ありふれない騎士団で世界最強・リメイク 作:ムリエル・オルタ
プロットの練り直しを(殴)
フューレンに大部隊での移動は町を騒然とさせた。しかも、その内の二人のみがプレートを持っており、その他は持っていないときて町の役人は頭痛を感じたらしい。しかし、それから数ヶ月経てば慣れたもので、大部隊と言うこともあり一度に落とす金の量も多く、街の住人は受け入れ始めていた。毎回大きな音を出す
そして、そんな彼らにも変化があった。
「えへへへへ…」
「ついに抱いたのか…」
フューレンのとある酒場の一角、そこにはヴィルヘルムとその腕に抱き着く恵里。それを反対側の席に座りながら呆れたように見る蓮と言った構図が出来上がっていた。先週の話になるが、これまで付かず離れずを繰り返していた恵里は意を決してヴィルヘルム、その時はラインハルトだったが、に告白。そのまま流れでベットイン。その手際は、きっと蓮以外見逃してしまったのではないだろうか。
そんな訳で、晴れて思いを告げることが出来た上に散らした恵里は幸せオーラを放っており、眉間に皴の寄ったヴィルヘルムと合わせると、なんとも言えない光景になっていた。
「なんかあれだな、両方一応軍服きてるから余計に違和感感じるよな」
「寿退役?」
「しねぇし、させねぇよ。テメェは有能だからな。御誂え向きの聖遺物でも今度探して入れてやるさ」
表情こそ何処か不機嫌そうだが、それでもこんなことを言うあたり彼女の事を気に入っているのかもしれない。そんな甘い様な雰囲気の中、酒場にヴィルヘルム達と同じ服装の男性が入ってきた。
「ヴィルヘルム中尉、例の件ですが…」
「あ?相手側から仕掛けて来なけりゃ、俺達は手は出す気がねぇが…出してきたか?」
男の言葉にヴィルヘルムがそう返すと、複雑そうに頷いた。その様子を見て、蓮とヴィルヘルムは苦虫を噛み潰したような顔をした。それもそのはず、一応この世界で有数の犯罪組織であるフリートホーフの本拠地が此処フューレンだからだ。既に国家保安部でも秘密警察でもなく、自国でも無いヴィルヘルム達からしてみればやりたいならお好きなようにどうぞ。と言うのが実情だったが、ついに此方側にちょっかいを掛けてきた。
ちょっかいを掛けられたにも拘らず、何もしないというのは親衛隊のプライドが許さない。故に、この時をもってして親衛隊によるフリートホーフ掃討作戦が開始された。
内容は単純明快であり、武装親衛隊が事前に調べ上げてあるフリートホーフのアジトを同時襲撃し、制圧するというもの。捕虜も人質も必要なく。周辺住民への配慮の為、毒ガスと言った化学兵器は原則禁止であり、使用するのは小型爆弾や手榴弾、突撃銃や散弾銃と言った銃火器のみとなっていた。
「さて、ここ最近は魔物しか狩ってないからって腕が鈍った言い訳に使うなよ。さて、今回は…聖槍十三騎士団が七席ゲッツ・フォン・ベルリッヒンゲン、変換」
ヴィルヘルムがそう口ずさむと、姿が変わった。ヴィルヘルムより少しばかり身長が増し、少し癖のある黒髪に無精髭。熊を思わせる体躯の
マキナと他親衛隊はそれぞれ数か所に分かれ日が沈み、夜になると同時に奇襲する為別々に分かれた。
そして、夜になった。大抵の人間が寝に行っているような時間。武装親衛隊の黒を闇に紛れさせ、扉の前で数人が待機していた。
「各員、突撃準備」
「マガジン、安全装置、問題ありません」
「そうか。では…突撃!」
マキナの号令と同時に武装親衛隊が扉を蹴破り、中へ突入する。
「制圧完了!」
「ツーマンセルでの室内探索へ移れ、他の隊も次期に報告が来るだろう」
