ありふれない騎士団で世界最強・リメイク 作:ムリエル・オルタ
帝国から使者が来る前にもう一度オルクス大迷宮に行きたいと言ったメルドによってもう一度行くことになったヴィルヘルム達。ホルアドに向かう前日にヴィルヘルムはある人物と会っていた。
「それで、話って何ですか?ヴィルヘルム君?」
「あぁ、話ってのは俺が居なくなった後のことだ」
とある人物とは愛子先生であり、話す内容は今後の特にヴィルヘルムが抜けた後についてだった。ヴィルヘルムは一応同郷(この場合は同界なのだろうか)であるクラスメイト達が死ぬのは少しばかり目覚めが悪い。最も、彼自身は襲ってきた場合は殺そう等と考えているのだが。そもそも、本来ヴィルヘルムは差別意識が強く、日本人など”猿„と言いそうなものであるが、ここは中身が別物であるが故に口調こそ乱暴だがそこまででは無い。
ヴィルヘルムの切り出した話の内容に愛子先生の表情が強張る。ヴィルヘルムが抜ける事をその場で聞いてはいないものの、傍に居る神殿騎士達からそんな事があったと聞いていたのだ。愛子先生自身としてはここに残ってほしいが、クラスメイトに魔法を打たれたヴィルヘルムが頷くとは思えなかった。それに、ヴィルヘルムの纏う空気がそんな言葉を出させるのを躊躇わせた。
「居なくなった後の事…ですか」
「あぁ、あいつらの事だ。どうせゲーム感覚だったのが
そう言って近くを通りかかった侍女にどこか落ち着いて話せる場所はないかと聞き、案内させる。愛子先生は「あれ?あれれ?そんな人に聞かれちゃ不味い話なんですか!?」と狼狽えていた。顔には出さなかったが。
案内された部屋に二人で入り、案内した侍女に何か飲み物を持ってくるように頼んだ後、ヴィルヘルムはドアを閉め近くになった椅子に腰かけた。
「下手に聞かれて異端者にされると面倒だからな。で、だ。テメェはこれからどうするつもりだ?」
「どう、とは?」
ヴィルヘルムの言葉に首をかしげる愛子先生。彼女としてはヴィルヘルムの言葉を理解しようにも、どれに対しての事なのか分からなかった。これから各地を回り、愛子先生の天職である作農師として土壌改善など行うことなのか。それとも、勇者として祭り上げられた光輝の事とそれに伴う戦争のことなのか。他にも幾つもの考えが浮かんだがどうしてもヴィルヘルムの言いたいことが分からなかった。うんうんと唸っている愛子先生に言葉が足りない事に気が付いたヴィルヘルムは少し申し訳なさそうにしながら言い直した。
「言葉が足りなかったな、要はだ。この世界―—―」
「お飲み物をお持ちしました」
ヴィルヘルムが再度言おうとした瞬間ドアの向こうから先ほど案内させた侍女の声がした。その声にヴィルヘルムは舌打ちしながら向かい、飲み物を受け取る。ヴィルヘルムは侍女からお盆ごと貰い持ってきた。テーブルに飲み物を置き、もう一度座りなおす。そして、ヴィルヘルムは喋りだした。
「要は、この世界の人間を殺す覚悟とその後の生徒のケアをする手立てはあるんだろうな?戦争に向かった新兵はPTSD*1にかかるか勇猛と蛮勇を履き違えて戦死する。だが、それは嫌なんだろう?」
「当たり前です。教師として、生徒全員をもとの世界に連れて帰るつもりですから。それに、出来れば人殺しにはさせたく無いですからね」
ヴィルヘルムの言葉に強く返す愛子先生。しかし、そこには不安が見て取れた。そんな愛子先生の様子にヴィルヘルムは特に気にした様子もなく周りに注意を払っていた。この部屋の防音性能など最初から当てにはできない。建築様式が中世に近く、魔法という地球にはない技術によって作られているとしても信用できる訳ではない。故にヴィルヘルムは周囲に誰か居ないかを警戒していた。幸いにも近辺に人間の気配は無く、ヴィルヘルムも落ち着いてこの世界の人間には話せないことが話すことができると心の中で安堵した。
だからこそ、見落としていた。頭では理解していても体に染みついている行動は変えるのは難しい。
彼女にとってヴィルヘルムはヒーローであり、
「この世界は歪だ。あぁ…………いい加減この口調もやめだ。貴女も気が付いている筈ですよ。世界規模の宗教が一枚岩でいる歪さを」
「普通の喋り方、出来たんですか!?」
「………そこに注目しますか?」
会話内容は教会延いてはこの世界についてだった。彼女は予想が外れてホッとし、会話内容が気になるのかそのまま盗聴を続行した。呆れた様なヴィルヘルムの顔に愛子先生は頬を染めながら咳払いした。
「エーレンブルク君が普通に喋れたのも驚いたんですよ?それに、エーレンブルク君が言わんとしている事は分かります。この世界の歪さも。だからと言って今すぐ何かができる訳じゃありません。私は、各地を回って皆さんを帰らせる方法を探します。そして、自分の目で見て判断します」
「………………………………………強い人だ」
「いいえ、強いわけじゃないですよ。ただ、精一杯今できることをしようとしているだけです」
あれ、これ不味くない?と、少し焦る彼女。どうしよう、ここは戻って突撃をかませばいいのだろうか。でも流石に表向きの私の性格じゃ…。そんな事を彼女が考えているとヴィルヘルムが口を開いた。
「貴女はそのままでいて下さい。生徒達のために全身全霊で行動する、それは素晴らしい事だ。貴女だけは汚れてはならない。貴女はそのまま
「それは………どういう事ですか?それに、私以外ってエーレンブルク君はどうするつもりなんですか?」
「私はすでに汚れている。それに、私はこちらの世界で探さなければならないものがある」
その言葉に彼女も愛子先生も首を傾げた。ヴィルヘルムが言うような事柄が全く見当つかないからだ。彼女としては最も気になる彼の事を知りたいのだが、現状ではどうにも手が出しずらい。どうしたものかと考えているとヴィルヘルムが口を開いた。
「それは、一体どういう…………」
「気にしないで下さい。これは私の戯言のようなモノ…。…………………………………俺は、この王国を抜けて自由気ままに探し続けますんで、
そう言ってヴィルヘルムは立ち上がり、部屋を退出した。その後愛子先生が何かぼそりと呟いたように彼女はしたがそれより頭にあるのはどうやってヴィルヘルムに近づくか。そして、妙案を思いつき彼女は細く微笑んだ。
「他にどんな女が来たってかまわない。なんたってボクがヒロインなんだから!」
この時、ヴィルヘルムが言い知れぬ寒気に襲われたとか襲われなかったとか。
此処に関しては変更点はありません。と言うのも、変更点を思いつかなかったんですよねぇ。