デビルズ・コンフリクト   作:東美桜

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第2話 利用価値

 その後のホームルームで部屋割りが発表された、のだが。

「……チッ」

 憎々しげに舌打ちし、寮への道を急ぐ。

 何故、よりにもよって天羽粉雪と同室にならなければならないのか。

 黒組の主催者はおそらく、私と粉雪の関係性を知っているはずだ。その上でのこの部屋割りは、私に彼女を殺せと言っているようなものでしょう。ええ、ならば殺してみせましょう。お望み通り、すぐに。

 まずは、部屋で待機。天羽粉雪が現れ次第、殺すーー。

 

 

 あぁ……部屋に行きたくない。行ったら殺される。確実に。

 席についたまま、鞄を抱えて震える。そんなわたしに、思ってもなかった声がかけられた。

「天羽?」

「!?」

 弾かれたように顔を上げる。そこにいたのは、御影さん……だっけ。癖の強い黒髪の少女が、こちらを見下ろしている。

「えっと、御影、さん……?」

「ん。行くぞ」

「……え?」

 言うなり、彼女はわたしの腕を取り、歩き出した。危うく転びそうになりつつも、椅子から立ち上がり、置いていかれないよう足を動かす。

 

 向かった先は、食堂だった。

 わたしはオムライス、御影さんは唐揚げ定食を頼み、窓際の席へ。人目をはばかる話でもするつもりなのか、御影さんは周囲を見回し、低めの声で口を開いた。

「お前、暗殺者じゃない。違う?」

「っ!?」

 雷に打たれたような衝撃が走った。まさか、ここまでストレートに言われるなんて……。

「どう、して?」

「暗殺者特有のダルさがない」

 ……ダルさ?

 疑問に思っていると、少し考え込む様子の御影さん。しかし問題ないと判断したのか、再び口を開いた。

「体質。人の心根の悪さ、身勝手さ、そういうのを、ダルさとして感じ取れる」

「へ、へぇ……」

「暗殺者は、皆どっかしらダルい。でも、お前は、違う」

 箸でわたしを指し、御影さんは続ける。

「まぁ人間、皆どっかしらダルいけど……お前は、そこまでダルくない。どう転ぶかは、わからないけれど」

 そして御影さんは一旦箸を下ろし、唐揚げをつまんだ。何か考えてる様子だから、待ちつつ、わたしもスプーンを手に取る。オムライスを3分の1ほど食べ終えた頃、御影さんは唐突に口を開いた。

「今の状況、解ってる?」

「う、うん。……黒組のみんなは、わたしを殺すためにここに来たんだよね。それでわたしは、12人の暗殺者相手に生き延びなきゃいけない」

「そう……だから、提案」

「提案?」

 一つ頷き、御影さんは指を一本伸ばす。

「私は、お前を殺さない。ポリシーに反するから。ただ、利用させてもらう。お前を襲うとき、暗殺者たちは本性を見せる。それを見て、ダルい奴は殺す。いい?」

「つ、つまり、守ってくれるってこと!?」

 思わず目を見開く。自分でもわかるくらい声が弾む。けど、御影さんは嫌そうに口元を歪める。

「勘違いするな。自分のためにやってる。あと、お前が、ダルい方に転んだら、その時は殺す」

 ……背筋が震えるけど、すぐに収まった。

 それでもいいや、と思う。生き延びられるなら、守護者がいてくれるなら。

「いいよ。ありがとう、御影さん」

「キモい。マゾか。……まぁ、せいぜい頑張れ」

 

 

「いいか? 一番警戒すべきは、同室の鍵守。部屋にいる時は、せいぜい頑張って、逃げるなり欺くなりしろ」

「……うん、わかった。またね、御影さん」

「ん」

 手を振る天羽を見送り、2号室のドアに手をかける。中に入ると、テーブルに緑髪の女が座っているのが見えた。五十嵐樹。そういえば、こいつがルームメイトだったか。

「お帰り、誠ちゃん」

「ん」

「やっぱり無愛想だね。……ねぇ、誠ちゃん」

「何」

 面倒だけど、問いを返す。五十嵐は、わからない女だ。確実にダルい。けど、そのダルさは偽り、というか、まだ矯正可能、というか。

 そんなことを考えていると、五十嵐は嫌な笑みを浮かべる。

「粉雪ちゃんに肩入れするの、やめな?」

「何で」

「ふふっ、それは内緒。でも僕、忠告したからね?」

 悪戯気な笑顔で、五十嵐は語る。

 

「殺されても、知らないよーって」

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