ACE COMBAT For beautiful sea For dirty sky   作:タクネモ・シグレ

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第2話『海上航空戦力撃滅』

[2025.12.31:大西洋・アメリカ合衆国沖]

《方位330!ミサイル4!来るぞ!》

《クソッ!ブレイク!ブレイク!》

《駄目!間に合わない!》

嘘だ。

何で、何でアイツがここに?

あり得ない。

こんな形で会うことになるなんて。

「艦長!『AKULA2』、『AKULA5』被弾!『AKULA5』ロスト!」

殺ったのか?

あの裏切り者が。

あの男が。

《よぉ姉貴、戦う理由は見つかったか?》

実の弟が。

私の大切なものを、奪った。

《こちら『AKULA1』!指示を乞う!》

・・・許さない。絶対に!

「艦長より『AKULA1』・・・奴を、殺せ!」

 

[2025.1.4:ノルウェー]

《ニュース速報です。本日、ロシア連邦がアメリカ合衆国に宣戦布告しました。同時に、ロシア空軍部隊によるアメリカ軍の軍事衛星に対する攻撃が行われました。また、アメリカ合衆国首都ワシントンD.C.へのSLBM、潜水艦発射弾道ミサイルによる攻撃が行われました。この攻撃は阻止されたものの、アメリカ合衆国のバイデン大統領は「我々は、核を用いた攻撃という選択を選んだ彼らを許さない。強力な報復を行う。」としている一方、ロシア連邦のイヴァノフ大統領は攻撃を否定しています。繰り返します。本日、ロシア連邦とアメリカ合衆国は戦争状態に入りました。》

「始まったか・・・なぁ、アレックス。世界は滅びてしまうのかな?」

『アメリカ合衆国が核戦力を用いる確率は31%、ロシア連邦が核戦力を用いる確率は8%。』

「じゃあ大丈夫かな。」

『ロシア連邦が近日中に動き出す確率は89%。』

「ま、見守ろうじゃないか。謎は生まれてしまっているが、まだ汚れてはいないのだから。」

 

[2025.1.10:ロシア連邦・セヴェロモルスク港]

「あなた達も知っての通り、第279艦載戦闘航空連隊は窮地に立たされているわ。」

俺達の艦長ことリューカリ・ショイグ大佐が話を切り出す。

ここは、ロシア海軍重航空巡洋艦「アドミラル・クズネツォフ」内のブリーフィングルーム。本来であれば、32人の優秀なパイロットのひしめく狭い部屋の筈なのだが・・・

「まさか、生き残ったのがあなた達だけとはねぇ・・・」

半分、諦めのような溜め息を溢す艦長。無理もない。我らロシア海軍北方艦隊第279艦載戦闘航空連隊の残存機は僅か4機になってしまったのだから。

「国内にスパイがいて、私達の動向が漏れていた可能性は?」

アカネが声を上げる。今、俺達が知りたいのは2つ。“何故、先輩達は全滅したのか”と“今後、俺達はどうなるのか”だ。

「ハッキリ言うわ。無い。ロシア国内のスパイは既に戦前からマークされていた。彼らは、私達が漏らすことを許した情報しか掴んでいない。」

諜報活動をここまで知り得るのは、元国防大臣の娘だからだろうか?

・・・いや、流石にそれは無いか。

「更に、仲間を墜とした敵機は、アメリカ軍機では無い可能性があるらしいの。」

何?アメリカじゃない?

「どういう事です?」

アオイが突っ込んで聞く。

「彼らが撃墜された空域はロシア北方沖合。でも、その時間帯、その周辺にアメリカの空母は居なかった。」

そうなると・・・

「じゃあ、一体誰が・・・」

「分からない。ワシントンD.C.へのSLBM攻撃も含めて、不可解な点が多すぎるわ。アメリカの衛星の配置や攻撃可能地点への到達予想時刻、これらの情報も、どこから入手したのか辿れなくなったらしいの。」

マジか。よくそんな情報を信じて攻撃をやったもんだ。うちはそこまで逼迫してるのか?

