ありふれない騎士団で世界最強・リメイク   作:ムリエル・オルタ

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誤字報告ありがとうございます。いつも、感謝しています。
私はありふれ好きなんですけど、どうもハジメの行動が苦手なんですよね。と言う訳で、この小説では敵対とまではいかないものの、バンドみたいに方向性の違いで少しばかり対立してもらいます。そもそも、奈落に落ちて強くなって帰ってきたら思いっきり周りを舐めてますからね。そりゃ、ヴィルの事も舐めますわ。


情報の擦り合わせと亀裂

翌日。ギルドからの依頼で北山脈へ向かう為、小隊規模で集合したヴィルヘルム達の所に愛子先生一行とハジメ一行が合流してきた。ちなみに、ミュウは町に待機している部隊が責任をもって世話をしている。

 

「んだよ…」

「依頼を受けた冒険者ってのが俺達なんだよ。折角だし、お前らも来るだろう?」

「そうだが…俺達はテメェらとは違ぇんだが?」

 

傲岸不遜を貫くハジメにかつての姿を知るヴィルヘルムは頬を引きつらせながらどうにか撒こうと考えていた。しかし、ハジメと一緒に来た愛子先生の援護射撃(無自覚)によりこの後敢え無く撃沈し、愛子先生達も兵士と共にトラックの荷台に乗せてヴィルヘルムは調査へと向かうこととなった。

 

「それにしても、結構変わっちゃってたねぇ…」

「外側も、内側もな。ありゃ、食ってもそこまで旨そうな魂じゃねぇよ」

「前だったら、“何言ってるんだろう”で済ませたけど、僕も同じ(・・)になったから何となく分かるよ」

 

トラックの先頭を走るシュビムワーゲンで恵里とヴィルヘルムはそんな事を話していた。今回は助手席に蓮が乗り、地図片手に目標ポイントへのナビゲートをしていた。そして、先程の恵里の言った言葉。“同じ”それは、永劫破壊をその身に宿したと言う事だ。それは、同時に現代社会に馴染む事が出来なくなってしまったと言う事だが、彼女からすればヴィルヘルムと同じ存在になれれば別に社会に溶け込めなくてもオールオッケーというヤツなのだろう。恋する乙女の覚悟は伊達ではないようだ。

 

まぁ、実際の恋する乙女が本当に人間から逸脱してでも添い遂げようとするのかは置いておいて。少なくとも彼女はその日の内に数十人の人間を殺した。永劫破壊の性質上、他者の魂を燃料として活動する。その為、何をするにもまずは人間を殺し、その魂を食さねばらならない。故に深夜に一度都市を囲う壁を飛び越え、ヴィルヘルムの常人離れした嗅覚と吸血鬼としての感覚を駆使し、周囲の野盗をその日の内に皆殺しにした。返り血に染まるヴィルヘルムと手にした聖遺物であるケリュケイオンを血で真っ赤に染め返り血を頭から浴びていた恵里はかなりのスプラッタな光景となっていた。

 

その行為によって少なくとも、聖遺物の使徒に相応しい攻撃力と防御力。聖遺物の扱いも未だ拙いが天職と併用してそれなりのものとなっていた。ヴィルヘルムとしては、もう少し習熟訓練をしたい所だったがクラスメイトとの遭遇や明日(当日)に控えた依頼の事や初めての殺しで少し疲弊している恵里の事も考え程々で切り上げることとなった。

 

此処で一度最初の会話。ヴィルヘルムと恵里の会話に戻り、何故ハジメの魂を「旨そうじゃない」といったかに言及すると、ハジメはもう戻れない(・・・・)のだ。絵具を何色も混ぜてそこから特定の色を取り出せと言われても出来ない様に、既にハジメはハジメの意識を持つハジメだったナニカに変貌しているのだった。生きる為に、無理やり魔物に肉体を適用させ体に濃縮した魔力の結晶を埋め込み、この世界の鉱物で作られた義手をそのままつけている。幻肢痛(ファントムペイン)は見た感じは襲われていないが、それでも嘗てのハジメを形成するものは今は存在しない。

 

「ま、今の所はただ単にガラが悪くなっただけで実害もねぇし、どうでもいいけどな」

「まぁ、そうだね。あ、僕としては戦力補充をしたいと思うんだけど。適当な強さの魔物とか人間居たら殺して使役しても良い?」

「ある程度だぞ。あんま多いと、運ぶのは面倒だし生モノだと腐った時に臭ぇだろ」

 

恵里の言葉に嫌そうではあるが、拒否しないヴィルヘルム。何より、懸案事項が新鮮な死体だと腐ったら面倒というところなのが流石創造階位の使徒とも言える(偏見)

こうしょうもない会話をしている間に目的の場所に着いた。と言っても、目的地まで数キロ手前ではあるが。そこで車両から降りたヴィルヘルムと小隊は整列した。

 

「さて、確認だ。この先にはここ最近増えた魔物が多く生息していると予測される。故にここから先は二人一組(ツーマンセル)で行動しろ。魔物以外にも生物が存在する上に今回は俺達以外に人間が居る。生物兵器の使用は極力禁ずる。が、展開的に面白くなれば既知(ゲットー)を破る次いでに行え。責任は私も取らない。では、行け!」

「「了解(ヤヴォール)」」

「おい」

 

ヴィルヘルムの言葉にハジメが声を上げた。その手には既にドンナーが握られており、引き金にも指が置かれていた。

 

「これはどういうつもりだ?南雲」

「どうもこうもあるか。お前さっきなんて言った?生物兵器?毒ガスか?」

 

