魔法少女リリカルなのはS.F.~お前にラブハート~ 作:どめすと
そういうものなんやなぁって感じで、なんとなく読んでくださいな。
クロノが無機質な金属肌の扉の前に立つと、ちょうど目線の高さで警戒気味の黄色いセンサーが二度点滅する。それは艦内の人の移動を記録しつつ室内の人物へと来訪者を通知するという、治安維持に従事する公的艦船が故の最低限の艦内セキュリティシステム。また特定の船室に至っては、機密保護のために艦長の許可が降りなければ入室できない仕組みとなっている。
「……遅い」
クロノが睨む扉はちょうどそんなつくりとなっている艦長室であり、室内にはアースラ最高指揮官のリンディ・ハラオウンがいるのは間違いない。だが、扉の向こうから応答はない。
センサーが感知してから20秒が経過した。事前のアポイントは取っているというのに、と。クロノは野蛮を承知でノックでもしてやろうかと手を固めたが。
『あら。ごめんなさいね、クロノ。今開けるわ』
思念通話を拡声する扉脇の小型スピーカーから聞こえたリンディの声に、クロノは手を引っ込めた。次いでセンサーが緑色に変化すると、音もなく扉がスライドして開く。クロノは入室と同時に眉を顰めた。
「この騒々しい音楽はなんですっ!」
まるで銃や砲撃が飛び交う質量兵器の戦場のように。腹から声を出さねば自分の声さえ聞こえないだろう爆音紛いのミュージックが充満していた。
見るからに高価な石造りの応接テーブルの向こう、堅苦しい金属肌のデスクに腰を据えるリンディは何事もないように電子書類に目を通しているが、その内容に集中できているとは考え難い音量だった。それが多少緩和されたのはリンディが手元のコンソールに指を這わせた後だった。
「地球のミュージック、パンクロックよ。これは日本国のグループね。刺激的でしょ?」
「ええ、暴徒の群れと同程度には……。酷く乱雑で騒々しいです」
「あら。一見無秩序に散らばっているようでも、これは彼らの理で纏まったものよ。彼らなりの秩序の現れを、騒々しいと切り捨てるのはもったいないわ。表層のシグナルから根底にある原理を読み解くことも、執務官に求められる能力ではないかしら」
「どうでしょうかね……。この間はアメリカの歌番組でしたか、ブリーフィングルームの大型モニターでご鑑賞されていたと記憶しています。ご趣味に口を出す気はありませんが、これからの業務に差し支えますので……」
「もちろん止めるわ。公私の区切りはつけているつもりよ」
抑えられた音量がゼロに変わる。
リンディが応接テーブルのソファへと移動するのを見て、クロノは下座へと腰かけて資料を広げる。クロノを中心に、無数の立体ディスプレイが現れる。
「フェイト・テスタロッサの身元に関わる情報が揃いました」
クロノは管理局のデータベースから引き出した関連情報と、魔力の解析結果をリンディへフリックする。
「予想通り、フェイト・テスタロッサとプレシア・テスタロッサの魔力波動に遺伝的な相関構造が視られました。母子関係の肯定確率99.998%、この二人は間違いなく血縁関係にあります」
「やはり、かつて大魔導士とまで呼ばれたプレシア・テスタロッサが……」
第一管理世界ミッドチルダにおいて大魔導士とまで称された高ランク魔導士。更には次元エネルギーの分野で名を馳せた科学者であり、二十代にして中央技術開発局第三局長の地位にまで上り詰めた天才でもある、
そして、フェイト・テスタロッサもまた天才と称すべき類稀な魔法資質を有している。彼女が自称したファミリーネームのみを頼りに関係性を探ってみれば大当たりというわけである、科学的な根拠から、フェイトの魔力資質が大魔導士プレシアより受け継がれたというのは間違いないだろう。
「そして戸籍上、プレシアの遺伝子を継ぐ人物は一人――――アリシア・テスタロッサです」
そんなプレシア・テスタロッサの、戸籍上登録されている唯一の娘。プレシアが腹を痛めて産んだ唯一の血縁者がアリシア・テスタロッサであった。病院には出産記録が、プレシアの職場の育児施設にも出入りの記録が残っているため間違いない。
