けもののきろく(第2版)   作:大きさの概念

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あらすじ:フレンズ無双。アードウルフ無事。フレンズって……あ、あなたたち一体何なの~っ????
  目標:フレンズたちと話し、自分の置かれた状況を確認する。

 現在地:さばんなちほー西部/半乾燥地域/疎林・灌木地帯
 時間帯:昼

 同行者:カラカル/キリン/アードウルフ/スプリングボック

 ヒント:かつて七つあった「すばる」(プレアデス星団の別名)の星のひとつが、空の上から落ちてきて、それが「ほしずな」つまりサンドスターの由来である――という伝説が、現地の古い文献に散見される。サンドスター隕石起源説だ。ジャパリパークの某神社では、この「サンドスター隕鉄」で作られた(と社伝に伝えられる)「流星刀」や「流星銃」がご神体として祀られているそうだ。


第4話 星は天にいまし、すべて世はこともなし

 私はフレンズ達()()()()について考えを巡らせるが……それよりも、無事に助かったアードウルフ*1のまぶしい笑顔に惹かれた。

 

「わーい! アードウルフ、げんきげんき!」

「スプリングボック! ……うぅ……うわあぁーん!! 死んじゃう゛がど思っだぁー!!」

「う゛え゛え゛ぇーっん!! 助がってよかったよぅ!!」

 スプリングボックとアードウルフは抱き合って、雨季の雷雨のごとく泣き出し始めた。

 

「アードウルフさん……私からも……助かってくれて、ありがとう!」

 私も感謝の言葉を伝えた。

 

「あ、ハイ! ……あの、ええっと、どなたかは知りませんが……助けてくれて、わたしのほうこそ、ありがとうです!」

 

「あっ! あれぇ~? もしかして、アンタも()()()()()()()()の?」

 カラカルが()()()()()()()話に割り込んできた。

「な、泣いてなんかないです!」

「うそ。泣いてるでしょ。なにしろ、ヒトは嘘つきだっていうからな~」などと言いながら、私の頬に手を当てる。

「こ、これは……サバンナの埃が目に入ったからですよっ! 涙ではない……むしろ汗っ!」

「またまた~、恥ずかしがっちゃって~」

 彼女はネコがあくびするように笑った。

 

「うももも……じけんかいけつゥ! これも私の『オドロキアミメ色ののうさいぼう*2のなせるわざ……。で、でも、ふたりとも、そんなに泣かないでよ……。私まで泣けてくるじゃない……う、うもおおぉぉー!!」

 キリンもものすごい勢いで泣き始めた。

 

「いやー、みんなホント、涙もろいわね~!」

 そういうカラカルも、尻尾がピーンと元気に立ち上がっている。

 

 

 

「アードウルフ、アンタを助けたこの泣き虫の子はねぇ、ハナコっていうのよ」

「どうもはじめまして、ハナコです。よろしくお願いしますね、アードウルフさん」

「こちらこそはじめまして、ハナコさん。あの、ハナコさんは()()()()()()()()()()

 ま、またこの……ジャパリパーク特有の「ナゾの質問」か……。

 

 私がどう答えるべきか迷っていると、カラカルが助け舟を出してくれた。

「イヤ~、ハナコはなんの動物か、イマイチ分からないのよね~……」

「ま、まあそうですけど……」

 

「あの、カラカルさん……さっき、()()()()()()()()()()みたいな、変なことを言ってましたけど……あれはいったい……?」

 ずばり聞いてみる。

 

「ああ、つまりね、火山から噴き出る()()()()――『サンドスター』が、()()()()()()()()()()()に当たると『フレンズ』になるのよ。昨日の噴火のは、もうだいぶ落ち着いてきたみたいだけど……」

「な、何を……!? そんなバカな話が……! あるワケがない……」

 

「うたぐりぶかいのねぇ~……まあハナコ、アンタのばあいは()()()()()()()にサンドスターが当たったんじゃない? ヒトは絶滅したって言うし、()()()()()というやつよね。それで、フレンズになって()()()()()んでしょ」

「そ、それは、たとえ話じゃなくて、マジで言ってるの……!? あ、あるはずないよ!! そんな……非科学的な……!?」

 

「?? あるはずないって、何の話~?」

「ウム! やっぱりハナコが()()()()()()()()()()ということでしょ! ふっはっは、けっていてきしょうこ! とうとう()()を出して、はんこうをじきょ~したわねっ!」

 キリンも話に首を突っ込んできた。

 

 アードウルフとスプリングボックも、この混沌とした会話に加わってくる。

「えぇっ! ヒト、ってあの、かばんさんのことですよね?」

「いいえ……私のろんりてきな推理によると、ハナコはヤギよっ!」

「そうなのかなあ? ヒトってば確か、雑食けものでしょ? ヤギの子ってのは草食だから、わたしやキリンと瞳の形が違うのは変じゃないの?」

「きっと草食のヒトもいるのよ!」

 

 ……どういうことなのだ……?

 この人(フレンズ)たちは……いったい何を言っている?

 

 

 

 落ち着け、落ち着け、私……。

 アレコレ話すフレンズ達の発言を、まとめてみると……。

 

『ジャパリパーク特有の火山性物質「サンドスター」は、それに触れた動物をヒト型生物(ヒューマノイド)の「フレンズ」に変身させる……』

 

 んなバカな話あるか!

 昔のアメコミじゃないんだぞ! 放射線*3でスーパーパワーを身につけて、スパイダーマンや、ハルクや、ゴム人間や岩人間や透明人間のヒーロー*4になる、みたいな……突拍子も無い、絵空事だ! 

 

 しかも、生物が変質するのみならず、()()()()()()がフレンズになるという!

 それじゃまるで……サンドスターとは、フレンズ達の「神」ではないか……!?

 

 だが……彼女らと、そして私自身を、「動物が変身した人間」と考えると、単純明快*5……しかも今までのあらゆる不可解な現象に対しての納得いく説明となる……!

 

 今さっきの、私やアードウルフの……超鉱物サンドスターによるケガの回復力……。

 さらに先ほどの戦いでの、私を含むフレンズ達の……女の子どころか、人間にあるまじき身体能力……。

 私の理性と教養は、このサンドスター創造論*6を拒否するのだが……だがしかし、観察した結果を総合するとぉ~……??

 

「ウオォー!! 全然わからん!! なにもかもわからん!!」

 疑問の終焉、混乱の始まり。

 

「ウワーッ! ハナコ、アンタ……まさか頭にもキズを!?」

「イヤ、そうじゃない……! そうじゃないがぁ~!!」

 

 

 

 そして!

