午後の授業も終わり、放課後。
のどか、夕映、ハルナの三人は図書館島で本を運んでいた。
「それにしても、許可降りて良かったね」
「ですね。あっさりとOKをもらえて、少しびっくりしましたが」
等と会話をしながら、三人は移動する。
あの後、桜と別れたネギ達は急いで学園長室に行き、学園長から時計塔への出入りの許可をもらいに行ったのだ。
学園長はすぐにOKを出し、これからはネギ達も花壇の世話ができるようになった。
「明日も桜とお弁当食べれるし」
「うん。楽しみだね」
笑顔で会話する三人。
そうしている内に、目的の本棚まで到着し、運んできた本を片付け始めた。
「よいしょっと……こっちは終わったよ」
「こっちもです。ハルナの方は………ハルナ?」
作業を終えた二人がハルナを見るが、ハルナは何やら本を読んでいた。
近くには片付け途中の本があった。
「もう、ハルナ! まだ終わってないのに!」
「全くです。何を読んでるですか?」
のどかが怒り、夕映は何の本を読んでいるのか聞く。
「ねえ、二人共! ちょっと見てよ!」
「「ん?」」
ハルナが興奮気味に、二人に本を見せる。
その本には『召喚魔術』と書かれていた。
「……魔術と書かれていますね」
「そう! 先生や桜が言ってた魔法とは違うけど、魔術だって! それも召喚! やってみたいと思わない?」
ハルナはそう言うが、のどかはため息を吐く。
「ハルナ~……まだ作業中でしょ~。それに、魔法関係の本がこんな人目に付く場所にあるわけないよ。夕映も何か言って――」
「おもしろそうですね。やってみましょう」
「夕映っ!?」
まさかの反応に驚くのどか。
それを気にせずに、夕映とハルナは準備を始める。
「それで、何をすれば良いのですか?」
「えっとね~……『魔法陣は生け贄の血、水銀、溶解させた宝石などで描く』だって」
「どれも手持ちには無いですね」
「ん~…それじゃ、マジックで描いちゃおう」
「床に直接はダメなので、大きな紙を持ってきましょう」
着々と準備を進める二人を呆然と見ていたのどかだったが、ハッとして口を開く。
「二人共~! 仕事しようよ~!」
呼びかけるのどかだったが、二人は止める気配はない。
「まぁまぁ。片付ける本はあとちょっとだし」
「すぐに終わりますよ」
そう言って準備を再開する二人。
「………」
もう何を言っても止まらないと判断したのどかは、ハルナの代わりに残りの本を片付け始めた。
少しして、魔法陣が完成する。
「よ~し、出来た~!」
「見てください、のどか……のどか?」
返事がないことを不思議に思い、夕映はのどかの方を見る。
「………」
片付けが終わったのどかは、座って自前の本を読んでいた。
無類の本好きであるのどかは、読書に夢中になると周りの声が一切届かないのだ。
「の~ど~か~!」
「うひゃあっ!」
肩を揺さぶられて、のどかは驚く。
「見てください。終わりましたよ」
「そっか。私も、ハルナが中途半端にしてた片付けは終わったよ」
「ごめんってば」
ハルナは一応謝るが、反省しているようには見えない。
のどかはいつものことだと判断し、文句を言うのを止める。
すると、ハルナがのどかに本を渡してきた。
「えっと……ハルナ?」
「せっかくだからさ、のどかもやってみない?」
「………」
ハルナの誘いに、微妙な表情をするのどか。
のどかとしても魔法にはすごく興味があるが先ほども言っていた通り、これが本物の魔法の本だとは思っていない為、乗り気ではないのである。
「私はいいよ。どうせ偽物だろうし…」
「まぁまぁ、のどか。こういうのは気分の問題ですよ」
「そうそう! 私達だってこれが本物だなんて思ってないしさ!」
「わ、わかったから……グイグイ押さないで~」
結局、のどかは二人に勧められて魔法陣の前に立った。
ハルナから受けとった魔術の本には、召喚の為の詠唱について載ってあった。
「頑張ってください、のどか」
「次は私ね~」
「……は~…」
ため息を吐き、のどかは詠唱を始めた。
「え~っと……“素に銀と鉄。礎に石と契約の大公――”」
一方、夕映とハルナが魔法陣の準備を始めた頃。
桜はネギと一緒に図書館島へと歩いていた。
桜は用事があってのどか達とは別行動していて、その後に図書館島に行こうとしてネギと遭遇したのだ。
ネギも結構な本好きで、せっかくだから行ってみようと考えていたらしい。
そこで、行き先が同じと言うこともあり、桜は案内役を買って出たのである。
因みに、同じ図書館探検部である木乃香は、今日は掛け持ちしている占い研究会の活動に参加しており、明日菜は寮に帰宅している。
「うわ~~! ここが図書館島ですか!」
入り口まで来て、図書館島を近くで見たネギは興奮しながら言った。
