けもののきろく(第2版)   作:大きさの概念

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あらすじ:サバンナに突如謎の穴が!? なんだこの地下牢は!? 動物裁判、開始。
  目標:「裁判」に出頭せよ!

 現在地:さばんなちほー中央部/熱帯大草原地域/「広告大看板」前廃車ヤード
 時間帯:深夜

近接武器:黒曜石のナイフ
 所持品:結束バンド/植物繊維のロープ/水筒/ビニール袋/使い捨てライター

 同行者:カラカル/キリン

 ヒント:「他者」は謎に満ちている、それがヒトで非ざるものの場合は特にそうだ。彼女達のことを全く理解できない時もあるかもしれないが……そういう時こそ「理性」の存在を信じるべきだろう。


第8話 治外法権すぎるけものたち [♀]

 獣たちが変身した人間「フレンズ」によって……ヒトが変身した「ヒトのような私」が、これから裁判にかけられる……。

 動物たちだけが住む、この不思議な不思議な島「ジャパリパーク」はまさにメルヘン*1の世界だが、その残酷な結末が私を待ち受けているのか……!?

 

 中世ヨーロッパの動物裁判*2の逆というわけだが……なんと荒唐無稽*3な話だろう……。

 この非現実の王国で*4これから私に降り注ぐストーリーは……キャロル*5のナンセンスか、カフカ*6の悪夢か、宮沢賢治*7の寓意性か、安部公房*8の不条理か……。

 

 

 

「どうっ? 私の『さいばんかん』のカツラ*9とこづち*10似合うでしょ?」

 ……。

 

 キリンはさらに虫食いだらけの古い黒の暗幕*11を身につけている……。法服のつもりだろうか?

 そういうの、どこから持ってきたのよ?

 

「どうどう? この毛皮は、私の頭の良さをすごく表してるわよね?」

「……臭いし汚いし知性の欠片も感じないし、()()にしか見えないッ!」

 

「ぐうっ……ななななによう! ばかばか! はんにん! うわあああん!」

 ……いかん。つい正直に証言してしたら、裁判官の心証を害してしまった。

 

「ぐもおおお! もはやゆ゛る゛ざん! ハナコはしけいにしょする!」

「まあまあ~、落ち着きなさいよ~」

 と、いきなり最終判決を下そうとする裁判官のキリンに、カラカルが意見する。

 

「その格好がバカバカしいってのは、あたしも賛成だけど、ハナコをみんなで()()()()()()()は、これから『さいばん』で決めるのよ……」

 目を輝かせて、子供がおもちゃを見るような不気味な笑みを浮かべるカラカル……。

 

 初めて出会った時、この人を天使*12と見間違えたが……今思うと、なんと愚かな……。

 

「ぬふふ、どうしてやろうか考えるのは……楽しいわねぇ……」

「お、オニ! アクマ*13~っ!」

「にゃんだそりゃ~? ヒトのなかまか?*14

 

「キリ……いや、さいばんちょうどの! ()()()()の前なのに()()()()を出してはダメでありましょう!」

「ぐぬぬ……そ、そうね……」

 ヘビクイワシもキリンをなだめた。

 

 ……開廷の前からこんな調子だが……一体これからどうなってしまうんだ?

 

 

 

「でも、おいこらハナコ! さっきの私にたいする失礼な発言、しゃざいしなさい!」

 キリンがすっかりぷりぷり怒っている。なにしろツノまで生えている。

 

 いろいろ思う所はあるが……今後の展開を考えて謝っておくことにするか……?

 

「あ、ハイ……不快な思いをさせてしまってすみません。でも、それはいわゆる言葉のあや*15というヤツです」

「ほう?」

 と、キリンが話題に食いついてきた。

 

「臭くて汚いと言いましたが、いわゆる『歴史の臭い』というやつです。熟成された香りというか……」

「むむむ! れきしのにおい……何それカッコイイわね……。歴史みすてりぃの匂い薫る二時間すぺしゃる……みたいなモノね!」

 

 何言ってるんだキリン?と、思いながらも、私はさらに言葉を続けた。

 

「インテリジェント……!! つまり頭が良いという意味です」

「い、いんてりげんちゃ……言葉の意味は全然分からないけど、う~ん! 頭が良さそうなひびきぃ~っ!」

(……さっきアホとも言ったけど、そっちは忘れてくれているもよう……)

 

 

 

 無事に裁判官の好感度アップに成功してホッと一息。

 

 ……さて周囲を観察すると、満天の星空の下、月は満月、大勢のフレンズでごった返すサバンナの法廷とは、大きな看板のある広場である。

 

 広場にはたくさんの車が積み上げられており、昔の映画やドラマで見かけるような廃車ヤード*16のようになっている。さらに、人が入れるほどのコンクリート製の土管や、よく分からない何かの機械類なども置いてあるが……。

 

 そして広場中央の錆びが広がった古い大看板だが……上下からライトアップされており、ジャパリパーク園内の施設が描かれた島全体の地図*17が描かれている……。

 

 そして「雪山エリア*18」なんて地域まで存在する。

 

 ジャパリパークは緯度30°ほどだから、亜寒帯*19が存在するのはありえない。

 ということは、標高の高い高原地方があるのか? あるいは寒流が流れてきたり、季節風や気団の影響か……? それとも人工的な要因が……?

 

 ひとりで考えてもキリがないことだし……この疑問は保留にしておこう。

 

 ジャパリパークのフレンズの掟は「分からないこと=考えないこと」だ。判断停止*20だ。

 

 すると、大きな看板の下の端の隅っこの手が届く所に、小さな落描きがあることに気が付いた。太古の洞窟壁画のような素朴な線画が、照明と満月の光で照らされている。

 

「あれ? この絵は()()()()()()()()じゃないですか? もうひとりは()()の子かな? これ、キリンが描いたの?」

「ホントね……。でも、私が描いたんじゃないわよ。雨で消えかけてて、すごく古い絵ね……。これはきっと別のキリン*21の子よ」

 

 

 

 さて、この「サバンナ地方裁判所」には、木箱やら、くたびれた木製ベンチやら、その辺の車からひっぺがしてきたらしい座席やら、スプリングの飛び出たマットレスやら、錆びついた事務椅子やら……そういった収集物が雑然と並べられている。

 ……もっとも、それらにきちんと着席しているフレンズは、集まったうちの半数もいないが。

 

 シマウマやレイヨウ、ニシキヘビ、ワニ、ヌー、ハイラックス……今日一日で見知った顔ぶれが、地べたに寝転がったり、座席の下に潜り込んだりしている。

 おや……? さっき水場にいたフレンズ……白いワンピースを着た()()()()()()も、満月の青白い月明かりのなかで、積み上げられた廃車のてっぺんに座っている。

 外見からすると、あの子はイカやウミウシみたいな、軟体動物のフレンズだろうか?