「でも、あなた達に時間はあげられない。新たな任務が北方艦隊司令部から下された。」

今までザワついていた皆が静かになる。“新たな任務”という言葉で、反射的に注意を向ける。

「北方艦隊全艦に対して集結命令が下されたわ。場所はノルウェー海。」

艦隊規模での集結命令。今度は艦隊戦か?アメリカ海軍に抵抗できる力がロシア海軍にあるかは兎も角、空母所属の航空隊としては本分だ。

「私達はそこで“囮”となり、敵空母打撃群を誘き寄せる。」

成る程成る程。

・・・は?囮!?

「ちょ!?マジ!?」

「囮ですか!?」

「虎の子の北方艦隊を!?」

一斉に動揺する俺達。だが、艦長は平然としている。まるで「私達は貧乏クジを引かされた訳ではない」と言いたげな顔だ。

「安心して。勝算はあるし、ただの囮じゃない。私達、北方艦隊の任務は敵空母打撃群の艦載機を引き付け、敵部隊上空をガラ空きにし、敵の注意をこちらに向けること。」

別働隊がいるのか。いや、しかし・・・

「流石に厳しすぎないですか?」

そう、余りにも無理がある。

空母打撃群と言えば、アメリカの軍事力の象徴だ。おまけに実戦経験も豊富。

「大丈夫よ。敵には既に“北方艦隊の航空戦力は全滅した”って情報が流されている。相手はフル装備の対艦攻撃部隊くらいでしょう。そんな鈍足なやつらに空と海から対空ミサイルを浴びせ続ける。」

また凄い作戦だ。誰がこんなのを思い付くんだろう?

「それで、どうやって空母打撃群を叩くんです?」

そう、そこだ。

航空機が尽きても、奴等の防空網を突破して、空母を沈めるのは厳しい。

「ふふっ、それはね・・・」

 

「ねぇ、ちゃんと話聞いてた?」

ブリーフィング終了後、俺は艦長に呼び止められた。

「聞いてた。何で?」

まるで俺が人の話を聞いていないみたいに質問してきた。

「・・・脚、見てたでしょ。」

あーっと、これは・・・

「それは、その・・・」

「まーだ昔の女に未練があるわけ?もう吹っ切れなさい。」

バレるものなのか。敵わないな。

「分かったよ。もう見ない。」

「別に、そういう訳じゃ・・・」

あぁ、調子が狂う。どうすりゃ良いんだ?

「それはそうと、しくじらないでよ?」

彼女が話題を反らしてくれた。

有り難や、有り難や。

「心配するな。そっちこそ簡単に沈むなよ?俺達の帰る場所が無くなる。」

互いに釘を刺しておこう。このくらいが、今はベストだろう。

 

──────────────────

『Air Force Annihilation Strategy』

15.January.2025 13:00

Norwegian Sea

65.621825,0.763972

──────────────────

 

「“鷹”から報告!『まだ“狩人”は家の中。』!」

「“鷹”を引き続き索敵に専念させて!彼らが作戦の肝よ!」

「“獅子”より指令!『“鷲”は“森守り”を徹底。“豹”は“鷲”を導け。各“猛獣”は“新たな牙”の牙研ぎを済ませよ。』!」

「P-700Zの最終確認よ!急いで!」

「了解!」

今のところ、敵からの攻撃は無い。でも敵は、確実に、こっちに来てるだろう。

アメリカ海軍の空対艦ミサイルはAGM-84Lだろうと予想されている。もっとも有名かつよく見かけるASM。所謂、ハープーンだ。射程は約300㎞。

対して、こちらの艦対空ミサイルで最も射程の長い48N6Eでも、せいぜい120㎞。

これでは敵に一方的に攻撃を受ける。

では、どうするか。

もっと射程の長いミサイルを準備すれば良い。

その発想から、短期間での実用化を目指し、追加試作型の搭載まで漕ぎ着けたのがP-700Z長距離艦対空ミサイル。これは、P-700艦対艦ミサイルに対空ミサイル用シーカーと空中炸裂弾頭を無理矢理搭載し、艦載レーダーで誘導するお粗末にも程がある物。

だが、ここまで不利な状況下では、こんなものでも有り難く思える。

この“新たな牙”と“鷹”・・・Ka-31早期警戒機の長距離索敵網を使えば敵のスタンドオフ攻撃は防げる筈だ。

「“鷹”より報告!『“狩人”の“猟犬”を見つけた。数、8匹。』!」

来た。予想より数は少ないか。

「“鷲”に連絡!『“鷲”は舞い降りる。』!」

 

