風霊のレイチェル   作:早起き三文

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第5話「更に戦うレイチェル」

 

 レイチェルには休む間もない、何しろこの前の依頼で受け取った金は、自身の治療費とモビルスーツ「ザクウォーリア」の修理に取られてしまったからだ。

 

「対戦相手は、ズザ……」

 

 二日後のアリーナでの対戦相手、重火力を誇るモビルスーツとなっているが、それならばブレイズ装備ザクウォーリアの機動性で引っ掻き回せる。

 

「フウ……」

 

 マリア辺りからその眉をしかめられている「ラフ過ぎる普段着」であるが、彼女レイチェルにとってこの服装が一番落ち着くのだ。

 

 コンッ……

 

「ん……?」

「……レイチェル?」

「あっ、ジュナス……」

 

 聞き覚えのある声、レイチェルはこの借り屋の中が汚れていないかどうかを確認してから、そっとドアの覗き窓を開ける。

 

「ジュナス……」

「あ、あのレイチェル」

「どうしたの?」

 

 ガ、チャ……

 

 そのままレイチェルは木造のドアを開き、彼女と同じく普段着となっているジュナス、ドアの前でじっと立っている彼の顔をまじまじと見つめる。

 

「あ、あのここがお前の家だと、あのあのマリアさんに聴いて……」

 

 やはり突然女の家に訪れるのは失礼だと思っているのだろう。何かを言い淀む彼ジュナスに、レイチェルら軽く微笑みかけると。

 

「何か、用?」

「あ、あの……」

「?」

「お、お礼……」

 

 そう言いながらジュナスが差し出したのは、近所で有名な菓子店の包み。

 

「い、命を助けてもらったから……」

「ああ、そういう事……」

 

 恐らくはマリアにでもそう言われたのであろう。お礼の一つでもしろと。

 

「ありがとう、受け取っておくわ」

「……」

「……まだ何か」

「その、何だレイチェル」

 

 ジュナスはしばらくモジモジとしていたが、何か意を決したかのように。

 

「その、お前の服装……」

「この服がどうかした?」

「薄すぎると思う、太股も腋も見えているし、目のやりどころに……」

 

 そこまで言うと、その場から身を翻して、レイチェルの前から去っていく。

 

 バタ、ン……

 

「……やっぱり、不用心かしら?」

 

 菓子折りの袋を下げながらレイチェルは一人、何かを考え込むかのようにその腕を組んだ。

 

 

 

――――――

 

 

 

 最初でグレネードによる先制攻撃を仕掛けたのは、レイチェルにとって吉と出たようだ。

 

「素人のようにも見えるけど、この相手!?」

 

 それでもその慌てふためく「ズザ」から放たれたミサイルはレイチェル機ザクウォーリアの盾にとかすり、そのパイロットの腕前が決して低くはないことを証明する。

 

「そこね!!」

 

 爆風で敵の姿はよく視認出来ない、それでも撃てば当たるのがマシンガン、ビーム突撃銃というものだ。

 

 ガァ!!

 

 片手でマシンガンを保持したままのザクウォーリアの横を、やや大型のミサイルが通りすがる。やはり狙いが甘いのか、明後日の方向に飛び去っていったそのミサイルを見て、レイチェルはおせっかいにも対戦相手の弾薬費の事を想像してしまう。

 

「ラ・ミラ・ルナ選手、残りポイントはあと二千ポイントだー!!」

 

 ワァウア……

 

 あまり今日の戦いには観客がいないのであろう。その数少ない声援を得て、レイチェルはそのマシンガンを連射する手を止めない。何か出鱈目に発せられた相手のミサイルを目で追った後、そのまま彼女はアリーナ用に低出力にと調整されたビーム突撃銃、それを黄色の機体を駆る相手に向け続ける。

 

「本当なら、ここで一発接近戦でも行ってパフォーマンスをするべきかもしれないけど……!!」

 

 先の戦いで少しレイチェルは気が弱くなっているのかもしれない。彼女はそのまま安全パイを掴み、マシンガンによる斉射を与え続けた。

 

「ラ・ミラ・ルナ選手、後が無いー!!」

 

 ナレーターと声援の声でも聞いたのか、そのズザは脇からビームサーベルを取りだし、今さらながらの接近戦を仕掛けようとしたが。

 

 ビィー!!

