攻略当日あたしは見事に寝坊した
起きた時にはキリトからのメッセージが沢山きてた
マップデータを送って貰い駆け足で攻略組を追いかけてボス部屋前でやっと合流した
「お待たせっ★」
「お?合同練習にも参加せぇへんヤツが、今度は重役出勤かいな
ええのぉ、取り巻き専門のサポーターは楽で」
「いやいやごめんって
昨日はキリトが激しくって中々寝かしてくれなかったんだよ」
「「はぁ!?」」
「最っっ低」
「ま、待て!オレはそんな事してないぞ!」
「優しくするって言ったのに……あんなに………」
「ゴホン!!」
ディアベルの咳払いで会話は途切れた
「さて、みんな揃ったところで良いかな?」
「はーい」
「それじゃ最後の確認だ……」
ボス……イルファング・ザ・コボルドロードについてディアベルから確認の話を再度聞いた
報酬については、経験値はモンスターを倒したパーティに配られる、ただしお金は均等に割る
アイテムはドロした人のものになる
異論しかない
ラストアタックボーナスを得られる権利があたしのパテに無い上に経験値すら貰えない
ま、ラストアタックボーナスは横取りしよーっと
「1つ質問いいか?」
「どうぞ」
「βテストと違うと判断した時、撤退の指示はリーダーであるディアベルから出るということでいいのか?」
「あぁ、人命が最優先だが……事前のシュミレーションは完璧だ
誰も死ぬことなんてないさ」
「相手にする必要あらへん
こいつらディアベルはんの指揮ぶりを知らんからそんな悠長なこと言えんのや」
「心配してくれているのはありがたい
でも言った通り事前準備は完璧だ、そして今ここにいるのも完璧なメンバーだ
1人も欠けることなくみんなで勝とうぜ」
大きな歓声のあとボスへの扉が開かれた
ボスの見た目、初期武器はβテストの時と同じ
みんなが一斉に突撃する中入口付近で腰を下ろした
「生意気に遅刻した上に今度はサボりかいな」
「あたしらは取り巻き専門のサポーターなんでしょ?
ならサポートが必要なタイミングであたしは動くよ」
「へっ!ならずっとそこで見てることになる
ディアベルはんならこのボスを攻略して、いつか大きなギルドを作ってみんなに希望を与えてくれるんや」
「素晴らしい夢物語ですねー」
見ているとディアベルの指示力は中々に優れてる
Potローテも各グループ問題もなさそう
キリトの方を見ても取り巻きのコボルトなんて問題なく狩れている
「本当に出番なく終わりそうだねぇぇ
あたしもそろそろ動かないとラストアタックボーナスだけじゃなくって経験値まで取りこぼしそうだよ」
ボスのHPがラスト1本になる手前に立ち上がり武器を取り出した
「キリト、スイッチ」
沈められなかったコボルトを一撃で粉砕してみせた
「思いっきり攻撃型じゃねぇか」
「フェンサーさんももっと効率よく動かないとキリトに負担がかかるよ」
「わ、わかってるわよ!」
無駄口叩いているうちにコボルドロードは初期武器を手放した
「副武装のタルワールが来る!!
