い、重すぎない…?

 

「私の元婚約者は隣領のスキャロップ領のご子息であるオスタル様。

この婚約が成立すれば、領地拡大を目指すレッドスナッパー領はスキャロップ領を実質吸収することが出来る。

またスキャロップ領も当時財政が苦しかったこともあり、レッドスナッパー領の潤沢な財力が後ろ盾になる。

というわけで、この婚約は双方にとって利となるはずでした」

 

所謂政略結婚だな。まぁ貴族の世界はほとんどがそれだしね。普通だな!

 

「初めてオスタル様にお会いしたのがお互い10歳の時。

最初は仲良くさせて頂いておりましたが、17歳を過ぎたころから徐々にオスタル様が私を避けるようになられました。

彼が他の女性と仲良くしていると噂が流れたのが丁度その時です。…ラドラー国の女王の一人娘、ライザ様です」

 

 

ライザ様って、あの田舎娘みたいな人だよなぁ。俺でも知っている。

何ていうか親近感があるっていうか…。貴族にしては珍しく人当たりの良さそうな女性だったはずだが…わからんもんだな。

 

 

「噂が本当かどうかはわかりませんでしたが、その時は私は特に何も思いませんでした。

だって私達の結婚は政略結婚ですから、当事者たちがどう振る舞おうともうまく収まる…と」

 

「ですが、先日オスカル様の20歳の誕生パーティーの時…

本来私が彼をエスコートするはずでしたが何故かライザ様が彼の隣を歩いていました。

 

訳がわからず彼に問いただすと、

『君との婚約は解消した。既に僕の母上が君のお母様に話をつけてある。もう僕の前に姿を見せないでくれ』

と一方的に告げられ、館を追い出されました」

 

oh…悪役令嬢ストーリーあるある展開じゃないですか…。

 

恐らく周りからはついに田舎娘があの氷炎姫をやっつけた!みたいに思われているんだろうなぁ。

 

「頭が真っ白になり母上の所に戻ると、吐き捨てるように言われました。

 

『お前には期待していたがこのザマか。失望したよ。

今のお前に相応しい場所を用意してある。モーレイ国へ嫁げ。それがお前に用意された役割だ。』と。

 

え、ちょっ、お母様言い方キツ過ぎやしません?もっとフォローしてあげなきゃ…

 

「私はもうお母様から必要とされていないとわかりました。

自分で命を断とうと考えましたが、その勇気はありませんでした。

かと言って、『悪魔城』に行くのは死んでも嫌でした。

ならばせめてお母様が一番嫌がること、『逃げること』をして無様に死んでやろうと思いました」

 

あぁ、メアリー様の頭の中は、お母様が全てだったんだな。…切なすぎて何も言えねぇ…

 

「そして城を脱走し、逃げて、逃げて、逃げて…。気づけばここにきたと言う訳です。

…話が長くなりましたが、以上が顛末ですわ」

 

 

メアリー様が喋り終わると、部屋はしばらくの間静寂に包まれた。

 

そりゃそうでしょ…わかっちゃいたよ?メアリー様がただの思いつきでここに来たわけじゃないのは…。

 

でも内容がヘビーすぎるんだよなぁ…。

 

俺がメアリー様になんて声をかければ良いか迷っていると、サチさんがおもむろに切り出した。

 

「メアリー様、勇気を出して事情を話して頂き、ありがとうございました。

そして、私も問いただすようなことをしてしまいました。不敬をお許し下さい」

 

あ、そういえば出会ったときにサチさん事情を聞こうとしてたもんな。

するとメアリー様は「そ、それはいいのよ」と少し動揺しながらもサチさんを許した。

 

寛大だなぁ…俺の中のメアリー様像がバラバラと崩れていくよ。

 

サチさんは話を続ける。

 

「ご配慮ありがとうございます。

それでは、これからメアリー様を匿う為の作戦会議に入らせて頂きます。」

 

イケメンサチモード継続!俺は尊死した!

 

「まず匿う上での最重要問題は『追手』の存在です。

街の中でメアリー様の目撃情報が出なければ、ここにいることが丸わかりですからね。

 

そして、領外への逃亡は私たちがついていけないですし、何より捜索願がネックです。

…実は憲兵達も懸賞金に目がくらんでいるとの噂もあります。

 

ではこの建物の中でメアリー様を隠し続ける方法はあるか?

というと、うちには隠し部屋があるわけでもないので無理でしょう」

 

…これ作戦会議の意味ある?

