教師の授業終了の声をBGMににやけた表情を浮べている勇斗。先日の報酬で受け取ったのはロックビークル・《サクラハリケーン》。校則ではバイク通学は禁止だが、ロックシードとして携帯していれば使った所でばれないだろう。
先日のイベントは無事終ったが、今日は次のイベントについての打ち合わせが有る。
(次のメインは理樹達だからな。オレ達はサポート……裏方に廻って)
事前に決まっていた内容を思い出しながら急いで仲間達と合流しようと立ち上がった瞬間、
「ねえ、緋勇君って言う男子は居るかな?」
教室の出入り口で自分を呼ぶ声が聞こえたので其方へと視線を向けると、其処には女子がキャアキャア言いながら囲んでいる木場祐斗の姿があった。女子の一人が自分を指差しているので用事が有るのは勇斗で間違いないだろう。
「やあ、緋勇君。ちょっと着いて来てくれないかな?」
「校舎裏へケンカのお呼び出しか?」
「そうじゃないよ。部長、リアス・グレモリー先輩が呼んでいるんだ」
勇斗の言葉に苦笑しながら改めてそう言う。この学園でも人気な二大お姉さまの一人からのお呼び出し。普通の男子生徒なら付いていってしまうだろうが……
「悪いが断る。今日は用事が有るんだ」
手を振って断りながら彼の横を通り過ぎて帰ろうとしたが、それよりも早く木場に手を掴まれる。
「悪いけど、そう言うわけには行かなくてね。どうしても一緒に来て貰うよ」
「……ふっ」
「っ!?」
手は振りほどく事は難しい。だが……投げる事は十分にできる。掴んだ腕を始点に一回転して床に叩き付けられる木場。その衝撃で木場は掴んでいた手を離す。彼が立ち上がるよりも早く部屋を出て行こうとする。
多少乱暴だが、昨日の今日で仲間には簡単に伝えただけ。思っていた以上に一誠の記憶力が良かったせいで“鎧武”の正体を友好関係に無い悪魔に知られると言うのは、完全に勇斗のミスであり、それに対する仲間内での話し合い……主に対策についての話しを打ち合わせと一緒にする予定なのは今日なので、流石に昨日の今日で何の対策も無く付いていくほど勇斗はバカではない。
何より、個人は信頼できても天使、悪魔、堕天使と言った種族全体は一切信頼していないのだ。……今のところ個で信頼を勝ち得ているのは悪魔、それも生徒会と会長の姉くらいだけだが。
木場に対して一誠が駆け寄り、女子の一部が睨んでくるが意に介さずにそのまま教室を出て行く。
「「「「「何やってるの(んや)(んだよ)、勇斗(くん)?」」」」」
事情を説明すると行きつけの喫茶店の席でダンスチーム・鎧武のメンバー全員に声を揃えてそう言われた勇斗だった。
「流石に油断しすぎやで、勇斗くん」
「仮面越しの声で気付かれるなんて思ってなかったんだよ」
「でも、流石に馬鹿にし過ぎだと思うの」
「ぐぅ……流石に普段のアイツの行動見てると、どうしてもな」
はやてとなのはの突っ込みにそう答える勇斗。駒王学園で勇斗は一誠と同じクラスだが、なのはとフェイト、はやての三人と初瀬と城乃内の二人は別のクラスだ。なお、なのは達三人と初瀬達二人もクラスが違う。
基本的に勇斗の持っている一誠への評価は良い意味でも悪い意味でも、『バカ』だ。……変態の烙印を押されている言動をどうにかすれば、外見は悪くないのだから彼女の一人くらい
先代の鎧武と龍騎と呼ばれていた二人の恩人に変態発言を加えれば一誠に近くなると言う一瞬だけ考えた事も有る。……流石に恩人と変態三人組の一翼を一緒にするのは物凄く失礼だと思って二度と考えては居ないが。
「そう言えば、理樹達はどうしたんだ?」
「あいつ等は、凰蓮の所の手伝いだってさ」
今日打ち合わせ予定のもう一つのチーム、『リトルバスターズ』のメンバーの姿が見えないことに疑問に思ってそう問いかけると初瀬が説明してくれる。
なお、リトルバスターズには現在存在するアーマードライダーの内二人『
チームメンバーは勇斗達チーム鎧武よりも多いが、『
