「おはよう諸君!! 今日も人数が増えてよかったな!!」
今日も元気な溝呂木先生。私は俯いたまま、その声を聞く。
「1番、浅野蓮くん」
「……はい」
「4番、京極琉牙くん」
「オッス」
「6番、瀬川由紀乃くん」
「はーい」
「7番、千葉悠奈くん」
「はぁい」
「引き続き、4名を紹介するぞ」
一気に人数増えすぎでしょう……覚えられませんよ。
そんな私の心の声をよそに、扉が開く。現れたのは四人の少女だった。
「12番、幸村恵! よろしくな!」
赤髪ウルフカットの少女が歯を見せて笑う。小麦色の肌に白のブラウスが眩しい。チョコレート色のリボンとミニスカートに彩られた姿は、活力という言葉を連想させる。けれど……どこか余裕なさげな色を、私はその笑顔に見た。
「8番、仁科咲です。どうか、よろしくお願いいたします」
赤茶色のミドルロングの少女がペコリと頭を下げる。白い肌の目元には小さな泣き黒子が見えた。ベージュのブレザーに赤のネクタイと膝上丈スカート、黒のソックスという出で立ちだ。
「5番、白木暦未です! 皆、仲良くやろうね!」
はしばみ色のサイドテールを揺らし、彼女は明るく微笑む。Yシャツに紺のジレベスト、ミニスカートという出で立ちの上に、何故か白衣を纏っている。化学武器……毒かなにかの使い手だろうか。
「11番、武藤あかりだよ! これからよろしくね!」
茶髪のふわふわハーフアップツインテールを揺らし、彼女は弾けるような笑顔を見せた。背の低さと口調が相まって幼げな印象を受ける。半袖のセーラー服と赤い大きなリボンがよく似合っている。
「これで11年黒組は全員集合だな。さて、次は委員長と寮長を決めるが……誰かやりたい奴いないか?」
やりません。メリットがないし。
案の定、沈黙が落ちる……それを破ったのは、ひとつの声だった。
「私、委員長やります」
その声に振り向くと、眼鏡の少女が手を挙げていた。浅野といったか。瀬川といったか、隣の猫目の少女が口笛を吹く。
「いんじゃない? ウチも賛成ー! 蓮に一票ー!」
こいつ明らかにふざけている。
「わかった、浅野に頼むぞ。次は寮長だが……」
「それなら僕が。継続してやりますよ」
「そうか。じゃあ五十嵐、頼んだぞ。じゃあ授業、始めるぞー!」
唐突ですね。斜め前の席で武藤が声を上げる。
「わぁ、あたし授業何年ぶりかなぁ?」
「そーいやアタシも高校行ってないからなー、楽しみ!」
幸村も何故か楽しそうだ。千葉、五十嵐がそれぞれ声を上げる。
「えー、中卒勢結構いるんだぁ」
「この高校、心広いねぇ」
そういえば粉雪もあまり学校に来れてなかった。確かにイレギュラーが多い……まあ、暗殺者だらけのクラスじゃ仕方ないけれど。
◇
一時間目が終わり、休み時間。
「天羽……どこに行く?」
「えっと、トイレに」
「じゃあ私も」
粉雪に続き、御影も席を立つ。それを見届けると、走りは裏がありそうな笑顔で口を開いた。
「粉雪ちゃんが消えたところで業務連絡です」
ーー業務連絡?
その言葉に、クラス中が静まり返る。
「今夜0時、本校舎タワー1908教室で、裏オリエンテーションがあります。ターゲットについて知りたい者は参加してください」
ーーそこで説明があるということですか。
そんなことを思っていると、走りはさらに笑みを深くした。
「とか言って、もう皆さん気づいてるッスよねー……その通りッスよ」
そして彼女は、高らかに宣言する。
「ターゲットは、天羽粉雪ちゃんッス」
「御影サンには後で連絡しておくッス。以上、業務連絡でした」
ーーやはり、彼女でしたか。
しかし、私は迷っていた。
麻姫様を殺したのは粉雪ではない。それはわかってた。わかってたけど……八つ当たりだなんてわかってたけど、やらずには、いられなくて。
膝の上で、拳が震える。
粉雪を殺して、報酬で復讐するのがおそらく最適解。でも、本当にそれでいいのだろうか。あの時私は、麻姫様を守りきれなかった。そんな私が、復讐なんてできるのか?
「あぁ、そうそう、千花サン」
「っ!?」
気付いたら、驚くほど近くに走りの顔があった。どうして気付けなかった……動揺している? 私が……?
走りは嫌な笑顔を浮かべたまま、私にしか聞こえない声で告げる。
「ウチ、千花サンの目的も知ってるッスけど……面白くなりそうなんで、先に伝えておくッス」
「ーーあんたの主を殺した奴は、この黒組にいるッスよ」
席順を公開します。
前列:左から千葉、走り、武藤、白木、幸村
中列:左から仁科、千花、粉雪、京極、五十嵐
後列:左から 御影、瀬川、浅野