 

「どう、落ち着いた?」とカラカル。

「うん、ありがとうございます」

 

「じゃ、サンドスターとフレンズのこと、さっきの説明で分かった?」

「……神は天にいまし、すべて世はこともなし*7

「な、なにそれ~?」

 

「あなたは良き星のもとに生まれ、精と火と露により創られた*8

「ムム? なんじゃそりゃ? ホメてるの~?」

「まあ、そういうことです。ジャパリパークのことも、だいたい分かりました」

「ハナコは……話がまどろっこしいけものなのね~……」

 

 ……いや! にわかには信じられない!

 信じられないのだが……!

 

 だがともかく、今ここでは「フレンズ化」現象を受け入れよう。

 そう考えることで、余計な混乱がなくなることは()()()()だからだ――()()()()()()()はともかくとして。

 

 この未知のジャパリパークには、セルリアン*9などという怪物もいることだし……「余計なこと」は考えて消耗するのは良くない。科学的検証ができるわけでもなし、真偽を考えたところでしょうがない。無駄なブドウ糖(グルコース)*10を脳が消耗するのは避けよう。

 

「うーん、そうは言っても、まだ信じられないけど……」

「ハナコは、色んなこと知ってるけものなのね。だから、新しいことが入ると、頭がパーンってなっちゃうのか……」

 そう言って、気の利くカラカルが慰めてくれた。

 

「そういうわけでもないですけど……。せめてフレンズが生まれる瞬間を、実際に見られれば……」

「そのうちまた噴火があるわよ。見れるといいわね」

 

 そういうわけで、私はサンドスターの粒子がフレンズ(とセルリアン)を創造(デザイン)するという教義の「サンドスター教」の信徒になった。

 

 パラダイムシフト*11だ。サンドスターとフレンズの存在を受け入れることで……ジャパリパークにたいして、ちょっと素直に……。

 

 これからは新しい視点でパークとフレンズを観察できることだろう……。

 

 

 

「あ、あのぅ……」

「ん……?」

 アードウルフが申し訳なさそうに話しかけてくる。

 

「お、遅れましたが、ちゃんとお礼を言いますっ! どうもありがとうございますっハナコさんっ!!」

「ああ……どういたしましてです。私は大したことしてないから、お礼ならカラカルやキリンに言ってあげてね」

「いえ、でも……」

「たくさんのセルリアンと戦ったのは、あの子たちのほうだから。それに、知らせてくれたスプリングボックにも……」

 

「そ、そんな……ハナコさん、私のために手にケガして……本当にごめんなさい……」

「あ、そういえば」

 

 私も左腕に怪我をしていたんだった。

 サンドスターの治癒力で、傷跡が少し残る程度までに回復していたものだから、すっかり忘れていた。

 

 あのネズミみたいなヤツなんかに、だいぶ苦戦したけれど……。

 もっと強い武器を手に入れて、使いこなせるようにしないとこの先、生き残れないな……。

 

 

 

「私の血でハナコさんの毛皮汚しちゃったし……ごめんなさい……」

「もう、そんなに謝るのはいいですってば! アードウルフが助かってくれて、元気なことがアリガトウだよ」

「でも……」

「お礼も謝るのも、もういいから、代わりに今回助かったぶん、ほかのフレンズさんのために何かしてあげてよ」

 

 アードウルフは、傷の止血用に使われていた私のシャツを返してくれた。

 

 べったりと、赤黒い血が付着して……指で乾いた血を落とそうとした跡があるが、それでも大量の血がこびりついて残ったままだ。

 

「こんなにたくさん血が出て、痛かったのに、よく頑張ったね……」

「え……いえ……は、はい!」

「あなたが今生きているのは、最後まで生きようと諦めなかったからだよ」

 

 それからアードウルフは、なんだか知らないが、妙に私のことを褒めたたえた。

 あのキリンが、あることないこと、余計なことを吹き込んだらしい。

 

「ツメもツノもキバもないのに、自分でツノをつくって戦うなんてすごい!」とか「何の武器も無い私も、あなたみたいに立派に戦いたい」とか「伝説の『ヒト』の仲間のヤギらしいですね、すごーい」云々……。

 

「いわゆる『人間様』なんて、大した生き物じゃないよ。小賢しくて手先が器用なだけの、群れるけもの……」

「またまたぁ~……。そんな()()()()*12してぇ~……ヒトって、()()()()なけものなんですね~」

 

「少なくとも、私はあの『英雄カバンサン』みたいに強くて勇敢じゃないよ。あなたが思うような動物じゃないから、期待しないでね」とだけ伝えた。

 

 なにしろ、私は自分のことすらよく分からないフレンズなのだ。

 それに実際に、「フレンズ様」に自慢できるほど、「ヒト様」は立派な生態はしていないはず……。

 

 するとアードウルフは「でもカッコよかった……」「たくましい背中の温もりが忘れられません……」などと、小声で色々言っていた。なんか気が弱そうだなあ、この子。

 

 

 

「ぬふふふ」

 ソーセージみたいな実のぶら下がった木*13の上で寝そべったカラカルが、木の実をサンドバッグのように手ではたきながら、私たちのやり取りを見て()()()()()()を浮かべている。

 

「どうしたんですか?」

「いやね、ハナコが助けられた時と同じね、って思って。アンタもあんな風だったわよ……」

「……え? 私もアードウルフさんみたいな……? う~ん、そうだったかな?」

 

「アンタがお礼を言ってくれた時、アタシも同じこと考えてた。『お礼はいいから、もしできれば、他のフレンズを助けてほしい』ってね」

「……」

「ハナコは変わり者のフレンズなのか、それともアタシ達と全然変わらない子なのか……ほーんと、分からないわねえ」

 

 

 

 アードウルフは元気になったが、大事を取って応急担架*14で彼女を運ぶことにする。

 

 適当な木の枝を2本、カラカルがツメで切りつけたのを、キリンのパワーでひっぺがしてもらい、私の一枚布のケープをたたむように巻きつけてシートにすると、それなり立派な担架ができた。

 

「うわ」

「けがわとれた! トリックにちがいないわ!」

 フレンズ達がとても驚いている。

 

 ヒトの衣服にあたる「動物の毛皮」は、一気に生え変わるものではないから、フレンズ達がこう面食らうのも無理はない。

 

