風霊のレイチェル   作:早起き三文

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第10話「旧世界の遺跡」

「このシドニー湾の遺跡、本当に大丈夫なの?」

 

 というマリアの呼び掛けにもレイチェルは黙って首を傾げるのみ。

 

「一応、ちゃんとした依頼だから」

「モビルスーツのデータやパーツをかき集める事が、レイチェルさん?」

「まあ、ね……」

 

 レイチェルにしてみれば、先のズゴッグ戦との戦いで頂いた分け前、それの穴埋めをする意味もあってこの依頼を受けたのだ。あまり拒否する権利もなかったりする。

 

「こちらジュナス、地下道の入り口をみつけたぞ?」

「こちらレイチェル、了解」

 

 と、いうことはレイチェルの「ザクウォーリア」とマリアの「アンフ」で調べたこちら側は全く無駄骨だったということだ。

 

「マリア姉さん、一応見つけた素材は入り口の辺りへ置いといたから」

「ありがとう、シェルド」

 

――ザクウォーリアのプラモデル<低質>×2――

――ジムコマンドの腕<普通>×1――

――GP-01の映像記録媒体<低質>×2――

 

 

 

――――――

 

 

 

 バシュウ……!!

 

 何処からともなく灯る明かりの中、レイチェルのザクウォーリアが持つ大斧は警備のモビルスーツを斬り倒す。

 

「スラッシュウィザード、慣れない換装だけど」

 

 とはいえ、ズゴッグの残骸から作れたウィザードはこれしか無かったのだから仕方がない。それにこのような密封空間では利用価値のあるウィザード・システムだ。

 

「こちらシェルド、ジュナスさん終わりました」

「了解」

 

 シェルド・フォーリーの腕前は素人にしては大したものだ。慣れないガンダムを一人前に操っている。

 

「レイチェル、こっちのザニーは仕留めた」

「了解、ジュナス」

 

 翻ってジュナス・リアムの駆るジェガンの兵装は例によってビームサーベルの二刀流。こちらもまた、レイチェルの大斧であるビームアックス「ファルクスG7」と並んで閉鎖空間では有効な武器だ。

 

「……ふう」

「大丈夫、マリアさん?」

「ええ、ありがとうレイチェル」

 

 そして、マリア・オーエンスのアンフはとても戦闘に向いた機体であるとは言えない。いや、開けた場所ではそれなりに活躍出来るのかもしれないが、このような廃墟が密集した場所ではその腕に持つ滑空砲はまともに相手に命中しない。もともとが頭数を揃えるだけの機体なのだ。彼女の責任ではない。

 

「無理しないでね、マリア姉さん」

「ええ、シェルド……」

 

 彼女マリアを気遣うシェルドのガンダム。その神話機体の性能は驚異的だ。強烈な威力を誇るビームライフルは使いづらくても、その手に持つビームサーベルをもってして、彼はすでに三機の戦車型モビルスーツを撃破している。

 

「しかし、ここは……」

 

 そう言いながらコクピット内でぐるりと天井を見渡すレイチェル。彼女の視線の先には旧世界の遺物、その昔に地球連邦という物があった時代の建物がそびえ立つ。そしてそれらの「ビル」を覆うように天井が降り被さっているのが、このシドニー湾近くの遺跡というものだ。

 

「さらに先に通じる道があるな、レイチェル」

「ええ、ジュナス……」

 

 確かにジュナス・リアムの言う通り、プスプスと煙を上げている試作モビルスーツ「ザニー」だか戦車型モビルスーツ「ガンタンク」の先、この遺跡の先にはまだまだ道が続いている様子だ。

 

――ザニーの頭部<普通>×2――

――ガンタンクの脚部<低質>×3――

――120mmキャノン<低質>×2――

 

「取りあえず、これらはその隅に置いときましょう」

「ええ、レイチェル」

 

 そのレイチェルの言葉に従って、マリアのアンフはモビルスーツ達から得た残骸を建物の隅に置く。あの入り口に置いてある品と同じく、後で回収するつもりだ。

 

「マリアさん、アンフにソリが付いてましたよね?」

「大丈夫よジュナスさん、この程度なら持っていけるわ」

 

 と、マリアは言ったが、場合によっては品の選別を行わなくてはならないだろう。

 

 

 

――――――

 

 

 

 ザフィ……!!

