何事にも裏と表がある。それは『世界』にも存在している。この世界に存在している
人を超えた力を持つ知的生物。特に強い勢力を持った三種族が三つ巴の戦争の果てにその数を多く失ったのは、人間側から見れば喜ばしいといえるだろうか。
「どっちでも良いか……そんな事は」
少なくとも人間にとって重要なのは、人は独自に直ぐ近くにある脅威に対抗する為の《力》を得る必要が有ると言う事だ。
《オレンジ》
人が人界の脅威となる多種族に対抗する為の力『ロックシード』と『戦極ドライバー』、そして神秘に属する魔法を科学的に制御する為の道具である『デバイス』。
それらを開発した『ユクドラシル』はその力をオリジナルを受け継いだ少年を含めた九人の人間に試験的に託す事になった。
イグドラシルと彼らを繋ぐ者を含めた七人の『
「……急ぎの仕事か」
「ああ。対象は、はぐれ悪魔『バイザー』。被害が広がっている以上、一刻も早く始末する必要がある」
「だろうな」
彼、『
「まったく、変なタイミングで連絡してくれるな」
「そう言うな。全員こっちの事情を知っているとは言っても、流石に全員で向かうのは単なる過剰戦力だろ?」
現時点のアーマードライダーと魔導師の全員がその場に揃っている状況で、自分が呼ばれたのは単純に……
「で、報酬は?」
「此方からは新しいロックシードだ。金銭での報酬も被害者の家族から僅かだが預かってる」
「了解」
戦力強化として新しいロックシードを注文していたからである。報酬は金銭や新しい装備と言う形で支払われるのだが、魔導師組のデバイスの整備は無料でユグドラシルが引き受けているが強化はやはり報酬と言う形になる。
「……まあ、任せといてくれ……」
《オレンジ》
「変身」
『ロックオーン!』
頭上から現れた巨大なオレンジが勇斗の頭に覆いかぶさり、彼は青いスーツを纏う。
オレンジが展開するとアーマーとなり、勇斗は『仮面ライダー鎧武・オレンジアームズ』へと変身する。
『オレンジアームズ! 花道、オンステージ!』
「アーマードライダー、鎧武! 此処からはオレのステージだ」
「……どうでも良いが、現場までその格好で行くのか?」
流石に仮面ライダーの姿で目的地まで歩くのは目立つ事この上ない。バイクに関しては今回の報酬なのではぐれ悪魔を始末するまでは手に入らない。だから、歩いていくしかないのだが……
「…………」
無言で戦極ドライバーを外して変身を解除する勇斗だった。
斬月からの依頼を受けた後、件のはぐれ悪魔が居るという廃屋までやって来て改めて鎧武に変身する。
「さて……」
オレンジアームズの専用武器『大橙丸』を無造作に持ちながら、廃屋の扉を蹴破り中へと入る。パワー系のアームズで廃屋毎叩き潰しても良かったのだが、現在進行形で襲われている人が居ると危ないのでそれは止めておく。
『ケタケタケタケタケタ』
入った瞬間聞こえてくるのは狂ったような笑い声。
『うまそうな匂いがするぞ? 甘いのかな? 苦いのかな?』
男女入り混じった不気味な声が響くと、そんな声と共に女性の上半身と獣の首から下と言った下半身を持った化け物だった。
「さあ? 強いて言うなら……硬くて酸っぱくて不味いと思うぞ」
ロックシードとなる実は戦極ドライバーやデバイスを持った者以外には非常に口にしたくなる代物なのだ。冷静になって考えれば不気味な木の実を食べたいとは思わないのだが、あの実には正気を奪う何かが有る様子だ。
腰に有る『無双セイバー』を抜き大橙丸と二刀流で構え、
「アーマードライダー、鎧武! はぐれ悪魔バイザー、此処からはオレのステージだ!」