 みんな面白がって、服を脱いだりして遊び始めた。

 あのぉ……目のやり場に困るから、みんな、止めてよね……。

 あっ、あぁ^~……そんなところまで……あわわ……いけませんわ……。

 なんてはしたないことを、なさるのかしら……。

 

「ハナコ鼻血出てるわよ」

「ごめんあそばせ。わたくしとしたことが、はしたない真似を……」

「なにその喋り方。へんよ」

「カラカルさん、お召し物を身につけてはいかがかしら?」

 

「ねえー、ヤギ、どうして毛皮取ったらダメなの?」

「サバンナは日中暑いし、空気は乾燥していて、朝晩冷え込む*15でしょう?」

「ふむふむ?」

「なので、暑さ寒さからお肌を守る毛皮を取り外すのは、良くないことですのよ?」

「うむ、なっとく。ろんりてききけつ」

 

 

 

 フレンズ達はみな不器用らしく服のボタンが留められなかったので、スッカリ閉口した……。

 私が乱れた衣服を整えてあげてから、我々は改めて西にあるという「フレンズの村」に向けて出発することにした。

 カラカルに加えて、キリン、アードウルフ、スプリングボックもついていくことになった。

 

「わたし、ハナコさんの背中がいいです。ダメですか? けがの治りもきっと早くなります」

 アードウルフがそんな頼みごとをした。

 

「うーん、仕方がない、疲れたら交代するからね」と断りを入れる。

 

 私は無理をしない程度に、アードウルフを背負っていくことにした。

 アードウルフは、意外と……子供っぽいところがあるようだ。

 

 華奢な体を背負うと、思いのほか軽い。

 先ほど背負ってセルリアンから逃げた時より、軽い気がする。

 あのひと口のジャパリまんの、疲労回復の効果か?

 

「あ……ごめんなさい。せっかく『たんか』をつくってくれたのに……私がワガママ言ったから……」

「それは別にいいですけど……い、いやその……」

 

 セルリアンから逃げる時は必死で、背中に当たるそれ*16を意識している余裕はなかったのだが……柔らかな部位*17は、けっして小さくもなく、その女性的な丸み*18の豊満な感触が……

 

 痩せているとはいえ、あるべき部分*19は、やはりあるというか……。ああぁ~、ドキドキしてきた。

 

 視線を感じて振り向くと、アードウルフは尻尾も耳もタテガミもふわふわと動かして、いやに嬉しそうにしている。どういうわけか、なつかれてしまったようである。

 

 

 

 余計なことを考えずに、先を急がねば。

 ……空の色は赤みを増し、そろそろサバンナの陽も暮れる頃。

 

「例の『サバンナの村』って、どんなところなんです?」道中、カラカルに尋ねた。

()()()()よ。家がたくさんあって、フレンズがたくさんいるの。たよれる『先生』もいるのよ。先生は鳥のフレンズで、ハナコが何の動物かきっと知ってるし、他にも何でも教えてくれるわ」

「それは楽しみですね」

 

 

 

 で、それから、どうなったかというと……。

 

「うにゃあああーっ!! にゃぎぃぃっ!!」

「ぎゃあぁーっ!! ぐぎゃあぁーっ!!」

 ふたりの小柄なフレンズが、土の上で取っ組み合いの、めちゃくちゃな喧嘩をしている。

 

 黒(ぶち)模様のスカートを身につけた、猫耳のカラカルに似たフレンズは、クロアシネコ*20らしい。名前のとおりの黒い靴とソックスがかわいい。

 アイツはちびだけど、すごく気が荒くて……というのは、知り合いらしいカラカルの(げん)

 

 けんか相手のほうは、マントを身につけ白黒の学生服を着たイタチのフレンズのように見える子だ。ラーテル*21のフレンズらしい。

 

「きょうはんしゃども! けんかはやめなs……ってうわああぁぁーっ!!」

 仲裁のため、何も考えずに(あいだ)に飛び込んだキリンが犠牲になった。マフラーに噛み付かれている。

 

 結局、ふたりから話を聞くと……クロアシネコとラーテルはなんとなしに、ふたりでじゃれあっているうちに……その度合いがエスカレートして、大喧嘩の形になってしまった……とのこと。

 この気性の激しいふたりは、いつもとくに意味も無くエネルギッシュで、常にこんな感じらしい。

 

「ごめんなさいにゃー」

「オレたちも悪いけど、オマエもさ、ド真ん中に飛び込んでくるなよなあ~」

 

 ふたりとも、すげぇ動きしてたけどね……。

 やっぱりフレンズは人間じゃなくて、けものなんだな……と、改めて実感した。

 

「けーすくろーずど! じけんかいけつ! キリンは、つみをにくんで、人をにくまず!」

 

 

 

 気を取り直して、草原を進んでいくと、フード付きパーカーを着た大柄なフレンズが、草むらに寝転がっていた。特筆すべきは、その大きなお腹! 赤ん坊ひとり、ふたり分ぐらいはゆうにある、ぽっこりとしたお腹の膨らみは……妊娠……?

 

 ギョッとしていると、向こうから話しかけてきた。

 

「ああ、これはね、ジャパリまんだよ。こうしていっぱい食べて、ずぅ~っと『食いだめ』しておけるんだよ」

「お、おぅ……そうだったんですか……」

「オレはアフリカニシキヘビ*22。おまえら、イヌとガゼルと……ナマケモノのフレンズ?」

「ガ、ガゼルじゃないです……スプリングボックです……」

 

 ニシキヘビに尋ねてみると、フレンズたちは、()()()()()()()()()()ジャパリまんを好んで主食とするらしい。

 たいへん興味深い事実だ。

 

 ジャパリまんは「ボス」という名前の、青と白のふわふわの毛皮の、面倒見が良くて頼りになるフレンズが配給しているらしい。

 なんだそりゃ? 何者なんだ、「ボス」とは……?

 

 私は勝手に……白いヒゲをとっぷりと蓄えて、ジャパリまんの詰まった大きな袋を背負った、恰幅の良い男性の「ボス」を思い浮かべていた……。

 

「ボスは、トナカイに乗ってやってきて、もしかして『Ho! Ho! Ho!』って笑います?」

()()()()って何のけもの? ……いや~、泣いたり笑ったりしてるのは、見たことないよ。鳴き声も……聞いたことないから、わからないなー」

 

 ちなみにボスは昔はいっぱい数がいたが、だんだん数が減っているらしい……という話をニシキヘビから聞いた。つまり、絶滅危惧種のフレンズなのか……。

 

 

 

 そんな無防備な恰好で大丈夫ですか? と私はニシキヘビを心配したが「セルリアンから逃げるくらいはできるよ。心配してくれてありがと」と彼女は答えた。

 ニシキヘビの話によると、どういうメカニズムか分からないが、野生動物は基本的にフレンズを襲わないらしい。

 基本的に、野生動物達より身体能力が高いからだろうか?

