ありふれない騎士団で世界最強・リメイク 作:ムリエル・オルタ
香織が泣きそうになり、雫が修羅の波紋を獲得(大嘘)した翌日。ヴィルヘルムは日傘を差し、オルクス大迷宮の前に立っていた。横にはもはや荷物が本体になりつつあるフラフラとしながら立っている恵里が居た。
「さて、これで問題はねぇと思うが…。まぁ、そん時どうにかすっか」
「ねぇ、着いて行くのを認めてくれたのは嬉しいけど…。これ、なんか可笑しいんだけど?」
「あぁ?荷物持ち兼お前の衝撃クッションだろ。それ持ってねぇとテメェは下手すると死ぬぞ」
「死ぬの!?」と驚きの声を上げている恵里を無視し、ヴィルヘルムは恵里と自分の分のステータスプレート(ヴィルヘルム自身のは偽造済み)を受付に渡し、中に入る。その際、恵里の珍妙な格好に視線を集めたがヴィルヘルムは気にする事も無くそのまま進んでいった。
迷宮内に入るとヴィルヘルムは手当たり次第に魔物を瀕死にさせ、止めを恵里に行わせた。いうなればパワーレベリング*1であり、技術に関してはこの際度外視したものである。
現状、後衛職である恵里の筋力や敏捷は高くない。それを補うレベリングの方法として取られたのが大量の荷物を持った状態での迷宮での戦闘行動。それによって恵里のステータスは状態に適応するために筋力と敏捷を上げるだろうとヴィルヘルムは当たりを付けていた。サブカルに対しての知識はあるが余りにも長い時を繰り返している内に擦り切れ、朧気になっていた。その為、そこまで自信は無い。
「ねぇ、ちょっと気持ち悪くなってきたんだけど」
「そんなこと言ってねぇでさっさと殺せ。まだ人殺させてねぇだけマシだろうが」
ぶっきらぼうにそう言うヴィルヘルムに恵里は文句を言うのを諦め、黙々と魔物を殺し始めた。傍から見ると、巨大なリュックから手が生えているナニカがナイフで魔物を殺している様にしか見えない。その事を恵里が知らないのが唯一の救いなのかもしれない。
「さて、ここ等一帯の魔物は大体狩っただろうよ。他の奴の為にも少しは残してやった方が良いだろうしな」
「ヴィルにそんな気遣いが出来るなんていがーい」
「テメェ頭かち割るぞ?」
恵里が最後の魔物を倒したのを見てヴィルヘルムがそう呟き、恵里が茶化し睨まれる。一階層から続くこのやり取りも既に終わりが見えてきている。なんでも恵里のステータスの筋力や俊敏はそこまで上がってないのが判明したからである。それを意識してレベリングしたところで上がらない。それはつまり、天職と言う与えられた役割以外は
ついでに言ってしまえば、ヴィルヘルムと恵里が居る場所は檜山がトラップを発動させた場所だからだ。そこらにはまだ光輝が崩した洞窟の破片が散らばり、そこだけ大規模戦闘が起きた様な有様となっていた。そして勿論の事トラップも健在だった。
ナイフを片付け一息ついている恵里を目じりにヴィルヘルムはトラップへ近寄る。そして、躊躇う事無くトラップに触れた。ふとヴィルヘルムを見た恵里もギョッとしたような雰囲気を醸し出す。何度も言うが見た目はリュックのお化け状態なので雰囲気だけしか伝わらない。そして、魔法陣が広がる中、ヴィルヘルムはそのままトラップを引き抜いた。この様な力技は、常人ならば出来ない。だが、聖遺物の使徒であるヴィルヘルムは難なくできる。それが今後の犠牲者を出さない為なのか、好奇心というか、ちょっとしたストレス発散だったのかは当人にしか分からない。恐らく後者であろうが。
転移の魔法は難なく発動し、推定三十八層に到着する。それと同時に召喚される大量のトラウムソルジャー。何故か復活している橋に堂々と現れるベヒモス。その姿を見た瞬間恵里は小さく悲鳴を上げ、ヴィルヘルムの近くまで避難した。
「ヴィルなんて事してんのさ!?死ぬよ?本当にボク死ぬよ!?どうしろっていうのさ!?」
「あぁ?テメェは寄生させてたから技術はねぇだろうが、ステータス的にはあの時より圧倒出来てんだよ。問題ねぇから適当に骨の相手でもしてみろよ。危なかったらフォローしてやるから。その間にあのデカブツぶっ殺してくるしよ」
そう言ってヴィルヘルムは顎でベヒモスを指す。そして「いい加減いらねぇだろ」と、恵里のクッション兼持ち物のリュックを下ろさせた。動きやすくなった恵里は肩を回し、手に持ってる鈍器兼媒体の杖と先程から止めを刺すために使っているナイフを構えた。目は死んでいる。現状をシカタナイと諦めているようだ。
