サー・エドワード・グラストンの肖像〜大英帝国魔術奇譚〜 作:山本倫敦
気づくと、僕はもやのかかった空間に立っていた。立っているといっても、どうも地に足をついたような心地がしない。浮いているわけでもない。確かに重力は働いている感じはするのに。
遠くに人影が見える。だけれども、もやのせいで姿がきっちりと見られない。その人影は、もやの中を歩きながら、キョロキョロといろいろなところを見回している。
その人影はだんだんと歩きながら僕の方に近づいてきていた。近づいてくるにつれ、だんだんとハッキリとその人が見えてきた。
例のスーツを着た女性だった。
その人は僕の方に向き直ってパチンと指を鳴らした。
***
気づくと、僕は元の部屋にいた。椅子にも座っていた。結局のところ、僕は座って眠ってしまっていたのだった。目の前には例の人がもう一つの椅子に座って僕の方を見ていた。やばい。やらかした。主人(?)の目の前で眠ってしまっていたのだから。頭が真っ白になった。九割方落ちたな。そう思った。どうやってこのことについて弁解しようかと思って考えまくっていたところ、僕は例の人が笑ってこう言った。
「いいや、気にしなくてもいいさ。」
気にしなくてもいい?それはそれでありがたい。寛容な人で良かった。
「なにせ私が
……この人は今なんと言ったのだ?
「まあいい。とりあえず確認するが、」
「ちょっと待ってください。」
僕はその人の言葉を遮るようにして、言ってしまった。頭の中はクエスチョンマークでいっぱいだった。お屋敷の主人がスーツを着た女性?「君の夢を見るため」?何もかもが分からない。そのせいで、言葉が詰まる。例の人は大きい目をぱちくりさせていた。そして、思い出したかのようにしてこう言った。
「あ、ああ。自己紹介がまだだったね。」
そして例の人は姿勢を正して、コホンと咳払いをした。
「私は、エドワード・ミカエル・グラストン。第七代ランズワース伯爵で、この屋敷、通称『ランズワース・ハウス』の
「は、はい。」
「災難だったね。前の雇い主のことは。」
とりあえず、最大のピンチは切り抜けたようだった。僕はほっと心の中で一息ついて、こう言った。
「ああ、ステイプルトンさんから聞いていらっしゃるのですね。」
僕はそう思っていた。でもその人、サー・エドワードは言ったのだ。
「違う。
いよいよもって分からない。
「ど、どういうことでしょう?」
僕は驚き戸惑って、聞いた。