「おっひさ~~★」
「シヅクじゃねぇか」
同じ武器を使うだけに何だかんだで序盤は情報交換をしたエギルの店
「最近どうよ?儲かってる?」
「ぼちぼちってところだな」
そんなどうでもいいような話をしながら
カウンターの影になっている所を飛び越えて
隠れていたキリトを見つけ出した
「隠蔽スキルは結構上げてたはずなんだけどな」
「キリトの匂いがしたから」
キリトは黒いコートに鼻を近付けていたがよく分からない顔をしている
「で?そこがキリトの新しく入ったギルド?」
名前の横のマークを見ながらそう言うと、少し戸惑いながらも頷いた
「そんなよくわかんない所にいるよりあたしの所来れば良かったのに」
「シヅクのギルドは最近できたばかりだろ」
「まぁね♪」
こんな些細な話でも楽しいと思う
「エギルもどう?
あたしと同じ両手斧だしさ、情報は早い方だし
もっと良い武器や防具を店に並べられるよ」
「シヅクやキリトみたいに無謀なレベリングはゴメンだ」
「無理はしてないよ?」
「オレも無理をしているつもりはないな」
「前線で戦ってるヤツらが何言ってんだよ
ていうか、今日攻略なんじゃないのか?お前らこんな所にいて大丈夫か?」
「ディアベルがあたしの分まで頑張ってくれるよ
キリトは完全にサボりだよね」
「オレは今中堅ギルドにいるからな
攻略なんてするよりもギルドメンバーの育成の方が大事なんだよ」
「ものは言いようってところか」
その後もダラダラとエギルの店に居座った後でキリトと一緒に出た
「そういえばさ」
「ん?」
「あの紙活性化されたよ」
「マジで!?なんて書かれてたんだ?」
「前提しか書かれてないんだけど……」
紙を取り出してキリトに渡した
「……」
「まぁ言葉に出来ないよね」
「ディアベルには?」
「うん、見せたよ
でもPKする相手がオレンジだとしてもやっぱりダメだって」
「そう……だよな」
キリトから紙を返してもらい再び閉まった
少し前
ディアベルside
「ディアベルはんは今日どうして1人なんや?
あの小娘の姿が見えへんけど」
「シヅクのことか
彼女なら今日は休みだよ」
「なんやて!?ボス攻略やってのに休むとは
ディアベルはんもヘコヘコしとらんでたまにはガツンと言ってやってや」
「ハハハ、オレが何と言おうがシヅクは変わらないと思うな、一緒にいる時間が長いせいかあの子の性格はこのゲームの中で誰よりも分かってるはずだ」
「まぁワシも久しぶりにディアベルはんと組めるのは役得と考えさせてもらうわ」
「ありがとう
そう言ってもらえると少し楽になる」
話を終えてボス部屋へ突入した
シヅクから渡された前の層でのラストアタックボーナスである片手剣
『この剣なら40層くらいまではいけるんじゃない?』
と言われただけあってか、ボスへのダメージはしっかりと確認できるほどある
「これなら今回も犠牲を出さずに行けるぞ!!
ディアベルに続けぇ!!」
叫び声と共に全員で攻撃を繰り返し、ボスの取り巻きがリポップする前にボスのゲージも削りきる事が出来た
「っしゃーーーー!!」
なんとかギリギリラストアタックボーナスも取ることが出来たな
歓声の中でアイテムを確認し、キバオウ達と共に喜びを分かちあった
血盟騎士団の団長、あの人がスキルキャンセルしてくれたお陰でボスからの攻撃は最小限の被害で抑えられた
同じ片手剣に盾のはずなのに根本的に違う
レベルを上げるだけじゃ追いつけないような壁すら感じるな
見ていたのを気付かれたのか団長の方からオレの方へと歩み寄ってきた
「ディアベル君、今回のボスはキミの活躍があってこその勝利だ
キミがいなければもっと苦戦していただろう」
「いえ、オレは血盟騎士団のあなた達がサポートに回ってくれたお陰で難なく攻撃が出来ただけで」
「自分を卑下しなくても良い
今のキミは十分に強い」
「オレなんかシヅクと比べたらまだまだで…」
「シヅク……《ぴえろ》のマスターか
キミやシヅクちゃんが良ければ血盟騎士団に来ないか?
当然それなりの地位は与えよう
キミから提案してみてほしい」
ソードアート・オンライン現在のギルドの中でトップクラスのギルドからの誘いに辺りは騒然している
「とても喜ばしいことですが、お断りします
うちのお姫様は群れるのが嫌いなタイプなんですよ
そんなこと言ったらオレが大斧で両断されてしまいますね」
「孤独を好む人はいる……だが耐えられる人はそう居ないものだ
今回は諦める事にするが、移る気になったらすぐに連絡して欲しい
キミ達の席は用意しておくよ」
そう言って血盟騎士団は団長の後に続いて出ていった
「ディアベルはん血盟騎士団の団長に目ぇつけられるとは流石や」
「よしてくれよ、オレはシヅクから貰った剣でステの底上げをしているだけだ
オレ単体ならそこまで言うほど強くなんてない」
「またまたそんなご謙遜を
そや!久しぶりにあの小娘も居ないことやし
少し飯でも食いながら話しましょうや!美味いとこ見つけたんや
次の層へのアクティベートはいつも通り血盟騎士団がやってくれはるで」
シヅクに1度連絡を入れようかと迷ったが、少しくらいならと連絡を入れずにキバオウ達のパーティと下の層へ向かった
数時間後
「ワシはなぁー!!
そもそもあの小娘が気に入らんのやぁ!!
