フレンダが実力主義の教室へ   作:ラーフィ

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第一話 始まりの合図

 

 

「フーーーレーーーンーーーダァァァァァ!!!」

 

ドゴォォォッッ!!という爆発にも似た音が響き渡った。

 

何が起こったのかを理解する前に少女の身体が文字通り吹き飛んだ。

最後に見たのは「原子崩し」によって吹き飛ばされた自身の下半身。

 

「(……結局、逃げるなんて無駄だったって訳ね)」

 

少女――フレンダ=セイヴェルンは裏切った後悔を胸に抱きながら、彼女の意識は深い闇の中へと消えていった。

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

「……ッ!?」

 

自身の身体が僅かに揺れていることに気付き、思わず目を覚ました。

まず視界に入ってきたのは白を基調として赤く線が引かれているスカートと自分のすらりとした脚。

これは制服だろうか。紅色のブレザーと白色のカッターシャツ、紺色のリボンを身に纏っている。

 

「(これどこの学校の制服?っていうかそもそも、なんで私が制服なんか着てる訳?)」

 

そして周りを見渡すと二人用のシートが複数あり、そこには同じ制服を着た生徒が何人も座っている。中にはつり革を持って立っている人もいた。右を見ると窓の外から景色が見渡せ、その横には「お降りの方はこのボタンを押してください」と書かれているボタンが一つ。

 

今、バスに乗っている?

 

いや、あのとき確かに死んだはずだ。生きているなんてまずありえない。

仮に生きていたとしても重症のはず。病院や施設に閉じ込められているならまだしも、制服を着てバスに乗っているなんてありえない。

 

夢?幻?それともここが天国?

 

いやいや。夢でも幻でも天国でも制服を着てバスに乗っているこのシチュエーションが意味わからないし、もし神様がフレンダのためを思ってこんな物を見せているなら…いや、それはそれで意味が分からない。

なので、こう呟かずにはいられなかった。

 

「意味分かんないんだけど」

 

「あ、やっと起きたんですね」

 

左隣からふと声が聞こえた。そちらに目をやると、そこには女の子が座っていた。

紺色の瞳と、水色の長い髪が特徴的で本を手に持った美少女。

着ている服は自分と全く同じ格好。傍から見れば同じ学校に通う二人の女の子に見えるだろう。

その女の子は緩やかに微笑んでこちらに話しかけてきた。

 

「私が座ったときからずっと寝ていましたから」

 

「…え?ずっと寝てた?」

 

「はい。まるで死んでいたような感じでしたよ」

 

彼女の言葉を信用するとしたら、フレンダは何かの目的をもって制服を身に纏い、バスに乗っているらしい。

数分前に殺された記憶が鮮明にこびり付いているが、多分信じてもらえないので黙っておく。

 

「えっと……アンタ誰?」

 

「申し遅れました。椎名ひよりです。えっと、あなたは?」

 

「……フレンダ=セイヴェルン」

 

「フレンダさん……外国の方なんですね。とても流暢な日本語を話されてますね」

 

「日本暮らしが長いから日本語もペラペラだし、生活も味の好みも日本よりって訳よ」

 

「そうなんですね」

 

当然嘘である。

 

それで満足したのか、ひよりは目線を下に落とし手に持っていた本を読み始めた。

正直なところ、話を途中で切ってくれて助かった。現在混乱真っ最中のフレンダには会話なんてしている余裕なんてない。

結局、自分はあの後どうなって、どこにいて何をするためにこのバスに乗っているのか、全く分からない。

 

そこから椎名と会話をすることなく、そのままバスの揺れに身を任せていた。

 

――――

―――

――

 

椎名含めて同じ制服を着ている生徒は何人か一緒のバスに乗っていた。

その連中が全員同じ場所で下車したため、フレンダも流れに乗るようにバスを降りてみた。

 

バスから降りるとそこはどこかの学校の門のような場所が見えた。ベージュに染められた立派な門がまるで凱旋門のように威圧感を放っている。

その門の横には、今のフレンダからすれば不可解な文字が書かれていた。

 

「入学式……?」

 

その文字の意味が分からないほどフレンダが馬鹿なわけでは無い。だがそれによって状況が全く読めなくなったのだ。

なぜ自分は今から学校へと入学しようとしている?お世辞にも頭が良いわけでもなければ素行も悪いし大人の言うことなんて聞きたくない自分が?

 

なぜ?