戦国武将のような三日月の飾りがついたオレンジ色の甲冑を纏った仮面ライダー鎧武・オレンジアームズはオレンジの輪切りを更に半分に切ったような刀身の刀・大橙丸をつきつけそう宣言する。
「はっ!」
相手の反応よりも早く鎧武は素早く獣のような下半身を蹴って大橙丸でバイザーの脇腹を切り付ける。
『無双セイバー』
続けて居合いの要領で腰にぶら下がった刀・無双セイバーを抜ききりつける。ご丁寧に自分の名前を名乗ってくれた愛刀を一閃。何気に斬月も持っている武器では有るが、一番使い慣れた信頼できる武器だ。
(流石に硬いか)
見たままの生物の肉体ならば無双セイバーや大橙丸で簡単に切り裂く事が出来るが流石は悪魔、見た目通りの強度ではないのだろう、無双セイバーも大橙丸も一撃必殺とまでは行かない。
「人間風情がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「ふっ!」
そのまま地面に着地しつつ無双セイバーと大橙丸を二刀流の要領で構える鎧武に対し、バイザーは激昂して踏み潰そうとして襲い掛かるが、鎧武はそれを紙一重でかわして行く。獲物と思っていた相手に噛み付かれた事に対して怒っているのだろうが、
「温いんだよ、お前は!」
バイザーの怒りなど鎧武にとって何も感じるものは無い。恐怖さえも、だ。こいつのせいで多くの人が犠牲となっている。獲物に反撃された獣の激昂等、鎧武にとって意に介する事でもない。
無双セイバーの黄色いレバーを引いて、踏み潰そうとしてくるバイザーの足を避けながら弾丸を撃ち込む、一発、二発、三発と上半身を狙って合計六発の弾丸を撃ち込むと大橙丸と無双セイバーの底面を接続。
ナギナタモードへと切り替えると足元を潜り抜けながら四足の足を切り付ける。普通に攻撃しても効果は薄いと考え、今回鎧武が狙った場所は腱に当たる部分だ。
「ぐぁ!!!」
それと同時に崩れ落ちるバイザーの体。
「さあ、輪切りにしてやる!」
『look off』
輪切り状態のオレンジロックシードを外し、無双セイバーの窪みに装着する。
『look on』
『一、十、百、千、万!』
カウントダウンと共に無双セイバーと大橙丸に集まっていく力を感じ取ったのか、何とかそれよりも早く鎧武を迎撃しようとするが、ナギナタモードになった無双セイバーと大橙丸を回転させながら救い上げるように二発の斬撃を飛ばす。
バイザーに命中すると斬撃は巨大なオレンジの形のエネルギーの塊になってバイザーを拘束する。
『オレンジ・チャージ』
大橙丸の一際輝くと、鎧武はバイザーをすれ違い様に大橙丸で切り裂く。
「おのれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!」
絶叫と共にバイザーは拘束していたオレンジのエネルギーと共に真っ二つになり爆散する。油断無く無双セイバーからロックシードを外しベルトへと戻すと周囲の様子を伺う。
(……分身とかじゃ無かったな)
間違いなく先程倒したバイザーが本体だった事を確信すると廃屋の出入り口へと向き直る。
「貴方は何者なのかしら?」
出入り口の方からそんなことが聞こえてきた。鎧武の視界に移るのは数人の男女。
(『リアス・グレモリー』とその眷属……って一人多い気が?)
上級悪魔で有る赤い髪の女性『リアス・グレモリー』を王とした眷属。事前の調査ではイケメンが騎士の『木場 祐斗』、黒いポニーテールの女性が女王の『姫島 朱乃』、白い髪の小柄な少女が戦車の『搭城 小猫』。此処までは知っている。
過去の一件から三大勢力に関わりたくないと思っている勇斗にとって関わらない為に相手のことを調べるのは重要な事だ。
(……あいつ、確か……『兵藤 一誠』だったか?)
