Lostbelt No.8 『再誕創造神王へリオポリス』   作:ドロイデン

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第六話

 エジプト異聞帯の剪定事象とはなにか、そう聞かれた場合一番の原因と言えるのは『冥界』だ。

 

 何せ擬似的とはいえ不死が完成してしまったのは、間違いなく冥界の主、その()の暴走に他ならない。

 

「……こう言っちゃなんだけど、うちの異聞帯ってどうなってるんだよって話だよな」

 

 その冥界の入口を目指して再び空の旅をしながらそう思う。

 

 別段というか、そもそもの話この異聞帯は言い方は悪いが、異聞帯となった原因はある意味下らない事だ。少なくとも俺のような死霊魔術を扱う人間からすればかなり下らない。

 

 が、それを否定するかと言われればそれは否だ。俺自身、できることなら死にたくはないし、何より経緯はどうあれ俺自身が1度死んでる身だからな。

 

「ちなみにアサシン、お前はこの異聞帯についてはどう思ってるんだ?一応地元なんだろ」

「うーん、なんと言えばいいか……地元ではありますけど、そこまで統治や政治をしたって感じは無いのです。任期短いのですし」

 

 そもそも、とアサシンは続ける。

 

「今のアサシンの本質はここを治めてた王ではなく、どちらかと言えば宝具の性質を色濃く形にした反英雄……敵をただただ殺す怨霊なのです、ですから地元愛とかそういうのは一切無いといっても過言じゃないのです」

 

 まぁ外見からの言葉はなるほどとは思う。『無辜の怪物 A++』から、アサシンは実際の王でありながら、その存在を英雄から反英雄として変化させられたその姿からして、確かに彼女は統治者ではない。

 

「ただそれでもと言うのなら、そうですね……アサシンとしてはこの世界は剪定されるべくして剪定された、幾ら不死であろうと、いや、不死だからこそ、その停滞は緩やかな滅亡に他ならないのです」

「そんなもんかな……」

「そんなものです。実際、マスターが話していたヴァーダイムという人の治めてるという世界とは、別の意味で人が人でなくなってるのです」

 

 ギリシャ異聞帯か、確かに言われてみれば俺とヴァーダイムの世界は似て非なるものと言われても同義だ。違うとするなら、()()()()()()、ただそれくらいの差だろう。

 

「それよりマスター、もうすぐ目的地なのです」

「ん、わかってる」

 

 ゆっくりと下降する鳥の背から軽く飛び降り、目的の冥界の入口……汎人類史のアトラスの入口へとやって来た。

 

「さて、今日は入れるか否か……」

 

 ゆっくりと穴の近く、入口へと足を進めるが、だが、しかし、()()()()()()()()()()()()()

 

「……やっぱりダメか」

 

 あの狂ってしまった女神と会うことも叶わないとは、やはりあのふざけた陰陽師、出会った瞬間に殺しとけば良かった。いや、死なないだろうけど。

 

 まぁ元々が狂ってはいたし、あのアルターエゴの介入があっても無くてもさほど変わらなかったというのは事実だろうが、それでも多少延びていた期間を一瞬で削られては話にならない。

 

「せめてオシリスを連れてきてれば話は別だったんだろうがな」

「そうそう変わらないのです。むしろ汎人類史側のオシリスと異聞帯の冥界の神、この二人が同じ場所に居るとパワーバランスが崩れて大崩壊待ったなしですよ」

 

 ままならないものだと思うが、こればかりは仕方ないので諦める他あるまい。

 

「で、いつまでそこにいるつもりだコヤンスカヤ」

 

 俺はじろりと後ろを睨むと、おやおやと品のない笑い声が聞こえ、そこにサングラスに薄着と砂漠を舐めてると言わんばかりのアルターエゴが立っていた。

 

「いつからお気づきになってたんです?これでも気配遮断はバッチリ行っていたんですが」

「お前ほど死の匂いが強い存在はそうそういないからな。またぞろここの魔獣を道具にしたくて来たんだろ?」

「えぇえぇ、異聞帯の魔獣はそこそこ手に入れてコレクションしたいので。それに、ここはここで私には相性が良い異文帯ですし」

「それは(あそ)んでも壊れることがない、からか?」

「良くお分かりですね。おっとアサシンさん、その杖は構えないで貰えます?これでも彼、私のこと信用してくれてるみたいですし」

 

 そういうコヤンスカヤに、アサシンは嫌なものを見る目で睨み付ける。

 

「アサシンも人のことは言えませんが、少なくとも呪術使いは信用するべきではないと思うのです。同じく太陽を司るものとしては特に」

「残念ながらそれは私の別側面のお話ですわ、まぁその成分も無いとは言えないのが悲しいところでしょうが」

「ならせめてその臭いを何とかするのです、砂漠の動物は音だけでなく匂いにも敏感なのです。魔獣ならば尚更近づいてきてしまうのです。マスターに何かあれば怒られるのはそちらなのです」

