ラフムに憑依していたのでシドゥリさんを救いたいと思います。 作:赤狐
3話で終わるかな…?
気がつくと、再び無秩序に生えている木々の間を走っていた。
カラダも軽く、外傷はあるけれど先程の激痛を感じることは無かった。
どうしてオレはこの場所にいるのだろうか。
何も考えずとも走りを止めないカラダに疑問を抱きながら意識を手放す直前の記憶を辿る。
……花の香り。
優しく嗅覚に訴えかけてくるその匂いは懐かしいものだった。
以前どこかで嗅いだことのあるような───
その事に考えが及んだ瞬間、薄らとしかし確かにその香りが前後に、道を為すかのように続いていることに気づく。
それは、オレをどこかへ
信じ難いことだが、無意識のままオレのカラダはこの香りを辿ってここまで来たのだろう。
けれど、部外者のオレが、目的も中途半端でしか果たせなかったオレがこの世界に留まっているのは、なぜ?
───いや、違う、
まだオレにやれることが、使命が残っているのだ。
自分に出来ることがあるのならば、最大限の努力を、労力を、気力を限界まで費やし、進み続ける。
自分に出来ないことであっても、出来る範囲で出来るだけのことを思考を巡らせ、模索し、実行を重ねる。
それが
よそ者であっても、記憶を失っても、それでも抱え続けていたたったひとつの
このカラダはその為にこの場所に残されている。
余人が聞いてもとても理解を得られないような考え方であることは分かっている。
でも、オレにはこれしかないから、これだけしか持っていないから。
突然、一陣の風が背後から背中を押すように吹き上がる。
その風の中に、舞散る薄紅色の花びらを視た。
目の前で揺れる1枚の花弁に知っている誰かの面影を───
『すまないね、まだ、その時ではないんだ』
ふわりと花びらが空高く舞い上がる。
そしてそのまま太陽と重なり、見えなくなってしまった。
つかもうとした瞬間に指の間からするりと抜け落ちてしまった感覚が後に残る。
狐につままれたような、幻を見たような、はぐらかされたような。
けれど、答えを得ずとも、道は目の前に在る。
誘い込む為の罠だろうか、という思考が一瞬脳裏を掠める。
いや、この世界と関わりのなかった、まだ何も為せていない、サーヴァントもいない上にマスターでないオレを狙う理由がない、と打ち消す。
それに、安心するような、懐かしいあの香りが道となっている。
それで十分じゃないか。
だって、オレの周りにいてくれた
それに報いることができるのならば本望だ。
───だから、大丈夫、大丈夫……
「ダイジョウブ」
それは、誰に向けての、何に向けての言葉だっただろうか。
ふと口をついて出た言葉の真意を分からずまま、オレは走り続けた。
× × ×
Interlude
「ハァ……ハァ……ハァ……ッ!」
森林という名の檻の中を裸足で駆け回る。
走る度に
しかし、立ち止まってしまえばそこが最期だ。
たちまち
なぜ、こんなことに。
何故、何故、なぜ、なぜ……!
「こんなはずじゃ───こんなはずじゃ……!」
───どこで間違えてしまったのだろう。
「ボクは母さんに作られた、新しい人類だ……!」
───
「だからこそメソポタミアを滅ぼした。その為に活動してきた……!」
───母さんが喜ぶと信じて。
「なんの経験も、記憶も、愛情もないカラダでも、母さんからの期待だけはあると信じて……!」
───カラッポのカラダを満たす為に。
「ギャハ!ギャハハ!ギャハハハハハ!ソッチダ!ソッチ 逃ゲタゾ!」
「追イ詰メロ、捕マエロ!解体ダ、デク人形ノ 解体ダ!」
アイツらの声がすぐそこまで来ている。
不快な甲高い声に乗せられた感情は、愉悦、悦楽、享楽の類だった。
それは、新しいヒトとしてあまりに不出来、あまりに愚劣。
あぁ、けれど、その出来損ないに生命を脅かされているのがボクだ。
片や新たな支配層としては致命的な
どちらとも救いようのない存在だ。
「それが、こんな───」
ツーっと、雫が頬の上をなぞり、地面へと滴り落ちた。
「何もなかった、この大地には、何もなかった……!」
───これは……涙?泥で出来た、兵器であるはずのボクが……?そんな、有り得ない。でも、この、溢れ出る感情は……?