杖を遠心力を使い回転しながら殴る。それだけで恵里の近くに迫っていたトラウムソルジャーは吹き飛ばされた。ナイフはトラウムソルジャーに対して確実に効果は薄そうなのであくまでも攻撃を受け流すために使う。まだまだ隙が大きく大振りだがそれはこれから訓練すればいいだけの事。ヴィルヘルムは恵里から視線を外し、ベヒモスに向きなおる。
「さて、こっちも語り合おうぜデカブツゥ!」
獰猛な笑みを浮かべながらベヒモスに躍りかかるヴィルヘルム。ベヒモスも突進してきた。ヴィルヘルムは右拳で殴りかかる。ベヒモスの頭部と拳がぶつかり合い、本来鳴る筈のない様な音が響く。鈍く、腹に響くような殴打音は奈落にまで響いた。
ヴィルヘルムは聖槍十三騎士団のなかでは中核程度である。活動段階でも既に体は鋼の様に固く、常人が殴れば殴った本人が怪我を負う程だ。そんな体から放たれた拳は大型トラックが全速力で激突するのと同等と言っても良い。ベヒモスの頭部の鱗に罅が入る。ベヒモスは生物の本能的な部分で何かを察したのか後方に飛び、ヴィルヘルムの一撃を少しばかり逃がす。それでも完全に逃がしきれず、着地と同時にふらついてしまう。
「GUUUUUUUU………………!」
「へっ、面白れぇじゃねぇか。もっと遊ぼう……ぜっ!」
前回は創造で一撃だった為そこまで気にしなかったが、伊達に異世界最強の冒険者を屠った魔物ではないらしい。それとも、此処に現れたこのベヒモスだけが特別なのか。謎はあるがヴィルヘルムはそんな事を気にもせず、自身の闘争本能のままにベヒモスに攻撃を仕掛ける。
「ちょっとー!?余波でこっちまで被害出てるんだけど!?」石飛んでくるんだけど!?痛っ」
恵里の非難の声も聴かずヴィルヘルムはベヒモスへ身体能力に物を言わせたサマーソルトキックを放つ。ヴィルヘルムと同じタイミングでベヒモスが放った片翼でのスイングはヴィルヘルムに当たらず、そのまま隙を晒したベヒモスの振った後の片翼にヴィルヘルムのサマーソルトキックが当たり、翼は下向きのくの字で折れた。
「GUGYAAAAAAAAAAAA!?!?!?!?」
「やっぱ本能的な分面白くはねぇが、あいつ等よりは楽しめそうだ」
痛みで悶えるベヒモスに容赦なく追い打ちをかけるヴィルヘルム。そのまま右から殴りかかるかと思えば突然方向転換を行い左側からベヒモスの頭部へ攻撃を行った。狙った場所は目。当たらなかったとしても、脳震盪位狙えるだろうと繰り出された一撃だった。しかし、偶然か痛みに悶え動く頭はヴィルヘルムの狙いを逸らすことが出来た。しかし、目から攻撃が逸れただけでヴィルヘルムの拳はベヒモスの顎を粉砕した。
声にならない悲鳴を上げるベヒモス。その隙を見逃さず、そのままベヒモスの粉砕され、開けっ放しになった口内を狙い全力の一撃を放つ。表面がいくら硬かろうと内部は柔らかい。生物ならばそれはどんな見た目のモノにも適用される。ヴィルヘルムの放った一撃は外皮を残しベヒモスの内部をミンチにした。
少しばかり滾った戦いではあったものの、結局は獣であった為直線的でありフェイントも無く面白みに変えたのかヴィルヘルムは不満げに鼻を鳴らし、恵里の居る方向を見る。そして、面白いものを見るように目を細めた。
「だぁぁぁ!」
トラウムソルジャーの頭部のみを狙い杖から繰り出される突きは確実にトラウムソルジャーの頭を捉え粉砕していく。その間に近づいてきた別の一帯は足払いで倒し、足で頭部を踏み抜いていた。相手が魔物であり、骨であるからなのか容赦のない攻撃が次から次へと繰り出されていく。
しかし、半永久的に出続けるトラウムソルジャーのに対して恵里の体力は有限であり、次第に動きも鈍くなり始めた。流石に死なせるのは勿体ないと感じたヴィルヘルムは近くに置いてあったリュックを奈落に落とした後、恵里を助け出しそのまま迷宮を後にした。
上から見下ろしてくる粘着質な視線を感じながら、ヴィルヘルムは宿へと戻っていった。
「さぁって、このウゼってぇ目線もさっさと来ねぇかな…」
軌道修正が入り始めます。仕方ないネ。
グラブルガチャは相変わらず渋いものです。なんでガチャピンモードで二階回したら虹が出るんだよ…。まぁ、今回追加された仲間を小説のネタにするかは育成してからですね。