Lostbelt No.8 『再誕創造神王へリオポリス』 作:ドロイデン
「はてさて、ヴァーダイムの奴が演説してもこっちの情勢は変わらずか」
椅子に座り、机に乗せられた水を飲みながら隣に居るアサシンに向き直る。
「マスターマスター、マスターはこれからどうするの?」
「そうだな……どうせ打って出るなんて事はできないし、今は兎に角現状の再確認だな」
そう言うとアサシンは納得したのか隣じゃなくて俺の前に立つ。
「まずアサシン、ここがどこだかは分かってるよな」
「当然、
そう、俺達の異聞帯の場所はエジプト。ファラオという王である神の写し身が修めた土地にして、世界で5本の指に入るほどの神話を持つ土地だ。
「そして現状のうちの戦力は分かってるよな」
「アサシンのボクに女王様、あとキャスターとセイバーにランサーだよね」
「まぁまずうちの鬼札である女王様を出すわけにいかないし、キャスターに関しては論外だからな」
「それを言ったらボクだって戦いに向いてないから、結果として出せるのはセイバーとランサーの二人だけ……厳しいのですよ」
アサシンのいう通りだ。ただ問題があるとすれば二人しか実戦的ではないということ。だが、
「言うて二人だけでも十分な気もするけどな。何せセイバーとランサーだし」
どちらも……というかうちのサーヴァントは基本的に神性持ちだ。が、
「けどな……揃いも揃って死神ってどういう繋がりだよ」
「ですね。ボクも今のマスターの配下を後から見たなら、すぐにそう思いましたです」
「おまけにアサシンでもないのにBクラス相当の気配遮断スキル持ち……お前ら本当にアサシンじゃねえんだよなって感じだよ、ホント」
「おいおい、つれないこと言わねぇでくれよマスター」
と、豪快に扉を開けて入ってきたのかなり長身の
「なんだランサー、聞いてたのか」
「あたぼうよ。というか俺のことを死神と呼ばねぇでくれよ。そう言われるのが一番堪えるんだよ、俺は」
ランサーはそう言うと腰から二本の棍棒を抜いてそれぞれを器用に掌で回す。その動きは流石はサーヴァントと呼ぶべきものだ。
「流石はランサーだな。棍棒二槍流の腕前は確かだ」
「まぁ戦い専門の神じゃねえから一流ってわけじゃねえけどな。それでも神霊であり王である俺は強いと自負するね。間違いなく」
「いやいや、少なくともボクよりは絶対に場馴れしてるのですよ!!というか、ボク戦いという戦いはあまりしてませんし」
「お前さんの場合は概念宝具だろうが。言っちゃ悪いが、下手したら俺達ですらお前に殺されるんだからな」
ランサーはアサシンに掌を振って否定するが、アサシンは未だに暗いままだ。
「それでも条件付きですからね。皆さんみたいに腕があるとかじゃないのです」
「まぁそこについてはお前さんの考え方次第だからな……」
やれやれと言った描写でランサーは懐から煙管を取り出して軽く吸う。白い煙が綺麗に上り、同時にランサーはため息をつく。
「それよりもマスター、ここ最近の異常が顕著だ」
「異常……か、何人だ?」
「三千人……村一つが死んだ。幸い女王とキャスターが間に合ったお陰で蘇生できたが、このままじゃ女王の体力が尽きる速度が上がりすぎる」
やはりというべき問題に俺は嘆息する。
「この異聞帯には死が存在しない。いや、正確には死んでも女王の力で甦るから問題がない。だというのに死者が増えるということはつまり」
「敵……いや、正確に言おう。サーヴァントだな」
「でもこの異聞帯でサーヴァントがはぐれで戦うなんて不可能なのです。何せボク達含めてサーヴァントは一律
そう、そこが問題なのだ。この異聞帯でのサーヴァントは女王の方針とその世界樹の力によって受肉してるのだ。そして同時に
「倒したサーヴァントの肉体は保管してるし、何よりその魂は女王が再召喚されないように保管してる」
現にこの異聞帯の驚異となり得るサーヴァントの一画、『オジマンディアス』と『イスカンダル』の二人を撃破しており、試しにイスカンダルの側面の一つである『アレキサンダー大王』を召喚してみようとしたが不可能だった。肉体に残ったマントを使ったというのにだ。
ちなみにその二人を倒したのはアサシンである。戦闘能力ほぼ皆無に等しいアサシンがファラオ二人を撃破したのだ。大事なことなので二度言おう、アサシンがである。
「それに女王が蘇生した奴は基本的に女王の首輪付きだ。女王の為ならばなんでも行う、まさしく狂人ばかりに変化するわけだ」
「姿や行動は聖職者並みだというのですに、実際の考え方は効率主義の機械みたいなものなのです」
言い得て妙だと苦笑する俺達に、再びドアが開かれる。
「……女王の悪口、ダメ」
どうやらキャスターだったようで、俺としては本人に聞かれたのではないかと内心ヒヤヒヤした。
「あぁ、悪いキャスター。それよりどうかしたか?」
「……その女王様からの命令、会合をするって」
分かったと俺は言うと椅子から立ち上がり、甲斐甲斐しく何時も着てる薄手の白いコートを持ってきたアサシンからそれを受け取って肩に羽織る。
「いくぞアサシン、ランサー、キャスター」
「「「はいなのです/おう/分かった」」」
目指すは女王の広間……正直暑くて面倒だと思った俺は悪くないはずだ。が、
「マスター、それよりコートをしっかり着るのです。気温より直射日光を食らう方が断然暑いのですよ。日焼けなんてマスターには似合わないのです!!」
「わかってるわかってる」
この甲斐甲斐しさを前に弱音を言うのは憚られる気がした。