殺された人間の断末魔と金切り声を上げるMGの銃声を聞きながら、マキナはゆっくりと中へ入ってゆく。マキナが担当したのは最も規模の大きいオークション会場。此処では、非合法な手段で手に入れた奴隷が多く売り出され好事家達がこぞって買いたたく。その為に多くの奴隷を収容している。そして、ソレに比例して警備の人数、質も上がってくる。万が一の可能性もある為、重要拠点であるオークション会場はマキナ主導での制圧となった。最も、予想通り強者は居なかったのだが。
他の親衛隊によって脇に退けられた死体を一瞥しながら、マキナは奥へと進んでいく。檻に入れられた見目麗しい少女たちは皆一様に手足に枷を付けられ、瞳は澱んでいる。絶望と希望のない交ぜになった感情を宿し、マキナや親衛隊を見ている。
その姿は何処までも痛ましく、近代を生き抜いた彼らにはこの様な存在が許されるこの世界への疑念と恐怖心、そして総隊長たる
「此処に居る、奴隷たちの身元は?」
「それが、どうも身元を証明するものは足が付く可能性を考慮し、廃棄されたものだと思われます。他の隊員も探してはいますが、望み薄かと」
「そうか」
一言だけ返すと、隊員は敬礼をしてまた捜索へと戻っていった。それを眺めた後、マキナはもう一度檻を見つめる。大きな体躯のマキナに威圧感を感じたのか、数名がビクリと肩を震わせ、怯えたようにこちらを見ていた。
その目線に、気が付きマキナはぎこちなくではあるが笑顔を作り、出来るだけ穏やかに話しかけた。
「君たちは、解放される。家に帰ることが出来る。だから、安心してくれ。もう、怖がる必要はない」
努めて穏やかな声を出したが、そもそもマキナでこの様な行動をとること自体が稀であり慣れない作業だったが故に、逆に怖がらせてしまい、それを見て肩を落としてしまった。
「大尉殿、この奥に…」
「どうした?他にも拉致された民間人が居たのか?」
マキナの問いかけに隊員は頷き、先導した。そこにあったのは分厚い水槽に入れられた少女と言うよりかは幼女に分類されそうな幼い女の子だった。頭部にヒレの様なモノがあるのを確認して、海人族とか言っただろうか…と自身のここ最近調べた事柄を思い起こしながら、近づいてゆく。
「少し離れていろ」
「はっ!」
マキナは一言そう言うと、形成した拳で軽く、それこそコンと音が鳴る程度に叩いた。すると、分厚かった硝子の水槽はまるで最初からそこ無かったかのように消えうせ、中にあった水と幼女が流れ出した。突然の事で固まっている幼女をマキナは抱きかかえ、その姿を確認する。水色の髪に、幼いながらに整った容姿。将来は美人であることが約束されているその幼女はマキナを困惑気に見ているだけだった。
「…無事か?」
「ふみゅ!?う、うん……おじさん達、誰?」
幼女の疑問は最もである。と言うのも、全員が黒ずくめであり服装も統一されている。そんな姿見て「誰?」と思わないのは能天気かただの馬鹿だけだろう。
幼女のその問いにマキナは、少し間を置き答えた。それは、一言「助けに来た」。マキナとなっている状態の彼は原因は不明だが口数が極端に減る。それが、何故なのか。何度もやり直している当の本人も分からない。何より、どれ程の言葉を重ねても薄っぺらく感じる。そう、考えたのだ。これが、何処かの勇者ならば助けに来たんだ!これからは俺が守ってやる!くらいは言いそうではあるが、それは結局たらればの話。IFでしかない。
そして、そのマキナのたった一言に邪な感情を感じなかったのか、それとも安心したのか幼女は徐々に瞳が潤んでいき、遂に堰を切ったように泣き出した。どれ程の恐怖が彼女を襲ったかは分からない。だからこそ、マキナはただ背をさする事しかできず、他の隊員もただ見つめる事しかできなかった。
タイトルのみ変わってるだけだからね。仕方ないネ。