ハジメが言及したのはヴィルヘルムが口にした生物兵器という言葉。地球ではそれなりに交友があったが親友と言うには難しい距離間だった。そして、この世界にきて奈落に落ち豹変したハジメからしてみれば同郷のちょっと仲のいい奴程度だった。だからこそ、ユエやシアそしてギリギリ最後に守ると宣言した香織が彼の中で守るべき存在であり。ヴィルヘルムに関しては割と引き金は軽かった。

 

「あ?まぁ、毒ガスみたいなもんだよ。一瞬でここ等一帯を吹き飛ばすのには丁度いい。何より、それによって何が起こるのか俺はワクワクするね」

「エーレンベルクがここまで狂ってるとはな…。ユエに手を出してみろ。その脳天をぶち抜くからな?」

 

ハジメはあらん限りの殺気をヴィルヘルム一人に向ける。が、ヴィルヘルムはどこ吹く風であり寧ろ若干うざったそうにハジメを見ていた。愛子先生一行はこの状況に動くに動けず当事者でもないのに汗をダラダラ流していた。

 

「おい、恵里」

「え、なに?」

「飲ませろ。流石に腹が減った」

「あ、いいよ」

 

そんな外野を気にもせず、ヴィルヘルムは恵里に近づきそして差し出された首筋に噛みついた。息をのむ周囲の人間と呆れ半分に溜め息を吐く蓮。風が吹き、葉を揺らす音があるというのにヴィルヘルムの喉が鳴る音が嫌なほど聞こえた。一分もしない内に恵里がヴィルヘルムの肩をタップし始め、それに応ずるようにヴィルヘルムも首筋から離れた。離れた恵里の首筋には生々しい四つの小さな穴が開いていたが次の瞬間そこには何も無かったかのように穴がふさがった。

 

「飲み過ぎだよ」

「あ?別に良いだろ、最近つまみ食いもしてねぇしよ」

 

恵里に文句を言われ、不満げに首筋から離れるヴィルヘルム。口に付着した血を袖で乱暴に拭うと噛みついた恵里の首筋をポケットから出したハンカチでさっと拭いた。そこで、背後から警戒心と少しばかり敵意を感じた。

 

「何をしているんですか!?」

「あ?先生は知らねぇのか?吸血鬼の主食は血なんだよ」

 

ヴィルヘルムのその一言に先ほどとは別の意味で空気が凍った。特に、キツい視線を送ってくるのはハジメと共に行動する金髪美少女だった。しかし、その視線を放置してヴィルヘルムは三人と共にサクサク前へ進む。その背後を急いで追いかける愛子先生一行とゆっくりと面倒臭そうについて行くハジメ一行。

 

暫く先へ進むとヴィルヘルム達の歩みが止まった。ヴィルヘルムは頻りに周囲を見渡し、何かに気が付くとニヤリと笑い。蓮と恵里に呟く。

 

「此処で人間が死んだな。あと一人生きてるかもしれねぇな。だがこれは……臭いも薄いし、あんま期待できねぇか」

「相変わらずその軍用犬みたいな嗅覚してるな」

「吸血鬼になった恩恵だっけ?」

 

蓮が呆れ半分関心半分にそう呟くとそれに追随するように恵里も会話に混ざる。後ろに居る二グループはただの背景の一部になっていた。三人の世界、逆ハー等愛子先生一行を中心に呟かれているが総スルーされている。

 

「まぁ、その所為で流れる水と銀とか、吸血鬼の弱点とされるものが適用されるんだがな」

「で、突破できた奴は?」

「はぁ?居る訳ねぇだろ。人間ごときに殺されるような柔な鍛え方はしてねぇよ。つうか、それは恵里にも言えることだろうが」

「え、私?」

 

ヴィルヘルムは先に進みながら三人で雑談に興じていた。聞き耳を立てる背後の人物達の事は全く気にしていない。なにより、聴かれたところで直ぐに対策が出来るという訳じゃ無いからなのだがそれを知るのは彼らのみだ。

突然話題が自身に向いた恵里は猫をかぶった状態で驚いて見せた。ヴィルヘルムの話だったはずが突然此方に矛先が向けば誰だって驚くだろう。

 

「あぁ、テメェの使ってる所為異物は言っちまえばオリジナルに近い贋作だ。故に偽ロンギヌス(トバルカイン)見たいな、デメリットがあるかもしれねぇだろ?いや、俺が直々に作ったもんだからそこは心配しなくても大丈夫だとは思うけどな」

「あの呪いは諸刃の剣超えてたもんな。使えば使うほど、体が腐ってゾンビになるってもう字面だけでヤバいのは分かる」

「えぇ…」

 

若干の自画自賛を入れながらそう言ったヴィルヘルムに思い出したのか苦い顔をする蓮。なんとも言えない顔になった恵里とその場は若干混沌とし始めたその時。背後から声をかけられた。

 

「この先の滝の裏側に俺たちが探している奴が居る。だから、こっからは俺らで行かせてもらうぞ」

「勝手にやってろ、俺たちはここ周辺の調査が任務だからな」

 

ハジメの言葉に素っ気なくそう返したヴィルヘルムはポケットから煙草を一本取り出すと咥え、火をつける。それを見た蓮が自分にもくれと言うと無言で渡し吸い始めた。

 

「こ、こらー!未成年が煙草なんて吸っちゃ駄目です!」

 

ハジメ一行不在の滝壺周辺に愛子先生の覇気の無い怒鳴り声が響いた。




今の恵里はまだシュピーネ以下です。活動までは出来ますが、それ以上はまだ無理です。だんだん上げていって、ドンドン頭のネジを外していきます(鋼の意思)
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