Fate×ネギま リメイク   作:混ざり者

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九時間目 相坂さよの過去

 

暫くパニックになっていたネギ達であったが、桜によって落ち着きを取り戻していた。

そこで桜から、半透明の幽霊である少女の説明を聞く。

彼女の名前は『相坂さよ』。

出席番号一番で二年A組の一員だったのだ。

約六十年前に亡くなり、それ以来地縛霊としてA組の教室に居座り続けていて、地縛霊ではあるが学園内の移動は自由らしい。

去年の二年生になって間もない頃に桜と出会い、今日まで交流があるとのことだった。

 

「――というわけです」

『………』

 

説明を聞き終わったネギ達は、桜の近くでふよふよと浮いているさよを見た。

みんなからの視線を受けたさよは「えへへ…」と笑いながら照れている。

 

「以前から学園内に幽霊がいると、噂にはなっていましたが…」

「びっくりやわ~」

 

あやかと木乃香がさよに夢中になっている隙に、桜達は少し離れて話し始める。

 

「これって、大丈夫なの?」

「魔法関係のことは、隠さなくてはいけないのでは?」

 

ハルナと夕映が心配そうに言うが、ネギと桜は落ち着いて説明した。

 

「幽霊自体は魔法とは関係ないので、隠す必要はないんです」

「悪霊なら対処をしなければなりませんが、相坂さんは至って善良ですし」

 

二人の説明を聞いて、ハルナ達は一応納得する。

 

「みんな、何してるん~?」

「折角ですので、今日はこちらで食事といたしましょう」

 

あやかの提案にみんなが「賛成~!」と言い、昼食の準備をする。

桜も道具を片付けて、輪の中に入っていった。

 

 

 

「美味し~~♪」

「このか~、これ頂戴」

「ええよ~」

「ネギ先生。こちらもどうぞ」

「あ、ありがとうございます」

 

和気藹々と弁当を食べるネギ達。

そんな中、やっぱりというか桜は無表情で黙々と食べていた。

そんな彼女を見て、のどかが恐る恐る声をかける。

 

「あの……桜さん。お弁当どうですか?」

 

不安そうに聞くのどか。

桜は少し間を空けてから答えた。

 

「………美味しいですよ、宮崎さん」

「! 良かったです!」

 

答えを聞いてのどかは喜ぶ。

隣にいた夕映は「良かったですね」と声をかけていた。

そんなみんなの様子を、さよはニコニコしながら眺めていた。

 

「さよちゃんは、ご飯は食べへんの?」

 

さよに対して、木乃香が質問する。

 

「私は幽霊ですから、流石に食事は出来ませんよ~」

「やっぱりそうよね~。もしかして今退屈してる?」

 

さよの答えを聞いて、ハルナが心配げに聞くが、さよは笑って答えた。

 

「そんなことないですよ~。こうしてお話が出来るだけで、私は嬉しいんです。何十年も、誰かと話すことなんてなかったですから」

『何十年…』

 

それは生まれてから十年ちょっとしか生きていない明日菜達には、分からない期間の長さだった。

 

「話をする為の行動はしなかったんですの?」

 

今度はあやかが質問する。

今こうして自分たちと会話をしているのだから、この疑問は当然だといえるだろう。

それに対し、さよは顔を真っ赤に染めながら…

 

「実は私……幽霊としての才能が無いらしくて。誰かに話し掛けたりしても気付いてもらえなくて…」

 

と言った。

それでも偶に調子の良い時はあったらしく、姿をある程度視認してもらえることがあったが、ぼやけた姿で見えて悪霊と勘違いされることが殆どだったとのこと。

それでも麻帆良学園ではイベントがたくさんあったり、おもしろい生徒がたくさんいるので、見ているだけで楽しいと思えることも多かったらしい。

 

「でも、今ははっきりと見えてるわよね?」

「それは多分、ここのお陰だと思います。ここは私にとって大切な場所ですから」

 