 

「(ああもう!結局全体的にマジで意味が分かんないって訳よ!!)」

 

声に出さずに叫んだのは暗部で音を殺して任務を遂行していた経験が活きたからか。

一度考えるのを止めよう。今いるのは能力者がわんさかいる学園都市ではない。

つまり後ろから急にナイフで刺されることも拳銃で撃たれる心配もないということ。

状況が読めないというのは暗部出身として非常に恐ろしいことだが、殺される心配がないのなら大丈夫なはずだ。

 

初めて来る生徒のために誘導用の看板が多く置かれていた。おかげて道に迷うこともなくフレンダは目的地へと進む。

着いたのは一年のクラスがある階。ここには4つの教室があり、それぞれの扉には白い紙が貼られている。ここにいる生徒はその白い紙に食い入るように覗き込んでいた。

白い紙には名前が順に書かれている。クラス替えの結果が張り出されているのか。

自分の名前を見つけるのは容易かった。漢字が並ぶリストの中にカタカナ表記の名前があれば良くも悪くも目立つ。

 

フレンダはCクラスだった。

 

指定された席に着いて、ふと隣を見ると見知った顔がそこにあった。

まあ、現時点でフレンダが知っている顔なんて一人しかいなくて。

 

「アンタもこのクラスだった訳?」

 

「どうも先程ぶりです。知り合いが同じクラスで助かりますね」

 

それはこちらも同じセリフが言える。現在地もここがどのような学校かも分からない現状では情報が少なすぎる。普通に話しながら情報を引き出せそうな相手がいるのなら、それに越したことはない。

フレンダは適当に話を振ることにした。

 

「椎名はさ、なんでこの学校に来た訳?」

 

この辺が妥当だろう。普通の会話にありきたりながらも学校の特徴を自然な形で引き出せる。

ひよりは僅かに考えた表情を浮かべてからこう言った。

 

「やはり高い進学率と就職率を誇っていることですね。日本政府が優秀な人材を育成することを目的として作られた学校ですから」

 

「…ここってそんないい学校な訳?」

 

「はい……てっきりこの学校に入学した人はそれを目的としているとばかり……」

 

「あっいや、私は受かったらどこでも良かったからこの学校のことよく知らなくて」

 

「……そうなんですね」

 

咄嗟に適当な嘘をついたが、とりあえず信じてもらえたようだ。

1つ目の情報。ここは普通の学校とは違っていること。

政府が人材育成を目的として作った学校ということは相当気合が入っている学校と言うこと。

常盤台や長点上機のようにべらぼうに頭がいいとか、何か一芸に特化していなければやっていけないような学校とか。

 

フレンダはお世辞にも頭が良いとは言えないし、爆弾や暗殺には特化しているが、それが学生生活に直結するとは思えない。

 

「(ああもう!何でエリート高に入学しなきゃ行けない訳!?神様のいたずらにも程があるって訳よ!!)」

 

まず秒で憂鬱になった。頭を抱えてふさぎ込む。一旦発狂しそうになる。

だって自分のスペックよりも何倍もの学校に転入させられたもの。当然これからの学校生活不安になる。

 

「どんな学校生活になるか、楽しみですね」

 

こっちは全く楽しみじゃない。

 

 

 

――――

―――

――

 

 

 

「新入生諸君。私がCクラスの担任になった坂上数馬です。3年間クラス替えがありませんので、これから3年間よろしくお願いします」

 

メガネを掛けたインテリな男がクラスの壇上でそう名乗った。

 

第一印象は年齢に対して老けて見えるが、ずる賢く機転が利き頭が回る男というもの。

フレンダが暗部にいた頃は、あのような顔をした大人が数多くいて、研究者として数々の論文を世に出していき学園都市を発展させてきた。学園都市の能力や喧嘩する武術も無いくせに能力者相手に機械や道具を使って互角に戦うなどといった、敵に回すと面倒極まりないタイプの男。

 

坂上はクラスを一通り見回し、邪悪な笑みを浮かべながら続けた。

 

「さて、早速ですが。みなさんには良いお知らせと悪いお知らせの2つを伝えなくてはなりません。どちらから聞きたいですか?」

 

急な話にクラスが僅かにざわついた。それもそうだ。まだ学校に来たばかり、入学式すら行われていない段階で右も左も分からない自分たちに悪いお知らせを伝えようとしている。

悪いがどの程度であるかは定かではないが、このタイミングで伝えるということは、生徒がこの学校に入学した時点での知識や前提を覆すようなものであることが考えられる。

 

「(ま、私はその前提とやらがないんだけど)」

 

しかし良い知らせも悪い知らせも、フレンダにも影響を及ぼすようなことであることは容易に想像出来た。

さて、どちらから聞くべきか。隣のひよりに相談しようか迷っていると。

 

「どっちも一緒だろうが。さっさと話せ」

 

