Lostbelt No.8 『再誕創造神王へリオポリス』 作:ドロイデン
サーヴァントとは地球人類史において名を残した英雄や怪物、神などがその分霊として召喚される抑止力の装置みたいなもの。昔適当に教わったそれはある意味で正解であり、ある意味では不正解だった。
例えばカルデアで過去に呼ばれたサーヴァントの場合、騎士王と名高き九偉人の一人であるアーサー・ペンドラゴンが実は女性だったとか、例えばかの中華では有名な軍師諸葛孔明が時計塔の君主の一人であるロード・エルメロイ二世を主人格とした疑似サーヴァントとして呼ばれた等、実際の歴史とは異なる存在だったり、はたまたそれどころか中身は兎も角外見が本人ですら無いものまでと、その存在は千差万別が過ぎる。
中にはロボットだったりライオンだったり、はたまた人じゃなくて動物だったりするのだから、お前ら本当に抑止力の守護者なのかと問いたくなるくらいだ。
さて、ではそのサーヴァントを構築するものは何かというのなら、俺個人の見解だと情報……こうあれかしと思われた偉業や功績だと思っている。
実際サーヴァントの宝具とはそれが具現化し形となったものだ。そこに何ら不自然さはないし、異議はないだろう。
だが、その宝具自体を嫌う英霊も少なからず存在するのだ。そして今現在、ここにいるサーヴァント……つまるところアサシンがそれに当たる。
「マスターマスター、平穏すぎて暇なのです」
アサシンはまるで駄々っ子のように文句を良いながら、常日頃から召喚して街の外を偵察させているハヤブサを愛でながらそう宣う。
女王との会合から翌日、今日も間違いなく晴れてる太陽にうんざりしながら自分の仕事……空想樹を成長させるための情報の確認をしていた。
「あのなアサシン、こっちは案外暇じゃないんだぞ。他のクリプターからの報告を確認しなきゃならんし、三日後には会議だってある」
何せうちの空想樹『マゼラン』はどういうわけか他のクリプターのところの異聞帯とは別の成長の仕方をしてるし、本当に一つの種子から発芽したのかと聞きたくなるくらいだ。
恐らくは特異個体であるのは間違いないが、なんでそんなものを向こうがここに植えたのかが分からない。
(まぁだからこそこの異聞帯ができたって言えなくもないんだが)
そう思っていると目の前にいきなりハヤブサが現れ、驚きのあまり表情を強ばらせた。当然犯人はアサシンだ。
「そんなこと言っても暇なものは暇なのです!!ボクはランサーやセイバーと違って武芸や武術に秀でてる訳ではないですから模擬戦なんてできないですし、街中だって面白いものなんて何にもない」
「そこまで言うか?」
「言うのです。だって多少の程度の差はあれど
それに、とアサシンはジロリと見つめる。
「幾らボクがサーヴァントとはいってもこんなところに閉じ込められて、しかも仕事は街外の偵察だけ!!幾らここが王都とはいえ鬱憤溜まるのも同然なのです!!」
なんとも現代の子供みたいな考えだと思ったが、膨れてる姿はどこか可愛いので頭を撫でる。
「言いたいことは分かる。だからこのデータを確認したら少し外に出るか」
「へ?」
「野良サーヴァント探しだ。カルデアの人間がここにすぐに攻めこんでこない以上、女王の不安材料は取り除かなきゃだからな」
俺としては呼ばれてるのだろう
「ホントなのですか!!」
「おう、こんなことで冗談なんぞ言うか。お前は俺の一番の相棒だぞアサシン」
「なら仕度してくるのです!!ちゃんと戦闘用の衣装に着替えてくるのです!!」
言うが早いか、アサシンはまさしく走っていってしまう。
「まったく、あれで病弱なんて冗談だろ?」
苦笑しつつ、俺は一先ず確認を終わらせて、掛けてあった白いコートを肩に掛けて部屋から外の庭へと出る。
「お待たせなのです!!」
そう言って出てきたアサシンの服装は完全に戦闘用である本来の衣装……何時ものハヤブサの羽飾りに白い前が大きく開いた袖無しのワンピースと、王の証しと呼ぶべき金の腕輪と籠手と錫杖がその本気さを物語っている。
「じゃあ頼むぞ、アサシン」
「わかってるのです!!来たれ、わが眷俗!!」
そう言って錫杖を床に軽く叩くと、どこからともなく巨大な鳥……ペペロンチーノの言うところのガルーダと呼ばれる怪鳥のような存在が降り立ったのだから、流石だと感心した。
「これ、一応宝具じゃないんだよな?」
アサシンの後に続いて怪鳥の背中に乗りながら、目の前で首もとに座る彼女に聞いてみる。