なお、彼等の会話に有る『凰蓮』と言う人物は彼らと同じく
「取り合えず、理樹にメールでも送っておくか」
そう言って携帯電話を取り出して事情を説明したメールを送るが、返って来た返事は。
『何やってるの、勇斗。他のみんなもそう言ってたよ』
と先程の他のメンバーと同じ意見を送ってくれた。友人からの容赦の無いメールに崩れ落ちたくなる。
リトルバスターズとの出会いは海鳴での事件の後だ。あの事件の際に出会った
丁度中学の修学旅行の時期……勇斗にオリジナルの戦極ドライバーとオレンジロックシードを返された時に、理樹達の乗った(一つ年上のリーダーである『棗 恭介』も忍び込んだ)修学旅行のバスが事故に逢い、その時に勇斗に預けられていたコピータイプの戦極ドライバーの所持者になったのが理樹である。ある種の試験的に鎧武に変身して彼等の救助に協力したと言うエピソードも有るが、それは別の話。
恋人が出来て微妙に黒属性を身に付けつつある弟分に近かった友人に対してちょっと悩む部分がある勇斗だった。
「あ、あのね……元気出して」
落ち込んでいる勇斗をフェイトが励ましてくれる。本気でその優しさに感動で泣きたくなる勇斗だった。
「取り合えず、家のリーダーの失敗の対策を話し合うために行きますか?」
「せやな」
「そうだね」
「そうだな」
「グハッ!」
「ゆ、勇斗!?」
城之内の言葉とそれに同意するフェイトを除いた一同の言葉が突き刺さって更に落ち込む勇斗と心底心配するフェイトだった。
「そう、彼は
オカルト研究部の部室でリアスはそんな事を呟く。勇斗の簡単なプロフィールだが、特に隠しても居ないので故郷の事や死別した家族の事は少し調べれば分かる事だ。人間側にしてみれば不幸な事故の生き残り。だが、リアス達悪魔……いや三大勢力から見れば彼のプロフィールは特別な物が有る。
海鳴市と言う地名は三大勢力にとって、天使にとっては禁忌と畏怖を、堕天使と悪魔にとっては畏怖と興味を与える結果に終った事件の舞台だ。その事件の生き残り、現在の彼の年齢と当時の事件の概要を考えると一人でも生き残れた事は奇跡に近い。それが四人……生き残りである四人が何らかの
(私は話を聞いただけだけど、あの状況で生き残れたとしたら、かなり強力な
真相を知らないリアスの立てた推測だが、何気に彼女の推理は的中している。確かに勇斗は
鎧武の正体が勇斗だと言う事は一誠の声からの判断だが、今回の木場に対する対応でほぼ確定となった。木場への対応で鎧武=勇斗と言う公式がリアスの中でほぼ正解だと言う確信を得た。
「眷属に欲しいわね」
そう呟く。
翌日……
「平和だ」
窓から空を眺めながらそう呟く勇斗。今日はチーム合同では無く単独での活動なので放課後はそれぞれ準備して現地集合となっている。
正体を知られたリアス達に対する対策については既に確定しているので、それに対する対応は何時でも出来ている。
……飽く迄勇斗がメインとなって動くので、他のメンバーがサポートに廻ってくれる。一応、放課後ははやてがサーチャーをつけていてくれる。魔導師組は後方支援、アーマードライダー組み三人が前線に出る形での対応だ。
『まあ、次の誘いも断るって事でいいよな?』
『そうだね。昨日あんな断り方したからね』
『少しは反省してる』
授業を聞き流しながらフェイトと念話で会話する。一応連絡用のデバイスも所持しているので、授業中に雑談も可能だ。
『でも、ダメだよ、あんな断り方したら』
『反省してます』
『せやで、フェイトちゃんの言う通りやで勇斗くん』
『いや、それはもう心の底から反省してるんで、そろそろ勘弁してください、フェイトさん、はやてさん』
何時の間にか会話に入って来たはやて。面と向かっていたら本当に土下座するほどの勢いで謝る勇斗だった。
今更ながら改めて仲間内での自分の扱いが酷いと思う勇斗だった。……チームのリーダーなのに。