「そうなると、フェイトという名は偽名ということになるのかしら」
「……いえ、そうとも限らないというのがドクターの見解です。管理局のデータベースに登録されているアリシア・テスタロッサの魔力波動との一致率は68.333%、同一人物と断ずるにはあまりにも低く、しかし全くの別人と断ずるには高すぎる結果。姉妹の一卵性双生児でもなければここまでの数値にはなりません。……第一、アリシア・テスタロッサは二十六年前に――――」
「死亡している。享年五歳……」
「プレシアが引き起こしたエネルギー駆動装置の暴走事故に巻き込まれて……。ミッドチルダの中央病院にてアリシアの死亡が確認されています』
余りにも早すぎる死。自我が芽生え、ようやく外の世界に楽しみを見出し始めただろう歳頃だというのに……。クロノはアリシアの将来が失われたことを、リンディはアリシアを失ったプレシアの心境を想うが、感傷は不適切だと再び資料に意識を戻す。
「また仮にアリシア・テスタロッサが生存していたとしても、フェイトとは年齢が合致しない。記録通りに考えるならば、アリシアの年齢は現時点で三十歳を超えています」
クロノはレイジングハートに記録された戦闘記録からフェイト・テスタロッサの外観を出力する。身長は130cm程度、第97管理外世界における8~9歳の平均値。顔立ちは精巧なドールのように整っているが美しさよりも愛らしさが先立つバランス。体つきはモデルのような四肢の長さに目が行きがちだが、よくよく目を凝らせば運動に支障をきたすかどうかという最低限度の筋肉を備えた程度の細身の体だと判別できる。
「フェイトさんの見た目は、高く見積もっても十代前半というところ……。アリシア・テスタロッサの双子という線も消える」
「ええ。また当然ですが姉妹の線もあり得ません。血縁関係にあろうと兄弟姉妹の外観に明確な差異が現れるように魔力波動もまた違ったものとなる、その一致率は高くとも20%程度という統計データもあります」
リンディはふむと顎に手を当てた。考え込むというよりは何かを納得したというふうに、アリシア・テスタロッサ死亡後のプレシアの行動記録――中央技術開発局に残った研究記録に目を落としていた。
「では、クロノ執務官。フェイト・テスタロッサの正体については――」
「はい、プレシア・テスタロッサの関係者であるという結論を報告いたします。それ以上は、想像の域を出ない推論でしかありませんから」
するとリンディは「そうですね」と手元の資料、プレシアがミッドチルダから消息を断つまでに心血を注いでいた研究『PROJECT F.A.T.E』と銘打たれた電子書類を閉じた。そこから先に踏み込むのは、事件の収束を見届けてからが適切だろうから。
「以上の報告を持って、事件の今後はプレシア・テスタロッサの存在を考慮して行動すべきと進言します」
「もちろんです、クロノ執務官。では、今後の方針は次に控えている報告を受けた上で改めて。第二会議室に移動しましょう、エイミィが待っています」
第二会議室はアースラ艦内最小のブリーフィングルームである。第二会議室は五人程度での会議を想定され設計されているためである。壁に設置された50インチ程度のモニター、それを眺められるように台形のテーブルと椅子が四席配置されており、モニターとちょうど向き合うような形で、通信や映像出力を捜査するためのコンソール席が配置されている。
その室内にリンディとクロノが入室し、それぞれ席に着くと、コンソール席に腰かけていたアースラ≪通信主任≫兼≪執務官補佐≫エイミィ・リミエッタが通信回線を開いた。
ブリーフィングモニタ-に、二十代後半の素朴な男が映し出される。
『第16管理世界“ZOLA”より、≪遺失物管理部≫のローレンスです。お久しぶりですクロノ・ハラオウン執務官』
「まったくだよ、ドクター・ローレンス。たった五日という期間をこれほど待ち焦がれたことなどかつてなかった。前回と同様、いくつかの管理外世界を経由しているため、通信障害が発生しかねない状況だ。ご了承いただきたい』