「はじめから使い捨てだった……!」
───憤激?悔恨?怨嗟?
「はじめから偽物だったんだ……!」
───違う、これは……
「未来も、希望も、自分の意思も───」
「───友人も、ボクにはいなかった」
───これは、「悲しい」んだ。
「ただ、ティアマト神の唯一の子供だと。そんな事にすがるしか、なかったのに───!」
最初から間違えていて、全部失って。
聖杯も、すがるものも、存在意義も無くしてしまって。
残ったボロボロの自分のカラダさえ
そんな一人ぼっちの自分が悲しいんだ。
「───アハ♪見ィ ツケタ」
「───」
いつの間にか足は止まっていた。
目の前には悦楽に口端を歪めたラフム達。
生存の為の力が、抜ける。
「───これが、終わりか……。なんだ、人間たちみたいに、呆気ない」
……ボクも大した事はなかったんだ。壊されれば、動けなくなるだけなんだから。
風前の灯火であるボクの命を刈り取らんと鋭利な脚先が構えられる。
これから起こることを前に、瞼を閉じた。
「……あぁ、こんな事なら───」
───最 後 に ア イ ツ に 会 い に 行 け ば 良 か っ た の に ね ───
けれど、いつまで経っても予想していた痛みはやってこない。
思わず瞼を開けると、衝撃の光景が広がっていた。
「え……?」
胴の心臓の部分を、ラフム達の紫色の体液に濡れた鋭い脚先が穿っている。
胸を貫かれたラフム達は声を上げる間もなく、ドサリと地面に重力に従って倒れ込んだ。
「オマエ……!オマエ……!オマエッ、狂ッタァ!?」
後方に控えていたもう一体のラフムが同族の命を奪った、不可解な行動をとったラフムに襲いかかる。
───激突。
互いに相手の胸を脚が貫く。
「ギェッ……!」
襲いかかったラフムが短い断末魔を上げて地に伏す。
後に残ったのは静寂。
そして、最後に残ったラフムも項垂れるように膝を崩した。
Interlude out
× × ×
今までとは比にならない傷の深さにカラダが前のめりになって倒れる。
ふと視線をあげた先には、目を見開いてこちらを凝視する、美しい翠色の髪に血に濡れて紅白模様となった衣を纏ったキングゥが居る。
なんだか、こちらに来てから見知った顔の人たちには驚愕の表情ばかり向けられている気がする。
それもそうか、誰の気紛れか迷い込んでしまった一つの異分子が、一部とは言え状況を我欲で掻き回しているのだから。
「おま、え……助けて、くれたのか?」
あぁ、ちくしょう、脚一本すらまともに動かすことが出来ない。
しっかりと向かい合って話したかったけれど、そんな余裕はないらしい。
顔を上げて、彼の顔を見るのが精一杯。
でも、それさえ出来れば十分だ。
「───キングゥ」
息が震える。
「キミは……誰だ?アイツらに連れて来られた人の名残はあるけれど、別人だ」
「……オレハ、部外者、ダよ。コノ世界に似タ、違ウ世界カらノ」
声は掠れる。
「なら何故!余計に、自分を犠牲にしてまでボクを助ける意味が分からない……!」
「君ヲ、助けタカッたかラ」
カラダは血まみれ。
「───!?」
「……キングゥ、君ガ、しタイことハ、何?」
それでも、腕を伸ばす。
「ボクは……ボクには何もなかった!何もなかったんだ!使い捨てで!偽物で!人形だった!ボクの意思なんて最初からなかったんだ!」
「……ソレは、違うト、思う」
今度は零さないように。
「そんなことをなぜ───!」
「───王様は、君ヲ待っテ、イるよ」
オレに出来ることは。
「───!」
「……初めカラ、間違っテいたかもシれナい、多くのモノを、失っタかもシレない。デも、母親を想ウ気持ちは、本物だったンじゃ、ナイかな」
手を伸ばし続けることだけだから。
「───」
「それニ、まだ、残っテいるハズ。君にしかない、君だけの、
