あれから暫くして、騒ぎは収まった。
のどか達に協力してもらい、明日菜の服を準備してそれを着たところで、タカミチは帯から解放された。
現在はこの騒ぎの原因をタカミチに説明している。
「――成る程。階段から落ちそうになった宮崎くんを魔法を使って助けたけど、その瞬間をアスナくんに見られてしまったと」
「う、うん…」
「桜くんはネギくんとアスナくんを追いかけたはいいけど、人払いをするのを忘れて、三人が来てしまったわけだね?」
「はい……すみません…」
確認をするようにタカミチは言い、ネギと桜は肯定する。
明日菜、のどか、夕映、ハルナの四人は直ぐ側で黙って待っている……のどかはハルナの陰に隠れているが…。
のどかは男性恐怖症なので、タカミチから少し離れているのである。
それはさておき、本当は今すぐにでも聞きたいことが山ほどあるのだが、タカミチから待つように言われた為、こうして待機しているのである。
桜とネギの話を聞いたタカミチは、明日菜達の方を見てから口を開く。
「それじゃあ……四人には説明をして、それから判断しよう」
「ええ!?」
「………本気ですか、先生?」
タカミチの言葉に、ネギは驚き、桜は彼のことを軽く睨みながらそう言った。
「反対かい?」
「対処を忘れた私が言うのもなんですが、反対です。すぐに記憶を消すべきです」
「ちょっと間桐さん! 高畑先生に対して、態度悪いんじゃないの!」
タカミチのことが好きな明日菜が、桜に文句を言う。
「今は私達が話しているんです。黙っててください」
「むっかーーーっ! 何よ、その言い方ーーーっ!」
「ちょっと明日菜、やめなって!」
桜がイライラしながら返した為、明日菜は怒り出して掴みかかろうとする。
すぐにハルナが止めに入り、ネギとのどか、夕映は慌てていた。
タカミチは桜と明日菜の間に入り、二人に声をかける。
「アスナくん。すまないが、もう少し落ち着いてくれ」
「う~~~……分かりました…」
「桜くんも。わざわざ怒らせるような言い方はやめるんだ」
「………」
タカミチからの注意に、明日菜は渋々頷いたが、桜は頷かなかった。
余程、先ほどタカミチが言った考えが気に入らないらしい。
再び明日菜が文句を言いそうになったが、ネギ達によって口を塞がれていた。
それを見たタカミチは、桜と話し出す。
「責任は僕がとるから、任せてくれないかな?」
「そういう問題ではありません。こちら側に関わることで、どんな危険があるか――」
「そうだね。けど、それを聞いた上でどうするかを選ぶのは彼女たち自身だ。君じゃない」
「………」
そう言われて、桜は黙る。
完全に納得してはいないが、彼の言葉もある程度は理解しているのだ。
桜が一応納得したのを確認し、タカミチは明日菜達の方を向く。
「さて…これから僕が話すことは全て事実だ。僕の話を聞いた上で君達の答えを聞きたい」
『………』
真剣な雰囲気で話すタカミチに対して、明日菜達は黙って頷く。
そうして、タカミチは魔法使いについて説明を始めた。
「――というわけなんだ」
『………』
説明を聞き終わった四人は、ポカーンとしていた。
魔法使いのことや、ネギがどうしてこの学園にやって来たのか……そして、ある程度危険が伴うこと等説明しても問題ない範囲でタカミチは話した。
桜は未だにタカミチを睨み付け、ネギはだらだらと冷や汗を流していた。
「まぁ、いきなりこんな話をされても信じられないと思うけど――」
「いえ。信じるです」
『えっ?』
夕映があっさりとそう言い、タカミチ達は驚く。
唯一驚かず同じように頷いているのは、彼女の親友であるのどかだった。
「ちょっと夕映。あっさり納得し過ぎなんじゃないの?」
ハルナがそう言うが、夕映はすぐに理由を述べた。
「そんなことはないですよ。むしろ、考えてみてください。学園内に生えているあの『世界樹』や未だに全貌が明かされていない『図書館島』等々、そしてこの学園……それらを全て、先生達のような魔法使いが作ったんだとしたら、非常に納得がいくと思いませんか?」
「う、うん。それに、偶に目撃情報がある『危ないところを助けてくれる正義のヒーロー』のことも、これなら説明できると思うよ」
「むむ……確かに……ねぇ、アスナは…アスナ?」
夕映とのどかの考えを聞いて、ハルナは納得する。