「了解。『SKOPA9』より各機、迎撃戦に以降する。俺に続け。」

《了解!》

さて、いよいよだ。

敵は見つけた。

迎撃体制もバッチリ。

出来ることは全てやった。

これからもだ。

出来ることを積み重ねる。

それだけだ。

《正面、ボギー8!綺麗に並んでるよ!》

レーダーに映る複数の光。

1、2、3、4・・・8個。

敵の攻撃隊。ここで止めなければ、艦隊がやられてしまう。

「“傘”の調子はどうだ?」

《あと90秒で閉じてしまうとのこと。》

極少数となってしまった航空隊を出来るだけ有効に使うべく用意された“傘”・・・情報収集艦「タヴリヤ」のECMによって敵レーダーを短時間だが、ダウンさせることが出来る。更に、俺達の乗機には特別に電波吸収塗料が塗られている為、もう少しだけ、敵に探知されるのを遅らせることが出来る。この短時間を活かすのだ。

《“寅”より報告!『“猛獣”が“新たな牙”を抜いた。噛み付くまで60秒。』!》

《敵機との距離、70㎞を切った!》

「各機、中距離AAMを発射!撃ちまくれ!」

今回搭載してきたR-27ET1空対空ミサイルは、赤外線ホーミング誘導方式の中距離空対空ミサイルだ。Su-33はセミアクティブ誘導方式のR-27AEも運用可能だが、敵のレーダー警戒装置にバレるのを防ぐ為、こっちを持ってきた。

対艦ミサイル改造の長距離艦対空ミサイル、俺達4機から放たれる中距離AAM、おまけで近距離格闘戦・・・三重の迎撃によって敵航空機を撃滅する。

第279艦載戦闘航空連隊第2中隊第4小隊の全機が、一斉にミサイルを発射する。中間誘導が必要な為、各機1発ずつの発射だが、問題はないだろう。

《注意!後方よりミサイル接近!味方の長距離SAMです!》

俺達の編隊の下を、高速で追い抜いていく複数のミサイル。今回の為に無理矢理持ってきた長距離SAMらしい。これには、期待したい。

《第1弾、間もなく着弾します!》

ユヅルの声で目の前に意識を戻す。さてさて、戦果は?

・・・ハズレたか?

あ、ハズレた。

「こっちはハズレだ。皆は?」

《こっちもハズレ~!何で~!》

《私は・・・ビンゴ!今当たりました!》

《こっちはハズレです!》

命中率1/4・・・酷いな。R-77が欲しくなる。

「各機、次弾発射!まだ機会はある!」

落ち込んでいる暇は無し。すぐに次のミサイルだ。

《まもなくSAMが着弾!》

レーダーを覗き込む。

《5、4、3、2・・・今!》

・・・どうなった?

レーダーを覗き込む。敵マーカーの数は変わらない。ハズレか?

《隊長!“傘”より『“新たな牙”は“猟犬”を傷付けた。』とのこと!》

撃墜まではいかなかったが損傷はさせた、と言うことか。

「よーし全機!この流れを崩すな!」

俺達も流れに乗るんだ。そう、鼓舞しようとした時だった。

突然鳴るアラーム。レーダー警戒装置に反応が。何故?

《後方、ミサイル!》

《ブレイク!回避して!》

考えるより先に体が動く。

操縦桿を引き、機体が急激に機動する。

体にかかる強烈なG。

一瞬見えたのは4つの機影。

一瞬混線した声は・・・

《As I guessed・・・Allright boys let's start the party. Send these fackers to their mama in hell ! 》

 

先に仕掛けたのは、第8空母打撃群の空母「ハリー・S・トルーマン」所属第1空母航空団第137電子攻撃飛行隊第1小隊のEA-18Gだった。自身の存在を悟られぬよう電子妨害をしつつ、第279艦載戦闘航空連隊第2中隊第4小隊の後ろに回り込みAIM-120とAIM-9Xを立て続けに発射したのだ。しかし、攻撃を受けた彼らの腕も決して悪くは無い。攻撃を察知するやいなや即座に回避機動をとり、ミサイルを振り切ろうとする。その回避機動は彼らからエネルギーを奪っていく。回避に成功した彼らに、EA-18G小隊が無慈悲に攻撃を仕掛ける。上後方から降下し、十分なエネルギーを蓄えた状態で。