だって外にも出れないし、追手には居場所がバレてるし、無理ゲーってやつだよ…

 

手詰まり感から俺はテーブルのお茶を飲もうとした。

 

 

「ですが最後に一つだけ方法が。

メアリー様がここからいなくなればいいのです。

 

 

…いえ、正確にいうなら、この世から」

 

俺は盛大に口から茶を吹き出した。

 

向かい合った所に誰もいなくて良かった…じゃない、なんて事いってるんだこのイケメン!!??

メアリー様も俺が茶を吹いたことなんか気にしてないようにサチさんをみて固まっている。

 

そりゃあそうだ、死ねって言われてるんだから。

 

サチさんは冷めた目で「汚いわよモンド君」と言ってきたがそんなの関係ねぇぇぇ!!

 

「げほっ、サチさん何言ってるかわかります!!??」

 

「あら、私は本気よ。

だけど、本当に死んでもらうわけじゃないから安心して?」

 

サチケェ!…つまりどういうことだってばよ!?

 

「作戦はこうです。

作戦その1、メアリー様の遺体を偽装し、その遺体を第三者に発見させる。

 

作戦その2、メアリー様死亡の情報を新聞社から大々的に報道させ、メアリー様の捜索願を実質無効化させる。

 

作戦その3、追手が来た際に備えて、メアリー様自身も偽装する。

 

…以上が作戦の概要よ」

 

 

…なるほど完璧な作戦っスね〜。不可能である点に目をつぶればよぉ〜!

サチさんの話には色々とツッコミどころがあるが、ここはグッと堪える。

 

メアリー様がこの無謀な話を聞いて、どう思うか聞きたかったのだ。

 

「…サチさん、今の話を聞いて教えて頂きたいことが3つほどございますわ、伺っても?」

 

「ええ、どうぞ」

 

あれぇ、思ったよりメアリー様怒ってないぞ?

もしかしておかしいって思ってるの俺だけ?

 

「まず一つは遺体を偽装する方法です。

第三者にもわかる様にするならば、それなりに私の原型を留めた遺体を用意しなくてはなりません。

…そもそもそんな簡単に遺体を用意することが難しいかと。」

 

そこは俺も初めに疑問に思った点だ。

街の居酒屋の一店主が遺体を用意することなんてできるわけがない。

 

 

「ええ、確かに普通であれば無理でしょう。

 

…実は私の友人にちょっと、いや、かなり癖のある人間がいるのですが、その人を頼ります。

その人は、偽装のプロですよ。メアリー様ご自身の偽装もその人にやってもらいます」

 

え、サチさんそんな友人いるの…?意外な交友関係をお持ちでいらっしゃる。

 

「わかりました。2つ目の疑問は今分かりましたので大丈夫よ。

では最後の疑問です。…そこまでして私を匿ってくれる理由を…

サチさん、ここの店主であるあなたの口から聞かせて頂戴」

 

確かに俺もそれは聞かせてほしい。

メアリー様代弁ありがとナス!

 

「そうですね…一言でいえば『親心』ですか。

 

メアリー様の経緯を聞かせてもらったときに、どうしてもあなたのお母様に腹が立ってしまったんです。」

 

確かにメアリー様の話を聞いてるときのサチさんの表情凄かったもんな…

ギリッ…て歯ぎしり聞こえたもん。あまりに怖かったから見ないふりしてたけど。

 

「…そう、同じ子を持つ母親として許せなかったんですよ」

 

「え…、あなた子供がいるの?!」

 

メアリー様が驚くのも無理はない。この女神に子供がいるなんて想像出来ないもんなぁ。

 

「はい、正確には今はいません。…夫と子供はもうこの世にはいませんから」

 

…サチさんの旦那さんとお子さんは、流行り病で俺がここに来る前に亡くなっていると聞いた。

サチさんはあまりこの話はしたがらないから、俺も詳しいことはわからないが。

 

「あ…ごめんなさいね」

 

「いえ、私も言っていませんでしたから。

 

とにかく、メアリー様を匿うのは私の個人的な感情が多分に入っています。

気を悪くしたらお許しを」

 

「いえ、こちらとしては匿っていただけるだけでありがたいですわ」

 

とりあえず、まるくおさまった・・・のか?

