風霊のレイチェル   作:早起き三文

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第12話「アーチャー・シャア」

「不思議なものだな……」

 

 サァ……

 

 遺跡から出たシャア・アズナズルの目前に広がる、燦々と輝く太陽の元でどこまでも続くオーストラリアの大地、それを彼シャアは赤きゲルググのコクピットから漫然と眺めている。

 

「タイムスリップ、いや異世界か?」

「そうなのですか、シャアさん」

「ああ、レイチェル君」

 

 そのままシャアはコクピットを開き、よく乾いた外の空気をコクピット内に取り入れた。

 

「まさに、地球だな」

「ああ、聴いた事があります」

「何かな、ジュナス君?」

「旧世界の人は、宇宙で暮らしていた事もあるらしいと」

「アア……」

 

 そのジュナスの言葉にシャアは軽く頷いてみせてから、そのまま太陽を見つめて軽く息を吐いたようだ。

 

「スペースコロニーでな」

「スペース、コロニー?」

「知らんか、ジュナス君?」

「生憎と……」

「そうか」

 

  話を聞いていたレイチェルはその二人の会話に割って入ろうとしたが。

 

「では、シャア・アズナズルさん」

「ああ……」

「とりあえず、マルキオ導師に会いに行きましょうか」

 

 と、先にマリアがその口を開いた。

 

 

 

――――――

 

 

 

 レイチェル達が拠点としている街で、そのマルキオ導師が住まう集落に物資を届ける依頼があったのは好都合だ。

 

「では、行きましょうかシャア・アズナズルさん」

「ところで、マリア君」

「はい?」

「いいのか、私にここまでしてくれて?」

 

 そのシャアの疑問は最もだが、別に荒野の掟が支配しているこの世界でも、人に親切にしてはいけないという法は無い。そもそも依頼も受けている。

 

「君たちにとって、私は縁もゆかりも無い者だ」

「そりゃ、まあね……」

「まあ、有り難いがな」

 

 そう言いながらシャア、シャア・アズナズルはレイチェルから手渡してもらった肉のジャーキーを軽く口にした。

 

「護衛の頭数が増える事は、キャラバンにとっても良いことですよ、シャアさん」

「シェルド君」

「別に良いじゃないですか」

「フム……」

 

 そのシェルドの台詞を受けたシャアは何か納得していない様子であったが、その後に彼は特に何も言わず、そのまま自機「ゲルググ」の調整に戻っていく。

 

「マリアさん」

「何、レイチェル?」

「もうそろそろ、出発の時間です」

「あら、そう」

 

 

 

――――――

 

 

 

 いくら護衛があるといっても、キャラバンというものは襲われる時は襲われる物。

 

「しかし、今回は楽な仕事だな」

「油断しないで、ジュナス」

「解っているよ、レイチェル……」

 

 しかし、そのジュナスのいう通り今回の護衛依頼は波風が立たず、目的地まであと少しである。

 

「なあ、レイチェル」

「んー?」

「あのシャアって人」

「が何よ?」

「マリアさんが言うには、大昔にあった英雄なんだってね」

「そうみたいね」

「英雄かあ……」

 

 そう言ったきり、ジュナスは後ろのモビルスーツ、シェルドが乗るガンダムの背後にいる赤いゲルググを何かじっと見つめていた。

 

「何か、気に掛かるんだよなあ」

 

 

 

――――――

 

 

 

「よく来たな、アーチャーよ」

 

 その盲目の人間、マルキオ導師はシャアを見るなり、開口一番にそう言葉を放った。

 

「アーチャーだと?」

「そうだ、君のような英霊が来る事は知っていた」

「失礼ですが、マルキオ導師」

 

 そう言って、シャアは自らの仮面を軽く指でなぞりながら、そのまま姿勢を正してマルキオ導師の顔を正面から向かえ見る。

 

「アーチャーにしろ、英霊にしろ私には全く解らない話だ」

 

 もちろん、その単語はこの簡素な家の席に同席しているレイチェル達にも解らない。

 

「シャア・アズナズル、君はこの世界に呼び出されたのだ」

「……と、いうと?」

「聖杯戦争という言葉は知らんな?」

「知るわけがありません……」

「あのシドニー沖の召喚器では、アーチャーが召喚されるのだ」

「だから、それが解らん話だというのに……」

「……」

 

 コ、トゥ……

 

 そのままマルキオ導師はテーブルの上に置いてある茶に手を付けるとそれを自らの口に運び、無言でレイチェル達に茶菓子を食べるように促す。

 

「よろしい、まずは聖杯戦争の事から話そう」

「は、はい……」

 

 何か呆気に取られているレイチェル達を尻目に、マルキオ導師はその「聖杯戦争」とやらについて話を始めた。

 

 

 

――――――

 

 

 

 どうやら、マルキオ導師がいうにはこの地球、それに時おり異世界の人物である「英霊」が召喚器とやらによって召喚されるようだ。

 

「フーン」

 

 そしてその英霊達は「聖杯」という物を賭けて戦う事が運命づけられる。

 

「気に入らんな……」

 

 シャアのその、完全に本人マルキオ導師に聞こえるように呟いた言葉にも構わず、導師は説明を続けた。

 

「そもそも、聖杯という物は……」

 

 聖杯、それを手にした者はあらゆる願いが叶うといわれている。その原理は全く不明であるとの事。

 

「そして、アーチャーというのは」

 

 召喚された英霊達はそれぞれ、固有の属性が与えられるらしい。シャアの「アーチャー」というのは飛び道具を得意とする属性、すなわち「クラス」というものであるらしい。

 

「シャア・アズナズル、君は射撃武器の扱いに長けていたのではないかね?」

「苦手ではありませんでしたね」

「そうだろうな……」

 

 マルキオ導師によれは他にもクラスと言うものはあり、たとえば彼マルキオ導師が確認したクラスでは「バーサーカー」がすでにこの地球に現れているとのこと。

 

「……」

 

 別にレイチェルもマリアも話に付いて行ける訳ではないが、ジュナスとシェルドに至っては完全に話に飲まれている。

 

「ゴホッ……」

 

 その時、シェルド少年が軽く茶にむせた。

 

「シャア・アズナズル、君の聖杯に託す願いは何かね?」

「願い自体はありますが、それはこの地球で叶えられる物ではありませんので、それに」

「それに?」

「そのようなけったいな品物、信用出来ません」

「なるほど……」

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