一応は二人には許して貰ったが、今度はなのはにも注意されたりする。なお、トドメの一言は、
『シュテルにも教えるよ』
だった。過去の事件で家族を失ってからは彼女は姉の様な相手なだけに、心底苦手意識が有るのだ。
そんなこんなで放課後、幼馴染‘s三人に精神的にダメージを与えられて机に突っ伏していると、
「やあ緋勇くん。今日こそ来て貰えるかな?」
「ちっ。昨日の今日でオレがどう言う反応するか、そんな事も学習できないのか、お前らは?」
今朝から目立たない様に戦極ドライバーは装着済み。変身用のロックシードだけでなく、護身用のヒマワリロックシードも持っているのは確認済み。変身用のA級ロックシードがあれば十分だろうが、複数を相手にする場合はB級ロックシードを使って手数を増やすのも有効だと言う事は理解している。
「そんな事言わないでくれないかな。少しだけ時間を貰えれば良いからさ」
(まあ、無理に断っても碌な事にならないし……。フェイト達には怒られるし……何よりシュテ姉に報告されたら本気で泣く)
ぶっちゃけ、勇斗にとって上級悪魔や魔王よりも心境的には姉の様な相手であるシュテルや幼馴染三人に怒られる方が怖い。序でにもう一組の……幼馴染セカンドチームなリトバスの初期の五人に呆れた様な目で見られるのにも精神的なダメージがある。
(あれ、あいつ等の中で一番弱いのって……もしかして、オレ?)
少なくとも一番弱くは無いが下位ではある。……それで良いのか、
(……はやてかなのはにリーダーの座を譲ろうかな?)
まとめ役には二人のどちらかの方が向いていると思う勇斗だった。まあ、二人はその場合は断るだろうが。
「仕方ないな……。一人でダメなら二人掛かり、って事なんだろ? 其処の変態と」
「誰が変態だよ!」
「変態で十分だろ、兵藤一誠」
流石に変態好意の常習犯の知り合いとは思われたくない勇斗だ。……妙に一誠の勇斗を見る目に敵意が篭っているのは……彼を含む変態三人組が学校に持ち込んでいた品物の隠し場所を生徒会に密告し押収の手助けをしたからではなく、先日仲間を投げ飛ばしたから……と思いたい勇斗だった。流石にそうじゃないと木場が哀れだと思う。
「何かな?」
「いや、なんでも」
木場を見る目に少しだけ哀れみが篭ってしまっていた様子だ。
「まあ良い。用が有るなら早くしてくれ。今日もチームの活動が有るんだ」
『チーム』と言った所で妙に一誠からの敵意が強くなったように感じる。そんな態度の一誠は放置して、観念して大人しく木場の後についていく。
(予定通り、木場が接触してきた。初瀬、城之内、お前達は旧校舎の近くで待機していてくれ。なのは、フェイト、はやての三人は最悪の場合、理樹達や凰蓮さんに連絡してくれ)
仲間五人に念話で連絡し、短い返事が返ってくる事を堪忍すると、後ろを付いてくる一誠へと視線を向ける。
「で、この変態も着いて来るのか?」
「オレも同じ部活なんだよ」
「……どれだけ怪しげな部活なんだか……」
「オレが部活に入ってるのがそんなに可笑しいのかよ!? って言うか、いい加減変態って言うのを止めろよ!」
「だったら普段の変態行為を止めろ。寧ろ名前でも性でも呼びたくない。知り合いと思われたくない」
普段の言動を考えると知り合いと思われたくないと思われても無理が無いだろう。幼馴染の言葉を借りるなら、名前を呼ぶのは友達だそうだし。
(……そう言う意味じゃ、初瀬と城之内の事は名前で呼んでなかったな……)
等と思考が妙な方向に進んでいた頃には二人に連れられてオカルト研究部のドアの前まで連れられていた。
(オカルト研ね。随分と面白いカモフラージュしてるな)
「部長、緋勇君を連れてきました」
『入って良いわ』
部活の先輩後輩の関係では無く、何処か中世の主君と従者を思わせる会話。そんな会話の後に通された部屋は、良く言えば本格的、悪く言えば不気味な部屋だった。周囲に書かれている文字は悪魔の存在を知っているものとしては何かの意味が有ると考えられる。まあ、幾らかはカモフラージュと考えられるが。