普通、ここで勝敗は決している。エネルギー差が開きすぎているのだから。だが、そのエネルギー差から来たほんの少しの油断が、“勝つ側”たる彼らを地獄に叩き落とす結果を招いた。

回りくどい言い方をすれば、Su-27系列の機体にポストストール領域での機動を許してしまった。

一言で言うと、“相手が悪かった”。

 

「食い付いてきた・・・FCSリミッター解除準備!お前ら!覚悟を決めろ!」

敵機は真後ろ。

自機の速度は低速。

エネルギー差は絶望的。

だが、まだだ。

まだ巻き返せる。

襲ってきたのが機銃を装備していないEA-18Gで良かった。

“これ”で、巻き返す!

《了解!》

《覚悟は出来てる!》

《さぁ、エアショーの始まりだよ!》

220ノット。

まだ速い。機体を安定させつつ速度を落としたいが、そんな悠長な事をしている暇はない。シザース気味に機動して無理矢理速度を落とす。

200ノット。

かなり速度が落ちてきたが、まだだ。更に速度を落とす。

190ノット。

こっちも相手も、飛んでいるだけで精一杯。

189ノット。

それでも食らいついてくる。相手のパイロット達も並々ならぬ腕前だ。

188ノット。

そろそろか。水平飛行に移る。

187ノット。

左側サイドコンソール一番手前の摘みを上げ、FCSのリミッターを解除する。

186ノット。

警報が鳴り続ける。不安定になった機体が震動する。

185ノット。

本能の訴える恐怖に耐え、時を待つ。

184ノット。

生き残るために、自身を危険に晒す。

183ノット。

あと少し。

182ノット。

もう少し。

181ノット。

・・・今だ!

僅かな躊躇いも無く操縦桿を目一杯手前に引き倒す。操縦桿がシートの縁にぶつかり、カン!と乾いた金属音を立てる。直後、凄まじい風切音と共に機首が持ち上がる。一瞬、時間が止まったように見える。刹那、背後から前面へ、轟音が走っていく。

コブラ。

かの有名なスホーイ社のテストパイロット、ビクター・プガチョフが世に送り出した失速機動。微妙なセットアップと、傷1つ無い完璧な機体が必要な機動故、戦場での使用は、ほぼ不可能と言われているが・・・そんなの状況に寄りけりだ。

何秒経っただろう。機首が水平に戻る。すると目の前には・・・横に2つ並んだジェットエンジンの炎の光。待望の光景だ。

半ば反射的に機銃を発射する。敵機から火花が上がり、金属片が落ちる。30㎜機銃の直撃を受けた敵機は、エンジンから黒煙を吹きながら、バランスを崩し、降下していく。追撃を。そうも思ったが、すぐに止めた。今優先すべきは、小隊の安否確認。

「各機、状況報告!」

・・・返答が、無い。

「状況報告!」

《こちら『SKOPA10』、大丈夫だよ~。》

《こちら『SKOPA11』、私も大丈夫です。少し危なかったですが・・・》

《こちら『SKOPA12』、もうこんな戦術は御免ですよ!隊長!》

良かった。皆無事なようだ。

「皆、お相手さんは?」

次、敵の状況確認。

《現在確認中です・・・来ました。2機が撤退中。あと2機は墜ちたみたいです。》

2機撃墜、か。戦果だけで見れば少ないが、双方の被撃墜機比は0:2。十分だろう。

「全機、集結しろ。警戒に戻る。」

まだ戦闘は終わっていない。艦隊防空に注力せねば。ここは一先ず集まって、さっきまでいた空域に・・・

《全機警戒、ミサイル!方位210!たくさん来ます!》

またか!敵の位置は!?そう思い、レーダーに目を落とす。

・・・居ない。

ミサイルは映っているのに、肝心の発射母機が、居ない!

《嘘!?敵機は!?》

《まさか故障!?》

「それは無い!ミサイルも、さっきの敵機も映ってる!」

《じゃあ、何で!?》

答えは、ただ1つ。

「F-35だ!ステルス機だよ!」

マジで何も映らない。

これが世代の差か。

関心してる場合じゃない。

飛んでくるのは無数のミサイル。

恐らくAIM-120。

気を抜けば、確実に墜とされる!