兵藤一誠、勇斗の通っている駒王学園の男子生徒で、悪い意味で有名な奴なのは知っている。変態三人組と呼ばれている覗きなどの常習犯の一人で、学園の恥部にされても可笑しくない変態の一人だ。
(悪魔だったのか、あいつ?)
自分達の調査にも筆禍から無いと言う時点で、相手の能力が高いのか最近悪魔になったばかりかと言った所だろう。
「さて、説明をして貰えるかしら? 貴方は何者? はぐれ悪魔……じゃないわよね。何が目的で私の領地で好き勝手しているのかしら?」
(『私の領土』だと? ふざけるな……)
仮面の奥で歯を食いしばり、二刀を持つ手に力が篭るのを感じながら、なるべく感情を出さないように気をつけながら口を開く。
「私の領土? 随分と笑える冗談だな。何時から日本はお前達悪魔の土地になった?」
魔力を練るリアスを筆頭に戦闘態勢を取る一誠を除いた一同と、何か悩んでいる一誠。その様子から彼が最近継続になったのだろうと言う考えは正しいと判断する。明らかに彼は戦いなれていない。
「ここはお前達悪魔の世界じゃない。そっちこそ、誰に許可を貰って領地なんていっているんだ?」
「魔王様に決まってるわよ」
「へー……悪魔って言うのは聖書の神に異教徒狩りで悪魔とされた日本神話の神々だったのか? 初耳だな」
「何が言いたいのかしら?」
「魔王の許可なんて、人間であるオレの知った事じゃない。せめて日本神話の神に許可を貰ってから出直して来い!」
「あれ、その声って? お前、もしかして緋勇か?」
空気を読んでるのか読んでないのか、初めて鎧武を見た時……と言うよりも彼の声を聞いた時から悩んでいた一誠が納得したと言う様子でそんな事を言う。
(チッ! 普段ハーレムハーレム言ってるから交友関係がない男の声なんて覚えている訳無いと油断して……いや、待て)
改めて学園での自分の交友関係を思い出す。別の高校の友人達以外の駒王での友人と言えば、
(同じチームの初瀬と城之内は男だから除外して……フェイトに、なのはに、はやて……か)
同じダンスチーム・鎧武のメンバーで、男である二人は除外したとしても、美少女三人と仲の良い自分の事は覚えていても無理は無いと改めて思う。
そもそも、故郷である海鳴での悲劇の後、
「緋勇って、知ってるのイッセー?」
「はい、同じクラスの緋勇勇斗です、部長」
「そう」
(あの変態三人組の一人が。今度覗きのポイント全部塞いで、学校に持ち込んだ本やDVDの隠し場所、生徒会に報告してやる)
一度はもめた事も会ったが、比較的リアスと同じく悪魔である生徒会のメンバーとは友好的に接している。特にユグドラシルで開発されたデバイスが関係して、生徒会長の姉とは本当に仲が良いが。結構気に入ったらしい。
ぶっちゃけ、知りたくも無かったが結構話している所を耳にしてそう言った場所の事はよく知っている。
「緋勇勇斗くん、で良いわよね? その姿とか、貴方の事を聞きたいんだけど……良いわよね?」
「悪いが、お断りだ!」
無双セイバーの引き金を引いて足元に銃弾を打ち込み、爆煙を作り出して視界を封じると、
《イチゴ!》
『イチゴ!?』
突然上空に現れて振ってくる巨大なイチゴにリアス達グレモリー眷属が驚愕の声を上げる中、
《イチゴアームズ! シュシュっとスパーク!》
スピード、俊敏性、ジャンプ力、瞬発力に優れたスピード特化の姿、『仮面ライダー鎧武・イチゴアームズ』へと変身してその場を後にする。スピードに優れた騎士である木場には気付かれる恐れもあるが、それでも追いつけるのは限られる。分断してしまえばある程度加減して戦うことも容易い。
そう判断しての逃げの一手だが、正体の手がかりについてを掴んだからなのか、追跡は無く無事に逃げる事には成功したのだった。
「念の為、みんなには相談しておくか……」