 

 

 

 ……そしてそこにはひと際目立つ、新しいフレンズもいた……。

 

 威厳のある()()()()をしている、大柄で筋肉質なフレンズ……。

 ポーズからすると、ネコ科だろう……そして特徴的なのは、その首周りに伸びたボリューミーな髪の毛……。

 

「……まず、お互い名乗るのが礼儀なり。ワレの名は……まあ、いっぱいあってな~……。とりあえず、ワレは皆に『バーバリライオン*22』と呼ばれておるな……」

 大型ネコ科のフレンズが口を開いた。

「は、はい……」

 

「さて、汝は何の獣か、疾く答えよ」

「とくこたえよ~」

 カラカルがいつのまにか、バーバリライオンの横に同じポーズで座っていて、言葉遣いを真似した。

 

「わ、私は……『ヒト』……だと思います……」

 

 バーバリライオンは同じ食肉目ネコ科でも、カラカルとはえらい違いだ。

 ……古風な言葉遣いもだが、やはり一挙手一投足の動作による威圧感が違う……。

「百獣の王」の王たる()か……。

 

「汝はヒトなりや? ならば、我が今から述べる問いに答えよ」

 彼女は身を乗り出して言った。

 

 ま、まさか……答えられなければ、スフィンクス*23やアメミット*24のごとく喰い殺すとでも……?

 

「赤ちゃんは四本足~、オトナは二本足、年寄りは三本足、この動物な~んだ?」

 ライオンはいきなりフランクな口調になった。

「……ヒト?」

「正解だ! 見事なり!」

 

「え~? なんでなの~?」

 カラカルが疑問の声を上げる。

「それはですねぇ! ヒトは、赤ちゃんの時は多くの動物と同じ四本足、大人になるとフレンズと同じ二本足、歳を取って腰が曲がると『木の枝』をつかんで脚の代わりにして三本足になるそうですから!」 

 ヘビクイワシがニュっと横から出てきて説明した。

 

「いやあ、頭の良いフレンズと遊ぶのは面白いのう!」

 バーバリライオンは嬉しそうに尻尾を振った。

「では、次の問いに答えよ。上は大海、下は大火事、これなあに?」

「ちょっとバーバリ~! ハナコはこれから私と『さいばん』するんだから! なぞなぞ遊びはまた今度にしなさいよ!」

 キリンが文句を言った。

 

「え、えー。せっかく賢い子を見つけたのに~……ワレはもっと遊びたい……」

 ……ってオイ! アンタ裁判と無関係のただの()()()()()()かい!

 

 

 

「みなさん、置いてくなんてひどい~!」

 そこへ、聞き覚えのある声。

 そういえばスッカリ忘れていたが、地下牢に置いてきぼりにされていたアードウルフ! この緊張感の抜けてしまった空気の中に、廃車を乗り越えて飛び込んできた。

 

「お、アードウルフ、アンタ見張りさぼって寝てたでしょ~」

「気持ち良さそうに寝てたから置いてきたのよ!」

 カラカルとキリンが叱った。

「ご、ごめんなさい~!」

 

 

 

「ヨォシ! それじゃ、これでみんなそろったわね! せいしゅくに! せいしゅくにぃっ! さいばん始めるわ!」

 

 柑橘類*25らしきイラストが貼られた木箱の前に、裁判長キリンが正座して一声。

 そしてミカン箱の上に置いたお鈴*26を、ネイルハンマーでゴング*27のようにカンカンと、したたかに打ち付けている……!?

 

「さて、このさいばんは『はかせ』いわく、『ヒト』が現れた時に行うものであります。ごぞんじの子もいましょうが、昔々、『かばんさん』がヒトを探しに出かけた後、たくさんの()()()()()()()がパークにやってきました。その生き残りや遺物が、フレンズになっているかも……ということですね」

 ヘビクイワシが裁判の目的をみんなに説明し始めた。

 

「あの、話の途中ですいません……質問があるのですが、よろしいですか?」

 気になることがあったので質問してみる。

 

「ええどうぞ、ハナコひこく」

「まずその『博士』って、一体どなたですか……?」

「ああ、『はかせ』はトリです。『としょかん』に棲んでて、ものしりで、すごーいかしこいトリ頭*28でありましょう! ジャパリパークの(おさ)です! 『もじ』もたくさん読めて、『けいさん』もできて……さすがのわたくしも、はかせの頭の良さにはかないません!」

 ヘビクイワシは、まるで自慢するかように答える。

 なるほど、指導者的立場のフレンズか……。

 

「『はかせ』はカラスのフレンズよね。『動物のころからすごく頭がよくて、どうぐも作れるんだぞ』って、よく自慢してるわよね……名前、なんだっけ? 『カレーダイスキカラス』だっけ?」

「たしか『カレーウドンカラス』じゃないかしら?」

「『カレードリアカラス』じゃなかったですか?」

 カラカルとキリンとアードウルフが、何やらおいしそうな名前を言い合っている。

 何のカラスか分からないので、とりあえず「カレーの(カラス)博士(仮)」としておこう。

 

 

 

「あともうひとつ……さっきおっしゃった()()()()()()()とは、どういう意味ですか?」

 私はより重要な疑問をヘビクイワシに尋ねる。

 

「おお、それをこれから説明しようと思っていたのです。……つまり、パークにやってきたその()()()()()()()()()()()()()は――『かばんさん』が連れてきたのかどうかは、分かりませんが――『自分たちはヒト』だと名乗ったのです。でも、かばんさんとは似ていない個体が多かったそうなんですね~。かばんさんとは()()()()()()()だったのかもですし、あるいは()()()()()のけものだったのかも……。その後の()()だって、そのヒトみたいな獣のせいだって、はかせが言ってましたし……」

「ちょっと……『異変』って?」

 

「もう質問はだめよ! ハナコひこく! このほうていでは、質問するのは私で、答えるのがあなたなんだから!」

 キリンがハンマーを叩く。

 

 ……何なんだ『異変』って?

 とても気になるが、ここは立場をわきまえて黙ることにしよう。

 

 

 

「やくわりぶんたん! 『しょき』はヘビクイワシ! 『けんじ』はカラカル! 『べんごし』はアードウルフ! 他のみんなは、『ばいしんいん』か『ぼうちょうにん』か『しょうにん』か、どれか選ぶのよ!」

 

 がや、がや……ざわ、ざわ……。

 集まったフレンズたちのざわめきの声……。

 

「ばいし……なに? なんだって?」

「むつかしくて、わかんないや」

「どれかえらべ、って言われても……何がちがうのか、全然わからん」

「んー、違いが分からないなら、何を選んでもいいんじゃない?」

「私は『やこうせい』じゃないから、もうねむいよー」

「あ~おなかへったな~」

 フレンズ諸君!

 もう最初から「裁判ごっこ」にすらなってないが、大丈夫かオイ!