「各機、全力で回避機動!」

そして、俺達には任務がある。

「“鷲”より“寅”!『狩人は鰐を飼う』!」

 

この時、攻撃に参加していたのは海兵隊所属のF-35Cだった。本作戦に参加していた第二、第八空母打撃群ではF-35Cの配備が進んでいなかったために、急遽増援として派遣されていたのだ。

彼らは「ロシア艦隊に航空機が居る」と交戦していたF/A-18部隊からのデータリンクで知るや否や、AIM-120での遠距離攻撃を行った。この攻撃は失敗したが、彼らが対艦ミサイル発射位置に辿り着くのに十分な時間を稼いだ。

旗艦「ピョートル・ヴェリーキイ」指揮下のロシア北方艦隊も艦隊防空SAM、個艦防空SAM、CIWSをフルに使い、死に物狂いの対空戦闘を行うが、飛来するミサイルの数が多過ぎる。濃密な弾幕を潜り抜けたミサイルは、災厄となって、北方艦隊に降り注ぐ。

最初に被弾したのはスラヴァ級巡洋艦「マールシャル・ウスチーノフ」だった。1発のミサイルが船体中央部に吸い込まれるや、猛烈な光を放つ。上部構造物をも傷付ける爆発に、現代艦が耐え得る筈が無い。被弾口からは既に浸水が始まっているのだろう。白い蒸気が立ち上り、吃水がドンドン下がっていく。

次に被弾したのは、アドミラル・ウシャコフ級巡洋艦「アドミラル・ナヒーモフ」だった。CIWSの弾幕の隙間を縫い近付いてきたミサイルが3発、ほぼ同時に命中する。その内の1発が、本艦で最も危険な場所・・・艦前方VLSに命中してしまった。VLSのミサイル庫内に飛び込んだミサイルは、その場で爆発すると、周りのミサイルを巻き込み巨大な光の暴力となって襲いかかった。こうなってしまえば、もう助けることは出来ない。

巡洋艦3隻の内2隻を失うという多大な損害を被った北方艦隊。だが、ロシア軍もやられっぱなしではない。

本作戦の主役が・・・ロシアの陸上基地から発進した、対艦ミサイル装備のSu-57部隊がアメリカ軍第2、第8空母打撃群に襲いかかる。虎の子の北方艦隊を囮とした本作戦の主役こそが、彼らだ。ステルス機たるSu-57を用いた対艦攻撃部隊は、北方艦隊に気を取られていたアメリカ艦隊に気付かれる事無く、ミサイル発射位置まで近付く事が出来た。

先に被弾したのは第2空母打撃群旗艦「ジョージ・H・W・ブッシュ」だ。レーダー手が気付いた時にはCIWSの迎撃範囲にまで入り込まれていた。船体後部に命中したミサイルは、周辺の電気系統を傷付け、空母としての能力を奪っていく。

次に被弾した第8空母打撃群旗艦「ハリー・S・トルーマン」だ。艦首と艦中央部にミサイルが命中する。中央部への被弾は格納庫の損傷に留まったが、艦首に命中したミサイルは飛行甲板を内部から破壊し、吃水付近をも傷付け、浸水と速力の低下をもたらした。

この2隻が、既に戦闘不能な事は、誰の目にも明らかだった。

 

「クソォ!ロシア人どもめ!」

CIC内に怒号が響く。

今、普段は穏和な艦長が、怒りを露にしながら震えている。

艦長だけでは無い。

空母を守る筈の俺達だったが、成すすべなく肝心の空母を傷つけられてしまった。

「殺す!ブチ殺してやる!ロシア人!!」

皆、気持ちは一緒だ。

北方艦隊を。

あの、アドミラル・クズネツォフを。

ロシア人を。

殺してやる。

絶対に!

 

[2年前:アメリカ合衆国]

7歳の少年に、あの姿は刺激が強すぎたのだろう。

誰もが忘れた、あの“鯨”に、今も尚魅せられている僕が居る。

『プロイェクト990』。

ミリタリー系の雑誌に載っていたその名前と姿は、魅力があり過ぎたのだ。

「次!1023番!入れ!」

いよいよ、僕の番。

覚悟は固めた。

いざ、“殺人鬼になるための面接”へ・・・。

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