ドクター・ローレンス。
時空管理局において、ロストロギアの管理・研究を行う機関の研究者だ。彼もまた優れた頭脳の持ち主で、アースラで測定したジュエルシードの各種データを、つい五日前に送信し、その研究と解析に取り掛かってもらっていたのだ。
『リンディ艦長も、お久しぶりです。今朝方お送りした報告書はいかがでしたか?』
「大変参考になりました、ローレンスさん。アースラの限られた設備で測定したデータを、急な依頼にも関わらずこうも詳細な解析記録としてまとめていただいたこと、まずは感謝いたします。本局でもここまでできる方はそういないでしょうね」
「ええ、ローレンス氏は間違いなく優れた人材です」
『よしてください。リンディ提督とクロノ執務官、
「姉と弟……?」
クロノはまたかと頭を抱えた。
それはローレンスが
正面に腰かけたリンディの表情が、ぱっと遊びのある色に変わった。
「ねぇねぇ! 聞いた、クロノ? エイミィ? クロノのお姉さんですって、私」
「……この人は母親だ。歳の頃も、前線でご活躍されている他の提督と大差ない」
そう、≪クロノ・ハラオウン執務官≫と≪リンディ・ハラオウン提督≫。二人のファミリーネームを知っている程度の、初対面の人間の大半が姉弟と間違えるのだ。
ローレンスは照れ笑いと言えぬ引きつった面持ちを浮かべた。
「そっ、それは失礼しました……いやぁ、申し訳ない……」
「仕方ないですよ、ローレンスさん。大抵の方が驚くんですよ。リンディ艦長の見た目って十代後半からまったくお変わりないものですから。この間だって――――」
「エイミィ、今は仕事中だぞ」
「はーい」
エイミィは返事をしたけれど、くすくす喉を鳴らしていた。エイミィはどうにもリンディの年齢バレの瞬間――相手の反応――をひとつの娯楽としている節がある。仕事に関係することではないのだが、羽目を外しすぎではあった。
クロノにとってパートナーのような存在だからこそ、今日こそガツンと言わねばという使命感がわいてくるが、対面ではリンディがジュエルシードの解析記録を立体ディスプレイとして広げていたため、クロノもまた気持ちを切り替えることにした。
「さて、ローレンスさん。報告書の内容について、ひとつだけ質問させていただきます。……ジュエルシードに秘められたエネルギー特性についてです。報告書の中では、ジュエルシードを“膨大かつ高純度なエネルギーの塊”と述べていますが、“高純度”とはどういうことでしょうか?」
『“混じり気のない純粋な非物質”――と定義づけられるでしょう』
モニターの向こうで、ローレンスは息を吸った。
『エネルギーに関する認識を共有するためにご説明させていただきます。魔法を使うためのエネルギーである魔力、その素となる“魔力素”は空気中に漂うものと認知されていますが、前時代的なエネルギーである石油や石炭といった有機化合物とは異なるモノ。かといって無機物でもない。時間や空間という物質的な制約にとらわれない精神的かつ非物質的なエネルギーの素であります』
それがミッドチルダにおける魔力の一般見解、クロノは知識に相違がないことに頷く。
『しかし我々に備わっているリンカーコアという内臓器官および各神経系は、そのような非物質を体外から吸収し、魔力というエネルギーとして物質化し放出できる機能を備えています』
「我々魔導士が扱うデバイスは、魔力という物質化したエネルギーに指向性を持たせる補助器具かつ
『問題ありません、そうして魔法という強力な力が発動するわけですから……。しかしここで留意していただきたいのは、魔力素とデバイスの間には“我々の肉体”という媒体が不可欠であり、放出される
一息ついたローレンスは視線を伏せた。話す内容を考えながらまとめているといった感じだった。
『魔力素という非物質的なエネルギーの素は、人間という
「――……我々の精神が異物?」
『ええ。……そうですね、感覚的に捉えていただきたいのですが、“客観”という概念を考えていただきたい。難しく考えないでください、一般的な考え方です。ある事物を、立場とか感情を交えずに考えるというものです」