 

法廷(コート)があるって聞いたから、せっかく来たのに、どこにも庭球場(コート)なんて無いじゃない! わたしは()()()しに来たのよ!」

 と、ぷりぷり怒っているのは、クチバシを模したサンバイザーをかぶりテニスウェアを身につけた水鳥?のフレンズだ……。

 

「ぱお~ん、あのですねぇ~。私の友達にも、じゃんぐるちほーに『はな子*29』という子がいまして~。こういうときは~、どうやって区別したらいいですか~?」

 そう、のんびり口調で質問するのは、見紛うことなき「ゾウ」のフレンズだ。頭の上の丸い耳がかわいい。

 

「なるほど……そういう時はヒトは『ミョージ』という、別の名前をアタマに付け加えたそうですから、今、ハナコにミョージを考えてあげましょう」

 ヘビクイワシが提案する。

 

「それじゃ、カラカル、さん……最初に会った時と同じように、名前を考えてくれませんか? 『ハナコ』って名前をつけてくれたでしょ」

「え? 何言ってるのよ? 名前のハナコは、そりゃ()()()()()()()()()()んじゃない!」

「え……?? そうだったかな?」

 

「じゃあ、ありきたりだけど、さばんなちほーのハナコだから、『サバンナハナコ』でどう?」

「は、はい……」

「おっお~う……これで『ジャングルハナコ』のフレンズと、区別できますね~」

 ゾウのフレンズも納得のネーミングセンス(なのか?)

 

 

 

「よし『サバンナハナコ』のさいばんをぞっこうします! 気を取り直して、最初の『しょうにん』、前へ!」

 

 キリンが一声かけると、ごったがえしたフレンズの群衆の合間を縫って、レイヨウとシマウマのフレンズが出てきた。

 水場で見かけたふたりだ。

 

「はいはーい! うーんとね、まず自分の名前を言えば良いのよね! 私はインパラ!」

 スポーティな服装のレイヨウフレンズが快活な調子で自己紹介した。

 

「こんばんは~、です。私はグレビーシマウマです」

 続いて、少しおっとりした雰囲気のシマウマフレンズが名乗った。

 

 そもそも、陪審員やら証人やら、形だけ揃えたようだが……私は何の罪で起訴されているのだ?

 おそらくこれは「民事裁判」……のようなもの、だと思うが、私は何も悪いことはしていないハズだが。

 ……ヒトが……私が……()()()()()()()()()()だとでも言うのか……。

 

「ではしょうにん、サバンナハナコが水場で行っていた行動を話しなさい!」

 

「ハナコは、ずぅーっとあたしのおしりを見てたよー」

「うん。見てた見てた。すごい勢いで見てたね」

「う……」

 

 ぐぬぬ……。予想外の罪状が出てきた……。

 

「ハナコ、今のはつげんを、じじつとみとめるわね?」

「い、いえ! はい! チラっと見えただけで! イヤ、確かにスカートの中が見えたのは事実だけど……それは彼女が()()()()()()で水を飲んでいたからで……。決してやましい思いがあったワケでは……。偶然少し見えただけで……! そ、そんな、ずっと見てただなんて、そんなことはないです……」

 

「それうそよ! あたし、あなたのコト、ちゃんと見てたんだから!」

「そうですよ。私たち()()()()()は、まわりがよく見えるんです。気づかなかったかもですが、あなたがたのこと、きちんと見てましたよ~」

 証人たちが反論した。

 

「うん、たしかに。ハナコはよくフレンズのおしりを見てるわね。きっとフレンズのおしりが好きなのよ」

 検事のカラカルもその点を追及する。

 

 いかん!

 このままでは、女の子のお尻(ケツ)を舐め回し覗くド変態として、有罪判決が確定してしまう……!

 

「ホレ、みんなこう言ってるし、私だって知ってるわよ! ひていするところがますますあやしい! 犯人はみんな、そうやってひていから入るものよ! サバンナハナコ、みとめなさい! あなたは、おしりが好きなのか!」

 

「こ、これには健全な理由があって……いや、女の子のお尻を見つめるのが健全という意味ではなくて……」

 しどろもどろ。 なんか……痴漢冤罪みたいな展開になってきたぞ……。

 あ、この場合冤罪じゃないのか……。

 

 

 

「あ、ちょっと待ってください。サルは、おしりの赤さを見て仲間の『はつじょう』を知ると、ずかんに書いてあります。ハナコは()()()()()()()()()()()()()? はつじょうしているサルなので、おしりが好きなのでは?」

 ヘビクイワシがとんでもないことを言い出した。

 ……どう反応すればいいのよ、これ……。

 

「ウム! 『はつじょう』しているかどうかが、ヒトかヒトでないのかの『はんだんざいりょう』になるわね! 確かめる方法があるわ! ハナコ、()()()()()()()()()()()()

 

 は……!?

 

「おしっこ! とぼけないで!」

 

 え え ー な に こ の 展 開 !?

 

「さあ、今ココでするのよ! 私がじかに飲むから! はつじょうしてたら、すぐ分かるから!」

 

 キリンがミカン箱を飛び越えて、私の前に踊り出て、仰向けに寝転がったかと思うと、私の股間の下で口を開けて、そう言い放った。

 

 彼女には全く悪気が無くて、真面目に言っているのは、理解できる……。

 理解できるがッ、私の本心が思わず口に出していたセリフは……。

「アホか! ふざけんなこのバカキリン!」

「ぐもおおおっ! くのやろおぉっ! 言ったなあっ! バカって言った方がバカよ!」

 また泣き出したなキリン!

 だが泣けてくるのはこっちだぞバカキリン!

 

 

 

「ぐむむ! またバカって言ったな! さあっハナコすみやかにおしっこ吐けっ!」

「わ、私には我慢する権利がある! 尿検査は公判で不利益な証拠となる場合がある! 私には排尿の際に便器を求める権利がある! もしトイレを設置する経済力が無ければ、公衆便所を利用する権利がある!」

 私は錯乱してヘンな警告*30を言った。

「しょうこ出してラクになるのよ! ()()()してやる!」

「お……乙女の純情を奪い*31、その心を傷つけた罪は特に重い!」

「何をぬかす! よいではないか、よいではないか~!」

 

 あっ……! んっ……! 

 やめて! そこはやめて!

 いけませんわ! はしたないですわ!

 

 

 違法な手段で入手された証拠は、法廷では証拠能力無しとッ……!

 いや、これは民事裁判だけど……って、そういう問題じゃないわい!

 

 あっー……!貞操の危機なのだー……!

 

 

 

 恐怖の動物裁判はまだまだ続くよ!

