デビルズ・コンフリクト   作:東美桜

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第4話 点呼の時間

「誠ちゃん。点呼行ってくるね」

「待て。私も行く」

 僕、2番の五十嵐樹は、ホームルームで寮長に任命されたんです。というわけで名簿片手に声をかけると、何故か誠ちゃんも立ち上がった。

「他の暗殺者どものことも把握しておきたい」

「……そっか。じゃあ、一緒に行こう」

「ん」

 二人連れ立って部屋を出る。歩きながら、私は部屋割り表に目を落とす。

 

 1号室、浅野、武藤。

 2号室、五十嵐、御影。

 3号室、鍵守、天羽。

 4号室、京極、瀬川。

 5号室、白木、幸村。

 6号室、千葉、仁科。

 7号室、走り。

 

 まずは1号室から。朝の時点ではこの部屋の人は誰もいなかったけど、誰か来てるかな。

 部屋のドアをノックし、声をかける。

「こんばんは、点呼でーす」

 ガチャッ。音を立ててドアが開く。現れたのはネイビーの髪のストレートショートヘアに黒縁眼鏡の少女だった。黒のYシャツに水色のネクタイと膝丈スカートに身を包んだ彼女は、薄い唇を開いた。

「……お疲れさま。自己紹介、した方がいいかな?」

「そうだね。あ、僕は五十嵐樹。仮の寮長だよ。こっちはルームメイトの御影誠ちゃん。よろしくね」

「ああ。私は1番の浅野蓮。よろしくな、二人とも」

 彼女は冷静な声でそう自己紹介した。眼鏡といい、頭良さそうな雰囲気だなぁ。

 隣の誠ちゃんは無反応だ。ちょっとくらい挨拶してもいいのになぁ。

「今来てるのは君だけ?」

「ああ。今は私だけだ」

「OK。わかったよ」

 

 2号室は僕たちの部屋だからスルーして、続いて3号室。明らかにターゲットな粉雪ちゃんと、なんとなく気が合いそうな千花ちゃんの部屋だ。

「何で天羽がターゲットだってわかるんだ」

「暗殺者の勘? まあそこはいいじゃん。こんばんは、点呼でーす」

 笑顔でドアを開ける。部屋の中では千花ちゃんと粉雪ちゃんが離れて座っていた。さっき部屋ドタバタしてたし、多分強襲かけたんだろうなぁ。ふふふ、やっぱり千花ちゃんとは気が合いそう。

「えーと、千花ちゃんと粉雪ちゃん、両方いるね。OK」

「おい、五十嵐……」

 誠ちゃんの声をスルーし、千花ちゃんに近づく。

「ねぇ千花ちゃん……君の目的は知ってるよ」

「っ!? ……全て聞いていたのですか!?」

「そ」

 そりゃ聞こえるよ、隣の部屋だし。

「だからさ……粉雪ちゃんを殺して、報酬で復讐するっていうのも、一つの手だと思うよ」

 聞こえたのか、粉雪ちゃんがビクッと反応した。小声で言ったつもりなんだけどなぁ。

「大丈夫か、天羽?」

「うん……大丈夫」

 誠ちゃんの声に、頷き返す粉雪ちゃん。……忠告、意味なかったか。あーあ。

 

 続いては4号室。いつも通りノックする。

「こんばんは、点呼でーす」

 ガチャッ。ドアが開き、二人の少女が現れる。

「おっす。クラスメイトか?」

「ふーん。点呼?」

「そ。僕は仮の寮長、五十嵐樹だよ。で、こっちは御影誠ちゃん」

「……ん」

 思いっきり嫌そうに顔を歪める誠ちゃん。……なんか感じたのかな? 対し、ゆるくカールした黒髪の少女が思いっきり頬を膨らませた。

「何こいつ、感じ悪ーい……あ、ウチは出席番号6番、瀬川由紀乃。よろしくね~」

 そのままの勢いで自己紹介すると、小さく手を振った。猫のような赤い瞳が私たちを見返す。黒髪は腰までのロングヘア。ピンクのライン入りのグレーのベスト、ピンクのリボンとミニスカート、紺のニーハイソックス。女の子らしい出で立ちだなぁ。でも誠ちゃんの顔は彼女に向けられてる……この子は警戒した方がいい、ってことかな。

 続き、隣にいたヤンキー風の少女が口を開く。

「オレは4番、京極琉牙だ。よろしくな!」

 オレンジのポニーテールを揺らし、輝くような笑顔を見せる。どことなく男っぽい顔立ちだなぁ。黒い学ランを前開けにして着崩し、黄色の柄Tシャツを見せている。体型は筋肉質で、身体能力が高そう。

 で、この二人は……何故か腕を組んでいた。カレカノか。

「OK、由紀乃ちゃんに琉牙ちゃんだね。よろしく。じゃあね、また明日」

 二人の関係に言及しないまま、僕は部屋を出る。

 

 5号室は空だった。続き、6号室へ。

「こんばんは、点呼でーす」

 ドアが開くと、現れたのはピンクに近い赤毛をツインテールにした少女だった。利発そうな緑の瞳が僕たちを映す。Yシャツに紫色のネクタイとミニスカート、腰に緑のジャージを巻いた姿は、どことなくギャルっぽい。ネイルを塗った手はタピオカミルクティーを持っている。

「点呼? そっちも大変だねー。あ、悠奈は千葉悠奈。よろぴくー」

 そう言って笑う悠奈ちゃんに、僕も笑顔を返す。

「こっちこそ。僕は五十嵐樹。こっちはルームメイトの御影誠ちゃんだよ」

「……ん」

 誠ちゃんの反応は……由紀乃ちゃんほどじゃないけど、悪い。どういう子なんだろ。悠奈ちゃんはタピオカミルクティーを半分くらい啜り、こちらに差し出した。

「飲むー?」

「いや、口つけたやつはパスで。ごめんね。じゃあ、また明日」

 

 最後は7号室。どことなく胡散臭い鳰ちゃんの部屋だ。

「こんばんは、点呼でーす」

「はいはいッス」

 明るい返事とともに出てきた鳰ちゃん。彼女はやっぱり胡散臭い笑顔で僕たちを出迎えた。嫌そうに口元をひきつらせる誠ちゃん。

「点呼お疲れ様ッスー。どうッスか? 今回の黒組は」

「まあ、それなりに楽しく過ごせそうだよ」

「ヤだなぁ、樹サンには言ってないッスよオオオ。その辺どーなんスか、誠サン」

 その言葉に、誠ちゃんはピクリと反応した。しかし平静を装い、口を開く。

「お前に話すことじゃない」

 ……やっぱ、無愛想だなぁ。肩をすくめ、苦笑いする僕をよそに、誠ちゃんはくるりと身を翻した。

「やることはやった。帰る」

「あぁっ」

 慌ててその後を追う。後ろで鳰ちゃんが手を振っている気配がした。

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