 

「では、特になければ作戦会議を終了します。

私は件の友人にこちらに来てもらうよう連絡を取りますので、皆さんは部屋でゆっくりしていてくださいね。

 

それとモンド君、今朝冒険者ギルドにいってきて、店の手伝いという名目でメアリー様の護衛を依頼してきたわ。夕方5時頃に来るらしいから、来たら入れてあげて頂戴ね。合言葉は「森の妖精」よ」

 

宜しくね〜と言ってサチさんは二階へ上がっていった。

 

1階に取り残される二人。静まる部屋。

 

…めっちゃ気まずいぃ!

 

「え、えと、俺は夕ご飯の準備しますね!メアリー様は部屋でゆっくり休んでください!」

 

「ええ、そうさせて頂くわ。…ちょっといいかしら」

 

メアリー様が呆然と階段の方をみて呟いた。

 

「サチさんって何者なのかしら…」

 

「いやー、俺もよくわかんねっす」

 

これもうわかんねぇな(錯乱)

 

****************************************

 

「おーいきたぞ!あけろ!」

 

「ちょっとベリィ合言葉は?」

 

「本当あなたバカね〜」

 

げ、この声は…こいつ等が護衛かぁ。

 

ため息を付きながら「合言葉は?」とドア越しに言うと

 

「料理バカ」

 

「クソザコ」

 

「童貞野郎」

 

くっそ…こいつら…!

 

イライラしながらドアを開けると、そこにはノーム(小人族)、オーガ(狂人族)、サキュバス(淫魔族)の3人がニヤけ顔で立っていた。

 

「あれ、開けちゃっていいんですか?合言葉違いますよね?」

 

そう言うのはノームのケルプ。

こいつは「頭の回転が早い守銭奴バカ」だ。スイーツに目がない。

 

「別にいつも来てるからいんじゃね?」

 

ガハハと豪快に笑うのはオーガのベリィ。

こいつは「腕っぷしだけの脳筋バカ」だ。とにかく何でもアホみたいに食う。

 

「そうよ、しかも貸し切り状態じゃない!最高だわ」

テンションアゲアゲのサキュバスのスィ。

こいつは「やることなすこと全部エロいバカ」だ。

ただの呑兵衛だ。

 

この三馬鹿トリオは、うちの常連の中でもどうしようもないイカれた連中だ。

正直対応が面倒くさいのだか、噂によるとそこそこ名の通った冒険者らしく、コイツらが店で飲み食いしているとガラの悪い連中が寄り付かないというメリットがある。

まぁ三人とも俺の料理をうまそうに食ってくれるのでそこだけは認める。そこだけだ。  

 

俺の帰ってくれオーラを全く気にせず3人はズカズカ店内に入ってくる。

 

「で、モンド氏。我らが女神のサチ姐さんの姿が見えませんが。」

「そうだぜ!サチ姐さんがどうしてもって言うから来たのに」

「サチ姐さんいないなら帰るわよ」

 

相変わらずこいつら二言目にはサチさんだな。

というかお前ら依頼受けて来たんだろ、忘れんなよ。

 

「サチさんは人と連絡をとってるから部屋に籠もってる。もう終わる頃だと思う。

それより護衛の依頼に来たんだろ?護衛する人に会ってもらうからちょっと来てくれよ」

 

そういって階段に向かって先導する。俺の後ろで聞こえるどーでもいい話を聞き流しつつメアリー様の部屋の前まで連れてきた。

 

「いいかお前ら、ギルドから聞いてるとは思うけど、これから会う人はあんたらが普段会えないような高貴な方だから、くれぐれも粗相のないように。」

 

「分かってるわよ童貞野郎、ごちゃごちゃ言ってると搾り取るわよ〜」

 

スィてめぇ…どどど童貞ちゃうわ!

あ、童貞だわ俺。泣きたい。

 

「うるせぇ!とにかく粗相の無いように!」

 

小さい声で怒りながらドアをノックする。

 

「メアリー様、護衛の者が到着しましたのでご紹介に参りました」

 

「どうぞお入りになって」

 

メアリー様に促されるままドアを開け3人を部屋に入れる。

 

メアリー様が机からスッと立ち上がり、こちらに振り返る。

 

相変わらずオーラパネェ…!

 

「ほう」「おっ」「あら」とメアリー様をみた3人が声を漏らす。

 

「初めまして護衛の方々、私はメアリー・レッドスナッパーと申します。これから宜しくお願いしますわ」

 

メアリー様が自己紹介すると、3人が一歩前に出た。

 

「初めましてメアリー様。私達はサチ様の依頼で貴方様の護衛を任されました。私はノームのケルプと申します。」

 

「俺はベリィだ。オーガだぜ!」

 

「私はサキュバスのスィです〜」

 

「これから私達で24時間、3交代で貴方様の護衛のを勤めますので宜しくお願いします。」

 

全然緊張感の無い3人がメアリー様に挨拶する。

お前らこのオーラ気づかないの?バカなの?