なにやらややこしそうな話だとクロノは耳を傾ける。
『例えば自己分析においては“客観的に自分を見つめる”ということが必要になります。自分のことを外から、羅列されたデータのように見つめなければなりません。しかし自分の事を過不足なく、完全なデータとして眺めることなどできません。仮にできたとしても“自己という主観”――それまで積み重ねてきた
“人間の主観という不純物”を含んだ“不完全な客観”と。いったところか、と。
クロノはそう解釈するが説明としては非常に不明瞭な例えだと唇を強く結ぶ。そしてエイミィに「わかるか」と視線を送る。彼女は確信を突くのが上手いからだ。
エイミィは中空を眺めて小難しい表情を浮かべていたが。
「パーフェクトに綺麗な水なんてない、ってことじゃない? 私たちが飲む水って浄水器のフィルターを通ってから出てくるけど、フィルターって完璧に綺麗ってわけじゃないし。出ててくる水にも、雑菌が混じっちゃうってことかなぁ……」
『ええ、そのように感覚的に掴んでいただければ構いません。魔力素という
ローレンスは肩を震わせた。
手元にはジュエルシードの解析記録が並ぶ。ローレンスはそれらを、まるでショウウィンドウに並ぶピカピカのおもちゃのように眺めていた。
『ですが、ジュエルシードは人間を必要としない。アレ自体が
目を輝かせるローレンスだったが、はたとクロノは首を傾げた。
「ちょっとまって欲しい。『ジュエルシードは願いを発する人や動物がいなければ、本来の力を発揮できない』と。発掘者のユーノ・スクライアはそのように述べていたが……」
『その通りです、ジュエルシードにはそのようなプログラムが施されていますから』
「ならば純粋なままには扱えないのではないか? 人間の欲求を
しかしローレンスは首を横に振った。
『ジュエルシードが求めているのはあくまで“エネルギーの指向性”のみ、媒体としての願いではありません。“力を向ける先”を指定され発動してしまえば、そこから先の過程ではどのような不純をも受け付けない。『止めたい』という指向性を与えても止まらない、当初与えられた指向性に従って、無心にエネルギーを放出し続けるのです』
なるほど、とクロノが納得しかけた脇で、エイミィが「そっか」と手を打った。
「ようは『行け!』って命令したら、行くとこまで行くクソ真面目クン。んで、ヤバいって思って『やっぱ止まれ』って命令しても止まらない猪突猛進おバカって感じ?」
好ましくない言葉遣いであったが、ローレンスが『ジュエルシードに感情はありませんが、おっしゃる通りです』と屈託なく笑ったために、クロノは天井を仰ぎ息を吐いた。
エイミィの閃きがクロノの理解と一致したからだ。それはなのはの証言――なのはの感性が捉えたジュエルシード像に合致する、と。巨木を暴走させたジュエルシードが、少年が抱いた願いという指向性によって発動し、少年の願いを遥かに飛躍させた結果をもたらしたこと。それがローレンスの説明、エイミィの解釈に合致するものだと納得できた。
クロノはリンディに目をやる。
リンディは報告書に目を落としていた。ぺらぺらと雑誌をめくるように立体ディスプレイをスクロールしていたが、ふと顔を上げると理解したというふうにクロノに向けて頷いた。
クロノはモニターに向き合う。
「では、ドクター・ローレンス。そのようなエネルギー特性を踏まえた上でお聞きしたい。人間が用いることのできる“不純なエネルギー”には不可能でありながら、“純粋な非物質的エネルギー”にのみ可能な事象とはいったい何なのか、お聞かせ願えるだろうか」
それが今日の本題。
今回のジュエルシードを巡る事件は、ユーノ・スクライアが乗るジュエルシードの移送船墜落に端を発する。それによってジュエルシードは第97管理外世界に散らばり、フェイト・テスタロッサがその回収を始めた。