*1
メルヘン(おとぎばなし)メルヘンチック(かわいらしい)の意味ではない。Märchen(メルヒェン)とは、もとはドイツ語の文学用語で、神話や伝説に由来しない非日常的な短い昔話・民話のことを指す。固有名詞が登場しない、背景描写や心理表現が淡泊、時代や場所が不特定、もとは口承なので細部の違いが多い……といった特徴がある。なお児童文学とは意味が違い、そもそも近代的な「子供」という概念が成立する以前から存在する文学形式だ。おとぎ話では魔法使いや妖精が登場したり、動物が喋ったりするけれど、オリジナルのメルヘンのなかには残酷で性的でグロテスクな話も多く存在する。とても極端な話になるが、たとえばグリム童話の初版には『子供たちが屠殺ごっこをした話』なる凄まじい物語が収録されていたりするのだ! そうでなくとも、原形に近いおとぎ話は、とかく恐ろしいものが多い……。赤ずきんちゃんが喰い殺されて終わる『赤ずきん』。カニバリズム要素や絞殺シーンが含まれ、継母の王妃が焼けた鉄の靴を履いて死ぬまで踊らされる『白雪姫』。足切断・目潰し・首吊りなどの猟奇描写満載の『シンデレラ』。実在の大量殺人者ジル・ド・レをモデルにした『青ひげ』などなど……。これら「生のメルヘン」に多分に含まれる「怖さ」や「エロさ」は、人間の本能を刺激する要素として、長い時間がたっても変わることなく語り継がれてきた要素なのだ。

*2
【動物裁判】中世から近世にかけて、おもにヨーロッパで行われた()()()()()裁判(※()()じゃなくて、裁くです)。これは「罪を犯したものは動植物・無機物だろうと裁かれねばならない」というキリスト教の考えによるもの。法廷ではヒトと同様に大真面目に扱われていたという――「被告」にはきちんと弁護人がついて、処刑や破門などの人間と同様の判決が下された。動物裁判は中世では一般的であったらしく、記録に残っているだけでも200件以上の例がある……。人間の(ことわり)で動物を裁くなど、全くの非合理……中世暗黒時代の愚行にすぎない、と我々現代人には思えるかもしれない……。しかし中世という時代には、ヨーロッパでは未知の象徴たる森林がドンドン切り開かれていき、農業では技術改革が起こり、人類の自然への影響力が強まった時代、()()()()()()()()()()するべきという考えが発達していった時代だ。この自然への干渉の試みは、古代では「精霊信仰(アニミズム)」であったのが、中世では「人間中心主義」へと変わり、そして近代科学の「人間相対主義」へと継承されていく。これが西洋人の理性が()()していった過程なのだ。不可思議な「動物裁判」とは、その進化の過渡期であった証拠に他ならない。そして今回の動物たちによる「人間裁判」などは、一見すると非常に滑稽だが……実際のところ、我々人類は地球上で繁栄を極め、自然環境に対し大きな影響力を持ち、その行動は()()()()()()()()()()()()()()()()()――言い換えれば、現代人類(ホモ・サピエンス・サピエンス)はすでに()()()()()()()()()()「人間裁判」の被告の立場に否応なく置かれているのだ。

*3
【荒唐無稽】説得力や現実味が感じられないこと。いわゆる「リアリティがない」の中国故事バージョンの言い方。「荒唐」と「無稽」で出典が異なり、荒唐のほうは古代中国の思想書『荘子』の中にある「スケールが大きい」という褒め言葉。対して無稽は、孔子が編纂したと言われる中国最古の歴史書『書経』に由来する「根拠が無い」という意味の語句だ。つまり称賛と批判の言葉が組み合わされた熟語だが、基本的にマイナスの意味で使われる。だがまれに「すげぇ! なんてとんでもねぇホラ話なんだ!」と良い意味で使われることも。

*4
【非現実の王国で】「世界一長い小説」のタイトル。半世紀以上執筆された一万五千ページ以上もある超長編小説で、作者本人によるトレースやコラージュの味わい深い挿絵が大量にちりばめられている。あまりにも長~いため、いまだに完全版が出版されたことはない(※なお正式タイトルもすっごく長い)。作者はヘンリー・ダーガーというアメリカ人で、本業は病院の清掃員。『王国で』は、金にも友人にも幸福にも恵まれなかったこの孤独な男が、誰に見せることもなく生涯制作し続けたアウトサイダー・アートである。そのストーリーはと言うと……架空の異世界で、子ども奴隷制の悪の国家と、正義のキリスト教国との大戦争が勃発し「ヴィヴィアン・ガールズ」という美少女戦士軍団が活躍する、という勧善懲悪の物語。まっとうなファンタジー小説に聞こえるが、実際はロリ・ふたなり・リョナ・グロなどアウトな要素が満載……。年老いたダーガーが体を壊して続きを書けなくなり、捨ててくれるよう頼んだアパートの大家さん(芸術家でもあった夫婦)に価値を見出され世に出された……という変わった来歴がある。

*5
【キャロル】ルイス・キャロル。19世紀ヴィクトリア朝時代のイギリスの数学者・小説家・写真家。『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』などの作者だ。本名はチャールズ・ラトウィッジ・ドジスンで、そっち名義で数学の本も書いている。長い間キャロルは世間ではロリコンだと思われてきたが、近年の研究では「ロリコンじゃなかったよ」説のほうが強いようだ。内気そうなイメージに反して実はけっこう社交的だったらしい。代表作の『アリス』はいろいろ映像化していて、とくにディズニー映画が有名だけれど、ヤン・シュヴァンクマイエルというチェコの映画監督のつくった不気味さと狂気感が満ち溢れた病的なアリスなんかもオススメ。

*6
【カフカ】20世紀初頭のチェコ・プラハ出身の小説家、フランツ・カフカ。「カフカ」とはチェコ語でニシコクマルガラスの意味。(※ユーラシア大陸西部に分布し、ハシブトガラスの半分ほどのサイズの小さなカラス。首まわりや胸が白い。ローレンツの『ソロモンの指輪』や、映画『魔女の宅急便』に登場しているカラスだ。近縁種のコクマルガラスなら日本の九州や関西ちほーで見られます)……()()()()()()の話に戻りましょう、カフカはユダヤ人だったけれどドイツ的文化のもとで育ち、作品もみなドイツ語で書かれている。その作風は超現実(シュルレアリスム)的で不条理で悪夢的。代表作は『変身』『審判』『城』など。本職は役所づとめの役人で、仕事終わりの余暇の時間に小説を執筆していたそうだ。カフカは死ぬ前に友人に「自分の小説は全部処分してくれ」と遺言を残したけれど、それが守られなかったおかげで私たちは彼の作品を今でも読むことができるのです、当人は草葉の陰で迷惑がってるかもしれないが。