 

 それに、万が一襲われても、少しの傷ならサンドスターのパワーで治るから大丈夫なんだと……。

 

 

 

 さて我々は彼女と別れて、道を進む。

 すると、一行を待ち受けていたのは……。

 

「ギャワ~ッ! オヌシぃ……重いのじゃぁ~!!」

「タッケテェー!! タッケテェーッ!! ぶぶぉっ!! おおぉ溺れるゥーっ!!」

「あ~、()()()()()()()()~、ちょうどよかった! この子を引き上げてほしいのじゃ~!」

 大きな川にさしかかると、その対岸では、白いウシのようなフレンズが急流で溺れかけている!

 なんとか岩につかまっているのを、ウロコのついた服を着たフレンズが、水中からお尻を押して助けようとしているのだ!

 

 私たちは急いで、水面に出ている岩を飛び移って渡河する。

 アードウルフも、問題なくひとりでジャンプできるほどに体力が回復しており一安心。

 

 

 

 なんとかそのウシ科のフレンズをみんなで救助すると、彼女はオグロヌー*23と名乗った。

「ど、どうもありがとー! いやぁー、助かったよー!」

 

 もう一方のウロコのフレンズは、エジプト風の露出度の高いエキゾチックな装身具を身につけており、その古代の鎧のような装身具の素材は、まるでクロコダイル革……ワニのフレンズ?

(わたし)はナイルワニ*24ぞよ~。なにとぞ、よろしく~」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

 

 オグロヌーは、友達のオジロヌーに会いにいくところだったらしい。なんだか紛らわしい名前だ……。

 

 そしてヌーから、お礼として「黒いぴかぴか石」をもらった。

 初めは断ろうとしたのだが……よく見るとそれは、立派な黒曜石*25であった!

 これは役に立ちそうだ……。

 

 ほかの四人に目配せしたが、みんなあまり興味無さそうだったので、私がもらっておくことにする。

 

「おお、それじゃあ(わたし)はこれで去るのじゃ~……ぶくぶく~……」

 ナイルワニは水上に目だけ出しながら潜水して、いずこへともなくクールに去っていった。さすが昔は冷血動物と呼ばれていただけはある。

 

 

 

 

 熱帯草原のけものみち*26を歩いて、歩いて、歩いて……とうとう太陽は、その雄大な地平線の真っ黒な影の中へと、その身を隠し始める。ゆらゆらと空に陽炎が立ち上る様子は、まるで夕日に地面が熱せられているかのよう。

 ……なんて美しい夕日なんだろう。

 

 黄昏時(たそがれどき)*27は、()()()()()()()に出会うかもしれない時間……。いや、ここんところ、()()()()()()()ばかりに遭遇してるけどなぁ~、私……。

 

 

 

 ようやく我々は「サバンナの大きな村」に到着した……。

 

「ほれ、ココが、フレンズの()()()()よ」

 

 って、オイ! コレ、どう見ても……私にもなじみ深い()()()()()()()じゃないか!?

 

 なんだこのサバンナ屋敷*28は!? なんでこんなものがサバンナに存在するのか!

 そして何故これが「大きな村」なのか!

 

 さあカラカル君、どういうことなのか、説明したまえ!!

「いやね、ここの木の模様が、そういうことらしいのよね。私にはよく分かんないけど」

 

 ……その「表札」には「大村」さんって書いてあって……それは住人の名前でしょうがぁ!

 

 ああもう! ちょっとはフレンズのことが分かってきたと、思いたかったけど……やっぱり、フレンズの考えてることも、言ってることも、ちっとも分からないよっ!!

*1
【アードウルフ】ご紹介が遅れました。ネコ目ハイエナ科のけもの、アードウルフです。アフリカ東部・南部のサバンナや低木林帯に棲む、小さなけもの。ハイエナの仲間だが、昆虫食メインでシロアリを食べる。和名ツチオオカミ(アフリカーンス語のAardwolfの直訳)だがオオカミとは言うものの、アードウルフふくめたハイエナの仲間は実は()()()()()()()。マングースやフォッサなどとあわせて、ジャコウネコ科のほうに近いけものらしい。アードウルフの特徴としては、他のハイエナと違って()()()()()()で、学名の由来にもなっている。そのおかげかどうか分からないが……サルやアライグマなどのフレンズにはおよばないものの、自分のフレンズ(ひと)の「前足()」をうまく使いこなすことができる、比較的手先が器用なフレンズ。

*2
【オドロキアミメ色の…】名探偵ポワロの名セリフ「灰色の脳細胞」の真似っこ。このナゾの言葉『オドロキアミメ色』とは、動物のキリンの脳に存在する器官、奇網(ワンダーネット)のことを指しているつもり、らしい。キリンの脳の基底部にある網状の毛細血管のカタマリで、長い首を上げ下げするとき、高血圧と重力により急激に流出&流入する血流をいったんせき止めておく役割がある。コレがないと急性の貧血で立ちくらみを起こしたり、血が一気に脳に流れ込んで血管が破裂してしまうことだろう。この奇網に類似した器官は、ブラキオサウルスなどの首の長い恐竜にも、あったかもしれないと言われている。だが同じくキリン科の、首が短い()()()()()()()()()()()()()()()()()のはナゾである……。もともとは「血流緩衝装置」以外の目的で発達した器官なのかもしれない。例えばカモ、ツル、ペンギンなどの水かきのある水鳥も、脚部に(ペンギンはフリッパーや鼻腔にも)同名の奇網を持っているが、こちらは「体温調節装置」だ(※動脈・静脈が隣同士に細かく張り巡らされて、熱交換により体温が逃げるのを防ぐ)。ほかにも、魚類のエラには浮力調整用に、哺乳類一般の腎臓には圧力調整用に、アリクイやナマケモノなど樹上性の動物には四肢の体温調節用に、イヌやヒツジなどは脳冷却用に、有袋類は精巣の冷却用に……様々な動物の色々な場所に奇網構造が存在する。それで、フレンズのキリンにも脳にワンダーネットがあるのかどーかは定かでは無いが……彼女はこの知識を動物図鑑で学んだ時から、自分の上等な「脳細胞」もアミメ模様であると頑なに信じている。他人(ひと)の話を聞かないし、思い込んだことを曲げない性格の子なのだ。「他者の考え」が頭に入りにくく、また「自分の考え」がなかなか頭から出ていかないのは……この「血が脳に入りにくい・出にくい」ワンダーネットの性質に由来するのかも……?