部室の中に居たのはリアス・グレモリーと姫島朱乃、そして搭城小猫の三人。後から入ってきた三人を含めれば、見事に先日の廃屋にいたメンバーが勢揃いと言った所だろう。
リアスからソファーに座るように勧められるがそれには従わず、立ったままポケットの中にあるヒマワリロツクシードに触れながら上着のポケットに手を入れて立っている。
「さて先ずは、ようこそオカルト研究部へ、緋勇勇斗くん。私達……オカルト研究部は貴方を歓迎するわ!」
「こっちの都合も考えずに連れてきて、自分勝手な歓迎もあったモンだな」
「悪魔としてね……」
リアスの言葉に沈黙をもって返すと……
「……ああそう言う『設定』なんですね?」
「え?」
呆れた表情で明後日の方向を見る勇斗に戸惑いを見せるリアス。心の中で笑みを浮かべながら、
「あー……良いんですよ。そう言うのに憧れてたんですね。まあ、比較的誰もが掛かり易いビョーキですから」
「ちょっ、違うわよ!」
違う事は分かっているけど、一応はボケておく。まあ、普通の人に自分が悪魔なんて言ったらそう言う類のビョーキと間違われるのは間違いないし。しっかりと背中からコウモリのような翼を出しているのだから、鎧武が勇斗だと確信しているのだろう。
「分かってます。知っててボケましたからね、先輩」
「貴方ねぇ……。まあ良いわ。要件に入る前に確認したいんだけど、昨日の鎧武者は、貴方ね?」
鎧武者は鎧武のことで間違い無いだろう。
「ええ、そうですけど。付け加えておくと昨日オレが倒したのはハグレ悪魔のバイザー。間違いないですね?」
彼女の確認の言葉に補足して間違いでは無いと肯定しておく。
「それで、そちらの用件は何ですか?」
相手の沈黙を肯定と判断し、用件を話すように促す。
「そうね、単純に言ったら私の眷属にならないかって言う事だけど」
「お断りします」
即答だった。
「少しは考えてくれても良いんじゃないかしら」
即答に対してちょっと落ち込み気味のリアス。まあ、断るのにも色々と理由が有るが、相手を納得させる一番効果的な理由を選択する。
「『セラフォルー・レヴィアタン』」
「っ!? 魔王様の名前まで知ってるの!?」
「ええ。会長やセラ様にはちょっと縁が有りまして。一度はセラ様にも眷族に誘われてるんですよね、断りましたけど」
要するに、魔王からの直々の誘いも断っているのに魔王の妹とは言え上級悪魔であるリアスの誘いに乗る理由がないと言う訳だ。
「あの、緋勇の言ってるセラ様って誰ですか?」
空気を読んでいるのか読んでいないのかそんな発言をしてくれる一誠に、一瞬だけ空気が凍った。
「……イッセー、セラ様……セラフォルー・レヴィアタンさまって言うのは」
そう言って一誠に対する説明が始まる。まあ、要点を挙げれば四人居る現魔王の中の紅一点で、最強の女性悪魔と言う点だが。
「何より」
「個人とは仲良くなれても……嫌いなんですよね、天使も、堕天使も、悪魔も」
『っ!?』
「そんなモノになれなんて……問答無用で叩き切られても、文句を言わせる気は無い」
零れだした敵意が殺気となる。フェイト達やシュテル達に注意されている為、なるべく抑えようと思っているが、中々改善できないでいる。
「テメェ!」
そんな言葉に反応するのは一誠。手には手甲の様な物が出現する。
『……ドライグ?』
(? ドライグ? 二天龍の? ……って事はアレは『
己の中に有る神器に宿る存在からそんな呟きが零れる。興味深そうに一誠の籠手へと視線を向ける。
(アレがね。しかも、本人はまだ完全に目覚めさせてるわけじゃないみたいだな)
二天龍の片割れを宿した神器。どれほどの力かは分からないが、自分達のドライバーの性能テストには丁度いい相手だろう。なにより、それだけの力は人間側も将来的に持つ必要が有る。
