「「「………」」」
衝撃の展開に少しの間硬直していた三人であったが、直ぐに明日菜が復活して口を開く。
「ちょっ、待ってください先生! このガキ…いやいや、子供が先生って!?」
タカミチの前である為、ガキから子供に言い直す明日菜。
しかし、言い直したとは言えガキという単語はその場にいた全員に聞こえていたりするのであるが…。
タカミチは気にせずに笑いながら疑問に答える。
「大丈夫だよ。彼は頭も良いし、免許もちゃんともっているからね。それから、今日から僕の代わりにA組の担任になるからね」
「んなあっ!?」
「そうなんですか~? それじゃあ、よろしくネギ先生~」
「……よろしくお願いします」
「はいっ。よろしくお願いしますっ」
タカミチの言葉にショックを受ける明日菜。
木乃香と桜は先ほどの衝撃から立ち直り、既にネギのことを受け入れていた。
そんな二人を見て明日菜が再び口を開く。
「このかも間桐さんも受け入れるの早すぎ!」
「え~? えーやん。この子、可愛いし」
「あたしは子供が嫌いなのよっ! 口悪いし生意気だし、さっきだって失礼なこと言われたし!」
「でも本当なんですって」
「だから本当言うなっつーの!!」
「………」
このままでは再び明日菜の暴力が発動しそうだった為、桜が二人の間に入った。
「ちょっと間桐さん! 邪魔しないで…って、このかーーっ!」
「はいはい。桜の邪魔せんようにな~」
怒りの矛先が桜に向きそうになったが、木乃香が明日菜を羽交い締めして止めた。
その間に、桜はしゃがんでネギに目線を合わせて話し出す。
「ネギ先生。神楽坂さんに謝ってください」
「え……で、でもさっきのは本当のことで…」
「仮に本当のことだったとしても――」
「だから本当って…むがーーーっ!」
「はいはい、水差さんでな~」
口を挟んだ明日菜であったが、木乃香に口を塞がれた。
気を取り直して、桜は再び話し出す。
「……仮に本当のことだったとしても、神楽坂さんは嫌な思いをしたんです。ネギ先生だって、言われて嫌なことがあるでしょう?」
「それは……はい…」
何やら思い当たることがあるようで、ネギは素直に頷いた。
「それなら、後は分かりますね?」
「………はい…」
桜に促されて、ネギは明日菜の近くまで行く。
それを見た木乃香は明日菜の口を塞いでいた手を放した……羽交い締めはそのままだったが…。
「神楽坂さん……その…ごめんなさい…」
「あのね! 謝れば何でも良いってわけじゃ――」
「アスナ~…」
「うっ! ……こ、今回だけだからね!」
まだ不満があったようだが明日菜は渋々納得し、木乃香も羽交い締めを止めた。
この問題はこれで解決……となるはずだったが、明日菜があることに気がついて口を開いた。
「あれ? そう言えばあたし、間桐さんに結構な回数で嫌な思いにされたことがあるような気がするんだけど…」
「え?」
「「あ~…」」
明日菜の言葉にネギは驚きの声を出す。
木乃香とタカミチも心当たりがあるようだ。
四人は一斉に桜のことを見る。
そしてその桜本人は…
「それでは私は教室に行きますので、失礼します」
そう早口で言った後、校舎へ向けて移動を始めた。
「………って、ちょっと待ちなさーーーーい!!」
「待ってくださーーーーい!!」
ポカ~ンと見送っていた四人だったが復活し、明日菜とネギは直ぐに桜を追いかけた。
残された木乃香とタカミチは苦笑いをした後、同じように走り出した。
そして、現在は学園長室。
「(どうして私もここに…?)」
部屋にはネギ、明日菜、木乃香、学園長であり木乃香の祖父でもある『近衛近右衛門』、そして桜がいた。
タカミチは別に用事があり、途中から別行動になった。
何故桜も一緒にいるのかというと、タカミチから「せっかくだから桜くんも一緒に行ってくれないかな」と言われたからだ。
関係ないから断ろうとも考えたが、桜はタカミチに色々とお世話になっている為断れず、一緒に来たというわけである。
今は学園長とネギが会話をしている。
「修行で学校の先生を……それはまた、大変な課題じゃの~」
「「?」」
明日菜と木乃香は修行という単語を聞いて不思議そうな顔をするが、桜はそれを聞いて納得した。
修行とは
立派な魔法使いとは世の為人の為に陰ながら力を使うという、魔法界の間で最も尊敬されている職業である。
ネギはそれになる為にこの学園にやって来たのだ。
魔法使いと教師がどのような関係があるのか疑問があるが、修行の内容はランダムで決まる為、完全に運次第なのである。
「まずは三月まで教育実習じゃ。それと、今日から暮らす場所じゃが…」
