Lostbelt No.8 『再誕創造神王へリオポリス』   作:ドロイデン

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第三話

 王城の一画、ヨーロッパの皇室にも似た会議室に通された俺達は、目の前にある机の前に近づく。

 

「女王、クリプターのメイザース、参上しました」

 

「うむ、ご苦労」

 

 窓の外を眺めながら女王は返答する。外の街は今日も変わらず太陽が照らし、民達がそれぞれ成すべきことを行っている。

 

「……メイザース、頼まれ事を受けてもらいたい」

 

「は、可能な事でしたら」

 

 俺の言葉に女王は続けた。その長い三編みが少し揺れ、手に持った錫杖が少し揺れる。

 

「なに、容易いことだ。ランサーに雨を降らせよ、ここ最近は日照り続きでオアシスからの水も心もとない、民のためにも溜池の一つや二つ分の雨を所望する」

 

 その言葉に俺は少し考える。

 

「恐れながら女王よ、確かにランサーに雨を降らせる事は可能です。が、そのようなことをすれば作物に多大な影響を与えます」

 

 女王の考えは民の為だということは理解してるが、そんなことをすれば先に降るはずだった雨を奪うことになりかねない。

 

 そんなことはやってはいけない。幾ら死なないと言っても完全ではないのだから。

 

「……それほどの危険があるか」

 

「天の理を書きかえるのは神の神業なれど、それによって民達に危険があっては元も子もないです。それに日照り続きと言えど井戸が枯れたわけではないのですから、ここは耐えるべきかと」

 

「そうか……ままならないな」

 

 心なしか女王の三編みが元気なく揺れた気がした。

 

「しかしメイザース……世界樹は安定しておるというのに、なぜ民が亡くなる」

 

 世界樹……外の神の落とした空想樹のことを指し示す女王に俺は答える。

 

「恐らくこの星の意思たる存在が呼び出した者達の仕業でしょう。女王も死者の蘇生が単純ではないことは分かっておられる筈です」

 

「確かにそうだ。あくまで蘇生はその肉体と御霊が残っておる場合のみだ。魔獣に喰われるは自然の摂理であるし、御霊が死を望めばそれらは冥界の扉へと向かう。不死であっても不老ではないのだ、ただただ病や怪我では死なぬというだけ」

 

 だが、と女王は悲しそうに繋げる。

 

「だが私は私の民に無為に死んで欲しくない。私はファラオだ、ファラオとは民を守り導く者だ、その命に価値を見いだし、未来へと繋げるのが役割だ」

 

「……」

 

「そこなキャスターは兎も角、残る二人は王でもある存在だ、我が考えも分かるであろう」

 

 そう言われてアサシンとランサーは顔を見合わせる。

 

「お言葉なのですが女王様、ボクは確かに王ではありましたが、統治に成功したかといわれれば微妙なのです」

 

「では貴女にとって王道とは何か?」

 

「ボクの王道はただそこに平穏が残ること、ただ普通の日常が普通に存在すること……それを覆させない事なのです」

 

 アサシンは何気ないように言うが、それが女王への肯定であることは間違いなかった。

 

「け、そう言いつつ敵には容赦無さすぎだろ」

 

 そういうランサーにアサシンは

 

「敵に容赦する必要があるのですか?敵であるならばたとえ命乞いしようが許しを求めようが、どんなことをしてでも殺すのが当たり前なのです。反逆者やこそ泥には特に」

 

 なんとも容赦のない言葉だが、アサシンの真名を考えればブラックジョーク極まりない。寧ろ良い笑顔なのが余計に怖い。

 

「そういうランサーはどうなのですか?」

 

「は、王とは支配するものだ。絶対的な力であり象徴、そこに民をどう思うかとかはないな」

 

 女王の言葉を否定するようなランサーの言葉に内心震えを起こす。

 

 もっとも女王は、ランサーの考え方を分かっていたようになにも言わず窓の外を眺める。

 

「まぁ俺も一応は豊穣の神でもあった身だから言いたいことは分かる。が、民にとって必要なことは守護することだけとは限らん。時には痛みが民の守護になることだってある」

 

 そうしてランサーは俺の目の前に立ち、その左手に先ほど回していた棍棒を突きつけた。

 

「そもそもだ、マスター。俺は今はお前さんに付き従ってるが、それはあくまで俺自身に目的があるからだ。それが済めばどうするかは……マスターにだって分かってるだろ」

 

「……そうだな。それについては否定しないし、お前を止められるとも思ってないよランサー」

 

 何せランサーに関しては本来、このエジプトのカウンターとして呼ばれたサーヴァントだ。一時的とはいえ味方で居てくれるだけ御の字。それ以上はそれこそ神罰が落ちる。

 

「悲しいものです。貴方とて我らがエジプトの神の一柱であるはずなのに」

 

「確かに側面としてはな。が、俺自身はそっち側じゃねぇし、何よりそっちの俺は神であっても王じゃねぇからな」

 

 そう言うとランサーはくるりと身を翻して部屋から出ていく。

 

「そもそも、俺自身が本来サーヴァントとして呼ばれることそのものがありえないんだ。なら今をなるべく楽しむだけさ、俺は」

 

 その残された言葉は誰に向けたのか、はたまた自嘲なのか、残された俺達には分からなかった。

 

「……マスター、やっぱりランサー嫌い」

 

「キャスター、堪えろ」

 

 その一言にキャスターはありえないと言わんばかりのジト目だ。

 

「……マスター、一応私もカウンターとして呼ばれてるだけ。ただ私の場合はカルデアに付く理由もないし、何より女王様の事を考えたらこっちについただけ。女王様の敵となるなら誰であろうと」

 

「それ以上言うな、()()()()

 

 キャスター……オシリス神はその継ぎ接ぎだらけの衣装の長い裾を握ってさらに睨む。

 

「オシリスがランサーを嫌う理由も分かるし、相容れないのも分かる。だが今は味方だ。だというのなら女王の民……それを殺すのはそれこそが女王への背信だ」

 

「……分かった。けど、アイツよりもセイバーの方が問題。あれは戦いとなれば血を啜らなければならない存在」

 

「それこそ問題ないさ……あの男が前に出る時はそれこそ最終局面……カルデアとの一騎討ちに他ならないからな」

 

 まぁもっとも、カルデアの連中程度ならゼムルプスやファムルソローネでも捻れるから余裕だとは思うがな。

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