*7
【宮沢賢治】岩手県花巻市出身の詩人・童話作家。雨にも負けず、風にも負けず、一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ……そういうものになりたくて、農業・創作・人間教育をがんばった人だ。でも生涯童貞だった?とか、春画を集めていたりとか、手書き原稿が判読できなくてよく分からない部分があるとか、ヘンなエピソードも多々あります。作品には、生物や鉱物など自然全般への愛と関心、仏教(法華経)への深い傾倒が感じられ、ユーモアと哀愁(ペーソス)漂う雰囲気のものが多いが……『注文の多い料理店』『オツベルと象』『毒もみのすきな署長さん』など、ブラックだったり不気味な話も多い。代表作は『銀河鉄道の夜』『グスコーブドリの伝記』『よだかの星』『やまなし』などなど……。なぜかSFC(スーパーファミコン)で「スーパー宮沢賢治大戦」とも言える『イーハトーヴォ物語』なるゲームがあります。賢治ファンの方にもオススメの、牧歌的で幻想的なADVゲーム。BGMも最高に良いです。

*8
安部公房(あべこうぼう)】急死しななければノーベル文学賞を取っていた、とのもっぱらの評判の小説家。戦時中の満州で育ち、東大医学部卒という経歴がある。ドラマ脚本や戯曲など幅広く手掛けており、日本で初めてワープロを使いだした作家のひとり。さらにものすごいカメラ好きで小説に自分の写真を載せたり、ピンク・フロイドが好きで業務用シンセサイザーを持っていたりなどのエピソードも……。代表作は『砂の女』『箱男』『壁』など。狂気と理性、不条理と論理性を両立させる内容で、独創的な比喩と()()宿()()()()の描写が魅力的。なんだかどれもエロい描写が多いような気がします。ほとんどの作品は新潮文庫で読めますが、最近では岩波文庫でも出始めました。

*9
【モップ】床などを清掃する掃除用具。とくに、吸水性の高い繊維を柄につけた「水拭き(ウェット)モップ」を指し、「モップしぼり器」と合わせて使う。昔からありそうな道具だが、発明特許が取られたのは19世紀になってからのこと。モップ糸の部分を「ヘッド」とは呼ぶものの、もちろんこのキリンのようにカツラのつもりで頭にかぶるモノではない。でも英国貴族出身のレスラーが、弟子のソ連出身レスラーのセコンドにつくときにかぶっていたとか……?

*10
【ネイルハンマー】頭部(ヘッド)の片側に釘抜きもついている工具ハンマー。キリンがなぜこんな凶器(もの)を持っているかというと……法廷での合図用の小槌として使うため。ちなみにこういう裁判やオークションで用いられる小槌は英語だとhammerではなくgavel(ガヴル)と言う。ところで漢字では、頭部の材質によって「槌」「鎚」と2種類があり、キリンが今持っているのは全金属製のハンマーなので後者。

*11
【暗幕】遮光用カーテンのこと。映画館や撮影スタジオなど照明に近い所で使用されることが多いため、生地には遮光性のほかにも難燃性が求められる。キリンが着ているのは学校などの公共施設で使うような、分厚い生地で耐紫外線性のある遮光1級の防炎カーテンだ、ボロだけど。このサバンナ地方にはかつて「フレンズの学校」があったそうなので、そこの遺物なのかもしれない。しかしキリンは美形で長身なので、こんなぼろを羽織ってもけっこう似合う。

*12
【天使】キリスト教などにおける「神の御使(みつか)い」。細かい種類や順列がいろいろある。ちょっとご紹介すると、智天使(ケルビム)という上級の天使などは、いわゆる一般的な「背中に翼のある天使」とちがい……顔が4つあり、車輪を装備して、全身に目がついているなど、むしろ怪物(クリーチャー)みたいな外見だ。さらに堕天使ルシファーや闇の天使ベリアルみたいな、悪魔寄りになった連中もいたりして。天使と悪魔は、プロレスの善玉(ベビーフェイス)悪役(ヒール)や所属団体の違いみたいなもので、実はそんなに差異はないのかも? だいたいキリスト教ではよくある話だが、古代カナン神話では神格であったバアル(ベルゼブブ)やダゴンが、聖書では()改造(()改造?)されて、悪魔として取り入れられたりなどしている。他宗教の神を取り入れるのは、仏教や道教でもよくある話だ。(続く……)

*13
【アクマ】(……続き)なんにせよキリスト教・ユダヤ教・イスラム教、そして仏教では「邪神(悪魔)」と「守護神(天使)」、つまり正義側と悪役を明確に分けている。ところで、それに対して日本神話はそういうハッキリとした分け方をしていないのが特徴だ。スサノオや八幡神、菅原道真公、水神の類などは頼れるぅ~神様だが、()()()()としての二面性も持つ。また「祟り神」として有名な平将門公や崇徳院のほかにも、穢れや災いや裁判の神「禍津日神(マガツヒノカミ)」や、日本書紀に登場するまつろわぬ星神「天津甕星(アマツミカボシ)」(オカルトな人々の間ではその正体はルシファーだと(ささや)かれる)など……悪鬼悪霊のたぐいも神社で崇拝されていたりするのだ。これは西洋なら異端や悪魔崇拝になってしまう。このように日本の仏教・神道の神の扱いは、西洋の天使・悪魔とはずいぶん異なり、ユルいというか、機能的というか、価値観や主義思想があいまいというか、畏れ崇める相手ならば節操が無くてカオスなのは、日本人の(というかアジアの?)昔からの特徴なのかも。

*14
【ヒトのなかまか?】たいへん意味深な皮肉のように聞こえて、ちょっとギョッとするが……。おそらく絵本やアニメで見たオニやアクマのことを、二足歩行で言葉を話すことから「ヒトの同種」だと思っているのだろう、たぶん。

*15
【言葉のあや】「綾織り」という複雑な布の織り方を語源とし、もともとは「たくみな言葉遣い」という意味の言い回しであった。しかし現代では「言葉のあやでそう言っただけで……」という風に、「言い間違い」「言いすぎ」「聞き手の誤解」の意図で使われることが多い。おまけに「言い方とかも~そういう問題じゃないだろ~っ!」というような場合でも、「言葉のあや」と言えば、なんとな~く許される雰囲気になるという便利なフレ~ズ。

*16
【廃車ヤード】なぜこんなサバンナのど真ん中に、似つかわしくない廃車置き場があるのだろう? ……まるでストーンヘンジや円形劇場を思わせる配置で、ぐるりと円を描いて廃車が置かれている。意図的にバリケードとして積まれているようにも見えるが……? とりあえず今ではサバンナ地方の目印(ランドマーク)として、フレンズたちによって集合場所や集会場として使われている広場だ。ちなみにフェアレディZやハコスカ、ケンメリ、Nコロ、シビックなど、往年の国産旧車がミョ~に多かったりする。だがどれも外装は錆びてボロボロに剥がれて、タイヤにはツタ草が絡み、エンジンやバッテリーなどのパーツもとても使えそうにない……。どこかその辺に、使えそうな車両でも落ちてないのだろうか?