*3
【放射線】X線検査やCTスキャンやがん治療、原子力発電で使われる放射線は、平たく言うと電灯から光が放射されるようなもの。「放射性物質」が「放射線」を出す現象(能力)のことを「放射能」と言う。ネガティブなイメージがあるけれど、低レベルの放射線は自然界に当たり前に存在するもので、地球・宇宙・空気・食べ物・温泉などによって、人体は常に放射線に晒され続けている。ジャパリパーク特有の地下資源であるレアメタル「サンドスター」は、ウランやプルトニウムのような「放射性元素」に一部類似した性質を持っている。放射線が農作物やゴムやプラスチックの性質を変化させるように……サンドスターも()()()()()()()()()()()()()()、それも熱力学第二法則(エントロピー増大の法則)に逆らうように、洗練された姿へと変貌させるのだ……。だがサンドスターの性質の大部分は、今もってナゾに包まれている……。放射線と類似する性質としては、虫や魚などよりも哺乳類や鳥類などの()()()()()()()()()生物のほうがサンドスターが濃縮しやすくフレンズ化しやすい、モグラなどの地中動物はサンドスター線が土壌で遮断されてフレンズ化しにくい、傷を負っている動物ほどそこからサンドスターを吸収しやすい、などなど……。

*4
【ゴム人間や岩人間や透明人間のヒーロー】マーベル社のアメコミ『ファンタスティック・フォー』の主役たちのこと。※なぜかひとりハブられてますが……。これを原作にした『宇宙忍者ゴームズ』という珍妙な吹き替えカートゥーンも存在し、昔のアニメであることを差し引いても、その内容は非常にカオスである。超カッコイイ悪役(ヴィラン)Dr.ドゥームが、ゴームズ版では名古屋弁ネイティブの面白いおじさん「悪魔博士」になっている、など。なぜかほとんどのヴィランにすごい訛りがあったり、スケールがデカイはずの話がテンポよく進むなど、小気味よい作風が特徴。

*5
【単純明快】「オッカムの剃刀(かみそり)」という言葉がある。「必要以上に複雑な話は避けるべきだ」という原理のことだ。例えばこの場合、フレンズ達を「自分たちを元は動物だと思い込んでいて、さらに動物に由来するような超自然能力を持つヒトたち」と考えるよりも……「動物がヒトに変身して、そのパワーを持っている」と思うほうが、話が単純であるということ。誤解しないでほしいのが、「本当かどうか(つまり妥当性)」は全く関係なく、「論理として優れているかどうか」という点だけ着目していることに注意。機械や車や銃が「少ないパーツ数でちゃんと動いてくれると助かるな~(もちろん構造が単純すぎて誤動作すると困るけど)」みたいな話。

*6
【創造論】宇宙や生命などが「創造主」によってつくられたものだとする、「進化論」とは逆の考え方。世界中の神話や伝説にそういう話があるが、とくにキリスト教(とユダヤ教とイスラム教)の創造論が有名。これを元にして宗教色を薄めた「インテリジェント・デザイン」説が1990年代のアメリカで提唱されるようになっており、現代のアメリカでは10人に4人が創造論やID論を信じていると言われている。日本人には分かりにくい話だが……教育レベルの高い人でも、敬虔なクリスチャンは本当に創造論について真面目に考えているのだ。しかし、最近では若い人ほど「進化論」派である傾向があるらしい。なお2000年代には「宇宙も人類も、創造したのはスパゲッティ・モンスターだったんだよ!!」というID論を教義とする「空飛ぶスパゲッティ・モンスター教」が設立されるにいたる。日本にも支部があるよ~。

*7
【神は天にいまし、すべて世はこともなし】19世紀イギリスの詩人、ロバート・ブラウニングの詩『春の(あした)』にある言葉。『春の朝』は、身の回りのなんてことない自然の美しさや日常の幸せをうたった詩で、もともとは『ピッパが通る』という長い詩(女の子の歌声で悪人たちが改心していくというお話)の一部。原語では、"God's in his heaven. All's right with the world."という簡素で美しい文章で、L.M.モンゴメリの『赤毛のアン』のラストや、アガサ・クリスティの『ABC殺人事件』でも引用されている。

*8
【あなたは良き星のもとに生まれ…】こちらもブラウニングの『エヴリン・ホープ』からの言葉で、同じく『赤毛のアン』でモンゴメリが巻頭に引用されている。ハナコは「自分がなにものであったか」の記憶は無いけれど、「身の回りの美しい自然」や「善き心を持つ友人たち」を理解し、正確あるいは詩的に描写するに足る、自然科学や文学の知識を持って生まれたことに、今幸せを感じている……。しかし、まわりのフレンズ達にそんなカッコつけた発言をしても、ぜんぜん伝わらなくて少し残念……とも同時に思っている。

*9
【セルリアン】ジャパリパーク固有の生物?「セルリアン」は、通常の野生動物よりもはるかに恐ろしい存在だ。たとえば以前戦ったトラバサミ型セルリアン(第0章1話登場)は、約5kgのイエネコぐらいの体重だったが……30~40kgほどの動物(ドーベルマンやジャーマン・シェパードなどの大型犬に相当)以上のスピードとパワーを備えており、とくに大アゴの閉じる速度と咬合力はワニ並みであった。剣道三倍段(武器を持った相手に素手で勝つには、3倍の実力が必要)という言葉もあるが、この場合「セルリアン十倍段」(セルリアンと戦う野生動物には、その10倍の体重が必要)などと言えるだろう。この尋常ならざる膂力(りょりょく)もそうだが、さらに恐ろしい特徴はセルリアンは一部を除いて()()()()()()()()()()()()()こと……それらは、彼らの進化においては不要な性質とばかりに……。麻薬中毒のヒトのようなもので、ナイフの浅い斬撃や小口径の拳銃弾などでは、数度命中させても全くひるまないほど……。強い抑止力(ストッピングパワー)のある攻撃でなければ、連中を無力化することはできない。だがセルリアンが()()()()()()()()であることは……逆に言えば()()()()()()()()()()から、同時に大変ありがたいことだ……ともハナコは考えている。

*10
ブドウ糖(グルコース)】糖質(炭水化物)の一種。18世紀にブドウから初めて抽出されたので和名はブドウ糖。分子式:C₆H₁₂O₆。いわゆる生物汎用エネルギー源であり、()()()()()する時に、血中の酸素とグルコースを消費して水・二酸化炭素・エネルギーが生まれる。そしてヒトの1350mlの脳は体重の約2%の重さしかないが、全身の血液の15%・酸素の20%・グルコースの25%が必要と、非常に多くのエネルギーを消費する器官だ。さらに「難しいことを考えるほど脳はカロリーを消費する」という学説は実在する! スタンフォード大学の霊長類神経学者のロバート・サポルスキーによると、プロのチェス・プレイヤーの対局中の消費カロリーは、なんと「6000kcal/1日」で、これは一般人の3倍の消費量……プロアスリートに匹敵するという! いわゆる知恵熱って、本当にあったというわけなのか……?