 

「お見事、シェルド」

「任せてくださいよ、ジュナスさん」

 

 ガンダムによって一刀両断にされたジン、マシンガンを装備した量産型の無人機を撃破したシェルドは、コクピット内でその鼻を鳴らしながら、自分の幼さが残る顔を綻ばせる。

 

「しかし、何だここは……」

 

 自らのジェガンに天井を見上げさせるジュナスの言葉通り、この空間は今まで通ってきた廃墟の中でも異質な空間だ。天井というものがなく、かとかいってそれが地上に通じている訳ではない。

 

「ジュナスさん、すこし姉さん達と距離が離れてしまったんじゃないですか?」

「そうだな……」

 

 シェルド・フォーリーの言う通り、別のルートを辿ったレイチェル達とは距離が離れてしまっている。狭い空間故に一種の別行動をとったのだが。

 

「ミノフスキー粒子も濃い、合流した方が良さそうだな」

「そ、そうですね」

「ん、シェルド……」

 

 何か、そのシェルドの声に妙な震えを感じてしまったジュナス。彼は一つ顔をニヤけさせると、自分のジェガンの手をガンダムの肩にと置く。

 

「お前、怖いのか?」

「そ、そんなことありません!!」

「そんな強いモビルスーツに乗ってよ、言う台詞じゃないだろうに」

「い、言ってません!!」

「はいはい……」

 

 

 

――――――

 

 

 

「うわっ!!」

 

 と、もしもマリアが「腕」を掴んでくれなかったら、レイチェルのザクウォーリアはそのまま奈落の底へ落下していった所だ。

 

「た、助かりますマリアさん……」

「いえいえ、レイチェルさん」

「……」

「……あの?」

「マリアさん、少し堅苦しくありませんか?」

 

 そのレイチェルの言葉に、マリアはコクピットで少し微笑んだようだ。

 

「……あの」

「そうね、レイチェル」

「はい、マリアさん」

「さん?」

「いえ、マリア……」

 

 そう言ってレイチェルは少しはにかむと、そのまま彼女マリアの機体の肩を叩き。

 

「何か、気安くていいですね」

「ジュナスは嫌いですか、レイチェル?」

「いや、嫌いというより……」

「男だから?」

「まあ……」

「……」

「……」

 

 それきり何か無言になってしまった二人は、そのまま目の前に空いた崖、それを覗き込む。

 

「深いですね、マリア」

「ええ、まるで奈落の底にでも通じていそうな……」

「奈落、ですか……」

「概念的過ぎます、レイチェル?」

「と、いうよりも」

 

 そう言って、レイチェルは今度は天井、いやどこまでも続く縦穴を見上げながら、軽く息を吐く。

 

「何故、旧世界は滅んだのでしょうか……?」

「旧世界、宇宙世紀と呼ばれた世界ですね?」

「ええ、マリア」

「さあ、私にも解りません」

「そうですよね……」

 

 旧世界、レイチェルの知識では人類は宇宙にまでその生活の版図を広げ、栄華に満ち溢れていた時代の事である。何年何十年、いや何百年昔の事かは解らない。

 

「……戻りましょう、マリアさん」

「そうですね」

「あっ、またあたし……」

「フフ……」

 

 

 

――――――

 

 

 

「ありゃ、道に迷ったか?」

「ど、どうしましょうジュナスさん……!?」

「おお落ち着けシェルド……!!」

 

 そのままジュナスのジェガンはおっかなびっくり、目の前の曲がり角を曲がる。彼の記憶では四回目位前にこの角を曲がったはずだ。

 

「よし、ここだ!!」

 

 そう言いながらジュナスが飛び込んだ先、そこには。

 

「な、何だここは……!!」

 

 ギィイ……

 

 広い、果てしなく広い空間。青と白のコントラストで覆われた壁面がどこまでも続き、そして天井はどこまでも広い。まるで一つの集落がそのまま入りそうな空間だ。

 

「な、何ですかここは……?」

「俺が知るかよ、シェルド……!!」

 

 コゥン……

 

 ジュナスのジェガンの脚がその空間の床を軽く叩き、その物音が陶磁器のように空間へと拡がる。その音に呼応するように壁面が微かに揺らめいた、ようにジュナスには見える。

 

「……」

 

 そのまま意を決して空間内部へ進入するジェガンとガンダム。その大空間に比べてちっぽけな彼らの他に物音を立てる者はいない。

 

「ん、何だあれは……?」

 

 その時、正面へ進んでいたジュナスが何かに気がつく。空間の約中央、そこに一基の装置のような物が見える。

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