「レイチェルさん!!」
「そ、その声は……!?」
キィン……!!
ガンダム、白い神話と呼ばれるモビルスーツはその手に持っているビームライフルをもって、瞬く間に「もぐら」の内一機を仕留めた。
「シェルド、シェルド君なの!?」
「早く逃げて、レイチェルさん!!」
「あっ……!!」
慌てて我に返ったレイチェルは、そのまま「もぐら」達から自分の身を引かせて、遅まきながら残った手に肩からビームトマホークを持たせる。
「早く、そのジオグーンから離れて!!」
そうガンダムに乗ったシェルドは言うが、しかしはいそうですかと言うほどレイチェルは素直ではないし、そもそもザクウォーリアで逃げられる自信はない。片腕と片足が破壊されているのだ。
「この!!」
サォ!!
そのザクウォーリアの一撃は見事にジオグーンを撃破したが、しかし未だにそのジオグーン、地面を泳ぐ水陸両用モビルスーツの姿は数多い。概算で約五機。
ビィン……!!
再度放たれたガンダムからのビームライフル、それによってまた一機の「もぐら」は仕留められたが、もぐら達の反撃として放たれたレーザーだか何だかによって、遠く離れたガンダムの白い装甲が大きく揺さぶられる。
「この程度!!」
しかし、ガンダムの装甲は余程厚いのだろう。全く怯む様子を見せないシェルド機ガンダムはそのままライフルを連射し続け、結局あれよあれよとレイチェルが見てる間に「もぐら」ことジオグーンは全滅してしまった。
「す、凄い……!!」
「レイチェルさん、下がって!!」
「だけど!!」
「そのザクウォーリアではもう戦えない、解りますか!?」
「くっ……」
恐らくこのシェルド・フォーリーはモビルスーツ戦においては素人であろう。しかしその素人の意見にレイチェルは咄嗟の反論が出来ない。
「味方も現れましたし!!」
そう、シェルド機の指差す方向には一機の黄色いモビルスーツ、以前レイチェルと闘技場で対戦したズザというモビルスーツ、そして。
ギィン……!!
「あれは……!?」
一見、戦闘機と呼ばれる兵器によく似たシルエットのモビルスーツ、いや人型以外の姿であるから、それらの総称である「モビルアーマー」と言うべきか、ともかくその尖端が赤い戦闘機は、空から次々にGシステム周辺に展開していたズゴッグ達をビームをもってして破壊していく。
「Zガンダムという機体みたいです」
「Zガンダム、あの男ね……」
「腕は確からしいですよ」
「フン……」
そのシェルドの言葉にコクピット内で一つ鼻を鳴らしたレイチェル、であったが。
「……まあ、無事みたいね」
レイチェルのそのつぶらな瞳はジュナス・リアム、彼の駆るジェガンに向けられている。どうやら彼の機体は無事な様子だ。未だにズゴッグやジオグーンと友軍のジム、そしてレイチェルのザクウォーリアとよく似たモビルスーツ「ザク」達と奮戦している様子が見れる。
「あっ!!」
その直後、やたらとミサイルを撃ち放っていたズザがその身を崩れさす。被弾した様子は見受けられなかったが。
「そう言えば、アリーナでの戦闘時もあのズザを駆っていた人、慣れてない様子だったもんな」
身動きが取れないザクウォーリアの「気」がレイチェルにも回ったのか、一つぼんやりとしたため息をつきながらもレイチェルはその辺りの様子。日が登りきった朝ぼらけの空気が漂う平地にその目を凝らす。
「ん?」
その時レイチェルの瞳、それに一機のモビルスーツの姿が映る。上空だ。
「何だろう……」
レイチェルがじっと目を凝らした、次の瞬間。
ザァン……!!
「な、何なの!?」
突如としてその上空の機体から放たれるビームの網、強力な火線が味方のジム、ザクを次々に焼く。
「新手!?」
にしてはおかしいとレイチェルは思う。その火線はズゴッグ達も焼いているのだ。
「しかし、味方という訳ではなさそうだけど……!!」
その上空の敵機に向かって、ジュナスのジェガンが頭からバルカンを放った様子であったが、距離からして当たるものではない。
「だけど、あたしは戦えない……!!」
――――――
「何だ!?」
マーク・ギルダーの乗るZガンダム、ウェイブライダー状態に可変しているその機体には正体不明機からの攻撃は命中しなかったが、だからといって危なくなかった訳ではない。
ギィン……!!
朝日が照りつける中、マークのウェイブライダーはその機首を回らせ、その不明機に接敵しようと試みる。ウェイブライダー機首の赤い「くちばし」が日の光を浴びて強く輝く。
「ロック・オン!!」
ガォン!!
だが、その必中を掛けて放ったZガンダムウェイブライダーからのビームガンはその不明機にかすりもせず、未確認機はそのまま悠々と地上に向けた第二射、ビーム砲を放ち続けた。
「なめやがって!!」
続いて放たれるマークからの第二撃、さすがにそれは不明機の翼。
「蒼い羽根付き、まさかフリーダムガンダムか!?」
そう、翼のそれの縁をかすり、その敵機の顔がマーク・ギルダーの方向に向く。
――ハッハア!!――
野太い、獣の雄叫びを連想させる男の声、それを聞きながらマークはウェイブライダーから三撃目のビームを放った。
「やるじゃねえか、Zガンダムさんよ!!」
「この機体を知っているか!?」
「そりゃ、このフリーダムなんかに乗っているからにはよ!!」
バォ……!!
そのままフリーダム、フリーダムガンダムは翼を大きく拡げ、マークからのビームをかわしたお返しにと、その手に持ったビームライフルの照準をウェイブライダーに向ける。
ジャア……!!
