放課後のホームルームも無事に終わり、ネギは教室から退室した。
少しして生徒達は動きだし、委員長のあやかの周りに集まった。
「それでは皆さん。休み時間にお話しした通り、ネギ先生の歓迎会の準備をしますわよ!」
『おーーーーっ!!』
そう、ネギの為に教室で歓迎会を開くことになったのだ。
ちゃんと事前に他の先生から許可を取ってあり、生徒達はそれぞれ準備を開始する。
普段はこういったお祭り騒ぎに乗り気ではないという生徒も、一応協力していた。
そんな中、やはり桜は周りの生徒のことなど気にせず、荷物を持って教室を出ようとした。
「お待ちなさい、間桐さん!」
そこで、あやかに呼び止められる。
桜が振り向くとあやかの他に木乃香もいた。
「何か用ですか、雪広さん?」
「何か用ですか、ではありませんわっ! 話を聞いてなかったんですの!?」
「一緒に準備せーへん?」
二人に問い詰められる桜だったが、無表情のまま淡々と答えた。
「話は聞いていましたが、用事があるので準備は出来ませんし、参加もしません。では」
「なっ……お待ちなさいっ!」
「桜~!」
教室から出て行った桜を慌てて追おうとするあやかと木乃香だったが、二人が廊下を出たときには既に桜の姿は見えなくなっていた。
「き~っ! また逃げられましたわ~!」
「桜…」
あやかは悔しがり、木乃香は悲しそうに呟く。
すると、他の生徒から声がかかる。
「いいんちょ~! もういいから、間桐さんはほっといて準備しよーよー!」
「……そう、ですわね。さ、このかさんも」
「うん…」
二人は教室に戻り、準備を再開した。
「これで十分ですね…」
一方その頃、二人から逃げた桜は買い物をしていた。
今日からネギが一緒に暮らすことになったので、食材を買いに来たのだ。
会計を済ませて店を出ると…
「あっ、桜~!」
「どーもです」
二人の生徒に声をかけられた。
同じA組の生徒で、『早乙女ハルナ』と『綾瀬夕映』だ。
「……どうも…」
軽く挨拶だけして、桜は歩き始める。
すると、ハルナと夕映が近づいて一緒に歩き出した。
「………何ですか?」
「別に良いじゃん♪ 桜と歩きたいって思ったんだし」
「そうです」
「………」
校舎を出るときのように本気で移動しようとしたが、カバンを見て思いとどまる。
あの速度で移動したら、せっかく買った物がぐしゃぐしゃになってしまうのだ。
仕方なく、桜はそのまま二人と一緒に歩いた。
「お~、いっぱい買ってるね~! 桜もついに料理をする気になったのか~!」
「良いことですね。やはりちゃんとしたものを食べないと、身体に悪いですから」
「……それならアンタもあの変なジュース飲むのやめなさいよ…」
「や~だ」
「………………」
二人は桜を間に挟みながら、そんな会話をしている。
桜は何も話さず無表情のままであったが、ハルナと夕映は全く気にしていないようだった。
それから少しして…
「っ!」
桜は走り出した。
「あっ! ちょっと、桜ーっ!」
「待つですよーっ!」
それを見た二人も一緒になって走り出す。
桜は二人から離れようとして走り出したわけではなく、ある魔力を感じてそこへ向かいだしたのである。
曲がり角を曲がると、そこには予想通り、ネギがいた。
ネギはクラスメイトの『宮崎のどか』を抱きかかえている。
どうやら、のどかは気絶しているようだ。
周りに落ちている本を見る限り、恐らく本を運んでいたのどかが階段から落下し、ネギが魔法を使って助けたのだろう。
だが問題なのは、そこから少し離れた位置にいる明日菜だ。
「あれ? あそこにいるのって、ネギ先生とアスナじゃん」
「ぜぇ……ぜぇ……そ、そうですね。のどかもいるです……って、のどかーーーっ!?」
そこでハルナと夕映も追いつき、夕映は状況を一瞬で理解して大声を出す。
その声でネギと明日菜は桜たちに気付き、のどかは目を覚ましたようで少し身じろぎをする
すると、明日菜は素早く動き、ネギを抱き上げて草むらの奥に走っていってしまった。
「あわわわっ!」
ネギによって上体を支えてもらっていたのどかは、支えを失って倒れそうになる。
「やばっ!」
「のどかっ!」
二人が慌てて支えに行こうとするが、距離があって間に合わない。
「っ!」
桜は荷物を放り出して、のどかの元に移動した。
「きゃっ!」
桜が間に合ったことで、のどかは倒れずに済んだ。
「あ……ありがとうございます…」
「………いえ…」
桜はのどかに手を貸しながら、一緒に立ち上がる。
ハルナと夕映は桜の高速移動を見てポカーンとしていたが、正気に戻って二人の元へ駆け寄った。
「のどか! 大丈夫ですか!?」
「う、うん。桜さんが支えてくれたから」
「良かった~」
三人の様子を見た後、桜はネギと明日菜が消えていった草むらへ行こうとする。
それに気がついたハルナが声をかけた。
「ちょっと待ってよ、桜。私達も――」
「皆さんには関係ないので、絶対に来ないでください」
ハルナの言葉を遮り、桜はそう言って走っていった。
それを見送る三人だったが…
「……関係ないってことはないでしょ。アスナには一言言ってやらないと!」
「その通りです! 行きますよ、のどか!」
「えっ? あ…うん」
三人は桜を追いかけることに決めた。
余談であるが、散らばった本と桜が忘れていったカバンはちゃんと回収した。
桜が草むらの奥まで行くと、木の陰からネギと明日菜の声が聞こえてきた。
近くに行くと、ネギが何やら明日菜に魔法をかけようとしているところだった。
それに気がついて桜は動きを止める。
恐らくは記憶を消す魔法を使うのだろう。
それなら自分が出て行く必要はないと判断し、魔法が発動する瞬間を見届ける。
「消えろーーーっ!」
そう言って杖が明日菜の方を向いた瞬間……
「えっ!?」
「は?」
「きゃあああああああっ! 何よ、これーーーーーっ!?」
消えてしまった……明日菜の制服が…。
素っ裸になってしまった明日菜は悲鳴を上げ、ネギは予想外の展開に慌てていた。
流石の桜も呆然としている。
記憶を消そうとして服が消えてしまうなど、誰が想像したであろうか。
すると、誰かの足音が聞こえてくる。
「誰かそこにいるのかい?」
タカミチだった。
どうやら彼もネギの魔力を感じて、確認に来たらしい。
これは不味いと判断した桜は、直ぐに行動する。
「おや? 桜く…んわあっ!」
「え! 先生!?」
「タカミチ!?」
タカミチの声が聞こえ、二人は木の陰から飛び出した。
タカミチは黒い帯のような何かで目隠しされ、その帯は桜の影に繋がっていた。
「ええっ、ちょっ! これ、どういうこと!?」
「ま、間桐さん! これはいったいどういう――」
「後で説明しますから、神楽坂さんの格好をなんとかしてくださいっ」
「「あっ!」」
混乱していた二人だったが、桜の言葉を聞いて思い出す。
今、明日菜は素っ裸なのだと。
「え…アスナくんもいるのかい? いったい何が――」
「先生。今は何も聞かずに、少し静かに――」
「………何これ…どういう状況…?」
高畑の質問を遮って話し始めた桜だったが、更なる乱入者が現れる。
「「「………」」」
それは桜を追ってやって来たのどか、ハルナ、夕映の三人だった。
「………………はぁ~…」
どうしてこうも厄介事が続くのか……と、桜はため息を吐いた。