桜はネギを見て、口を開く。
「移動中も話しましたが、図書館島には盗難防止用のトラップがたくさんあります。危険ですので、勝手な行動はしないでください」
「はい。分かりました」
「それでは行きましょう」
桜はそう言って、ネギと一緒に中へ入っていった。
「すごく広いんですね~」
図書館島に入ってから十数分。
ネギは驚き半分、感動半分と言った感じで呟いた。
先ほど桜が言っていたように、トラップがそこら中にあるのに驚いていたが、いろいろな本があって喜んでいたのだ。
「それでは次に行きましょうか」
桜はネギに声を掛けて次の場所へ行こうとすると、曲がり角から声が聞こえてきた。
「“―――抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!”」
「!?」
聞き覚えのある詠唱が聞こえた為、桜は驚いて曲がり角の先を見た。
「さ、桜さん!?」
突然の行動に驚きの声を上げるネギだったが、桜はそれどころではなかった。
曲がり角の先で桜が見たのは……
「いや~~…やっぱり何も起こらないわね~」
「ですね」
「それはそうだよ」
へらへらと笑っているハルナと夕映、そしてその二人を呆れながら見ているのどかであった。
「………」
予想と違っていた光景に、桜は思わず呆然としてしまった。
その後ろからネギがやって来る。
「あ、宮崎さん達ですね」
「ネギ先生、桜さん!」
ネギの声でのどか達も気づき、挨拶をする。
そのまま四人は雑談を始め、はっとした桜はのどか達に質問する。
「あの……宮崎さん達は何をしていたんですか?」
「あ……実はですね…」
「ちょっと面白そうな本があったから、チャレンジしてみたんだ」
そう言ってハルナは、見付けたという魔術の本を桜に見せた。
桜が本の中身を確認をすると、そこに書かれていた内容は正しくサーヴァント召喚の方法だった。
「(どうしてこんな物がここに…?)」
桜は首を傾げる。
そんな彼女に、夕映が声を掛けた。
「桜さんもやってみませんか?」
「それ良いわね!」
「え?」
考え込んでいる間に、そんなことを言う二人。
当然ながら、桜は断ろうとする。
「いや、私はやりませんよ」
「え~~、別に良いでしょ? ちょっとした遊びみたいなものだし」
ぐいぐい来るハルナ。
夕映も同じような視線でこちらを見ている。
その後ろではのどかが申し訳なさそうに頭を下げていて、ネギはこの本に興味津々のようだった。
「………は~~…分かりました…」
さっさとやって終わらせた方が良いと判断した桜は詠唱を唱えることにした。
どうせサーヴァントを召喚する為には『聖杯』が必要不可欠で、
桜は魔法陣の前に立ち、詠唱を唱え始めた。
「“素に銀と鉄。礎に石と契約の大公――”」
しかし、桜は忘れていた。
自分がどういう存在なのか、そしてこの学園には聖杯に似た物が存在することを。
「………終わりましたよ」
少しして詠唱が終わった。
桜の予想通り、魔法陣には何の変化も無かった。
「やっぱそうだよね」
「当たり前でしょ」
へらへら言うハルナに、のどかが咎めるように言う。
ある程度予想はしていたようで、ハルナ達は特に落胆はしていなかった。
「ぼ、僕もやってみていいですか!?」
興奮しながらネギはそう言う。
別に良いだろうと、桜は本を渡そうとするが…
「おや?」
「どうしたの、夕映?」
夕映が何かに気づいて声を出す。
全員が夕映に視線を向けると、彼女は魔法陣を指さした。
「いえ……何やら光っているようなのですが」
そう言われて桜たちが魔法陣を見ると、確かに少しずつ光を放っており、段々とそれが強まっていた。
『!?』
桜たちはその光に驚き、目を瞑る。
それと同時に桜は右手の甲に鈍い痛みを感じた。
うっすらと目を開けて確認すると、そこには花びらを象った『令呪』があった。
「っ!?」
予想外のことに混乱する桜だったが、考える間もなく光が収まっていく。
そして召喚されたサーヴァントの姿が見えてきた。
「え………?」
桜は目を見開く。
それは見覚えのある姿だったのだ。
足下まで届く長さの紫の髪。
目を覆い隠すバイザー。
黒を基調としたボディコン。
そのサーヴァントは…
「あぁ……サクラッ!」
「ら、ライダー!?」
そう…生まれ変わる前の世界で、桜が契約していた『ライダー』だった。
ライダーは桜に近づくと、優しく抱きしめた。
桜は予想外のサーヴァントが召喚されたことで、混乱してしまっている。
「えっと…」
「これは一体…」
のどか、ハルナ、夕映、ネギの四人は突然現れた女性が桜に抱きついたのを見て驚く。
その後、異変を感じて駆けつけたタカミチが来るまで、この状況は続いていた。
というわけで、のどかが魔術師という設定を無くしました。