「違うですよ。ボクはアサシンであると同時にキャスターでもある『二重召還』サーヴァントなのです。そしてこれはキャスターとして召喚魔術を使って呼び出してるだけの幻想種に過ぎないのです」
「それでも幻想種なんだな」
「言っても神獣までいかない幻獣クラスなのですし、騎乗のスキルは持ってないので自由に操るみたいなことはできないのです。精々飛び乗って飛び降りるのが関の山です」
まぁ召喚した幻獣なので操れない訳でもないのですが、と淡々に宣うアサシンに、流石は神代の魔術師だと感心を通り越して呆れすらしてくる。
「それでマスター、今日はどこまで行くのです?」
「そうだな……この際だ、
「了解なのです!!」
そう言って錫杖を軽く怪鳥に向けて叩き、すると怪鳥はゆっくりと翼を上下に叩き、やがてホバリングのよう動きで空へと舞う。
(クリプターとしてはカルデアは敵だが、
同時刻、王都よりかなり離れた砂漠地帯のど真ん中、そこにとあるサーヴァント2体が現界した。
「あっっっつい!!」
否、うち一人は少女だった。赤いツインテールを揺らしながら、誰に聞こえるでもない巨大な叫びが空を駆け抜ける。
「ふむ、砂漠ですか……これはオアシスまで走らないといけませんね」
もう一人も女性……こちらも赤柴色の短い髪に黒いタキシードに軽鎧という姿は見るだけで暑苦しいが、その脳筋的思考はどうなのかと思いたくなる。
このうちもう一人は兎も角、少女は本来ならばサーヴァントではない存在だったが、何故かこの場所に連れてこられてるのだから、世の中とはよく分からないものである。
「なんでアタシが本当にサーヴァントになってるんだよ……しかもよりによってこいつと一緒なんて」
「抑止力というものはよく分からない存在ですから、こういうことが起こっても不思議ではないでしょう。それよりアイスキャンディ食べますか?」
「いや今どこから取り出しやがった!?まぁ食べるけど!!」
揃ってアイスキャンディを食べながら、二人はさてと考える。
「しかし……見事にサーヴァントだってのに
「同感です、特に体の感じかたがまさしく生身であると言わんばかりに肌を焼きます。というか下手したら燃えます」
「虫眼鏡でもあれば火が起こせそう……というより燃えそうだよな、うん」
そう言い、ふと目の前に見えた存在に首を傾げる。
「あれは……スフィンクスですか」
流石はエジプトと言わんばかりの
「へぇ、いきなりサーヴァントとしての力量が試せるってわけ?」
「その後ろには巨大なスカラベまで居ますから、恐らくあれに潰されないように逃げてきたのでしょう」
その指摘通り、スフィンクスの軽く二倍はありそうな巨大な土塊を押して突撃してくるスカラベに、飲み込まれて圧死したスフィンクスを見れば、なるほど、確かにここは自分達が知ってるエジプトではないとまざまざと見せられる。
「……効率的にいきましょう。貴女はあのスカラベをお願いします」
「えぇ~スフィンクスの方がアタシは良いんだけど」
「私よりあなたの方があの土玉を破壊できる火力があるだけです。それに、雑魚を殺すよりそちらの方が
そう黒衣の女が問うと、少女はニヤリと嗤った。
「いえッスあいどゥー!!流石は私を1度倒しかけただけあって、分かってくれてるね!!だから―――」
そう言って少女は戦闘の姿に切り替え、そしてそのあり得ないほど巨大な右手に掴んだ戦鎚を構えて獰猛に嗤う。
「―――Dieプレゼントし・て・く・る・ね♥️」
比喩ではない雷撃を、スカラベへ向けてその戦鎚に纏わせて激突する。
一瞬の停滞……だが次の瞬間、轟音を巻き上げて土塊は粉々に砕け散る。
「まったく……自分達の心配が無くなったらこっちというわけですか」
かく言った黒衣の女の方も既にスフィンクスの掃討を終えており、周りには斬殺され、彼女の手には少女の雷撃を使って焼いたスフィンクスの肉塊が握られている。
「さて、当面の食料も手に入りました。よってここからオアシスを求めて移動することにしましょう」
「食料ってアンタ、無くなったらどうするつもり?」
少女……
「そんなもの、目の前の獣を殺せばいい。その気になれば獣の血を飲み水にもできる」
「行き当たりばったりじゃないの!!」
のっけから最悪であると言わんばかりの少女の嘆きだが、カルデアの面々が来るまでこのノリが続くことになるなど、まだ少女には知る由がなかった。
い、一応この二人が出てきたのには理由がありますので……うん(目そらし)