風霊のレイチェル   作:早起き三文

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第11話「シャア・アズナズル」

「なんだろう……?」

 

 と迂闊にもジュナスはその機器にモビルスーツの手を触れさせようとしてしまう。

 

 ピィ……

 

「う、うわ!?」

 

 その時、機器の中央へ備え付けられている白い球体、それに触れたジェガンが電流に弾かれたようにその手を弾かれ、そのまま。

 

 カァ……!!

 

「モ、モビルスーツ!?」

 

 驚くジュナスを尻目に、球体の中から一機の赤いモビルスーツがその姿を顕す。と、同時に。

 

「ガンダム!!」

 

 凛々しい男の声、それが空間に響くと共に、その赤きモビルスーツからビームの弾頭が、シェルド少年の乗るガンダムに向かって飛び出してきた。

 

「な、何です!?」

 

 その突然の攻撃にも、しかしシェルドという少年はやはりモビルスーツ・パイロットとしての腕前があるらしくそのまま身を捻ってガンダムにかわさせる。

 

「更にやるようになったな、ガンダム!!」

「と、突然失礼でしょう!?」

「何!?」

 

 赤いモビルスーツ、恐らくはゲルググという一般的な機体であると思われるそのモビルスーツはそのまま、空中でスラスターを吹かせて一回転した後に、一気にガンダムに向かって跳び蹴りを仕掛けてきた。

 

「あうっ!?」

 

 そのゲルググからの跳び蹴りをもろに食らったシェルドは機体のバランスを崩し、そのまま無様に床へと倒れ伏す。

 

「シェルド!!」

 

 あわててその機体の頭からバルカンを放つジュナス。だがその機関砲の火線はスルリと赤いモビルスーツにかわされ、そして。

 

「アムロではないだと……?」

 

 スゥ……

 

 優雅な仕草で「ゲルググ」は白い地面に着地し、一呼吸置いた後にグルリとその頭部、狼の頭を思わせるそのヘッドパーツをもって辺りの様子を確かめたようだ。

 

「ここは……?」

「あ、あんたは誰だ!?」

「二人の少年、二人だと……?」

 

 ジュナスのジェガン、そしてシェルドのガンダムの様子仕草を確かめていたらしいそのゲルググは、そのままゆったりと機体を制止させた様子である。

 

「ジムとは違う、もっと精悍な量産機だ……」

「だから、あんたは誰だ!?」

「私か、私の名は……」

 

 プシュウ……

 

 そのゲルググのコクピット・ドアが開き、その中から姿を表した仮面の男。彼は微かにその白い歯をジュナス達に向けながら、軽く頷いてみせると。

 

「シャア・アズナズルという者だ」

 

 その瞬間、何か空間に冷たい風が吹いたようだ。

 

 

 

――――――

 

 

 

「シャア・アズナズル、私は知っています」

 

 レイチェル達と合流したジュナスとシェルド、そしてシャア・アズナズルという男。彼らはその異質な白い空間で対面を始めた。空間の空気は冷たく、あたかも冬のごときである。

 

「旧世界の英雄だそうです」

「そうなの、マリアさん?」

「ええ、レイチェル」

 

 その二人の話をよそに、シェルドは何かオズオズとシャア・アズナズルに向かって声を出した。

 

「あの、シャア・アズナズルさん?」

「何だね?」

「その仮面……」

「ああ……」

 

 シャア・アズナズル、彼はその顔を覆っている仮面を軽く人差し指でなぞると、そのまま口許を綻ばせたようだ。

 

「失礼、顔に醜い傷があるものでね」

「は、はあ……」

「しかし、これは……」

 

 スゥ……

 

 そのまま彼シャアは立ち上がると空間、そしてレイチェル達の乗っているモビルスーツをグルリと見渡す。

 

「ザクとは違う、もっと良いものだ」

「ザクウォーリアと言います、シャアさん」

「ウォーリア、戦士だなレイチェル君」

「名前の由来までは私は知りません」

「そしてアンフと言ったか、そちらは恐らく旧式のようだな……」

 

 かなりズケズケと感想を言ってくれるこのシャア・アズナズル、その彼の忌憚ない台詞にマリア・オーエンスがその形の良い眉を軽く潜めてみせる。

 

「そしてジェガンか、立派な物だな」

「どうも……」

 

 と、言われてもジュナスにとってはどう答えて良いものか解らない。Gシステムで作り上げたものだからだ。

 

「まあ、何はともあれ」

 

 そのままシャア・アズナズルは一つ嘆息すると、その広い天井を大きく見上げ、そしてやや深いため息をついてみせる。

 

「ここは何処かということだ」

「地球です、シャア・アズナズルさん」

「しかし、話を聞く限りではまるで異世界だよ、レイチェル君」

「そんな事を言われても……」

「いや、タイムスリップと言った方がいいか?」

 

 そう言ってニカと笑うシャア・アズナズルの笑顔はレイチェルにとって嫌いな物ではないが、かとかいって心を許した訳ではない。そもそも彼が伝説の英雄「シャア・アズナズル」本人かどうかすら解らないものだ。

 

「この施設、君たちには何か解るかね?」

「解りません、俺には……」

「そうか、残念だなジュナス君」

 

 Gシステムとも違う、この設備が何かなどはここにいる誰もかも解るものではない。ただ。

 

「一つだけ、心当たりがあります」

「ホウ、マリア君?」

「Gシステム関係に詳しい専門家、マルキオ導師」

「知り合いかね?」

「以前、一度だけ……」

 

 その時、シェルドはこの大空間を見渡しながら、ポソリと声を出した。

 

「こ、この施設をもっとよく調べませんか?」

「……うーん」

「駄目ですか、レイチェルさん?」

「あのね、シェルド君」

 

 そのままレイチェルはシェルドの瞳をじっと見つめ、その唇からやや厳しいような言葉を上げる。

 

「あたし、この施設にはあまり深入りしない方がいいと思う」

「そ、そうですか?」

「勘だけどね、シェルド君」

 

 その彼女の意見にはジュナスもマリアも、そしてシャア・アズナズルも賛同するように頷いた。

 

「ともかく、そのマルキオ導師という方に会ってみようではないか」

「え、ええシャア・アズナズルさん」

「……何か、レイチェル君?」

「い、いや何でも」

 

 正直、レイチェルにしてみれば何かこのシャア・アズナズルという男が、突然現れた分際でリーダーシップを取っている事が、何か気に食わないのだ。歳の頃は自分達より少し上に過ぎないようなのにだ。

 

「……貫禄、というものかな?」

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