因みに、明日菜は話が大きすぎて頭が着いていかず、パンクしている状態だった。
そんな明日菜の耳元で、ハルナがぼそっと囁く。
「アスナ……高畑先生が見てるわよ…」
「……はっ!」
タカミチの名前を聞いて直ぐに復活。
「オホホ~♪」と笑って誤魔化しながら間抜け面を直していた。
タカミチは?を浮かべつつも、次の話を始める。
「それで、君達に聞きたい。記憶を消すかそのままにするか」
「記憶をそのままにしたら、どうするんですか?」
「暫くの間、様子を見ることになる。当然、このことを話そうとしたら、すぐに記憶を消させてもらうけど」
「……私としてはその方が良いですけどね…」
タカミチの言葉を聞いて、桜はそう言う。
そんな桜に、のどかが声をかけた。
「あの……桜さんは、私達が魔法に関わるのが反対なんですか…?」
「……先生の話を聞いてなかったんですか? こちら側の世界に関わるということは、危険があるということです。『魔法が楽しそう』なんて軽い気持ちで関わったら、何時命を落とすことになるか……」
「でも、桜さんはその『危ない世界』に関わってますよね? ネギ先生も」
桜の話を聞いて、夕映がそう言い、明日菜とハルナは「うんうん」と頷いた。
「ぼ、僕は魔法使いの村の出身ですし、ちゃんと自分で決めたことですから…」
「私も元々こちら側の存在だから良いんです。けど、あなた達は違う。態々平穏な日常を捨ててまで、こちら側に関わる必要はないはずです」
『………』
ネギと桜がそれぞれの考えを言い、四人は少し考え込んだ。
少しして、タカミチが四人に問う。
「それじゃあ四人共。答えを聞いても良いかな?」
問われた四人はお互いを見て頷き、タカミチの方を向き、そして…
『記憶はそのままにします!』
そう言った。
「「は!?」」
「分かった。この件は学園長に伝えておくよ」
四人の解答を聞いて驚く桜とネギをスルーし、タカミチは話を進めた。
「それじゃあ、今後の確認だけど――」
「ちょっ、ちょっと待ってよ、タカミチ!」
「あなた達、本気で言ってるんですか!?」
話しているタカミチをネギが止め、桜は四人に問いかける。
「本気だよ~? あ、ちゃんと考えたから安心してね?」
「何処に安心する要素があるんですか? と言うか、バカなんですか? 危険があるっていうのを何回も言いましたよね?」
「危険だからですっ!」
『!?』
桜の言葉に対して、のどかが大声でそう言った。
のどかも桜と同じで大声を出すというのが全くと言って良いほど無いので、その場にいた全員が驚く。
「そんな危ないことに友達が関わっているなら、助けになりたいんですっ!」
「―――え? 友達…?」
「そうですっ! 桜さんにとっては違うかもしれませんが、私は桜さんを友達だと思ってますっ!」
のどかからの友達発言に、呆ける桜。
そこに、ハルナと夕映も加わった。
「勿論、私もだよ~!」
「私もです」
「………」
急な展開に言葉を失う桜。
更に追い打ちをかけるように、今まで黙っていた明日菜が口を開いた。
「このかだって、そう思ってるわよ。私は正直間桐さんのことはそんなに好きじゃないけど、クラスメイトが危険なことに関わってるのを放っておくのは、気分良くないし」
「な…ぁ……」
次々に明かされる事実に、桜の思考回路はショート寸前だった。
因みに、タカミチは微笑ましそうにこのやり取りを眺めていたりする。
「……で、でも…」
少しして復活した桜は、のどか達に何か言おうとする。
しかし、それより先に四人が話し出した。
「それにしても、そういうことか~! 桜が周りに冷たいことを言ってばっかなの」
「ええ。私達を巻き込まないようにする為だったんですね」
「あ~…あの『関係ないです』とか『関わらないでください』とかって、そう言う意味だったのね」
「は、はいっ。桜さんはとっても優しくて良い人なんですよ」
等と話している中、桜は…
「………違う…」
俯きながらそう呟いた。
「え?」
それが聞こえた明日菜が反応し、ネギ達も桜のことを見るが、桜は気付かずに喋り続ける。
「違う…違う! 私は優しくなんかないし、良い人でもないっ! 私は…!」
「さ、桜さん?」
「っ!」
桜はのどかの呼びかけに応えず、そのまま走り去ってしまった。
突然の出来事に、みんなは呆然として見送ってしまう。
唯一、タカミチは「しまった」と言いたげな表情になっていた。