クラスの中心から、低い声が先生へと飛んだ。

そちらを見ると、肩まで掛かる赤い長髪の男が、座っていながら机の上に脚を乗っけているという入学式とは思えない態度で先生の話を聞いていた。

 

図々しい態度とクラスの皆は思っているだろう。実際に普通の高校でこの態度なら先生方に目を付けられてもおかしくないし、発言や行動次第ではお叱りや点数の減点すら可能性として考えられる。

 

フレンダはアイテムのリーダーの横暴な態度や暴力を知っているので特に驚きはなかったが、その姿に恐怖心を覚えたのか、男が言葉を発した途端クラスが静まり返った。

誰も反論する様子が見られない。男の言葉とクラスの反応を見て、坂上は笑みを崩さず話し始めた。

 

「分かりました。では良い知らせから……っと、忘れていました。まず学生証をお配りします。自分の学生証を取ったら後ろに回してください」

 

そう言って坂上は学生証を前の生徒に複数配った。それを生徒が後ろへと回していく。

 

「決して無くさないでくださいね。再発行には別途お金がかかりますし、それ自体が皆さんの生活のライフラインになるのですから」

 

ライフライン?

 

「この学生証は敷地内全ての施設を使用できたり、売店で商品を購入することができるようになっています。クレジットカードのようなものですね。ちなみに購入する際はポイントを消費するのでご注意を。この学校で変えないものはありません。それを使えば、敷地内のものであれば何でも購入可能です」

 

現金ではなくポイントで管理しているのは、恐らく金銭トラブルを未然に防いだり、ポイントの消耗をチェックすることで、消耗癖に目を光らせているのかもしれない。

 

「施設では機械に学生証を通すか、提示することで使うことが可能です。それからポイントは毎月1日に自動的に振り込まれるようになっています。みなさんには全員10万ポイントが支給されています。確認してください。なお、このポイントは1ポイントにつき1円の価値があります」

 

その言葉に、クラスが一気にざわつき始めた。流石にその言葉の意味が分からない者はいないだろう。 

 

そしてフレンダも、流石にこれには驚きを隠せなかった。

 

「(1ポイント1円ってことは、10万円が振り込まれてるって訳!?ただの高校生に馬鹿じゃないの!?)」

 

フレンダは学園都市の学生としていた頃、レベルによって支給されるお金とは別に、アイテムとして働いたギャラで生計を立てていた。

その時に振り込まれるギャラは、依頼主が出す金額や四人それぞれの成果の程度によって変わってくるので一概には言えないが、振り込まれる金額は大体3~5万円ほど。10万円という数字はつまりアイテムの仕事2、3回分に当たる。

それもアイテムの仕事は常に死と隣り合わせで、その上で迅速に仕事を行うことが求められるので、生半可な技術や心構えだけでは成り立たない仕事。

 

それがたかが高校生が自身の仕事の2、3回分のお金をもらっていることに憤りが止まらない。

 

「驚きましたか?この学校では実力であなた達を測ります。入学した皆さんはそれだけの価値があるということですよ」

 

10万円の価値?この平和ボケしている高校生達に?

 

そんなものないだろうと一蹴したかったが、変に騒ぎを起こして先生の目に付けられるのは面倒なのでやめておいた。

 

「さて次に悲しいお知らせですが……結論から先にいいましょう。希望の進学先、就職先が叶う恩恵を得られるのはAクラスのみです」

 

その言葉に先ほどと同じ……いや、それ以上の衝撃がクラス中を駆け巡った。

 

「いくら国が主導している学校とはいえ、すべての生徒が恩恵を受けられるほど甘い学校ではありません。この学校は実力が全て。実力がある者のみ、席に座れる権利が生じます」

 

実力主義の学校。

実力があるものが勝ち上がり、実力の無いものが淘汰されていく。

 

あまりにも分かりやすく、あまりにも残酷な宣告。

 

「では皆さん。よい学生生活を送ってください。期待していますよ」

 

そう言い残し、ざわつきが収まらないクラスの面々を気にすることなくクラスを出ていった。

 

驚愕。歓喜。衝撃。混乱。

 

ある生徒は10万ポイントを何に使うか楽しそうに友人に話しかけ、

ある生徒は進学に対する怒りや不満を吐露し、

ある生徒は実力主義の学校に対して不安と哀しみを覚え、

ある生徒は実力主義の学校に対して自身と喜びに満ち溢れていた。

 

反応は十人十色。喜怒哀楽、人によって様々。

 

彼女はどう思ったのだろう?