ディアベルはんを誰よりも理解しとるのはワシかとぉぉぉ
おえぇぇぇぇぇぇぇぇ」
ソードアート・オンラインの酒は酔わないというのに、キバオウは見事に出来上がっている
「キ、キバオウさん、ディアベルさんも引いてますって」
「うるへーー!
おまんらにワシの何が分かると………Zzzz」
「すみませんディアベルさん
久しぶりに会えたからって嬉しかったんだと思います
こんなんでも狩でもボス戦でも立派なリーダーやってるんですけど」
「いやいや、オレも久しぶりにオレでいられる時間だった、楽しかったよ
良ければ今度は飲まずに食事しようと伝えておいてくれ」
料金を支払って家のある層まで駆け足で向かった
「た、ただいま」
「遅いー!!」
「悪かったよ、少し懐かしい顔の連中と話してるうちに盛り上がってしまってね」
「なら連絡くらいしてよね」
ぷりぷりと怒ってるこういう姿は年相応な感じがして、少しだけほっとした
「何笑ってるの?」
「笑っていました?」
「うん
ま、深くは聞かないよ
それで?今回のボスはどうだったの?」
「血盟騎士団の主に団長の力が強かったせいか
想像以上に簡単に終わりました」
アイテムストレージからボスのドロップ品である《オトギリソウ》を取り出して机の上に乗せた
「大鎌?見たことない武器だねぇ」
「何かの派生スキルだと思うのですが、オレには装備することが出来なかったもので」
シヅクは《オトギリソウ》を片手で持ち上げて、普段の両手斧を使うかの如く軽々と振り回した
「あ、システムメッセージだ」
シヅクがそう言ってアイテムストレージから何かを探している
「何かあったのですか?」
あの紙を取り出したシヅクはそれを机の上に広げた
「なるほどね、あの紙の中身が活性化されたって訳か」
読めなかったはずの内容が読めるようになっている
『PKする、という下にボスのラストアタックボーナスから取れる《オトギリソウ》を入手する
ユニークスキルクエスト《死神討伐》』
「この武器を入手した事でクエストが発生したという事だね
中々にいいタイミングで武器を持ってきてくれたよ」
「ですが《死神》は夜限定でHP30%以下でないと湧かない上に、被ダメが結構多いしまともなドロもしない糞モンスターですよね」
「あたしは負けないよ?」
「もう少しレベルが上がってからでも……」
シヅクの新しいものを試したいというキラキラした目は絶対に止まらない事など分かりきっていた
「分かりました
ですがオレも行きますから
万が一の事があってからじゃ遅いんです」
その日のうちに《死神》の湧くフィールドまで移動しオレは上手くモンスターからダメージを受け続け30%以下まで下げることが出来た
シヅクは面倒になったのか自分の身体を自分で傷付けて体力を削っている
「準備おっけぇぇぇい」
2人のHPが30%切ったところですぐに《死神》は湧いて出たのはいいものの
数秒でシヅクに殺されていった
「おわりー、しっかり回復はしといてね」
「噂以上に呆気なかったですね」
「あーー……うん、とりあえず戻ろっか
システムメッセージうるさくて」
オレには聞こえないけどあの『紙』を持つシヅクには何か聞こえているのだろう
家に到着してシヅクは自分のステータスを見せつけてきた
「あたしのソードスキルの欄に《サイズ》が追加されましたー★」
「おめでとうございます」
「ディアベルも同じのとっとく?」
返事を待たずに紙を投げ渡してきた瞬間に
その紙は結晶となって砕け散った
「はえ?」
「おそらくですが、特定条件を満たした1人にしか効果がないのでしょう
《オトギリソウ》はシヅク、あなたが使って下さい」
「んー、それはディアベルがとってきたラストアタックボーナスでしょ?」
「オレはこの防具も武器も全部シヅクから貰ってるのに何も返せていないんですよ
たまにはオレから何か渡させてほしい」
《オトギリソウ》の所有権をシヅクに移した
「それじゃお言葉に甘えさせてもらうよ
さてさて、ユニークスキルということだし
熟練度が低いのにステータスはまぁまぁの数値はあるけど
まだ実用するには早いかもしれないから
しばらくは斧も使おうかな」
「それが良いかと……
あ、そう言えば忘れていましたが
血盟騎士団の団長からうちのギルドに来ないかとお誘いがありました」
「はぁ?」
んーー、やっぱり凄く嫌な顔しますね
「大丈夫です、しっかりと断っておきましたから」
「なら良かった……のかな?
ディアベルはあたしと一緒でいいの?
安全で確実に攻略するなら、ここよりも血盟騎士団のほうが良いと思うけど」
「MMOは光の当たるヒーローよりダークヒーローの方が憧れるんですよ、男って生き物は特に」
「あたしが悪みたいな言い方じゃん」
「キリト君とシヅクは一般プレイヤーからしてみると
血盟騎士団の正義!!っていうイメージより悪のイメージの方が強いと思いますけど」
「どう思われようが気にはしないけどね」
ぐぅ~~
「そえばご飯まだだった
ディアベルごはんー」
「はいはい、すぐに準備します」
新しいスキルを手に入れたからといってすぐに変わることはない
シヅクは気付いていないかもしれないけど、シヅクにも人を惹きつける力がある
《ぴえろ》もあと5層くらい登れば全プレイヤーに周知されるだろう
ギルドメンバーを増やして、しっかりとギルドホームも買って
他のギルドを吸収出来れば血盟騎士団と並ぶことすら可能な気もする
「ごーはーーんーーーー」
「もう少しだけ待っていてください」
まぁ、シヅクが群れたり馴れ合ったりすることはないだろうけど
そんなifがあっても面白そうだと思う