*11
【パラダイムシフト】それまで当然だと思われてきた考え方が、大きく変わること。コペルニクス的転回とも言う。自然科学の分野では、万有引力の法則、相対性理論、量子力学、地動説、大陸移動説、進化論、メンデルの遺伝の法則、DNAの二重らせん構造の発見、などなど……。

*12
【けんきょ】アードウルフのこの発言では「謙虚」と「謙遜」の使い方が逆。というのも、自分の個性を謙遜する、謙虚な性格のフレンズがパークには少ないため、あまり使う機会がない言葉だからかもしれない。

*13
【ソーセージみたいな実のぶら下がった木】ズバリこれ、シソ目ノウセンカズラ科「ソーセージノキ」。北はエチオピアやチャド、西はセネガル、南は南アフリカ共和国と、アフリカ大陸の非常に広範囲に生育する植物で、生長すると高さ20mもの大木になる。ジャングルに分布するものは常緑樹だが、サバンナでは落葉樹。名前通りの「ソーセージのような形の果実」は、大きいものだと長さ1m、重さ10kgにもなる。どろどろの繊維質の硬い果肉は、ゾウやカバやサイやキリンなどの大型の草食けものの食べ物となり、ヒトは薬用にしたり発酵させてアルコール飲料にして利用する。今カラカルがネコパンチで叩いて遊んでいるのは、動物たちの食べ残しのカラッカラに乾燥した果実だ。

*14
【応急担架】即席担架の「軸」用に一般家庭で使える材料としては、「ステンレス物干しざお」が向いている。濡れた衣服というのは結構重いので、それをいくつも掛けられる物干しざおは1本で荷重30kg程度は耐えられる。2本なら60kg、細身の男性なら搬送できる計算だ。摩擦力が最大にかかるように、2本の棒にシーツや毛布を巻き付ければ、固定具なしでも平気な強度の担架になる。このやり方以外にも、ジャケットやTシャツなどを数枚使って担架にする方法もアリ。なお、載せた人の「脚のほうから運ぶ」ほうが、不安にさせない運び方。

*15
【朝晩冷え込む】よく晴れて乾燥した日には、昼間暖かくても朝晩が冷え込む……というのは、みなさん体感的にご存じのとおり。この原因は「放射冷却」という、()()()()()()()()()()()()()()現象。昼は太陽光により地球と空気が温められるが、夜間には熱が赤外線となって宇宙へ逃げていき、地球が冷えて空気も冷えます。この時大気中に、温室効果の高い雲(=水蒸気)があれば、お布団の綿のごとく熱をキープして、地球を暖めてくれるのです。これが、湿度が低いと夜間冷えやすい理由。他にも、風が弱い日には地表に冷たい空気が留まってしまって冷えやすいと言われています。「放射霧」というタイプの霧は、こういった冬の晴れて風の無い日の朝方に、盆地や谷間などで地面付近の空気が冷やされて発生する霧。

*16
【背中に当たるそれ】おっぱい。乳房もしくはその分泌液を意味する語「おっぱい」に関する最古の文献は1859年ごろの幕末に書かれた『於路加於比(おろかおい)』という随筆。そこでは『乳汁をおつぱいとは「ををうまい」の(つづま)りたる語なるべく――』……つまり「おお美味(うま)い」が短縮した言葉である、という説が紹介されている。つまり、もともとは液体のほうを指す言葉であったわけだ。他にも「お腹いっぱい」が訛った説、古代中国の学者王牌(おうぱい)に由来する説、古代朝鮮語で「吸うもの」を意味する「パイ」から説、サンスクリット語のpai(乳)が語源説……など(民名書房めいたヨタ話も)諸説ある。

*17
【柔らかな部位】おっぱい。生物学的には乳房とは、汗腺の一種「アポクリン腺」が変化したものである。最も原始的な哺乳類である「単孔類」では「ミルクパッチ」と呼ばれる毛穴のようなものであったのが、乳房の数が増えたり減ったりしながら、ドンドン進化していったのだ。他のけものが排卵・授乳期間のみ乳房が大きくなるのに対して、ヒトの場合、乳房は思春期に大きく発達してそのままになる。ここで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()であるという、ヒトのオス特有の()()()()()()の生態に着目しよう。そもそもヒト以外のけものは四足歩行だから胸部が目立ちにくいし、もともと乳房=子育て用の器官なので、本来は性的魅力とは関係が無いハズだが……にもかかわらず、ヒトオスだけが唯一の例外で「おっぱい好き」なのだ! 「女性の乳房は性のシンボルとして、体のサイズに対して不自然なほどの大きく進化した」という説があるほどだ。四足歩行し後背位での性交が基本のサルの場合、発情中のメスがオスに示すサインとして、視線の行きやすい「お尻」が赤くなるのに対して……直立二足歩行で正常位のヒトでは視線の行きやすい「胸」の大きさが、性成熟を示すサインになったのでは?……というのが、チャールズ・ダーウィンが初めて提唱し、動物学者デズモンド・モリスが著書『裸のサル』で発表した学説だ。有名な歌詞と異なり、ボインはぁ~……お父ちゃんのモノだったんだよ!? ……話をまとめると、私たちが「キリンは首が長い」「ゾウは鼻が長い」などと思うのと同様に……他の動物たちにとって、ヒトのメスは「おっぱいがでかすぎる」けものなのである。動物たちがヒトのメスのカラダを得た「フレンズ」たちも、その辺に最初は違和感を感じることが多い、とか?