だが基本は同じだ!!次で決める!!!」
背中にひんやりとした何かを感じ突っ込む予定だった足が止まった
一瞬見えた、タルワールでは無いもっと鋭い何か別の……
キリトの叫び声が聞こえたが、コボルトロードが薙ぎ払った攻撃で前衛の殆どが吹き飛ばされ
あたしはギリギリ当たらなかった距離にいたとはいえ、味わったことの無い高揚感が溢れた
コボルトロードの攻撃には更にスタン効果まであり、コボルトロードは追撃を仕掛けてきた
「シヅク!!」
直撃した訳じゃない、間に合う……動く…
ギリギリでボスの武器とあたしの斧がぶつかり合う
やっぱりβテストとは違う、これはカタナか
直接の競り合いに勝つことは出来なかったものの、直撃はしなかったおかげか、吹き飛ばされてもHP半分以上残していた
「バカヤロー!!」
急いで駆け付けたキリトに回復薬を飲まされた
「そんな焦るほどじゃないよ
にしてもカタナとはねぇ、初見殺しとは面白いよ」
前衛組もなんとか立て直しディアベルは再び指示を出し始めた時、キリトはまた叫んだ
「やめろディアベル!!今は防御に専念するんだ!!!」
キリトの出した指示には誰も従うはずもなくディアベルは既にスキルモーションに入っている
しかしそれよりも速くボスの攻撃はディアベル達に向けられ見事に命中した
空中に切り上げられたディアベルはあたしと同様にスタン状態なのだろう、首すら動かさない
「ディアベルはん!」
追撃のスキルモーションが見えた瞬間にボスの武器を叩いてスキルをキャンセルさせた
「あなたはここで死ぬには惜しすぎるよ」
スキルキャンセルは狙って簡単に出来ることじゃないとβ時にいわれていた
注目を集めたくないから多く集まるところじゃ狙わなかった
出来ないんじゃない、やらなかった
ボスを確認するとキリトもボスのソードスキルをキャンセルし続け、その間にフェンサーさんが攻撃を繰り返している
「き、君とあのキリトという少年は……」
「あぁ、動けるようになった?
あなたと同じβテスターだよ」
「はははっ…気付かれていたか」
「でもあたしもキリトもディアベルみたいに人をまとめる力なんてない
1度撤退命令出す?」
「いや、そしたら君たちにラストアタックボーナスとられてしまうだろ?」
「そりゃあたしの狙いは最初からそれだし
それじゃ動けるようならもう護らない、先に限界を迎えるのはあの二人だ」
エギルの率いるグループはキリト達の方へ応援に駆け、キバオウの率いるグループもディアベルが無事ということを確認できたのか、隊列を組み直してディアベルに指示を仰いだ
「お待たせキリト」
「ディアベルは!?」
「無事だよ」
「流石だよ全く」
交互にスキルをキャンセルし続けてHPが残りもう少しと狙えるくらいになったところで
キバオウ達のグループが周囲から一気に攻撃をしようと仕掛けた
「やめるんだ!!!」
ディアベルの言葉に止まることはない
「この功績はディアベルはんのもんや!!」
「範囲攻撃が来る!」
副武装に変わった最初にみせた攻撃
スキルキャンセルは間に合わない
後ろに退くか全力でガードするか……
そう迷っていた反面、キリトとフェンサーさんはボスを攻撃して範囲攻撃を途中で止めて見せた
「やるじゃん♪」
少し怯んだうちにもう一撃与えてミリ残し
「今回は譲るよ」
「ありがたく貰うことにする」
キリトの一撃でボスは結晶が砕けるように撃破された
経験値も一気に入り込み次の層へ進めるための扉も現れた
「よっしゃあああああ!!!勝ったああああ!!!」
最後のトドメを刺したキリトやフェンサーさんの周りには人が集まりみんな喜んでいる
ディアベルの言った通り1人も犠牲を出すことなくクリアすることが出来たのだ
それでいて率先してボスを攻撃していた2人が讃えられるのも分からなくはない
「おつかれさま、キリト、アスナ」
「おつかれ」
「?」
「どしたの?」
「なんであたしの名前を?」
「あぁ、この辺にプレイヤーネームは見えるんだよ
首を動かさずに視線だけずらしてごらん」
アスナが言われた通り見ようとしていると1人のプレイヤーが意見した
「なんでだよ!!
ここで讃えられるべきはこいつらじゃなくディアベルさんだろ!!」
その一言はキリトとアスナではなくキリトとあたしに向けて言われていた
「確かに最初からボスのスキルをディアベルはんに教えておれば
ディアベルはんが危険な目にあうこともなかったんやな」
「はぁ?
ボスの副武装はβテストの時とは違っていたんだよ?