 

「今の話、どう思う?」

 

「そんな美味しい話があるほど世間は甘くないなって思いました。フレンダさんは?」

 

「疑問しか無い訳よ!結局、私達勝手にCクラスにされてAクラスじゃないと駄目だって。何よCクラスよりAクラスの方がいいみたいなあの言い方!」

 

「私もそこは疑問に思いました」

 

どうやら椎名も気づいていたみたいだ。

先程の先生の言い方はまるで自分たちはそこまで大した事がない生徒の集まりだと言わんばかりの言い方だ。

 

希望した進学先や就職先の推薦の枠がAクラスしか認められないということは、それ以外のクラスはそれをできる資格がないということ。

これはテストで優秀な成績を修めた生徒が奨学金の返還を全額免除するような仕組み。優れた生徒のみが行える特権。

 

つまり現時点で、少なくてもCクラスはAクラス以下の人材が集まっていると言われたと同じ。

 

「当たり前よ。まあ椎名の言う通り世の中そんなに甘くないのはわかってたけどね。10万円もそうだし」

 

「でも逆に言えば、こちらにはチャンスがあると言うことですよ」

 

「それは、Aクラスに上がるって意味?」

 

「もちろん」

 

しかしそこで終わらない。

Aクラスしか進学先や就職先の推薦の枠が得られないといっても、自分たちがAクラスに上がれるチャンスが無いわけではない。

 

「先生は実力が全てと仰っていました。つまりここでは実力で這い上がれるチャンスを設けているということです。例えばテストやスポーツの成績、クラスの出し物の芸術点など、ですね」

 

「結局、これから次第って訳ね。よーし、じゃあ早速他クラスや学校の偵察を――」

 

「それを踏まえて私は暫く様子見させていただきます」

 

「――って何で!?」

 

「正直学校の仕組みや罰則がどこまで適用されるか分からない以上、迂闊に動いてマイナス査定を受けるのは危険です。まだ戦いは始まったばかりですし、暫くは落ち着いた態度を取るのが無難だと思います」

 

行動的なフレンダと慎重的なひより。

しかし、この数分会話しただけで、フレンダはひよりの事を高く評価していた。

 

この学校にいる生徒はただの高校生。しかしその高校生の中にも化け物と称される人物がいる。

 

例えばアイテムのリーダー、7人しかいない超能力者の第4位、麦野沈利。

その破壊力はさることながら、状況に応じた判断力と僅かな変化も見逃さない洞察力、そして仲間の個性に応じた適切な指示。

全てが高校生の枠を飛び抜けた素質を持っており、全てが一流。

 

ひよりはどちらかと言えばそちらに部類される人物。

少ない情報を頭の中で整理し、その上で自分がどのような行動を取れば良いかを短時間で導き出す、判断力と洞察力に優れた人物。

 

才能なのか、努力で勝ち取ったものなのか。

 

いずれにせよ、椎名ひよりという人物がクラスに影響を及ぼすことは間違いない。

 

「じゃあ私もそうしよ。10万円で何使おっかなー?」

 

フレンダも行動を自粛することにした。

 

それはひよりに促されたこともあるが、まだこの世界に来て一日も経っていないため、フレンダにはこの世界や学校の常識やルールがなさ過ぎることも原因としてある。

今までは学園都市のルールに従い、行動し、時にルールの穴をつく対応をしてきた。

しかしこの世界で学園都市のルールや常識が通用するとはとても思えない。

また今後戦っていく上で学校のルールや校則は知っておく必要がある。どこまでが許されて、どこからが許されないのか。知っているのと知らないのでは大違いだ。

 

情報収集と買い物を含めて、今日は学校を徘徊することにしよう。

そのように決めた、次の瞬間だった。

 

ゴッッッッ!!と重いものと重いものがぶつかった鈍い音が響いた。

 

クラスが一気に静まり返る。

この音が男が立ち上がった時の音だと気づいた時には、男は壇上に立っていた。

 

一言で表すのなら不良。

肩まで掛かる赤髪。ネクタイはしっかり引き締まっておらず、ボタンの付け方も適当。

目つきは鋭く、今にも人を殺しそうな目だ。その男がいるだけで、怯む人だっているかもしれない。

故に注目せざるおえない。無視して行動することも、ここから出ていくことを許されない雰囲気が、クラス中を漂う。

 

男は不気味なぐらい静かなクラスを、真正面からぶち壊すかのように。

クラスメイトに対して、高らかに宣言した。

 

「今日から俺がこのクラスを支配する。命令に従わない奴は全て潰す」

 

嗤うように。

 

蹴落とすように。

 

殴り掛かるように。

 

「気に入らない奴は実力で俺を引きずり下ろしてみろ。俺を跪かせてみろ。全て返り討ちにしてやる」

 

『王』の支配が、始まった。

 

 




思いついた勢いで書きました。

Cクラスとフレンダがメインの話という作品です。

ちなみにギャラのところは適当です
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