神を滅ぼす
だが、堕天使や天使と言った勢力がそれらの所持者を入手し、こうして悪魔側でさえ入手している以上、戦極ドライバーや次世代型ドライバーには最終的にはそれらの
なのは達三人の持っているデバイスは飽く迄量産品の試作型。戦極ドライバーにも量産計画はあるが、最終的には神に挑む力を求められているドライバーとは違いデバイスは最終的には完全なる量産品だ。
「部長を斬るだって! そんな事やらせねぇよ! オレがお前を、ぶっ潰す!」
(へぇ)
憤る彼の姿に以前持った兵藤一誠への評価を多少改める。
(似てるな、オレよりも……あの人たちに)
飽く迄も多少な上に、エロバカと言う評価は一切撤回していなかったりする。取り出すのはヒマワリでは無くオレンジのロックシード。
《オレンジ!》
「笑わせるなよ、お前程度にそんな事が出来るのか?」
「へっ! 高々人間に何が出来る、こっちは悪魔だぜ!」
「昨日、その悪魔をこの手で倒したばっかりなんだけどな」
「うっ」
勇斗の言葉に一誠は言葉を失う。
「それと、教えといてやるよ。常に化け物を討つのは……人間の英雄だってな! 変身!」
《オレンジアームズ!》
戦極ドライバーにオレンジロックシードを装着すると勇斗の姿を青いスーツが包み、上空から降って来たオレンジを頭に被る。
《花道、オンステージ!》
オレンジ色の鎧をイメージさせるアーマーを纏った鎧武の姿が其処には有った。
「兵藤一誠、望みどおり人間に何が出来るか見せてやろう。此処からは、オレのステージだ!」
(えぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!)
取り合えず、思いっきりとんでもない事になった事を変身シーンなんて派手な物を見せられて冷静になった頭で理解した一誠だった。
「っの!」
「ふっ!」
今更、『やっぱり、今のなし』なんて言えない後には引けない状況で、先手必勝とばかりに殴りかかるにカウンターの形でパンチを打ち込む鎧武。結果、簡単に吹っ飛ばされる一誠。
「殴り方が素人丸出しだな」
「そっちこそ、全然聞いてねぇぜ」
明らかに強がりと分かる様子で立ち上がる一誠。自分の中にいる相棒の言葉を信じて
「そんな物、オレの『
(……なあ、相棒)
『……何?』
己の中の神器から返って来る抑揚の無い声に鎧武は、
(もしかして、あのバカって自分の神器の事をよく分かってない、とか?)
『……そうみたい』
己の相棒の勘違い、他龍の空似と言う可能性もあるが、それは無いと思いたい。
(……赤龍帝のデータ収集以前に、あいつに自分の神器の正体に気付かせる必要が有るな。ったく、手間の掛かる奴だな。まあ、死なれても夢見が悪いし)
心の中で溜息を吐く。少なくとも、データが欲しければ目覚めさせる必要が有る。相手はクラスメイトなのだ、データ収集の序でに自分の神器の正体に気付く切欠くらいやっても良いだろう。
「そうか。だったら、此処じゃ狭い、だろ!?」
床を踏み砕く程の踏み込みで一誠との距離を詰め、彼の顔面を掴むとそのまま壁を殴り壊しつつ飛び降りる。
「イッセー! ……どうしよう、朱乃、なんだか大事になっちゃった」
「私は話に聞いただけだけど……あの計画の被害者を勧誘したのは拙かったわね」
後に残された他のグレモリー眷属の皆さん。完全に一誠VS勇斗と言う状況になったのに完全に慌てているリアスと、表情には出てないが結構焦ってる様子の朱乃。
「殴り合いが望みなら、殴り合い向けの姿で相手してやるよ」
《パイン!》
地面に着地するとそのまま一誠を放し、彼から距離を取ってベルトからオレンジのロックシードを外し、代わりにパインロックシードを装着する。
《パインアームズ! 粉砕、デストロイ!》