そう言って、さよは石蕗(ツワブキ)の花を見る。

 

「もしかして、相坂さんがこの花を植えたんですか?」

「いいえ。この花は、私の妹が植えたんです」

 

こうして、さよは話し出した。

約六十年前、まださよが生きていた頃、身体が弱かった妹が時計塔に石蕗(ツワブキ)の花を植えたのだ。

その後、妹は病気で亡くなってしまい、残された花をさよが世話していた。

しかし、さよ自身も流行病で若くして亡くなってしまったのだという。

 

『ううっ……』

 

話を聞いたネギ達はボロ泣きしていた。

とくに木乃香、のどか、あやかの三人は滝のような涙を流している。

桜がポケットティッシュを取り出して差し出すと、みんなはそれを受けとって、ズビーッっと鼻をかんだ。

 

「成る程。つまり相坂さんは幽霊になってから今日まで、ずっとこの花を護り続けてきたと――」

「あ、違うんです」

『えっ?』

 

あやかの言葉をさよは否定し、ネギ達は驚きの声を出す。

すると、さよは再び恥ずかしそうにしながら話し出した。

 

「私……死んでしまった理由も、地縛霊になった理由も去年までずっと忘れてたんです…」

『ズコーーーーーーッ!!』

 

全員ずっこけてしまった。

あのしんみりとした話の後にそんなことを聞かされたのだから、当然の反応と言えるだろう。

 

「えっと……じゃあ、どうやって思い出したの?」

 

復活した明日菜が聞く。

 

「それは間桐さんのお陰です」

 

さよは嬉しそうに答え、明日菜達は桜の方を見る。

桜は弁当を食べ終わり、お茶を飲んでいた。

 

「あ、宮崎さん。ごちそうさまでした」

「お、お粗末様です」

 

視線に気がついた桜が、のどかにお礼を言いながら弁当箱を渡し、のどかはそれを受けとった。

食べてもらえてのどかは喜び、夕映とハルナも一緒に笑顔になっていた。

それにつられて、ネギと木乃香も笑顔になる。

良い雰囲気となるが……当然ながらそれで終わりはしなかった。

 

「ちょっと待った!」

「そんなことで誤魔化せられませんわよ!」

『はっ!』

「……ちっ…」

 

明日菜とあやかの言葉を聞き、ネギ達は本来の目的を思い出す。

話を逸らせたと思った桜は、舌打ちをした。

 

「今、舌打ちしませんでしたか!?」

「気のせいですよ。それより、話さないとダメですか?」

 

桜の表情には「面倒くさい」という気持ちが溢れ出ていた。

それを見て、ネギ達は聞くかどうか悩み始めるが、そんなことは知ったことじゃないと言わんばかりの人がいた。

 

「別にいいじゃない。何か問題でもあるの?」

 

やっぱり明日菜だった。

 

「………別に、問題はありませんが…」

「じゃあ、教えてよ」

「…………………ちっ!」

 

グイグイ来る明日菜にイライラした桜は、今度は堂々と舌打ちした。

 

「ちょっと何よ! 今の舌打ちは!」

「………あれは去年の話……」

「聞けーーーーーっ!!」

 

桜は明日菜の文句を無視して、さよとの出来事を話し始めた。

因みに、明日菜はハルナ達に取り押さえられていた。

 

 

ほわんほわん さくさく~

 

 

「ふぅ……」

 

一年近く前。

桜は校舎裏で座り込んでいた。

何故か最近、クラスメイトであり同じ部員の木乃香、のどか、夕映、ハルナの四人が付きまとっていて、彼女たちから逃げて隠れていたのだ。

 

「あの人達……一体何があったの…?」

 

四人の急な関わり方の変化の理由など分かるはずもなく、桜はため息を吐いた。

 

「………?」

 

ふと、妙な気配を感じた桜は顔を上げる。

 