*17
【島全体の地図】パークにはカフェ、図書館、水族館、ロッジなどの施設があるようだ。さらに80年代に流行した懐かしの巨大迷路や温泉旅館(このへんのセンスがジャパリパークらしいところ)、小規模な遊園地なども存在するらしい。さらに美術館やプラネタリウム、ラジオ塔、地下遺跡、海上発掘施設、教会などの変わった施設も……。また、ここサバンナ地方から北東に位置する「ひので港」からは、隣の島にフェリーが定期的に出ている……なんて情報も書かれている。さらに説明書きによると、パークはケッペンの気候区分による「五つの気候帯」に分類され、現在地「サバンナエリア」には、「ジャングルエリア」や「砂漠エリア」が隣接しているようだ……。

*18
【雪山エリア】南海の島のジャパリパークに雪が!? ……実はさほど驚くべきハナシでもない。ココよりずっと南(北緯19~29度)のハワイ諸島や、赤道にほど近い(南緯6度)ニューギニア島などでも()()()()()のだから。たとえば森林限界以上の標高4,000mを超えるマウナ・ケア山では冬には1m以上もの積雪が数ヶ月間観測できる(マウナ・ケアとは「白い山」の意味だ)。そして、ニューギニア・マオケ山脈の最高峰、七大陸最高峰のひとつにも数えられるプンチャック・ジャヤ(カルステンツ・ピラミッド)峰(標高約4,900m)などでは、なんと氷河が見られるのだ。また日本国内でも、鹿児島県大隈諸島に属する屋久島(やくしま)(北緯30度20分)は緯度的には亜熱帯気候ながら、その中央部には1,500m級の山々(最高峰は標高1,936mの宮之浦岳(みやのうらだけ)だ)がそびえ立ち、()()()()()()()()()()()()()で、()()()()()()()()()()()()()()()()()なのだ。亜熱帯~亜寒帯までの豊かな動植物相が見られる屋久島は、1993年には()()()()()()()()のひとつとして登録されている。

*19
【亜寒帯】ケッペンの気候区分での低緯度から4番目の気候帯で、記号はD。冷帯とも言う。夏は暑いけれど短くて、冬が長くきびしいのが特徴。降水量の違いにより大きく分けると、亜寒帯湿潤気候(Df)・亜寒帯冬季少雨気候(Dw)・高地地中海性気候(Ds)の3つに分類される(f、w、sの文字はそれぞれ湿潤・冬季乾燥・夏季乾燥を表すドイツ語から)。日本では、北海道や東北内陸部、北関東・甲信越・飛騨・北陸などの中央部の「高原ちほ~」が亜寒帯気候にあたる。世界的には、アメリカ北部、カナダ、ロシアの大部分や中国北東部など、北半球の北緯40°以北地域に幅広く分布している。しかし南半球ではこの緯度にあたる領域には一面の海洋が広がっており、亜寒帯の陸上地域は存在しない(※南極大陸は「寒帯」に属する)。これは、南半球の表面の8割が海であり、水の持つ「温めにくく冷めにくい」という温度を安定させる性質が関係している――亜寒帯気候には、夏は暖かく(10℃以上)冬は寒く(-3℃以下)と、()()()()()()()という条件があるからだ。

*20
判断停止(エポケー)】頭カラッポでな~んも考えないのとは違います。ギリシャ語で「判断をしないこと」の意味で、古代ギリシャ懐疑主義やフッサールの現象学での哲学用語だ。独断・偏見・先入観・思い込みなどによる早急な判断を防いで、保留にしておくこと。しかしここでは、どちらかと言えばもっと素朴な……近代科学が成立する以前の概念、珍妙不可思議なことを「不思議だなぁ」だけで済ませる――「自然をそのままを受け入れること」に近いかもしれない。それがサバンナのルールだ……などとハナコは考えているが、それは多分に彼女が()()()()()()()()()を受けてきているから、だろうか? ……なお、あまり()()()()()()()()()()()()()の筆頭がすぐそばにいるよ~。だ、誰だろ~そのクジラ偶蹄類って~??

*21
【別のキリン】パークの大変長い歴史のなかで、キリンのフレンズは何匹もおり……この絵は過去の()()()のキリンというわけだ。心なしか知性的で上品な顔で描かれている。それに比べてまったく、最近の若いキリンのフレンズは……(ピラミッドの落書き並みの愚痴)

*22
【バーバリライオン】別名アトラスライオン。かつて北アフリカのエジプトちほ~やアトラス山脈、バーバリ(マグリブ)ちほ~に広く生息していたアフリカライオンの1種。他種ライオンより穏やかな性格で、山間の森林部を好んだという。胴が長くて、胸板が分厚くて、脚が短くて、ちょっとずんぐりむっくりな感じする、頑丈な体をしているのがバーバリライオンです。さらに毛皮は黒みがかっていて、黒い大きなタテガミが背中やお腹まで伸びており、その外見はエジプト神話のスフィンクスやセクメト女神、映画『ライオン・キング』のスカーのモデルらしい。他種のアフリカライオンの1.5倍ほどのサイズ(最大個体は全長4m以上!?)を誇るライオン最大種で、赤道から離れるほど動物は大型化するという「ベルクマンの法則」の分かりやすい一例。だがさほど大きくはない、とする歴史資料や調査結果もある。古代にはアフリカからはるばるローマに連れて来られて、闘技場で剣闘士(グラディエーター)と戦ったり、当時異端であったキリスト教徒の公開処刑にも使役されたとか……。ちなみに明治時代に日本の動物園に初めてやってきたライオンもバーバリライオン。だがバーバリライオンは20世紀までにドンドン数を減らし、そして1922年にアトラス山脈の最後の個体が死亡してとうとう絶滅した……と、長らく思われていたが……なんとモロッコ王の私設動物園で純血種が生き延びているのが発見され、再繁殖に成功! そういうわけでモロッコ首都の「ラバト動物園」には、全世界のバーバリライオンの半数以上がおります。

*23
【スフィンクス】エジプト神話などの古代オリエント神話に伝えられる、ライオンの体とヒトの頭部を持つという幻獣。ライオンだけでなく、牛の体を持つものや翼があるものなど外見は様々。ナイル川西岸の古都ギザにある「三大ピラミッド」のそばで佇む「大スフィンクス」や、ルクソール神殿とアメン神殿を結ぶ「スフィンクス参道」のものがとくに有名……。こいつらスフィンクスは入口を守る番人なのだ……(古代オリエントちほーでは、入口に「守護獣の石像」を置くという文化があったらしく、その慣習が東方まで伝播し、東の果ての日本では、神社の「狛犬」や沖縄の「シーサー」になったそうな)。さらにギリシャ神話でも同名の、旅人に「謎かけ」をするという怪物がいるが……外見が異なり、女性の上半身と獅子の下半身を持つ有翼獣だ。西洋画の題材にもされているが、イメージに反して意外とサイズが小さくて(大型犬ぐらいで)驚く。両者はよく混同されるが、エジプト神話のほうは顔が男性だしナゾナゾを好んだという記録は無い。さらに! イエネコでSphynx(スフィンクス)(怪物のほうとはつづりが違う)という変わった品種もいて、ヒゲがなくて体毛もほとんど生えていないネコだ。映画『ET』のモデルらしい。いかにも熱帯エジプト原産のネコのように思えるが、寒さにも暑さにも弱く(肌に直接日光が当たるので紫外線に弱い)、じつは「カナディアン・ヘアレス」の別名どおりカナダ生まれの突然変異種だ。無毛ネコが生まれたという記録は世界各地にあるが、とくに古代エジプトのネコの姿と似ているからスフィンクスと名付けられたらしい。