学園長はちらりと桜を見る。
「桜くんの部屋なんかどうかの~?」
「………は?」
まさか自分にそういった話を振られるとは思っておらず、桜はそう呟いた。
「学園長。そこは普通、近衛さんや神楽坂さんの部屋じゃないんですか?」
「うむ。最初はそう思ったんじゃが、せっかく桜くんが来てくれたからどうかと思っての。一人部屋じゃし、丁度良くないかね?」
「私と一緒だと、ネギ先生の教育に良くないです。それに、先生も私なんかと一緒は嫌でしょう」
桜はなんとかして断ろうとする。
ネギのことが嫌いとかそういうわけではない。
ただ、人と関わるのは必要最低限にしたい桜にとって、誰かと同じ部屋で暮らすというのはどうしても避けたいことだったのだ。
「ふむ。ネギくんはどうかね? 桜くんの部屋で寝泊まりするというのは」
「えっと……はい、一緒が良いです…」
「えっ!?」
学園長がネギに確認を取ると、ネギは桜の部屋で良いと承諾。
それを聞いた桜は思わず大きな声を出す。
因みにその際、明日菜が「間桐さんて大声出せたんだ…」などと呟いたりしていた。
「……先生、本気で言ってるんですか?」
「は、はい。ダメ……ですか?」
悲しそうな表情で、桜の制服の裾を掴みながら言うネギ。
「………………分かりました」
たっぷりと間を空けてから、渋々といった様子で桜は了承した。
「あの間桐さんが…!」
「ネギくん、すごいわ~…!」
明日菜と木乃香がそんなことを言うが、桜はスルーした。
その後、指導教員の『源しずな』先生の紹介をし、桜たちは教室に向かった。
余談であるが、ネギと同室になるのを避けることが出来た明日菜は大喜びしていたとか。
二年A組。
ここが桜たちが所属するクラスで、桜とネギは教室の前に立っていた。
明日菜と木乃香は一足先に教室に入り、荷物をしまって友達と会話をしている。
「先生、そろそろ時間ですが準備は良いですか?」
「は、はいっ!」
緊張気味のネギだったが覚悟を決めて、教室の扉をノックする。
その後、扉を開けて入ろうとするが、桜は気がついた。
扉に黒板消しトラップが仕掛けられていることを。
「失礼します…」
ネギは気付いておらず、黒板消しが直撃しそうになった為、桜は直ぐにキャッチした。
「ふえっ?」
そこでネギは黒板消しの存在に気がついた。
「あ…間桐さん、ありがとうございます」
「いえ……それと、足下にもトラップがあるので気をつけてください」
「あっ! 本当だ」
教室に入ってからもう一つのトラップに気付き、ネギに注意を促す。
そして桜はそのトラップを解除して、自分の席に向かった。
生徒達は桜と一緒に入ってきた子供に興味津々といった様子で、じ~っと見ていた。
「きょ、今日から皆さんに英語を教えることになりました、ネギ・スプリングフィールドです。三学期の間だけですけど、よろしくお願いします!」
『………』
緊張しながらもしっかりと挨拶をしたネギであったが、生徒達は沈黙。
何か問題があったのかと不安になるが…
『きゃーーーーーっ!! 可愛いーーーーーっ!!』
「うわわっ!」
とくに問題は無かったようだった。
殆どの生徒達に歓迎されて、ネギはもみくちゃにされたり質問攻めにあったりしている。
その殆どから外れている生徒の一人、『長谷川千雨』は桜に声をかける。
「お、おい間桐! あの子供が先生ってマジなのかよ!?」
「残念ながらマジですね」
「マジでか~~~…!」
桜の答えを聞いて、千雨はショックで机に突っ伏した。
彼女は普通の日常をこよなく愛する人間で、常日頃から変なイベントだらけの学園や変人だらけのA組に不満をもっていたのだ。
そんな彼女にはとんでもない秘密があったりするのだが、今回の話とは関係ないので省く。
そんな会話をしているうちに、生徒達の騒ぎが終わっていた。
どうやらクラス委員長である『雪広あやか』が止めたようで、ネギへの質問タイムに入るようだ。
「それじゃ、代表として私が質問するけど良いかな~」
『良いとも~~~!!』
質問をするのは『朝倉和美』という生徒で、通称『麻帆良のパパラッチ』。
スクープの予感がするなら何処にでも行き、彼女に秘密がばれたら一時間以内に学園全体に広められてしまうと言われているほどなのである。
それはさておき、質問の内容は年齢や出身地など学園長から聞いていたことが殆どだった為、桜は聞き流しながら授業の準備をしていた。
ある程度質問したところでホームルームが終わり、授業が始まる。
最初はネギの英語の授業だったがとくに問題もなく行われていた。