「………」

 

視線の先にはふよふよと浮いている幽霊……相坂さよがいた。

 

「「………」」

 

二人はお互いをジ~ッと見ていた。

さよは桜のことを驚きの表情で見ている。

 

「………………ふぅ…」

 

桜は見なかったことにして、立ち上がって歩き出した。

自分は疲れているのだろう……と結論づけて歩き続ける。

先ほどから自分の周りをふよふよ飛んでいる幽霊らしきものは幻覚だ、と。

 

「あの~……私のこと、見えてますよね?」

 

何やら幻聴も聞こえてきた。

最近は魔法関連の仕事で、夜遅くまで見回りをしているから疲れているんだ……と、桜は歩くスピードを上げた。

 

「無視しないでくださ~~い!」

 

今日は早く寝ると決めて、桜は寮に帰って行った。

 

 

しかし、一晩経っても、事態は好転しなかった。

むしろ悪化したと言っても良いだろう。

 

「間桐さ~ん! 無視しないでくださ~い! 泣いちゃいますよ~……ふえ~~ん!」

 

朝からずっと付きまとってくるさよ。

授業中だろうがお構いなしに話し掛けてきた。

 

「(これ……このままずっと続くんでしょうか…?)」

 

少し話せば納得してくれるだろうか……そう考え始める桜。

放課後……根負けした桜は前日と同じく校舎裏に行き、さよと向き合った。

 

「わあ! 間桐さんがやっと私を見てくれました~!」

 

さよは喜んでニコニコ笑っているが、桜は無表情のまま口を開く。

 

「そういうのはいいので。あなたは一体何者ですか?」

「あ、はい! 私は地縛霊歴六十余年の相坂さよっていいます!」

「………」

 

あまりのテンションの高さに引き気味の桜。

今すぐにでも放置したいところであったが、そうすると先ほどまでのように面倒なことになるのが目に見えていたので、質問を続けた。

 

「え~っと……相坂さんは何故地縛霊に? 何か未練があるのですか?」

「そ…それは…」

 

桜の質問に、さよは顔を赤く染めてもじもじしながら答えた。

 

「私……死んじゃった原因も地縛霊になった理由も、何も覚えてないんです……えへへ…」

「………………」

 

それを聞いた桜は無言で歩き出した。

 

「ああっ! 待ってくださ~~~~い!!」

 

さよが慌てて追いかけるが、桜は無視して歩き続けた。

 

 

 

桜とさよがやって来たのは図書館島だった。

桜はある本を取り出して読み始める。

その本は、麻帆良学園に所属していた歴代の生徒達が載った名簿だった。

さよは制服姿である為、昔学園に通っていたのはほぼ確実であり、名簿を見れば少しでも情報を得られるだろうと桜は考えたのだ。

何冊か読んでいる内に、さよの名前を見つける。

 

「あ。これ、私ですね」

「何か思い出しませんか?」

 

桜に言われて、さよは生前の写真をジ~ッと見るが…

 

「………何も思い出せません…」

 

と答えた。

 

「………」

 

桜は何も言わずにページをめくる。

流石に写真を見ただけで何かを思い出すとは思っていなかったのである。

暫く調べている内に、あるページでさよが反応した。

 

「あっ! ちょっと待ってください!」

 

桜はページをめくるのを止める。

そのページは当時の学生達が考えた短歌が載っていた。

 

石蕗(ツワブキ)を 植える小さな 彼女の手 時がみちるを 楽しみにして』

 

さよの短歌はこのようなものだった。

 

石蕗(ツワブキ)……何か思い出せそうなんですけど…」

 

さよは「うんうん」と唸りながら思い出そうとする。

そこで、桜は思い出した。

以前、見回りをした際に偶然見つけた花畑のことを。

 

「相坂さん、来てください」

「えっ!? あ、はいっ!」

 