*18
【その女性的な丸み】おっぱい。……大きいことを前提に話してきましたが、実は「巨乳がよいもの」とされてきたのは最近の価値観。というか巨乳の女性が多くなってきたのは、20世紀末のごくごく最近からなのである。下着メーカー、トリンプによるバスト調査では……1980年(昭和55年):Aカップ58.6%、Bカップ25.2%……1990年(平成2年):Aカップ32.3%、Bカップ30.5%……などと、最近まではAカップが一番多かったのだ。文化・芸術的な視点においては、地母神「ヴィレンドルフのヴィーナス」のように有史以前は豊穣・他産のシンボルとして巨乳が広く好まれていたが、ギリシャ・ローマの彫刻や中世の絵画、日本の浮世絵など、歴史上はどちらかと言えば()()()()()()()()()()()()。また、ルネッサンス以降の裸婦画では、大きいおっぱい派(ゴヤ・マネ・ルーベンス・ルノアールなど)と、小さいおっぱい派(クラナッハ、クリムト、ピエロ・ディ・コジモ、フォンテーヌブロー派など)と、けっこう画家の趣味がバラけている。

*19
【あるべき部分】お っ ぱ い。その産物であるミルクのお話もしましょう。牛乳や人工ミルクで育てられた赤ちゃんより、ヒト母乳で育てられた赤ちゃんのほうが下痢・中耳炎・呼吸器障害などの病気にかかりにくいことが知られており、ヒト特有のミルクオリゴ糖が、善玉菌である腸内細菌ビフィズス菌を増殖させることが判明している。「やっぱり偽乳(ニセチチ)より、おっぱいは天然ものに限るぜ!」という教訓ですね~(ミルクの話です)。最後にオマケとして、メイン登場人物(フレンズ)のバストサイズを記録しておきます。主人公(ハナコ):A、カラカル:C、キリン:G、アードウルフ:A。

*20
【クロアシネコ】ネコ科ネコ属の小さなけもので、成長してもイエネコの半分ほどのサイズしかない。アフリカ大陸南部の、ナミビア・ボツワナ・南アメリカ共和国などのサバンナや砂漠地帯に生息する。夜行性で非常に警戒心・単独性が強く、飼育下の個体ですらほとんど存在しないので、生態は謎が多いが……特徴は、広い行動範囲、高い狩りの成功率、そしてものすごい()()()()。一晩で約250g(=体重の6分の1の重さ)の肉を食べる。これはヒトで言えば、10kgの重量の肉を食べるようなもの! とても気性が荒く、「キリンの頸動脈を噛み切る」などという現地の伝説があり、蟻塚の虎(アントヒル・タイガー)の異名を持つという……。

*21
【ラーテル】インド、中東、アフリカ大陸サブサハラなど、広い範囲の様々な環境に適応して生息するイタチ科のけもの。体型はアナグマに似ているが……顔がでかくて、首が太くて、脚が短くて、ちょっとずんぐりむっくりな感じする、頑丈な体をしてるのがラーテルです。クッキリ白黒の目立つ体色は、自身のキケンさを示す「警戒色」である。イタチ科らしく、ライオンやスイギュウなどの大型けものを全く恐れず立ち向かう、その蛮勇さ! ギネスにも「世界一怖いもの知らずのけもの」として登録されているぞ! ラーテルの武器はカメの甲羅すら砕くキバ、四肢の強靭な腕力とカギヅメ、肛門分泌腺からの催涙ガス! 背中の強靭な皮膚はライオンのツメもキバも通さないし、またヘビの神経毒への耐性も持っている! ライオン・ヒョウ・ブチハイエナのいない地域では生態系のトップに立つ、サバンナ・ギャングスターなのだ!

*22
【アフリカニシキヘビ】アフリカ最大種のヘビ。サハラ砂漠以南からアフリカ中央部の赤道地帯にかけて、広い範囲に生息。水辺を好むがある程度の乾燥にも耐えて、しかも木登り(キノヴォリ)も得意で、サバンナ・森林・湿地・耕作地・人家周辺と、様々な環境に適応している。ニシキヘビは熱探知用の「ピット器官」をもつ種類のヘビで、さらに爬虫類全般の特徴として、発達した嗅覚器官「ヤコブソン器官」を持つ。毒こそ無いが、物凄い「胴締め」で獲物(ジャパリまん)を捕食する。

*23
【オグロヌー】アフリカの中央部・南部・東部に広く生息するレイヨウ、別名ウィルデビースト(野獣)。通常「ヌー」と言えばこのオグロヌーを指す。名前の「ヌー」とは、鳴き声に由来するらしいが諸説あり。地元の伝説によると、神さまがウシのツノ・ヤギのヒゲ・ウマのシッポなどの「他の動物の材料の余りもの」を寄せ集めて創造した失敗作、らしい。水分への嗅覚が鋭く、はるか遠くの雨を感知して移動する習性があり、タンザニア「セレンゲティ平原」とケニア「マサイマラ国立保護区」の間での、乾季の大移動が有名。

*24
【ナイルワニ】砂漠地帯を除くアフリカ大陸全域に生息する、クロコダイル科の大型ワニ――アリゲーター科のワニとは、体型・性格・能力など色々ちがうぞ。イリエワニほどではないが、ナイルワニも海水にも強く、汽水域にも棲んでいる。アリゲーター・カイマンとちがい、クロコダイルなのでウロコに熱感知器官「穿孔(ピット)」を持つ。古代エジプト神話の「セベク」とその眷属「ぺトスコス」はナイルワニがモデルで、死後ミイラにされて丁重に扱われた……と、長い間言われてきたが、近年のDNA調査によると、別種のワニだったという説も浮上してきた。また、東アフリカの「人喰いギュスターヴ」なる、伝説の超大型のナイルワニ個体がホラー映画やオカルト雑誌などで有名……。なお凶暴なイメージに反して、ナイルワニは()()()さで知られている。一部のワニは卵が孵化した後も子育てをする習性があるのだ。そのせいかナイルワニのフレンズも、子供っぽいフレンズに対してやたらと面倒見がよく、古代エジプト貴族みたいな見た目とやんごとなき言葉遣いに反して、保母さんみたいな性格をしている。

*25
【黒曜石】黒曜石(オブシディアン)は火山岩(マグマが火口付近で急速に冷えてできる火成岩)の一種である酸性岩(地学用語でSiO₂(二酸化ケイ素)含有量が多い岩を指す)に属する特殊な鉱石。本来は「流紋岩」や「デイサイト」になるはずだった粘性の高いマグマが、水中などの特殊条件下に噴き出て急激に冷やされて、ガラス質に固まった岩石。硬度(モース硬度)は5でガラスとほぼ同じ。全体的な性質もガラスに似ており、とても割れやすい。その性質を利用して、次の回で便利な道具に加工します。