頭上に現れる巨大パイン。パインが展開すると鎧武の纏っていた鎧がオレンジの物とは違うパインと同じ色の物へと変わり、手には大橙丸とは違う先端にパインのついたチェーンアレイ《パインアイアン》が装備された。
「殴り合い向けって何処がだよ!?」
「安心しろ、最初から武器は使う気は無い」
躊躇無くパインアイアンを手放し拳を握る鎧武
「うぉぉぉぉぉぉぉぉお!!!」
《Boost! Explosion!》
機械的な電子音と共に殴りかかってくる一誠だが、無防備にそれを受けた鎧武にはダメージがある様子も、一歩もそこから動かせても居ない。
「一つだけ、忠告してやる。悪魔だとか人間だとか言う以前に、お前の1が倍になっても2だ。お前がオレにダメージを与えたきゃ、せめて
実際には一誠の神器がそれだと推測しているが、逢えてそれは口には出さず挑発する。
「なんだよ、それは!?」
「分かり易く言えば龍の手の上位互換。幾らでも所持者が見つかる龍の手とは違い、この世に一つしか無い最高位の神器だな」
取り合えず、本人が力を望むであろう状況を作り出そうと言葉を選ぶ。流石にパワーに優れたパインアームズの腕力では殴ったては力加減が難しいので軽く突き飛ばす。
「ガッ!」
その一撃だけで一誠の肺の中の空気が全て抜け、膝から崩れ落ちる。
「どの駒で転生したかは知らないけど、その様と神器なら
「何が、ゲホ……言いたいんだよ」
咳き込みながら自分を見下ろす鎧武を睨みつけながら鎧武の言葉に聞き返す一誠。
「リアス・グレモリーも駒を無駄にしたな、なんてお前の主に同情しただけだ」
「テメェ……」
《Boost!》
「ああ、そもそも悪魔なんて無駄にプライドが高くて、生まれつきの力に頼っただけの連中が大多数だ。先へ進む事を忘れたモノは進み続ける者に追い抜かれるのも当然だ。お前の主も大多数だった様だな」
本人の侮辱だけでなく主への侮辱。龍と言う存在に最も影響するであろう感情は『怒り』。全て一誠を怒らせる言葉を選んだ結果だ。
(……あとはもう一つダメ押しでもしておくか。これでダメなら諦めよう)
他に何か一誠の怒りを煽る言葉が無いか選ぶ。
「それに、爵位を貰って貴族になればハーレムでも作れるとでも言われたか? 本人の意思を無視して無理矢理にでも眷属を増やす心算か? まったく、それが一番迷惑な人間への被害だって言うのに。大体、どれだけ自分が学校の女子に嫌われてるか、分かってるのか?」
あまり感心できないとは言え、『夢』の否定。ここまですれば怒るだろう。文字通り逆鱗と思われる部分を刺激する。
《Boost!》
「オレの事は何を言われても良いけどよ……部長の事まで悪く言うんじゃねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええ!!!」
二度の倍加を受けた拳が鎧武の仮面に直撃する。
『……うん、間違いない。ドライグの封印されてる神器』
「そうだな。散々侮辱した事は謝っておく。悪かったな。それと、もう一つだけ言っておこう」
自分の中の神器に宿る存在からそう教えられると、そう言って自分の顔面に当たっている先程とは形状の変わった神器を着けた一誠の腕を掴む。
「覚えて置け、神器の中でも最上位に位置する
「なっ!?」
本人の勘違いを訂正しつつ一誠の体を投げ飛ばす。そして手放したパインアイアンを(放置したままも不味いと思って)拾い上げると、
「それ以上はダメだよ」
「分かってるから、それを下ろして貰えるか?」
首筋へと突きつけられた金色の光の刃を持った大鎌。ゆっくりとその持ち主へと視線を向けると、想像通りの相手が其処に居た。
「フェイト」
鎧武のやった事を抗議する様な目で睨んでいるバリアジャケットを纏った幼馴染の一人『フェイト・テスタロッサ』の姿があった。抗議する……ではなく実際勇斗のやり過ぎを怒っている。
「…………」
「はい、すみませんでした、オレがやり過ぎました」
「ちゃんと謝らなきゃダメだよ」
「……分かってるよ」