「誠ちゃん。点呼行ってくるね」
「待て。私も行く」
僕、2番の五十嵐樹は、ホームルームで寮長に任命されたんです。というわけで名簿片手に声をかけると、何故か誠ちゃんも立ち上がった。
「他の暗殺者どものことも把握しておきたい」
「……そっか。じゃあ、一緒に行こう」
「ん」
二人連れ立って部屋を出る。歩きながら、私は部屋割り表に目を落とす。
1号室、浅野、武藤。
2号室、五十嵐、御影。
3号室、鍵守、天羽。
4号室、京極、瀬川。
5号室、白木、幸村。
6号室、千葉、仁科。
7号室、走り。
まずは1号室から。朝の時点ではこの部屋の人は誰もいなかったけど、誰か来てるかな。
部屋のドアをノックし、声をかける。
「こんばんは、点呼でーす」
ガチャッ。音を立ててドアが開く。現れたのはネイビーの髪のストレートショートヘアに黒縁眼鏡の少女だった。黒のYシャツに水色のネクタイと膝丈スカートに身を包んだ彼女は、薄い唇を開いた。
「……お疲れさま。自己紹介、した方がいいかな?」
「そうだね。あ、僕は五十嵐樹。仮の寮長だよ。こっちはルームメイトの御影誠ちゃん。よろしくね」
「ああ。私は1番の浅野蓮。よろしくな、二人とも」
彼女は冷静な声でそう自己紹介した。眼鏡といい、頭良さそうな雰囲気だなぁ。
隣の誠ちゃんは無反応だ。ちょっとくらい挨拶してもいいのになぁ。
「今来てるのは君だけ?」
「ああ。今は私だけだ」
「OK。わかったよ」
2号室は僕たちの部屋だからスルーして、続いて3号室。明らかにターゲットな粉雪ちゃんと、なんとなく気が合いそうな千花ちゃんの部屋だ。
「何で天羽がターゲットだってわかるんだ」
「暗殺者の勘? まあそこはいいじゃん。こんばんは、点呼でーす」
笑顔でドアを開ける。部屋の中では千花ちゃんと粉雪ちゃんが離れて座っていた。さっき部屋ドタバタしてたし、多分強襲かけたんだろうなぁ。ふふふ、やっぱり千花ちゃんとは気が合いそう。
「えーと、千花ちゃんと粉雪ちゃん、両方いるね。OK」
「おい、五十嵐……」
誠ちゃんの声をスルーし、千花ちゃんに近づく。
「ねぇ千花ちゃん……君の目的は知ってるよ」
「っ!? ……全て聞いていたのですか!?」
「そ」
そりゃ聞こえるよ、隣の部屋だし。
「だからさ……粉雪ちゃんを殺して、報酬で復讐するっていうのも、一つの手だと思うよ」
聞こえたのか、粉雪ちゃんがビクッと反応した。小声で言ったつもりなんだけどなぁ。
「大丈夫か、天羽?」
「うん……大丈夫」
誠ちゃんの声に、頷き返す粉雪ちゃん。……忠告、意味なかったか。あーあ。
続いては4号室。いつも通りノックする。
「こんばんは、点呼でーす」
ガチャッ。ドアが開き、二人の少女が現れる。
「おっす。クラスメイトか?」
「ふーん。点呼?」
「そ。僕は仮の寮長、五十嵐樹だよ。で、こっちは御影誠ちゃん」
「……ん」
思いっきり嫌そうに顔を歪める誠ちゃん。……なんか感じたのかな? 対し、ゆるくカールした黒髪の少女が思いっきり頬を膨らませた。
「何こいつ、感じ悪ーい……あ、ウチは出席番号6番、瀬川由紀乃。よろしくね~」
そのままの勢いで自己紹介すると、小さく手を振った。猫のような赤い瞳が私たちを見返す。黒髪は腰までのロングヘア。ピンクのライン入りのグレーのベスト、ピンクのリボンとミニスカート、紺のニーハイソックス。女の子らしい出で立ちだなぁ。でも誠ちゃんの顔は彼女に向けられてる……この子は警戒した方がいい、ってことかな。
続き、隣にいたヤンキー風の少女が口を開く。
「オレは4番、京極琉牙だ。よろしくな!」
オレンジのポニーテールを揺らし、輝くような笑顔を見せる。どことなく男っぽい顔立ちだなぁ。黒い学ランを前開けにして着崩し、黄色の柄Tシャツを見せている。体型は筋肉質で、身体能力が高そう。
で、この二人は……何故か腕を組んでいた。カレカノか。
「OK、由紀乃ちゃんに琉牙ちゃんだね。よろしく。じゃあね、また明日」
二人の関係に言及しないまま、僕は部屋を出る。
5号室は空だった。続き、6号室へ。
「こんばんは、点呼でーす」
ドアが開くと、現れたのはピンクに近い赤毛をツインテールにした少女だった。利発そうな緑の瞳が僕たちを映す。Yシャツに紫色のネクタイとミニスカート、腰に緑のジャージを巻いた姿は、どことなくギャルっぽい。ネイルを塗った手はタピオカミルクティーを持っている。
「点呼? そっちも大変だねー。あ、悠奈は千葉悠奈。よろぴくー」
そう言って笑う悠奈ちゃんに、僕も笑顔を返す。
「こっちこそ。僕は五十嵐樹。こっちはルームメイトの御影誠ちゃんだよ」
「……ん」
誠ちゃんの反応は……由紀乃ちゃんほどじゃないけど、悪い。どういう子なんだろ。悠奈ちゃんはタピオカミルクティーを半分くらい啜り、こちらに差し出した。
「飲むー?」
「いや、口つけたやつはパスで。ごめんね。じゃあ、また明日」
最後は7号室。どことなく胡散臭い鳰ちゃんの部屋だ。
「こんばんは、点呼でーす」
「はいはいッス」
明るい返事とともに出てきた鳰ちゃん。彼女はやっぱり胡散臭い笑顔で僕たちを出迎えた。嫌そうに口元をひきつらせる誠ちゃん。
「点呼お疲れ様ッスー。どうッスか? 今回の黒組は」
「まあ、それなりに楽しく過ごせそうだよ」
「ヤだなぁ、樹サンには言ってないッスよオオオ。その辺どーなんスか、誠サン」
その言葉に、誠ちゃんはピクリと反応した。しかし平静を装い、口を開く。
「お前に話すことじゃない」
……やっぱ、無愛想だなぁ。肩をすくめ、苦笑いする僕をよそに、誠ちゃんはくるりと身を翻した。
「やることはやった。帰る」
「あぁっ」
慌ててその後を追う。後ろで鳰ちゃんが手を振っている気配がした。