シヅクside
キリトと別れて十数日過ぎ、今いる村にも他の人が増えてきた
ちょっと無理をしたのもあるかもしれないけど、レベルはまだトップクラスだと思う
必要なものを買い揃えて次に進む算段を考えはじめた
今の武器はレアドロップした両手斧
命中は少し心もとないけど、その分の火力は確実
この辺りのモンスターは1確で狩れる
「なぁお嬢ちゃん」
「はい?」
「見たところオレらよりはやくこの村にいるんだろ?」
なんだろ……面倒そうな人達
「多分そうかな
だってあなた達は今ここに来たんでしょ?
ならあたしの方が数秒~数日にかけてはやいだろうね」
「言い方にトゲがある感じだが、まぁ今はそんなことどうでもいいな
お前が良ければウチのパーティに来ないか?
βテスターもいるからマイナスな点はないと思うが」
βテスターが一緒なのにあたしの到着より大分遅れてきてるねぇ……
「残念ながらお断りさせて貰うよ
あたしは行けるところまではソロでいってみたいんだ
そのテスターさんがいたら伝えておいてよ
あたしが欲しければあたしよりも強くなれって」
アイテムストレージを閉じて返事を聞かずにその場を去った
ちなみに何かを言っていた様子だったけどあたしの耳にはもう届いてない
次の街までどれくらいかかったかを思い出しつつ昼過ぎに村を出た
道中のモンスターも問題なく狩れる、これなら日が沈む前に辿り着けるかな
そう思っていたのに到着した頃にはもう月明かり位しか道を示す光が無いくらいだった
内心かなりドキドキした!!武器はあってもまともな防具がないし、こんな所でモンスターに囲まれたらタゲを取り切れず絶対にボッコボコだった!!!
宿を探している途中またキリトに出会った
「今回は随分とのんびり前の村にいたんじゃないか?」
「欲しい装備があったからねぇ
ほらこの両手斧すごくない?」
武器を見せるとMMOプレイヤー独特の目の光らせ方をした
「マジか!!こんな性能の武器をあんな序盤でドロすんのかよ!!」
「テストの時に色々と調べ回ったからねっ★」
「もし良ければ少し情報交換しないか?」
「あたしの方が渡せる情報量多いと思うけど?」
「オレだってβテスターの1人だぜ?
シヅクの知らない情報も少なからず……」
「ん?」
「有力な情報ならこれもやるよ」
キリトは何か書かれた紙を取り出した
初めて見るアイテムで興味はあるのにすぐしまわれてしまった
「もう少し見せてくれてもいいじゃん!」
「ダメだね、一応この街に最初に到着したプレイヤーへのボーナスみたいなもんだし」
「気になるものをほっとけない性格だし
いいよ、情報交換しようか
どこかいい感じの場所……というよりこの街にいるプレイヤーはあたしとキリトだけか」
「一応人目につかなさそうな場所にするか、案内するよ」
案内された場所は酒場風のところ
「行き慣れてるねぇ」
「どんなゲームでも酒場っていうのは情報があるもんなんだよ、今のうちに雰囲気に慣れとかないとな」
「一理ある」
その後飲み物を飲み交わしながらボスについて話し続け
その後にはソードアート・オンラインには関係の無いほかのゲームの話でも盛り上がり
気が付く頃にはもう朝日が出始めていた
「久しぶりに廃ゲーマーとこんなに話したな」
「あたしも誰かと久しぶりにこんなに楽しい会話をしたよ
それじゃあたしはもう眠たいし宿に行くね」
「シヅク!」
振り向くとキリトは最初に見せつけられた紙を投げ渡してきた
「良いの?」
「情報量だけならシヅクの方が圧倒的だったろ
これで貸し借りはなしってことで」
「それじゃありがたく貰うことにするよ」
キリトと別れて宿まで向かいベッドの上で先程渡された紙を再度アイテムストレージから取り出した
「ステータス不足で何が書かれてるかが分かんないな」
アイテムをしまってその後は本当にぐっすりと眠った
またプレイヤーが多くなる頃には別の町へと繰り返しているうちに1ヶ月近く経った
この頃には最前線で戦うグループも既に出来ていて
更には最前線のうちの1グループが攻略会議を開くということを情報屋から仕入れることが出来た
死んだら終わりのデスゲームで既に数千という犠牲が出ているにもかかわらず
あたしのようにゲームを楽しんでいるプレイヤーがどれ程居るのか気になる
攻略会議が開かれる街の広場に時間ギリギリで滑り込み、適当なところに腰を下ろした
暫くすると数人のプレイヤーがあたし達集まったプレイヤーの真ん中に立った
そしてその中のリーダー格であろうディアベルと名乗る男は話慣れているのか冗談を混じえつつもこう言った
「オレ達パーティは迷宮区でボス部屋の扉を見つけた」
その一言で周囲は静まりかえるなか、ディアベルは話を続けた
「ここまで来るのに1ヶ月もかかったが、このデスゲームをいつかきっとクリア出来るということをみんなに伝えるんだ!