あ、バカだったわ。

 

「メアリー様、早速で恐縮ですが少し魔術を拝見させてもらえます?」

 

ケルプがメガネをクイッと上げてそう告げた。

 

「構いませんが、何故です?」

 

「私達3人は、『風』の魔術系統ですので、炎術のメアリー様と相性が良いです。

万が一の際に私達と共闘して頂く時の為の事前準備と思ってもらって構いません。」

 

そういえば炎は風と土と相性がよくて、水、氷とは相性が悪いんだっけか。魔術が使えない俺でもそれくらいは聞いたことがある。

 

「あなた、私が炎術系統とよくご存知ね」

 

「情報収集に抜かりはありませんので」

 

ケルプはそういってドヤ顔でメガネをまた上げる。

 

ついこの間アイスクリーム食べすぎて腹壊してた奴がどの口で言ってるんですかね…

 

「では、火矢(ファイヤボルト)でよろしくて?」

 

「はい、こちらの的にお願いします」

 

そういってケルプはどこからか出してきた丸い的をドアの前に置く。

 

メアリー様は少し離れて手をまっすぐ上げ、手のひらを前に構えた。

 

「火矢!」

 

メアリー様が魔術を唱えると、彼女の手から矢状の炎がボウッ!と勢いよく放たれ、的をいとも簡単に破壊した。やっぱり魔術ってスゲー!

 

3人と俺は「おおっ」と声をあげ、パチパチと拍手する。

 

「さすがメアリー様〜、火矢でこの威力は上級冒険者でもなかなかいないですよぉ」

 

「だな!メアリー様冒険者やらね?楽しいぜ!」

 

スィとベリィがメアリー様を褒める。いや、ベリィは褒めてないな。こいつ何も考えてないわ。

 

「そう?ありがとう。残念だけど冒険者は遠慮しておくわ」

 

メアリー様はお世辞と受け取ったらしく、あまり感情を出さずにそう言った。

 

そんな事をしていると、ドアの向こうから階段を上がる音が聞こえた。

 

「「「!!!」」」

 

3人に緊張が走る。この店の主が帰ってきたからだ。

 

「3人とも無事に来たわね?」

 

サチさんが開けられたドアから体を出すと、3人がサチさんに駆け寄りビシッと直立になる。

 

「はい!サチ姐さんのためならたとえ火の中水の中!」

 

「誠心誠意!」

 

「御奉仕させて頂きます!」

 

さっきと対応が全然違うんですがそれは…(呆れ)

 

「もう、そういうのやめてっていつもいってるでしょ?」

 

サチさんの困った顔、相変わらず女神すぎる…!

 

三馬鹿も顔がだらしなくフニャアってなってるところを見ると同じこと考えてるな。

 

「そうだ、そろそろ夕飯時だし、せっかくだから皆で夕飯にしましょう?」

 

サチさんがそういうと三馬鹿が「「「ぜひ!」」」と完璧にシンクロして返事をした。

 

「モンド君、悪いけど晩ごはんの準備お願いできるかしら?私はちょっと三人とメアリー様とで話すことがあるから」

 

「はい、了解しました。できたらお呼びしますね」

 

そういって俺が部屋を出ようとする時、ケルプに呼び止められた。

 

「モンド氏、ちなみに今日の夕ご飯のメニューは?」

 

「今日は鶏の唐揚げを作りますよ」

 

それを聞くやケルプがニヤリと笑い、ベリィがうぉぉぉ!と狂喜し、スィは「ビール…いやハイボール…」と唐揚げに合う酒を呟いた。

 

 

お前らの為に作るわけじゃねぇから!

 

 

*****************************************

 

 

モンドが1階に降りていったのを確認したサチは、ケルプ達の方に向き直った。

 

「さて、改めて護衛受けてくれてありがとね、三人とも。」

 

サチがそういうとケルプが慌てて返事をする。

 

「い、いえ!サチ姐さんのご依頼ですから、他の依頼があっても全部断って来ますよ!」

「そうっスよ!我らサチ姐さんの親衛隊やらしてもらってるんスから!」

「こんな回りくどい方法しなくても、直接私達に言ってもらえればよかったのに…」

 

「いいえ、今回ギルドを通して依頼したのにはきちんと理由があるからよ。

…メアリー様、大変申し訳ありませんが、この子達にメアリー様がここに来た理由をもう一度話して頂けませんか?