「ええ、ええ。それは勿論そうでございます。ですので、私としてはどのような商品をご所望でしょうか、と」

 

 アサシンの睨みをまるで児戯のような目で返すコヤンスカヤに、俺はやれやれと頭を掻きむしる。

 

「ならギリシャの薬を持ってきてくれ。サーヴァントが受肉してエーテル体になれない以上、神薬とやらが無くちゃ回復もままならん」

「それは……だいぶ不可能なお話ですね。何せ私、あの神々のこと嫌いですし、お薬を貰うなんて土台無理でございましょう?」

「だろうな、だからもう片方側のでいい。そうすれば、万が一カルデアがギリシャにたどり着いたとしても、薬が無ければ間違いなく突破は不可能だろうな」

「なるほど、やるならば徹底的にということですか」

 

 そうだ、と呟き続けて、

 

「相手は人類最後のマスターにして2体ものビーストを討伐を成し遂げたマスターだ。警戒するのは当然、なめて掛かるなんてもっての他だってことだ」

「まぁ私も少しだけ会いましたが、あの娘が要注意というのには否定しません。警戒するというのならそれも良いでしょう。ただし、代金が釣り合えば、の話ですが」

 

 そういうとコヤンスカヤはジロリと睨む。

 

「そちらが彼方の薬をお求めなら、代価は高くなるとわかっておりましょう?」

「……何が狙いだ?」

()()()()()()()()()()()()、幾つか譲っていただけたのなら、確実に手に入れてお渡ししましょう」

 

「女狐!!」

 

 次の瞬間、巨大な火球が幾つか展開されると同時に、コヤンスカヤ目掛けてそれが殺到する。

 

「あらら、怒っちゃいましたかアサシン」

 

 しかし

 

「黙れ女狐!!貴様、あれがマスターにとっての生命線だということを忘れたのか!!」

「忘れておりませんよ。ただ、それを使えば使うほど、貴女のマスターは人でなくなってしまうということをお忘れなく」

 

 水と油のような言い合いだが、まぁアサシンがそこまで感情を表に出すと言うこと自体やれやれと思う。

 

「そこまでだコヤンスカヤ、お前が欲するもの、幾つか……そうだな、三つ分だけで良いのならくれてやる」

「おや、よろしいのですか?そこのアサシンが言ったように、それは貴方の生命線でしょう?」

「問題ない、少なくとも奴等がここに至るまでに幾つか補充することも可能だからな。最低限、貴様に与える分は可能だ」

 

 それに、と続けて、

 

「コヤンスカヤ、少なくともお前には使えないものだからな、哀願の獣?」

 

 次の瞬間、コヤンスカヤの目が異常なほどに鋭く、紅く光った。

 

「その傲慢さ、一周回って好意を得そうですわね」

「ならさっさと行ってこい、俺が渡すそれをどう使うかは、お前さん次第だからな」

 

 そうして奴はさっさと消えてしまうと、俺はやれやれと肩を竦める。

 

「アサシン、奴はどっちに消えた」

「……どうやら王都の方角に向かったみたいですね、それと、例の二人組のサーヴァントもそちらのようです」

 

 厄介な問題が両方とも都に向かうということに尚更肩を落とした。

 

「……とりあえずアサシン、向こうで待機してるランサーにコヤンスカヤがそっちに向かったって伝えておいてくれ」

「二人組のサーヴァントはどうするんですか?」

「あれは鬼札だ、下手に触れて怒りを買ったら大変じゃ済まないことになるから一先ず静観だな」

 

 どうせすぐにこの異文帯の異常を知ることになるだろうしな。

 

「そうですか、ところでマスターマスター」

「ん?どうしたアサシン」

「セイバーの馬鹿が二人組の方へ向かってるのです」

「……宝具の禁断症状でちまったかぁ」

 

 しかも二人のうち一人は大神ルーなのは確実、多分同郷の奴の血の匂い感じ取ったんだろうな。厄介なことにうちのセイバーはその大神と同郷、つまるところ、

 

「よし、ランサーに首根っこ押さえてでも連れ戻させろ」

「既に向かってる最中ですよ、雷速で。二人組はどうします?」

「放置でいい、どうせどっちも疑似サーヴァントだ。それにあの大神は対サーヴァントには無類の強さだ」

 

 何せ宝具に対するカウンター宝具を持ってる可能性が高いし、何よりオシリス抜きでサーヴァントを殺す、ないし殺されるのは()()()()()

 

「たく、なんでこんな難易度高い異聞帯を担当してるんだろ、俺」

「今さらなのですよ、マスター」

 

 同情的に肩を叩いてくるアサシンに殊更ため息をついたのは言うまでもない。

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