ガ、ギィ……!!
「くっ!!」
その時、彼女レイチェルの褐色の肌に珠の汗が浮かび、空調の効かないコクピットということもあってか、不快な感覚が彼女を襲う。
「しかし、ならば!!」
そのまま相手の機体から放たれたビーム、それを自機ザクウォーリアに回避させながら、レイチェルは何とか突破の糸口を探そうとする。幸い相手は先の接近戦ほど、射撃に関して腕が良い訳ではないようだ。
「レイチェル選手、苦戦しています!!」
ワァア……!!
ナレーターの声と観客達の声にレイチェルは答えている暇はない。確かに相手、恐らくはジム・タイプの機体であると思われるが、練度は低いながらも射撃武器を失ったザクウォーリアに対して何とかして寄せ付けまいと、接近させまいとビームライフルを連射する。
「ジュナス選手、ジェガン押しているぞー!!」
そのジェガンから放たれるライフルの波が一瞬消え、その隙にレイチェルはザクウォーリアの懐から小型の手榴弾を取り出す。
ダァ!!
そのまま彼女は自機の速度を上げて、ジェガン機と僅かな距離を取る。そのバックステップの最中に彼女は手榴弾を投げ放った。
ボゥウ!!
「ジュナス選手、五百ダメージ!!」
その攻撃は有効であったようだが、うかうかとはしていられない。こちらザクウォーリアの持ち点はあと二千しかないのだ。
「ビームサーベルの攻撃を受けたらそれでお仕舞いだし、ビームライフルとて当たりどころが悪ければ……!!」
この薄汚れた、年期の入った「アリーナ」での戦闘では機体が破壊されないように点数制の戦いだ。持ち点が無くなればそこで終わる。
「一気にやる!!」
僅かに怯んだジェガンとやら、その対戦相手と名前がまぎわらしい機体に向かってレイチェルは肩のシールドから格闘武器を取り出しつつ、そのまま盾を構えて敵機との距離を詰めようとした。
「レイチェル選手、突撃かー!?」
相手からビームの一斉射が襲ってくる、もうレイチェルはその攻撃を避けようとしない。そのままビームがシールドに当たるのを任せて。
ガァ!!
レイチェル機ザクウォーリアのビームトマホークが敵機ジェガンの肩を強く打った。
「南無!!」
その敵機は構えているシールドから何かミサイルのような物を発射したが、その小型のミサイルはあらぬ方向にと向かっていく。
「う、うわぁ!?」
「若い、しかも慣れてないぞこの人!?」
そのままレイチェルは体勢を崩したジェガンに当て身を食らわせ、そのまま再度のトマホークによる攻撃を与えようとしたが。
「ジュナス選手、持ち点ゼロ!!」
カァーン……!!
そのナレーターの声によってレイチェルの機体「ザクウォーリア」は強制停止をさせられ、彼女レイチェルはコクピットの中から、その場で倒れ伏したジェガンの姿を見下ろす様になる。
「……勝った」
レイチェルの黄色いパイロットスーツの中は汗まみれだ、吐く息も荒い。それは戦いに勝った余韻か、それとも。
「悪いけど、ね……」
生きる為とは言え、他人を下さなくてはいけないこの世界の定めに批判の心を抱いた為か。
――――――
シャワールームから出たレイチェルは、裸のまま携帯端末にと入った通信をその目に通す。
「……ジュナス?」
聞き覚えがある、確か先の戦いで機体ジェガンに乗っていた男の名前だ。
――今度、汚名挽回するからな!!――
「フン……」
何かが間違っているその言葉、それにレイチェルは軽く笑いながら、自らの褐色の肌に下着を身に付けていく。
スゥ……
肌寒さを感じたために、お気に入りの黒いジャンパーをその肌の上に纏ったレイチェルは、そのまま端末をスライドさせ、今日の収支状況を確認する。
「オッズが悪かったか」
やはりあのジュナスという男はあまり、腕が良い男ではなかったのであろう。今日行ったアリーナでの戦いは良い収入とは言いがたい。
「やっぱり、あの依頼を受けないとダメかしら?」
ブツブツと呟きながらレイチェルは、誰もいない控え室の中にジャンパーを放り投げ、いつものラフな服装をその身に纏う。
「実戦、苦手なんだけどな……」
ともあれ、もしも実戦ともなればエアーズロックの「Gシステム」の利用許可を取り、ザクウォーリアの装備を充実させよう。そうレイチェルは一人思う。