それが今この場に集まってくれているトッププレイヤーの義務だと思う!!」
静まっていたことから一転した
『トッププレイヤー』という言葉
これは他のプレイヤーより自分の方が優れていると錯覚させ奮い出させるには十分な一言だった
まったくもってバカらしい
こういう人達は現実を突きつけられた時一気に絶望する
ゲームは楽しむのが1番なんだよ
そんなことを思いつつ下らなく感じて会議から抜けようと思った瞬間、歓声の中から別の声が響いた
「ちょお、待ってんか、ディアベルはん」
黄色い頭をしたおっさんがディアベルの前まで降りてきた
「仲間ごっこする前にこれだけは言わせてもらわんと気がすまんのや」
「それは構わないがあなたは?」
「わいはキバオウってもんや
んで……」
キバオウは息を大きく吸い込み勢いよく声に変えた
「この中に卑怯者のβテスターが居るはずや!!
正直に名乗りでい!!」
「この1ヶ月の間になにもかも独り占めしたせいで死んでいったプレイヤーに詫び入れぇや!!
そんでズルして稼いだ金やアイテムを差し出せ!!」
会場はザワついたもののβテスターと名乗り出る人などいない、当然面倒事の嫌いなあたしも黙秘でお口チャック
「この中にも5人や10人いるんやろ!!」
まだ中央で騒いでいる中、スキンヘッドの男が手を挙げた
「発言いいか?俺の名はエギルだ」
「な、なんや」
「キバオウさんが言いたいのは
βテスターが面倒を見なかったからビギナーがたくさん死んだ
それを認めて謝罪しろということでいいか?」
「そうや!!このクソゲーが始まって右も左もわからんビギナーを見捨ててβテスター達はとっとと先へ先へと進み、美味いクエストも狩場も全部奪っていきよった!!」
「確かにソードアート・オンラインのシステムが提供するリソースは多くないが」
エギルは情報屋が作ったガイドブックを取り出した
「βテスターは先に進み情報を公開した
みんなも世話になっただろ?」
周囲も確かに役に立ったと頷く人が多くいる
さらに勝負を決め込むようにエギルは話し続けた
「情報はあったんだ
オレ達ビギナーにとってこれ以上にない武器がな
確かにたくさんのプレイヤーは死んだ
だがそれは今までやってきたMMOと同じだと履き違えて退くべきポイントを逃したからだ
現にここにいる俺達はこのガイドブックに従ってまだ生きている」
勝負がついたと見兼ねたディアベルも話に入った
「キバオウさんの言いたいことも分かるけど
今は前を向くべきなんだ、βテスターの情報のお陰で一層のボスの情報も入っている
何よりも頼もしいものだと思おうじゃないか」
「ま、まぁディアベルはんがそう言うなら……」
「俺も急に話に入ってきてすまなかった」
「それじゃ話を戻させて貰おうか
まずは実務の話をしよう
まずはパーティの構成からだ、今から自由にパーティを組んで欲しい」
うわぁぁ、これ先生が好きな人同士でペアになってくださいって言うやつじゃん
精神的ダメージ凄すぎるよディアベル
もうあたしのライフポイントはゼロよ
周りを見ても知り合い同士で組んでいるのがよく分かるなか、見覚えのある後ろ姿発見
フードを被った女性プレイヤーに話しかけている最中の彼に突撃
「キリトも来ていたんだ、にしてもパーティメンバーが見つからないからってナンパするなんて流石ですねぇぇ」
「シヅク!?」
「はーい、シヅクちゃんでした
あぶれ者のパーティはこちらですか?」
「なんだよその言い方……」
「まぁまぁ、フードの彼女♪あたしもご一緒していいかな?」
「勝手にすればいいじゃない
あたしはあなたと仲良くするつもりは無いから
こんなデスゲームはやくクリアしたいだけ」
「んん~~★トゲのある言葉頂きました~~
ただ口には気を付けなよ、キミよりあたしの方が10倍強い」
「へぇ、試してみる?」
「待てって!!」
あたしとフードの彼女の間にキリトは立った
「これからボスなんだからチームワークを崩すようなことは無しで!」
「まぁあたしは足を引っ張られなきゃどうでもいいかな」
内輪揉めのように思っていたのに、周囲の人達からは何だかんだで視線を集めていた
理由は簡単
男女の割合は男性の方が多いのに、キリトは両手に花状態
そりゃ注目も集まるわけだ
「女性2人を護るナイトとは、かっこいいね」
「は、はぁ……」
「3人パーティなら君たちにはボスの取り巻きのコボルトを専門でサポートして欲しい」
ディアベルはキリトに頭を下げてキリトも了承する様子でいた、だけどあたしは嫌だった
「気に入らないね」
「へ?」
「あたしはこう見えてタンク役も出来るし、彼は攻撃専門と言っても過言じゃない
後ろのあの子は論外だとしてもあたしらならフルレイド組まなくてもボスを叩ける」
「なるほど…」
ディアベルは何かに納得したかのように少し笑みを浮かべた
「す、すみません、オレらは取り巻き専門のサポーターで構いませんから
なんせ最初のボスなんでどんなもんなのか雰囲気を味わうだけで十分ですよ」
キリトに口を押さえつけられて言いたいことも言いきれずに話はまとめられた
「この後に合同練習をしようと思う
参加したい人は残ってくれ」
「興味無いね」
「あたしも同感、戦力外ならそうだって言えばいいのよ」
集合時間だけ確認してあたしは先に宿へと戻った
あとから聞いた話だとフードの彼女とキリトは同じ方向に向かったとかどうとか
まぁあの子パーティとか知らなさそうだし
キリトがレクチャーしてくれるなら問題ないでしょう
装備を手入れして、そのまま眠りについた