注目すべき点は、それら一連の異変を、管理局が察知できないよう仕掛けを打った上で実行した点。多種多様なロストロギアの中でも、高純度なエネルギーを内包するジュエルシードを目的として、計画的に行動したという点であり、だからこそ主犯の目的――ジュエルシードにのみ実現可能な特異な事象を知る必要があった。
ローレンスの面持ちが気難し気に変わる。
『シンプルに考えるならば、次元空間への干渉です。次元跳躍魔法という高度な
「だからこその≪次元干渉型ロストロギア≫という分類なのね」
「そして、それを欲するのがフェイト・テスタロッサと、その背後にいるだろう――――ん?」
クロノは胸の奥に語り掛けてくる少女の声を感知する。それはクロノを対象にした思念通話であり「失礼、高町なのはからの連絡です。少々、席を外します」とクロノは第二会議室から出る。
それを見届けたリンディは、そういえばと報告書の最後、解析の進捗状況に関するページを表示する。」
「ローレンスさん、最後にお聞きしたいのですが。報告書の最後、解析の進捗状況についてです。“ジュエルシード同士がなんらかの
『はい! そちらについてはつい先ほど、新たな解析結果が出ましたので報告いたします。ジュエルシードが発する魔力波動について、人間のそれには見当たらない奇妙な波があったのです。ひとつのジュエルシードで特定の波が観測されたすぐ後、別シリアルのジュエルシードにその波が引き継がれ、その波がまた別のジェルシードに――という具合に、まるで共鳴現象の如く。そしてつい先ほど、その波を音波に変換することに成功したのです』
「音、ですか……?」
『はい、音です。非常に短く、その……かなり不愉快な音です。金属がしゃべるとしたらこんな感じといいますか、異星人の超音波攻撃にも思えるほどに――――』
「構いません、お聞かせ願えますか?」
『わっ、わかりました。直ちにデータを転送します』
画面の向こうでローレンスがコンソールを叩くと、間もなくしてエイミィがそれを受け入れる。
「再生時間が短いくせにバカ大きなデータですね。この場で再生しますか?」
「ええ、お願い。エイミィ」
するとブリーフィングモニターに波動の強弱を示すグラフが表示される。それは砂嵐にもならないノイズを感知して小さく蠢いていたが、突如として音の波がグンと大きく跳ね上がると。
『 』
瓶の中に木霊するようなやけに間延びした音が3秒ほどで消える。
「……音がこもっているのかしら、よく聞こえないわね」
「ノイズ除去を実行します。こもる感じは消えると思いますが、ローレンスさんの言うようにかなり耳障りな周波数がむき出しになりますけど……」
「いいわ、やってちょうだい」
エイミィは慣れた手つきでコンソールを操作する。それがものの十数秒で収まると、エイミィはそれを再生した。先ほどと同様に、音のグラフがグンと大きく跳ね上がると、キンと耳を突く音が生じた。
『Ba Sa La』
甲高い悲鳴のような、寝覚めに突き刺さるアラームにも似た周波集が三つの音として確かに聞こえた。
「バサラ――――地球の古い言葉にそういうものがあったはずだけど、なにかの呼称かしら? それとも音の響きに暗号が隠れてるのかしら」
「ひょっとして“熱気バサラ”じゃないですか? クロノくんが言ってた人」
エイミィがはたと漏らしたそれに、リンディの目が細まった。
「あら、報告は受けていないわよ。どういった方なの?」
「なのはちゃんの知り合いの現地住民で……。リンカーコアを持っていて、無神経なギタリストもどきだって。クロノくんがそれはもうやたらと愚痴っていたので思い出せちゃったんですけど……。さすがに関係無いですかね?」
「いえ、無関係と断ずる材料がないわ」
リンディは口元を手で覆う。
「熱気バサラ。聞き覚えがあるけど、一体どこで……」
それは既視感。耳に残る語感に結び付く高揚感。それをいつ、どこで体験したのだったか、と。リンディは記憶に潜ろうとしたが「リンディ艦長」と室内に戻ってきたクロノに意識を引っ張り出される。
「事件の今後に関して、高町なのはから提案があるそうです。管理局代表としてお話し願えますか」