サー・エドワード・グラストンの肖像〜大英帝国魔術奇譚〜 作:山本倫敦
汽車に乗って、二時間くらいしただろうか。目的地の最寄りの駅についた。駅からの道順は、手紙に同封されていた地図に書いてあったので、迷うことはなかった。というか、一つの道を曲がらずそのまま進めばよかったから、迷えという方が難しいのだけども。
駅前の市街地を抜けると、うっそうとした森に入った。森とは言っても道は続いていて、馬車一台が通れるような幅はあるようだ。出口も、森に入った瞬間から見えるくらいの、短い道である。
森を出ると、低い丈の草の生える草原に出て、そこに、お屋敷が見えた。石造りの三階建てで、大きすぎることもなければ小さすぎることもないような建物だ。角に一つの塔があって、それは聖堂を思い起こさせるようなただ住まいであった。僕はお屋敷の入口を探した。すると、入り口と思わしきところに、背の高い、年配の紳士が立っていた。その人は僕を見てにこりと笑って、
「アンソニー・ハドソンさんでございますか。」
と聞いた。僕は、
「はい。」
と答えた。
「私は、このお屋敷の執事を務めさせていただいている、ジョン・ステイプルトンと申します。」
これがダニエルの祖父か、と思った。言われてみるとどこかそんな面影がある。にこりと笑った顔なんか、ダニエルとそっくりだ。ステイプルトンさんはドアを開けて、
「では、こちらへ。」
とお屋敷の中へ通してくれた。
お屋敷の中は、普通という感じだった。前に勤めていたお屋敷となんら変わりはしない風だ。数秒歩いて、僕はある部屋に通された。ベッドが一台、そして書き物をするのにちょうどいいくらいの小さい机と、普通の椅子が二つあった。あと、鏡があった。ステイプルトンさんは
「少々お待ちください。」
と言って出ていった。座ってもいいと言われないまま椅子に座って待っているのもなんだったのでそのまま立って待っていた。
二分くらいは待っただろうか。ドアがキイという音を立てて開いた。そこに入ってきたのは……。
黒いつややかな髪を長くおろし、透き通るように白い肌をした人だった。
冗談じゃない。これじゃあ、女性が、それもなかなかの美人が、そのままスーツを着たようなものだ。馬鹿にしている。僕ははめられたのだろうか?僕は相当困惑した。その人は軽くお辞儀をして、こう言った。
「驚いているようだね。まあ、無理もない。」
本当にこの人が、このお屋敷の主人なのだろうか?
「まるで、本当にこの人がこの屋敷の主人なのかと言っているようだ。」
悟られた。
「まあいいさ。では、ちょっと時間を取らせてもらうよ。」
その人は急に僕の方に歩いてきて、僕の頭に触れ、パチンを指を鳴らした。
視界が黒に染まった。