この子達は絶対に秘密を守る子達です。私が保証します。」

 

そういうとサチはメアリーに深々と頭を下げる。それは自分がどれだけ不敬なことを言っているかわかっているからこそであった。

 

 

「ええ、構いませんわ。私の為に体を張って守って頂くのですから」

 

そういうとメアリーはサチとモンドに話した顛末を3人に改めて説明した。

 

話を聞き終わると、3人の顔つきが変わったことにメアリーは気づいた。明らかに怒気を孕んでいたのだ。

 

「モーレイ国…クソの掃き溜めが」

 

「メアリー様をカス野郎の国になんて行かせねぇ…!」

 

「えぇ、サチ姐さんが私達に直接依頼しなかった理由がよくわかりました。

…私達が暴走しないためですね?」

 

スィとベリィは明らかに呼吸が早くなりイライラしていた。ケルプは口調こそ穏やかだか、明らかに手が震えている。

 

「ええそうよ。

…メアリー様、この子達は幼少期にモーレイ国に連れ去られ、数々の拷問と生体実験を受けたのです。

命を落とすギリギリの所で私が助けましたが、未だに彼女たちは後遺症に苦しめられています。」

 

そういって彼女たちの頭を優しく撫でるサチ。

 

「ケルプは音のない暗い空間、ベリィは水の中、そしてスィは男性に対して極度の恐怖症を発症してしまいます。どれも彼女たちの種族の得意分野を殺すものです」

 

彼女たちが発症する条件は、どれもそれぞれの種族が得意とする環境や人物。

スィはモンドに対して平静を装っているが、常に一定の距離をとるかケルプかベリィを挟まないと近寄ることすら出来ないのである。

勿論モンドはそんなこと知る由もないのだが…。

 

「メアリー様、私はこの子達に立派な大人になってもらいたいんです。

…あなた達は冒険者ランクも上級。

他の冒険者達の手本になるような、責任ある行動を取るべきポジションです。

そろそろ人を護るとはどういうことか、しっかりと身につけて欲しくて依頼したのです」

 

メアリーはサチの三人娘に向けられた慈愛の表情に目が離せない。

 

「メアリー様の護衛任務を、この子達の成長の為に利用してしまう形になってしまうことをお許し下さい。

この子達の技術はこの街のどの冒険者よりも優れていると私が保証します」

 

そういってサチはメアリーに改めて頭を下げた。三人娘も、サチに習いメアリーに頭を下げる。

 

「皆さん頭を上げてくださいまし」

 

メアリーは皆に一歩近づく。

 

「レッドスナッパー家に伝わる家訓があります。

『百の口伝より一の本、百の本より一の経験』。

私はこの家訓が好きで、辛いときは必ず思い出して自身を奮い立たせました。

私が皆さんのお役に立てるのなら、喜んでその役を引き受けましょう。

どうか私が死なないよう、何卒宜しく頼みますわ」

 

メアリーはそういって微笑んで右手を伸ばす。サチと三人娘も笑って手を伸ばし4人で手を握りあった。

 

 

*********************************************

 

 

夕食会場は混沌を極めていた。

 

「モンドおかわりまだかー!お前の作る唐揚げがうますぎてもう皿が空いたぞどうしてくれる!」

 

ベリィてめぇ食うの早すぎなんですけど?!!

 

「相変わらずベリィは下品ですね。いいですか、今日の唐揚げはいつもよりやや油分が多いですから、レモン汁3滴をたらし、大根おろしをちょこんとのせて一気に頬張ることでそのこってりさとレモンとおろしの爽やかさとのハーモニーを」

 

「あーもうめんどくせーな!」

 

うん、それは俺も思った。ケルプは冷めないうちに食え。

 

「ん"ぁぁぁぉ!ハイボールに唐揚げ合いすぎるぅ"ぅうぅん"、サチ姐さんおかわりください!」

 

「はいはい、飲みすぎないでね!」

 

スィお前サチさんに酒持ってこさせるとかマジでギルティでしょ。サチさんは俺の隣でニコニコしてくれる係なの!!

 

 

「その、何というか…賑やかね…」

 

 

メアリー様ごめんなさいね!うちの居酒屋いつもこんな感じです…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




書いていくうちにどんサチさんが強キャラになっていくんですがそれは大丈夫なんですかね…(小声)
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