 

「ポイントゼロ、レイチェル選手の勝利です!!」

 

 コクピット内で程よく汗をかいているレイチェルの機体、それには届かなかった。

 

「ふう……」

 

 そのままレイチェルは微かな罵声と歓声が響くアリーナを後にし、自機ザクウォーリアをハンガールームにと移動させる。

 

「こちらナンバー三、レイチェル・ランサム」

「ああ、そこにザクウォーリアを置きな!!」

「頼みます!!」

 

 ハンガールームで忙しく整備を行っている女性メカニックの声に答えながら、レイチェルはザクウォーリアを決められた場所にと立たせる。

 

「あれが次の対戦相手かしら……?」

 

 そのレイチェルが見つめるガンダム・タイプ、強力な機体のカテゴリーであるモビルスーツを見つめる彼女レイチェルのその目は厳しい。

 

「さて……」

 

 今日は連戦だ、昼食を取った午後には、また再び試合があるのだ。

 

 シュウ……

 

 そのままレイチェルはザクウォーリアのコクピット・ドアを開き、そのドアの脇にと設置された昇降用のクレーン・ロープをその手に取る。彼女は自分の黄色いパイロットスーツに身を包ませた身体を身軽にロープへと寄りかからせ、ゆっくりとハンガールームの床、金属製のその床にと脚を付けた。

 

「昼食、行ってきます」

 

 別にそのような事はわざわざ告げる必要はないのだが、それが彼女レイチェルの律儀な所であろう。

 

 

 

――――――

 

 

 

 昼食を食べ終わったレイチェルが見つめる試合、そこには修理が終わったばかりのジュナス機ジェガンの姿がある。

 

「腕も完全に直っている、お金があるのかなジュナスは?」

 

 何か彼女の褐色の肌と黄色のパイロットスーツという組み合わせが珍しいのか、先程何者かに隠し撮りをされて気分を害していたレイチェル。しかし何か今のレイチェルは、目の前で格闘戦を繰り広げるジュナスの姿を見て機嫌を直している、何故かは解らない。

 

「やるね、あの坊や」

「坊や、姿でも見たのですか」

「そういう気がしただけだよ、お嬢ちゃん」

 

 レイチェルの斜め前にと座っている長髪の男、彼が首を捻って彼女レイチェルに声を掛けた為、レイチェルは無視をする訳にもいかず答えたのだが。

 

「嬢ちゃん、そのパイロットスーツは暑苦しくないかい?」

「別に、です」

「健気な事だ」

 

 何かあまり相手にはしたくない男、そうレイチェルはその男を評して思ってしまう。

 

「よっと……」

 

 その男はジュナスの勝利が決まった途端にその席を立ち、そのまま。

 

「じゃあな、嬢ちゃん」

「触らないで……!!」

「そりゃ、失礼」

 

 彼女の細い肩を叩いた後、アリーナ観客席の後方にと去っていく。

 

「全く……」

 

 その男の行為によって再び気分を害するレイチェル。しかし対戦はすぐに後だ、気分直しに食べ物を取りに行くわけにも行かない。

 

「スポーツドリンクで我慢するか……」

 

 

 

――――――

 

 

 

 レイチェルが搭乗したザクウォーリアが、ハンガーから脚を運び。

 

「お前を倒すのは、俺なんだからな!!」

「ああ、はいはい……」

 

 機体足元からのジュナス、休憩中の彼からの声援をレイチェルは受け、そのままアリーナへと向かう。

 

 ワァア……!!

 

 先程見たデータでは相手、Zガンダムとやらの方に圧倒的なオッズがある、それでも。

 

「簡単には、負けられないのよね……」

 

 レイチェルには生活が掛かっているし、目的の為にはお金を貯めなくてはならない。

 

「赤コーナー、レイチェル選手の登場です!!」

 

 ナレーターにより紹介されたレイチェル機の先、そこにはスラリとした形のガンダム・タイプがそびえ立っている。

 

「よお、お嬢ちゃん」

 

 そのZガンダムからの声、やや低い感じのその声にレイチェルは聞き覚えがある。

 

「あなた、さっきの……」

「二度目だな」

「何が、ですか?」

「俺が野盗達に雇われていた時、君はなかなかの善戦だった」

 

 Zガンダムから通信機越しに聴こえてくる言葉、それを聴いた時に彼女レイチェルのその顔が微かに強ばる。

 

「君にリベンジが出来るかな?」

「あなた、あのエアリーズの……」

「世話になったな、あの時は」

 

 その固まった身体をほぐすかのように自らの肩を竦めるレイチェル。彼女は自身の渇く喉に唾を押し込めると、そのまま大きく息を吸い。

 

「……負けないから!!」

 

 自らを発起させるかのような声、それを大きく張り上げる。

 

「レディ……!!」

 

 ナレーターからの声、それを聞いたレイチェルは自機ザクウォーリアのビーム突撃銃を構えさせ、同時に先程修理が終わったばかりの追加兵装ブレイズのスラスターを点火する。

 

「ゴー!!」

 

 カァン……!!

 

 試合開始と共に敵機Zガンダムにと放ったビーム突撃銃、それが相手の機体をかすると同時に、レイチェルは自機の場所を移動させた。

 

「やるじゃないか!!」

 

 そのビーム突撃銃はZガンダムの脚部を破損させ、その一撃を受けた男。

 

「このマーク・ギルダー、久々に本気を出させてもらう!!」

 

 マーク・ギルダーは、その手に持つビームライフルの照準をザクウォーリアに合わせる。

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