デビルズ・コンフリクト   作:東美桜

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第10話 裁定者

 ーーそして、零時。

「ミョウジョウ学園11年黒組へようこそ。ウチは走り鳰、黒組の裁定者っス。これより裏オリエンテーションを始めるっスよ~!」

 集った11人の暗殺者を前に、走りは赤い封筒を見せる。

 私は説明を聞きつつ、横目で幸村の様子を窺う。身体のあちこちに包帯が巻かれているが、異常はないようだ。思わず目を伏せる。やっぱり迷っているな……わかりきったことだけど。

「まずはこの封筒の使い方から。これは『予告票』といって、ターゲットに暗殺を予告するのに使うっス。予告したら48時間以内に実行すること! しなかった場合や、失敗した場合は退学っス!」

「た、退学……」

「チャンスは一度きり、って訳だね」

 武藤が怯えたように呟き、白木が何かを考えつつ口を開く。走りは予告票を指先で弄びつつ、続ける。

「暗殺に成功した場合は欲しいものがなんでも一つ手に入るっスよ! 手段はどうでも構わないっスけど、黒組生徒以外を巻き込んだり、知られたりしたらアウト! 退学っス」

 まぁ、順当なルールですね。

「つまり、溝呂木センセを巻き込んでもアウトってわけね」

「生徒同士の戦闘は問題ない、か。いいな。都合が」

 爪をいじりながら瀬川が呟き、御影はひとつ頷く。……やはり、彼女は覚悟を決めているのか……強い。

「あの……私の彼氏は黒組のこと、知ってるんですけど……」

「あ、この時点で知ってる人は適用外っス。あくまで一般生徒や先生その他に適用のルールなんで、そこはご安心を~」

 仁科の質問にはそう答え、走りは何枚もの予告票を取り出した。

「つーわけで、予告票配りまーす。中に入ってるはずっスから確認して使って下さいねー」

「……OK。受け取ったよ」

 最初に進み出たのは五十嵐、か。彼女は予告票を掲げ、堂々とした笑みを見せた。

「さて、他のみんなは貰っても意味ないから。帰った帰った」

 そのまま、しっしっと片手で追い払う仕草を見せる。瀬川はムッと頬を膨らませ、走りの手から予告票を奪い取った。

「悪いけど、そう簡単にはいかないからねーだ。まぁウチは報酬とかどうでもいいけど、やることはやるからね」

「は? 由紀乃お前、何のためにここ来たんだよ」

「呼ばれたから。強いて言うなら、彼女探し?」

 そう言って悪戯っぽく笑う瀬川。何なんですかこの人。御影の表情がひどく歪んでいる。長い前髪で見えないが、きっとその視線は瀬川をきつく睨んでいることだろう。

 ひとつ頷き、千葉がその後に続いた。

「……それな。悠奈だってやることはやるし。甘く見ないでくんなぁい?」

「……まぁ、粋がるのは自由だよ。でも僕、言ったからね? 後で後悔しても知らないよ」

「まぁ天羽粉雪は生き残るためにはなんでもしてきた人間っスから。そう簡単にはヤれないってことは、事実っスよ」

 五十嵐の言葉に、走りが続ける。他の生徒たちも次々と予告票を受けとる中、御影がふと進み出た。そのまま、予告票をピッと奪い取る。

「へぇ……受けとるんスね。誠サン」

「……保険。天羽が、ダルい方に転んだら、その時は殺す。そのため」

「殺せればいいっスけどね。じゃあ、そういうことにしとくっス」

 ニヤニヤと気味が悪い笑みを浮かべる走りを御影は睨みつけ、吐き捨てる。

「……お前こそ殺す」

「ハイハイ。……あっと千花サン」

 ふと、走りは私の名を呼んだ。はっとして走りの手元を見ると、予告票は残り一枚のみ。

「……千花サンは、受け取らなくていいんスかぁ?」

「……」

 ……動けない。走りを凝視したまま、私は硬直する。

 受けとるべきだ。理性はそう叫んでいる。しかし、何故だか動けない。身体が床に縫い付けられてしまったかのように。

「……」

「……やっぱ迷ってるみたいっスね。まぁとりあえず受け取ってくださいよ、破り捨てるのは後からでも出来るんスから、ほらほらー」

 半ば無理やり予告票を押しつけられる。それを震える指で受け取り……凝視する。

 私は……どうするべき?

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