*24
【アメミット】エジプト神話『死者の書』に登場する、水中・水辺・陸地それぞれ最も恐ろしい獣たち(ワニ・カバ・ライオン)を掛け合わせた怪物。そんなコワモテだが性別はメスらしい。アメミットは死者の審判において、罪人であれば心臓を(むらぼ)り喰らい消滅させるが、善き者であればその再生を手助けする頼れるぅ~守護神になるという。……ちなみにイギリスのSF古生物ドラマ『プライミーバル』では「プリスティカンプスス」なるワニの絶滅種がアメミットのモデルだとされている――ソイツは中生代白亜紀~新生代初期にかけて生息していた、ヒヅメを持つ「陸生ワニ」らしい。それにしても……今ココにはバーバリライオンとナイルワニのフレンズがいる! あとはカバさえいれば! リーチなのに惜しい!(何が?)

*25
柑橘(かんきつ)類】ミカン科の、とくにミカン属・カラタチ属・キンカン属の果物の総称。英語ではシトラス・フルーツと言うが、これはミカン属の属名Citrusから。ミカン、オレンジ、レモン、グレープフルーツ……などなど品種は膨大だが、じつは大部分はミカン属だ。果実にはビタミンCやクエン酸が多く含まれ、甘酸っぱく爽やかな味わいが特徴。最初は緑色をしているが、熟すにつれて皮に含まれる葉緑素は分解され、カロテノイドという色素が残るため黄色くなっていく。柑橘類は熱帯・亜熱帯で進化した植物らしく基本的に耐寒性が低い。また枝にトゲがあるものが多く、葉っぱはイモムシに食べられやすい。が、ゆえに昆虫採集キッズにとっては絶好の蝶採集スポットだ。

*26
【お(りん)】仏具の一種で、お参りの際に打ち鳴らす「鳴り物」のひとつ。お仏壇に置いてある「金属製のお椀」のようなアレです。専用の座布団と台の上に置き、(ばい)と呼ばれる棒で打ち鳴らす――「美しく清い音色」を鳴らせば、それだけで先祖の供養になるのだ。なお、お寺においてある大型のものは鏧子(けいす)と呼ばれ、葬儀や法要での読経の際に木魚と併用される場合が多い(その際は鏧子は左手側に置く)。お経の決まった所でこれを荘厳な音色で鳴らして周囲に合図を送るのだ。携帯用に取っ手をつけた小型のモノもあり、引鏧(いんきん)と言う。※宗派によっては呼び方や使用法が違う場合があります。なお材質はおもに真鍮(しんちゅう)などで、乱暴に扱うと割れたり音が悪くなったりするので、キリンのよーな罰当たりな使い方をしてはダメでーす。

*27
【ゴング】さあ! レフェリーによりゴングが高らかに鳴り響き、本日のサバンナ・リング「ジャッジ・デスマッチ」が始まりました! ブッポウソウ! ナムアミダブツ! ……ちなみにこのお(りん)は、もとはサバンナ地方の「ジャパリ霊園(セメタリー)」という施設のセレモニーホールにあった備品らしい。

*28
【トリ頭】「(ニワトリは)三歩歩けば忘れる鳥頭」と言われ、間抜けとか忘れっぽいという意味。英語のbird brainも同様。このようにヒトは罵倒語として使うが、フレンズたちの()()()()()()()では「とっても頭が良い」という褒め言葉だ。実際、複雑な飛翔行動や空中からの地形認知ができる鳥類は「かしこい」ので。それにフレンズのばあいでも、鳥の子は平均して知性が高い傾向がある――視聴覚認知能力の高さゆえ、文字や高度な言語を習得しやすく、また飛行能力のおかげで「ヒトの遺物」である本の捜索や貸し借りも効率よく行えるので、物知りな子たちが多い。……以上は「飛べる鳥」フレンズのばあいで……ダチョウなどの「飛べない鳥」だとアホな子になりやすいとか?(失礼な!) 高い知性とコミュニケーション能力が必須の「パークの族長(オサ)」も、霊長類(とくに類人猿)や鳥類のフレンズが任されることが多いようだ。鳥類は発達した視聴覚・空間認識・記憶力・声帯・二足歩行など、じつはサルとの(つまりヒトとの)共通点が多い「かしこい奴ら」なのである。※ちなみに鳥類の脳は、神経の構造が哺乳類とは大きく異なっている。脳細胞が機能を維持したまま()()()()()していたり、大脳じたいは大きいが()()()()が存在しないなど……。そのため近年の論文では、脳の一部には哺乳類のものとは違う名称が当てられている。つまり彼ら「トリ頭」の知能は、単純に脳のサイズや構造では哺乳類とは比較できないようだ……。ところで関係無いが、有名な「首無しニワトリのマイク」も、もしかしてこの鳥類の「脳の特殊さ」のおかげで長期生存できたのだろうか……?

*29
【はな子】サバンナ地方のとなりのジャングル地方(この「丸い耳のゾウ」や前述の「水鳥くちばし」のフレンズもココ出身)にある施設「じゃぱりびじゅつかん」在住の、アジアゾウのフレンズの個体名。絵を描くのが好きな、臆病で繊細でロマンチストな性格のフレンズだが、「『げーじつか』は()()()()なコトをするべき」と勝手に思い込んで、無理してヘンテコな言動ばかりしている。なおこの美術館では、「古代の青いカバ」と自称する謎のフレンズが館長(キュレーター)をやっているそうな。「重量級文化系こんび」なんだね~。

*30
【ヘンな警告】この一連の支離滅裂なセリフには元ネタがある。アメリカ警察の「ミランダ警告」だ。『お前には黙秘権がある!』で始まる逮捕勧告。映画『ダーティハリー』のおかげで、44マグナム(S&W M29)とともに日本でも有名。海ドラや洋画の逮捕シーンでおなじみだが、実際の現場では形骸化していることも多いとか……。これは刑事が拘束前に言う警告なので、もちろん犯人が法廷で自分で言うセリフではない。いや~、そうとう混乱してますねぇ……。

*31
【乙女の純情を奪い…】こっちの妄言の元ネタは特撮ドラマ『機動刑事ジバン』に登場する「対バイオロン法」。平たく言うと、主人公(メタルヒーロー)のジバンが何でも好き勝手していいという恐ろしい法律だ。「第6条:子どもの夢を奪い、その心を傷つけた罪は特に重い」は、特撮らしく熱い熱~いキメゼリフだが……もう法律の形になってないだろこれ~!




