Lostbelt No.8 『再誕創造神王へリオポリス』 作:ドロイデン
ウルライト・メイザースは所謂魔術師であり墓守りだ。別段珍しくないとは言えないが、それでも実家がせいぜい700年程度の長さを誇る地方の魔術師であるため、その地ではまぁまぁ有名な人間だった。
長子であり自分より優れていた双子の兄が父から魔術刻印を引き継いで時計塔に行き、逆に俺は叔父からの魔術刻印を引き継ぎ、墓守りとして家を支えた。
魔術師の家系では珍しい双子だが、俺の家は少し特殊で、必ず刻印を受け継いだ家の子供が双子で産まれるという謎の結果のお陰で、俺が引き継いだ魔術刻印も父の物に比べれば格段に劣るが、少なくとも400年は超えた良いものだった。
そんな俺に転機が訪れたのは墓守りとしての役割を次いで三年目のことで、時計塔の君主の一人、マリスビリー・アニムスフィアが訪ねてきた日だった。
曰く、自分が作る組織のメンバーとしての引き抜きの為に訪れたという彼の言葉に、俺は数日悩んだもののそれを引き受け、その組織……カルデアへと足を運ぶこととなった。
今にして思えばここが転換期の始まりだったんだろうなと、今の現状を思いながらそう思ったのだった。
「マスターマスター、そろそろ起きるのですマスター」
ふと目を開いてみれば、隣には羽飾りを着け、身に余る長さの錫杖を持った少女が一人。どうやらいつの間にか寝ていたようだ。
「なんだ、アサシンか」
「なんだとは失礼なのですよマスター。アサシンはマスターのお願いの通りに頼まれた時間に起こしたのですよ」
「分かった分かった。それ以上大きな声で耳元は辛い」
少し騒がしいアサシンの髪の毛をくしゃりと撫でてやれば、彼女はにこりと笑って少し離れる。
「しかしアサシンが来たってことは……始まったのか」
「なのです。マスターの通信道具でも見られるのですよ」
そう言われて俺は自室の机に移動し、その椅子に座って画面を開く。
『――通達する。 我々は全人類に通達する。
この惑星はこれより、古く新しい世界に生まれ変わる。
人類の文明は正しくなかった。
我々の成長は正解ではなかった。
よって、私は決断した。
これまでの人類史――汎人類史に叛逆すると。
今一度、世界に人ならざる神秘を満たす。
神々の時代を、この惑星に取り戻す。
その為に遠いソラから神は降臨した。
八つの種子を以て、新たな指導者を選抜した。
指導者達はこの惑星を作り替える。
最も優れた[異聞の指導者]が世界を更新する。
その競争に汎人類史の生命は参加できず、また、観戦の席もない。
空想の根は落ちた。
創造の樹は地に満ちた。
これより、旧人類が行なっていた全事業は凍結される。
君達の罪科は、この処遇を以て清算するものとする。
汎人類史は、2017年を以て終了した。
私の名はヴォーダイム。
キリシュタリア・ヴォーダイム。
八人のクリプターを代表して、君達カルデアの生き残りに――いや、今や旧人類、最後の数名になった君達に通達する。
――この惑星の歴史は、我々が引き継ごう。』
「くくっ、良い演者ぶりだよ。さすがはヴァーダイム」
あまりの演説に俺は思わず苦笑する。あそこまで堂がいった演説なんて、今時の政治家でもできない気がする。あぁ、既に過去か。
「マスターマスター、これから始まるのですか?」
「そうだな、ここからだ」
恐らく残ってるだろうカルデアの人間……いや、最後の汎人類史のマスター藤丸立香との戦い。
「せめてここまで来たら誉めてやるさ……まぁ負ける気もないし死ぬつもりなんてないけどな」
そういうとアサシンはコトンと首を傾げる。
「マスターマスター、安心して。マスターは死ぬことなんて絶対ないのです」
「そうか?」
「そうだよ。だって
……そういうことじゃ無い気もするんだがなー、アサシン。というか
「アサシン、一応お前も生前は王様なんだからな」
「は!!そうなのでした!!」