突然声をかけられて驚いたさよであったが、すぐに桜に着いて行った。

 

 

 

そうして辿り着いたのが、あの時計塔だった。

基本的に生徒は立ち入り禁止だが、今回桜はそれを無視して中に入っていき、さよもそれに続く。

時計塔の中庭には、一面に石蕗(ツワブキ)の花が咲いていた。

 

「………」

 

さよはその光景を見て、涙を流していた。

全て思い出したのだ。

 

「ふ……うぅ…っ……」

 

泣き続けるさよ

桜は何も言わずに、只黙って側にいた。

 

 

 

 

「――ということがあったんですよ」

 

話し終わった桜はお茶を飲む。

 

「成る程。つまり、私達が桜にグイグイ関わっていったお陰で、さよちゃんは昔のことを思い出せた……ということね!」

「ハルナ……」

「結果的にはそうかもしれませんが、色々と省略し過ぎです」

「うんうん」

 

ドヤ顔で言うハルナに、三人はそう言う。

 

「しかし、正直言って意外でしたわ。間桐さんが誰かの為に動くだなんて」

 

話を聞いたあやかは、驚きながら言った。

 

「ふっふっふっ……桜は良い子だからね!」

「だから何であなたが得意気なのですか…」

 

ハルナに夕映が突っ込む。

そこで、桜が口を開いた。

 

「別に……あのままずっとベタベタと纏わり付かれるより、解決した方が良いと思っただけです」

「あうう……あの時はすみませんでした…」

 

愚痴を言った桜に、さよは謝る。

その時、ネギがあることに気がつく。

 

「そう言えば、相坂さんは成仏しないんですか?」

『あ!』

 

ネギの言葉を聞いて、明日菜達も気付く。

死んでしまった理由や心残りが何だったのかが分かったのに、未だに成仏していないのが不思議だったのだ。

何か他に問題でもあるのだろうか……と考えたが…

 

「それはですね、成仏は何時でも出来るので、もう少しこのままでいようと思ったんです。ここのことも気になりますし、こうしてお話しできる人が出来たので」

 

と、さよは笑いながら言った。

とくに何か問題があるわけではないことが分かったネギ達はホッとする。

 

「そっか。問題がないなら良かった」

「そうですね」

「せや! ウチらもじいちゃんにお願いして、ここの出入りの許可をもらわへん?」

「それは良いですわね」

 

みんなが会話をしている中、桜は立ち上がる。

 

「あれ? 桜さん、どうしたんですか?」

「食事も話すことも終わったので、道具を片付けてきます。それと、宮崎さん」

「はい?」

 

桜はネギの質問に答えた後、のどかに声をかける。

 

「明日からはお弁当はいりませんので」

「え……」

 

桜からそう言われたのどかは、悲しそうな表情をする。

それを見たハルナ達が何か言おうとするが、それより先に桜は理由を話した。

 

「いや……何度も昼食を作ってもらうのは悪いので、明日からは自分で用意しますから」

「あ…はい! 分かりました!」

 

嬉しそうに頷くのどか。

それを見て、ネギ、ハルナ、夕映、木乃香の四人も笑顔になる。

明日菜とあやかは桜の対応に驚いており、明日菜は桜に近づいて小声で話し始めた。

 

「ちょっと、間桐さん。どういうつもりよ?」

「何のことですか?」

「とぼけないで。今までどんなに誘われても付き合わなかったのに、昨日から急に本屋ちゃん達の誘いを受けるようになるなんて……何考えてるのよ?」

 

疑いの視線を向ける明日菜。

それに対して、桜は淡々と答える。

 

「別に……あの人達、しつこいですから。それに、いずれは関わることもなくなりますよ」

「はあ? それってどういう――」

「それでは」

 

明日菜の質問の途中で、桜は道具を持って校舎へと向かっていった。

 

「………どういうことよ…?」

 

明日菜は桜が言ったことの意味を考えていた。

 

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