それを今日初めて知ったのはあたしらβテスターも同じだ」
「お前らやっぱりβテスターだったんだな!」
「ラストアタックボーナスを狙うために隠していたんだ!!」
「ちょっと待てお前ら!!」
ディアベルが止めようとしても1度ついた火は留まることが無い
「情報屋もグルでオレ達を騙して最後に美味い思いをしようとしたんだな!!」
「βテスターは全員敵だ!!」
全員切り刻んでやろうかとまで考えていた途中キリトは笑いだした
「ハハハッ
βテスターが全員敵だって?
そう思うのはお前らの勝手だけどな
そんな素人共とオレやこいつを一緒にしないでもらおうか」
こいつって……と思った途端キリトに腕を引かれた
「オレやこいつはβテストの時誰よりも上に登ってる
だから誰よりも多くの情報も知ってるし、スキルキャンセルすら簡単に出来るんだ」
「なんだよそれ……チーターレベルじゃないか」
「βあがりのチーターなんて最悪だ」
「βのチーターでビーターだ!」
「《ビーター》か気に入った
ラストアタックボーナスと一緒にオレらが貰ってやる」
キリトはラストアタックボーナスの装備であろうものを装備して腕を引きながら次の扉へ向かった
「二層のアクティベートはオレらがしといてやるから
お前らは街に戻って大人しくしておくんだな」
腕を引かれながら二層への扉を潜り平原へと出た
「いつまで掴んでるのさ」
「すまない……」
「それは何に対しての謝罪?」
「ラストアタックボーナスまで貰ったのに腕を掴んで、巻き込んだこと……」
「ラストアタックボーナスを譲ったのはあたしの気まぐれだし良いけどさ
あたしまで巻き込む必要なかったじゃん」
「本当にごめん……」
「過ぎたことを後悔しても結果は変わらないからもういいけどさ
でっかい借り1つって事で手打ちしようか」
「そう言って貰えると助かるよ」
そんな話をしているうちに後ろからアスナとディアベルかこっちに向かってきた
「本心でもないのにあんな事をなんで言ったの?」
「あのままだとβテスター全員が悪になるからでしょ
それくらい理解しなよ」
「だからってあなた達が悪を背負う必要なんて……」
「なぁアスナ、人が頑張ろうってなるために必要なものってなんだと思う?」
「……凄く頼りになる人が近くにいることじゃないの?」
「いいや違う、必要なものは目に見える敵なんだ
オレが悪になるだけで指揮は間違いなく上がる
そうすれば自然と生存率も高くなる」
「あたしも誰かのせいで巻き込まれたけどね」
「なら……」
「アスナ、キミはダメだ
キミはいつか本気で信頼できる人が出来たらその人のギルドに入るといい
キミはそれでがんばれるのだから」
「そう…ね……」
納得しきってはいない顔をしているのに、これ以上なにも言うことはしなかった
「シヅク」
「なに?」
「オレの命はシヅクに救われた
だからオレはシヅクの剣になろう
用済みなら捨てても構わない
だから傍に置いて欲しい」
「プロポーズみたいだねぇ
いいよ、あたしなんかで良ければ着いてきても」
「ありがとう……」
扉の奥からこっそり覗いているキバオウとエギルと視線が合ってひょっこり出てきた
「わいはまだお前らを認めたわけじゃない!
自分のやり方でもっともっと強くなって
いつかディアベルはんを奪い返す!!!
それまで覚悟しとれ!!!」
「今回のボスはディアベルだけじゃ勝てなかったし
キリトやシヅクだけでも勝つことは出来なかった
ディアベルの言った通り本当に最高のメンバーだと思ったよ
希望を与えてくれてありがとう」
「オレは……」
「それじゃキリト、アクティベートはよろしく
あたしとディアベルは狩りをしてから街に行くことにするよ」
何か言いたそうだったけど言い出しにくそうだったディアベルを連れてみんなとは逆方向へ進んだ
「モンスターの知識とかは?」
「あるわけないでしょ?
初見っていうのはいつでも1番面白いんだ」