「させるか!!」
そのビームをマークはウェイブライダーを回転させながらかわし、そのまま追撃としてのビームを放つ。これで四撃目だ。
「あらよって!!」
だが、そのビームは身軽に宙に浮かび揚がるフリーダムガンダムには当たらず、そのままフリーダムはマークをバカにするかのようにその逆手に持ったビームサーベルの光をちらつかせ、挑発する。
「おせぇんだよ!!」
「くそ!!」
「このアリー・アル・サージェス、舐められてもらっては困るな!!」
そう言いながらフリーダムはその翼をはためかせ、ビームサーベルをもてあそびながらウェイブライダーの方向に接近しようと試みているようだ。
「くらいな、素人!!」
「このマーク・ギルダー、素人ではないんでね!!」
「そうかい!!」
ドゥウ!!
マークは一瞬ウェイブライダーをフリーダムから遠ざけるような仕草を見せたが、即座に反転してその勢いを任せたまま可変し、モビルスーツ形態となりそのままその手にビームサーベルを展開させた。
「おっ!?」
「さすがにこんなフェイントには引っ掛からないかよ、サージェスとやら!!」
「悪い考えではないんだがなぁ!!」
ザァフ……!!
そのZガンダムとフリーダムの刃が交差し、朝の日が立ち上る蒼天に強く火花を散らす。その光の勢いにより高くの上空にある雲が若干、ちれぢれになった様子である。
「おらよっと!!」
だが、そのサージェス機フリーダムが放った前蹴りはZガンダムにかすりもせず、続いて放たれるフリーダムからの頭部バルカン砲、それはZガンダムの同じ頭部バルカンによって相殺させた。
「やるじゃねえか、マークさんとやらよ!!」
「お前達の目的は何だ!?」
「あのガンダムを寄越しな、悪いようにはしねぇよ!!」
「それが狙いか!?」
「傭兵らしきあんたには関係ないねぇ!!」
「義理があるんでね!!」
「そうかい!!」
ボゥム!!
「おわっ!?」
マークが至近距離で射出した腕部グレネード、それをまともに受けてしまったサージェスはそのまま急速後退しつつも、牽制として腰のレールガンをZガンダムに向けて放つ。
「くそっ!!」
そのレールガンはマーク・ギルダー機の右脚に直撃し、彼の機体も一旦フリーダムから距離を取った。
バジュ!!
しかし、ただでは後退しないのがマーク・ギルダーという男の強さかもしれない。
「くそ、トリモチだと!?」
よりにもよって右腕、ビームサーベルを構えている方の腕にそのトリモチを受けてしまったサージェス。彼はその一瞬の油断から即座に気合いを入れ直し、必殺の念を込めて両肩のプラズマビーム砲をZガンダムにと向けて放ったが。
ビィン……!!
突然、フリーダムの下から放たれたビーム。シェルドの乗るガンダムからのその一撃をサージェスはとっさにかわす事が出来ず、そのまま背部のウィングユニットに被弾を許してしまう。
「ちっ、未完成のまま出撃したからよ!!」
と、サージェスとやらは愚痴を言っていても闘争心を失なっていない事はマーク・ギルダーには解る。とは言ってもこのフリーダムを駆る男にとっては決して有利とは言えない状況だ。
「ガンダムってやつさん、起動しているのかぁ?」
そのシェルド機ガンダムが放ったビームライフルの威力は高い、まともに倉ったらただでは済まないとサージェスは想像する。
ビュウア……!!
「ちっ、くそ!!」
そのサージェス機の隙を突いたマーク・ギルダーからの攻撃。再びウェイブライダー形態となったそのZガンダムから放たれる執拗な攻撃に、サージェスはコクピットの中で軽く舌打ちをした。
「ハイマット・モードは取れねえ、さてどうするか……」
サージェスが睨むその先には高速で飛行するZガンダムの姿、太陽の光を一杯に浴びたその機体は機首を再びフリーダムに向ける、その時。
ザァフ……!!
「新手か!?」
Zガンダムに対して突然の虚空から放たれたビーム、その一撃に驚きながらも、しかしマーク・ギルダーは機体のビームガン照準をフリーダムから離さない。
「この反応、エリスの嬢ちゃんかい!?」
対するフリーダムの威勢は強い。彼サージェスにとっては少しでも「弾除け」が出来る味方が増えればめっけものだ。
「サージェスさん!!」
ビュ、ツア……!!
「運搬機、ド・ダイか!?」
そのド・ダイとやら、非飛行系モビルスーツを空中飛行可能にする運搬システムに乗った二つの機体が、サージェス機フリーダムを援護するかのようにビーム砲を放ち続けている。
「サージェスの旦那、引きなってよ!!」
「ラナロウか、そういう事か!!」
「上からの命令だ!!」
「ああ、そうかい!!」
ビュウア……!!
「くっ!!」
そのまま計三機からの攻撃を受け続けているマーク・ギルダーには余裕がない。フリーダムの狙いが正確過ぎるのだ。
「また会おうぜ、Zガンダムさんよぉ!!」
その彼を嘲笑いながら、フリーダムは終わりとばかりに地上に向けてプラズマビーム砲とレールガンを一斉に放ち、そのまま数機のジムやザク達を吹き飛ばす。
「待て、フリーダム!!」
「あばよ、兄ちゃん!!」
そして、増援に駆けつけた二機のモビルスーツ、それに付いていく形でフリーダムは撤退を開始する。
「俺達ファントムペイン、生きてりゃその内会う機会もあらぁな!!」
「ファントムペインだと!?」
「まあ、俺にはどうでも良い肩書きだがな!!」
フリーダム達の引き際は速い、そのまま急速離脱をしていく三機の姿を見やりながら、マーク・ギルダーはZガンダムのコクピット内で軽く己の唇をかんだ。