【参考資料】

◆ブタ・牛・昆虫… 動物たちを「裁判」にかけて処刑した文化の謎を解く!?ー池上俊一『動物裁判』書評・感想 - 不眠の子守唄
https://moriishi-s.hatenablog.com/entry/gendaishinsho-1019

◆『動物裁判 西欧中世・正義のコスモス』池上俊一 著 Call of History ー歴史の呼び声ー
https://call-of-history.com/archives/22720

◆いきもの通信 Vol.37[今日の本]動物裁判
http://ikimonotuusin.com/doc/037.htm

◆豚も牛も鼠も、法廷へ出頭せよ!(ル・モンド・ディプロマティーク日本語版)
http://www.diplo.jp/articles18/1810-10Cochons,taureaux.html

◆「荒唐無稽」の由来となった物語 中国語スクリプト 故事成語
http://chugokugo-script.net/koji/koutoumukei.html

◆世界の奇書をゆっくり解説 第5回 「非現実の王国で」 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=g8tS2l3ELOw

◆ヘンリー・ダーガー「アウトサイダアートの巨匠」 - Artpedia
https://www.artpedia.asia/henry-darger/

◆ヘンリー・ダーガーが遺した超大作。誰にも知られず60年以上描き続けた物語「非現実の王国で」ADB(Artist DataBase)
https://plginrt-project.com/adb/?p=6439

◆世界一長い物語【ヘンリー・ダーガー「非現実の王国で」】|風のまにまに便|note
https://note.com/manimani_garden/n/n768facae37c7

◆The Rabbit Hole - The site of Lewis Carroll and 'Alice' books
http://www.hp-alice.com/

◆ルイス・キャロル「少女写真を取り続けた「アリス」の作者」 - Artpedia
https://www.artpedia.asia/lewis-carroll/

◆ヤン・シュヴァンクマイエルのアリス 予告編 - YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=N3Ps3U8qSGU

◆『アリス』の不気味さとシュヴァンクマイエル YAMAGATA Hiroo
https://cruel.org/other/svank.html

◆【フランツ・カフカとは】リベラルアーツガイド
https://liberal-arts-guide.com/franz-kafka/

◆日本野鳥の会 札幌支部 ―カフカはチェコ語でニシコクマルガラスのことらしい―
https://sapporo-wbsj.org/archives/16270

◆宮沢賢治の宇宙
http://www.kenji-world.net/

◆宮沢賢治の生涯と作品|独創的な詩人 四季の美
https://shikinobi.com/miyazawakenji

◆安部公房を読む 日本語と日本文化
https://japanese.hix05.com/Literature/abe.index.html

◆グリム童話を知り、学び、楽しむ 学びコラム|東洋大学 入試情報サイト
http://www.toyo.ac.jp/nyushi/column/report/20160218_01.html

◆【報告】「メルヘン」は「童話」なのか?―比較文学文化とグリムの森― 東洋大学学術情報リポジトリ
https://toyo.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=11372&item_no=1&page_id=13&block_id=17

◆幕の具体例_暗幕・目隠し幕の製作・使用生地について 古川商店
http://www.perle-st.co.jp/display_blackout.html

◆ケルビムCherubim 怪物森羅万象
http://fujik.cocolog-nifty.com/fujik5963/2014/07/cherubim-46f0.html

◆禍津日神|八十禍津日神・大禍津日神・八十枉津日神 「いにしえの都」
https://spiritualjapan.net/16476/

◆天津甕星 古社への誘い 歴史の扉
http://kagura999.ikaduchi.com/hpbqsite/mysite1/sub18amakakaseo.html

◆『日産「スカイライン」3~6代目の愛称、どれが好き?』 Park blog
https://jafmate.jp/blog/nostalgic-cars/190213.html

◆「スフィンクス」とは?由来となった動物や謎かけの神話も解説 TRANS.Biz
https://biz.trans-suite.jp/24495

◆《スフィンクスの謎を解くオイディプス》 ルーヴル美術館 パリ
https://www.louvre.fr/jp/oeuvre-notices/%E3%80%8A%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%81%AE%E8%AC%8E%E3%82%92%E8%A7%A3%E3%81%8F%E3%82%AA%E3%82%A4%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%97%E3%82%B9%E3%80%8B

◆ギュスターヴ・モロー-オイディプスとスフィンクス サルヴァスタイル美術館
http://www.salvastyle.com/menu_symbolism/moreau_edipe.html

◆【獣医師監修】スフィンクスってどんな猫?性格や手入れの方法をご紹介! にゃんペディア
https://nyanpedia.com/sphynx/

◆ペットショップCoo&RIKU スフィンクス
https://www.pet-coo.com/zukan_cat/%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%AF%E3%82%B9/

◆エジプト神名リスト:アメミット、アムムト、アーマーン
http://www5b.biglobe.ne.jp/~moonover/bekkan/god/amemit.htm

◆Title41 死者の書 【グレゴリウス講座】
http://www.gregorius.jp/presentation/page_41.html

◆柑橘類というのは、なぜそう呼ばれるのですか。また、柑橘類の色はなぜ黄色いのですか。:農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/heya/kodomo_sodan/0412/02.html

◆柑橘類はどれもミカン属?仲間分けと種類別の旬を知ろう オリーブオイルをひとまわし
https://www.olive-hitomawashi.com/column/2019/08/post-5952.html

◆おりんの選び方 「いい仏壇」
https://www.e-butsudan.com/guide/156/

◆仏壇に祀るリンはむやみに打つものではない!|リンの正しい打ち方・鳴らし方 ベスト仏壇
https://butudan-ec.minrevi.jp/knowledge/butudan-rin/

◆実は賢い“トリ頭” | BS世界のドキュメンタリー | NHK BS1
http://www6.nhk.or.jp/wdoc/backnumber/detail/?pid=170125

◆鳥類の「賢さ」、小さな脳に密集する神経細胞が寄与? AFPBB News
https://www.afpbb.com/articles/-/3090392

◆賢いオウムの脳構造、霊長類との収斂進化か? 科学検定
https://www.kagaku-kentei.jp/news_detail/data/476

◆第10章 もうひとつの高次脳システムの出現︱鳥類の脳 一色出版
https://www.isshikipub.co.jp/2019/07/04/web-book-brain-10birds/

◆鳥類の脳 宮下英明 m's Academe
http://m-ac.jp/bird/brain/index_j.phtml

◆鳥類における大型脳について J-STAGE
https://www.jstage.jst.go.jp/article/ninchishinkeikagaku1999/10/3-4/10_3-4_248/_article/-char/ja/

◆頭なしで18カ月間もニワトリは生きた - BBCニュース
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-34377005
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