そして、この手が、想いが
「お前、笑って───」
「だからさ、キングゥ、自分の感情に、自分の素直な気持ちに従ってみて、いいんじゃないかな」
届くといいな。
「ボクは……ボクは……っ!」
───限界、だ。
カラダが
泥で出来たカラダがひび割れ、崩れ落ち、そして地に還る。
カラダだったものが地面に触れた瞬間、煙のように空気へと溶けていった。
「お前、カラダが……!」
「わかってた、ことだから。キングゥも、長くはないから」
笑えて、いるかな。
「でも……!」
「キングゥが、選んだ道を、進んでくれることが、一番だから」
笑えてると、いいな。
「…………分かった」
視界全ての輪郭が綻び始め、空と木々が混ざり合う。
その中で、キングゥの姿がゆっくりと遠ざかるのが見えた。
草木を踏みしめる音が次第に遠のいていく。
これで、オレと彼の話はおしまいだろう。
これから先も、決して交わることは無い。
それが、ほんの少しだけ寂しかった。
「……ありがとう、別の世界の
だから、最後に耳に届いた彼の声が何より嬉しかった。
あぁ、そうだ、これは紛れもなく奇跡だったんだ。
有り得ないことがあって、果たせなかったことを為すことが出来た。
まるで
だから…………本当は、怖い。
すぐ側にある濃厚な死の気配。
視覚も、聴覚も、触覚も何も感じない。
寒い。
寒い寒い寒い。
寒い寒い寒い怖い寒い。
寒い怖い怖い寒い怖い怖い寒い。
──────孤独。
誰もいない。
何時も傍に居てくれたマシュがいない。
ドクターも、ダヴィンチちゃんも、フォウくんも、他の
独りで、オレは、死ぬ。
知り合いのいない世界で、オレは、死ぬ。
少しでも考えてしまったら、
……これで、終わりなんだ。
そう思った瞬間、冷静さが戻ってくる。
処理しきれない現実への諦観に似た、けれどどこか違うような。
確かに、ここで、オレは終わりなのかもしれない。
或いはよく出来た悪い
───けれど。
けれど、自分のやってきたことは間違いではなかったはずだ。
己の信念を、信条を、在り方を曲げずにここまで来た。
そしてその結果が
意識が薄らぐ、遠のく、揺らぐ。
あと数秒でこのカラダが、この世界にいた証が意識とともに空の中に消えていくことが何となくわかった。
若干の恐怖とそれを上回る充足感に包まれてカラダの崩壊に身を委ねる。
最後に、意識が消える寸前に思った。
“やっぱり、みんなと一緒の方が良かったな”
と。
──────────。
──────。
───。
『お疲れ様、藤丸立香』
『これで、悪夢と奇跡を一緒くたにした君の旅はおしまいだ』
『君はこの旅を忘れてしまうだろうけれど』
『これはある種の「
『そう定めないと実現しなかった夢のような現実』
『誰かから見たら酷く滑稽で無駄な事のように思えるかもしれない』
『けれど、そんなことは無いんだ』
『君が、自分自身のことさえ忘れても、仲間が近くにいなくても辿ってきた道を進み続ける力があるのだと君は証明したんだ』
『それはとても難しく、険しい道のりだ』
『だから、誇るべきことなんだ』
『君が忘れるとしても』
『だから、私が覚えていよう』
『これは、君も知らない、私だけが知る君の物語だ』
『ありがとう、藤丸立香』
内容に入れようか入れまいか30分程迷ったもの
白旗振るシーンにて
ぐだ男「白旗だけじゃ、伝わらないか…!?なら……!」
ぐだ子「あ、あれは……!」
マシュ「はい!前方ラフム、ジャパニーズ土下座です!敵意はないと見ます!」
ぐだ子「待って!違う!なんでこの時代のバビロニアで!?」
(マーリンはアヴァロンで大爆笑してます)
Qなんで入れなかったの?
Aネタ要素にしか落とし込めなかったからです
Qなんで入れようとしたの?
A怒涛のシリアスに耐えきれなかったからです(矛盾)