*26
【けものみち】一見何も目印(ランドマーク)が無いように見えるサバンナにも、「動物たちの道」が存在する。大きな木や岩、アリ塚など結ぶようにして、多くのけものたちのヒヅメや肉球に踏み付けられてできた、放射状のルート。アフリカの「バルーンサファリ」ツアーに参加すると、このはっきりとした「けものみち」を上空から観察することができる。

*27
【黄昏時】夕刻。()(がれ)時。相手の顔もわからなくなり誰何(すいか)する時間。逢魔ヶ時。大禍時。空の色は青から赤へ変わる、生から死へ、(チアノーゼ)の時間。これから訪れる夜の闇の(とばり)は、休むものを優しく包む黒いシーツだろうか? あるいは、おそるべき敵の姿を隠し潜ますカーテンだろうか?

*28
【サバンナ屋敷】突如、ジャパリパークのサバンナ地方に現れたナゾの和風建造物!? 実は、この建物の外見や間取りはモデルがありまして……東京・大田区の「昭和の暮らし博物館」という建物。蒲田や田園調布あたりに住んでいた方は、社会科見学なんかで一度は行ったことがあるかも? 路地裏を入った分かりにくいところにあって、どー見ても民家としか思えない外見の、こじんまりとした博物館です。というのも、ココは昭和26年建築の民家を改装した博物館だからです。意外なことに、こういった「戦後期」の建造物のほうが、江戸時代や明治時代の建物より少なくてレアだそうです。日本人の原風景的な、昭和30年代の雰囲気にひたることができて、さ~いこぉ~……。レトロ好きのフレンズにはたまらぬ憩いの場所です。アクセス:東急池上線「久が原駅」下車徒歩8分、東急多摩川線「下丸子駅」下車徒歩8分。開館日:金・土・日・祝日(月~木・年末年始・9月上旬は閉館期間)。入館料:500円(高校生以下300円)。




【参考資料】

◆奇網 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%87%E7%B6%B2

◆巨大恐竜は立ちくらみしなかった? ナショナルジオグラフィック
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20150224/436911/

◆高血圧なキリンの体を守るものすごいしくみ レタスクラブニュース
https://www.lettuceclub.net/news/article/170694/

◆『キリンの高血圧、象の巨大心』 公益財団法人 日本心臓財団
https://www.jhf.or.jp/publish/bunko/54.html

◆動物なんでもQ&A 王子動物園
http://ojizoo.jp/html/oj-05-a01.htm

◆キリンのワンダーネットは、もともとは何のために存在していたと推測されますか? - Yahoo!知恵袋
https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12120757857

◆放射性物質、放射能、放射線ってどう違うの?|放射線の基礎知識|放射性物質汚染廃棄物とは|放射性物質汚染廃棄物処理情報サイト|環境省
http://shiteihaiki.env.go.jp/radiological_contaminated_waste/basic_knowledge/how_different.html

◆放射線とは - 電気事業連合会
https://www.fepc.or.jp/nuclear/houshasen/index.html

◆米国で進化論を信じる人が過半数超え:日経ビジネス電子版
https://business.nikkei.com/atcl/seminar/19/00059/072400117/

◆“Pippa's Song”と「春の朝(あした)」
http://sybrma.sakura.ne.jp/05pippa.htm

◆★赤毛のアンに出てくる英米詩 Roman de la Rose - 楽天ブログ
https://plaza.rakuten.co.jp/graceland/2004/

◆猫の体重はどれくらいが標準?何キロからが肥満? 猫との暮らし大百科
https://www.anicom-sompo.co.jp/nekonoshiori/386.html

◆世界の犬 一般社団法人 ジャパンケネルクラブ
https://www.jkc.or.jp/archives/dog_category/breed_01g
https://www.jkc.or.jp/archives/dog_category/breed_02g

◆脳をフル活用するとカロリーが大量に消費されるというのは本当か? - GIGAZINE
https://gigazine.net/news/20191112-brain-calories-thinking/

◆毛布や衣服で、応急担架を作ろう。 三井住友海上
https://www.ms-ins.com/special/bousai/chiebukuro/chiebukuro_24/

◆物干し竿を使った応急担架の作り方2種と搬送時の注意点
http://www.02320.net/stretcher-knowledge/

◆放射冷却はどうして起きるの? 今日のはてな 子供の科学のWEBサイト「コカねっと!」
https://www.kodomonokagaku.com/hatena/?0b16fcca95d97bd1b0c3b95ccdeb7560

◆朝の冷え込み 「放射冷却」現象のメカニズム - ウェザーニュース
https://weathernews.jp/s/topics/201810/180065/

◆放射冷却とは!意味と仕組みをわかりやすく! hana's
https://hanasjoho.com/archives/9323

◆あの美しくやさしい膨らみを「おっぱい」と名付けたのは誰か|NEWSポストセブン
http://archive.is/0aZEC

◆おっぱい - 語源由来辞典
http://gogen-allguide.com/o/oppai.html

◆女性の「乳房」ほど不思議な臓器はない!ヒトの乳房は大きすぎ?乳腺は生殖器か?
https://biz-journal.jp/2017/05/post_19002.html

◆なぜ人間の女性の胸は他の動物に比べてずっと大きいままなのか? カラパイア
http://karapaia.com/archives/52269537.html

◆日本女性のブラジャーの平均サイズは? Excite エキサイト ニュース
https://web.archive.org/web/20060215085911/www.excite.co.jp/News/bit/00091139306492.html

◆我らみな腸内細菌と寄り添い進化してきた哺乳類——『おっぱいの進化史』ブックレビュー
https://lab.mykinso.com/syohyo/180821/

◆代表的な善玉菌であるビフィズス菌の増殖因子を発見 — 京都大学
http://www.kyoto-u.ac.jp/static/ja/news_data/h/h1/2008/news6/080709_1.htm

◆黒曜石 鷲が峰ひゅって
https://nature2.jp/wasshie/obsidian.html

◆黒曜石の世界 黒曜石原石の魅力
https://tokachiisi.com/page1/sub1.htm

◆昭和のくらし博物館
http://www.showanokurashi.com/

◆昭和のくらし博物館 - C級スポット探索日記
https://lovingcspot.hatenablog.com/entry/2019/02/07/215521
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