ソードアート・オンライン 戦いに光る鬼 (一時連載休止)   作:かくてる

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ハマったので


1話 デスゲーム

 〘 このゲームの死は現実世界の死を意味する 〙

 

 そんな言葉を聞く事になるなんて、誰が知っていたのだろうか。

 俺、結城 鐘太(しょうた)はデスゲーム製作者本人、茅場晶彦からの告白にただ膝をついて絶望するしかなかった。

 キャラネーム、「ヴェル」として今日から、楽しくこのゲームをやっていこうと思っていた矢先だったのに。

 

「……何さ……それ…………」

 

 怒り、悲しみ。いや、この場合は怒りだけに身を任せていた。

 

「ふっざけんなよ!! 早く帰せよ! おい!」

 

 いくら叫んでも茅場には届かない。赤いフードの下に隠れている真っ黒の顔の表情すら読めない。

 涙で顔はぐしゃぐしゃで、先程まで作り上げていたキャラの容姿ではなく。いつもの俺。灰髪で、碧色の双眸、中学2年生らしい子供っぽい顔。

 

「なぁ! 帰してくれよ! 早く!」

 

 もう、茅場はいつの間にか消えていた。13歳という子供が、死に直面すれば、誰だって恐怖し、怯えると思う。だからきっとこの時の俺は正常な反応だと思う。

 

「う、うわああああああああぁぁぁ!!!」

 

 何もかもが崩れ去る。

 ゲームへの楽しみも、中学生としての道も。希望なんてあるはずがない。

 

 

 

 

 

 

 

 力の入らない足でフラフラと街を歩く。〘はじまりの街 〙はついさっきまで活気のある街だったのに、今となってはただの「牢獄」に過ぎない。

 

「……はぁ……」

 

 涙も涸れた。声も出し切った。虚無感に襲われた俺はただ放浪としていた。

 左の骨盤辺りにぶら下げている片手剣が邪魔に思えてくるくらい、俺にはもう生きる気力が無かった。しかし、この剣は生命線だ。手放すことなんてできない。

 

「……死ぬか……」

 

 どうやって死のうか。アインクラッドの外に出て飛び降りるのは、少し嫌だな。小さい頃から絶叫系とか無理だから。やっぱり、モンスターに殺されるのがいいのかな。

 

「……いや、怖すぎる」

 

 死に際の最後の光景が気持ち悪いモンスターなのは御免だ。せめて、自分の剣で死のう。

 そう決めた俺はフィールドへと歩き出したその時だった。

 

「……鐘太か?」

「え?」

 

 聞き覚えのある声。中学で、随分お世話になった先輩と声が似ていた。その人のお家にお邪魔して、色々なゲームで遊んだ。そして、このSAOでも、会って一緒に狩りをしようと約束もしていた。

 

「…………か、かっ……」

 

 俺は声が出なかった。嬉しさのあまり、目も潤み、体が震え出す。この時ほど、希望を持てたことはなかっただろうな。

 

 

 

「和せんぱぁぁぁぁぁぁい!!」

 

 

 

 

 そう、その人の名前は桐ヶ谷 和人。同じ中学で唯一無二の親友だった。1つ上の和先輩だが、年下の俺にも仲良くしてくれて、俺は初めて信用出来る友人が出来たと思っている。まぁ、和先輩がどう思っているかは知らないが。

 

「驚いたな、鐘太もSAOにいたのか……」

「はい……はぃ! ……良かった……和先輩がいて……」

「ああ、俺も嬉しいよ。とりあえず、どこかで話そうか」

 

 俺は和先輩と共に、近くのカフェに入った。プレイヤーは当然おらず、心のないNPCが対応をしてくれた。

 

「っと、そうだ。鐘太」

「はい?」

 

 そう言って、和先輩はウィンドウを開き、何かをポチポチと押している。すると、俺のウィンドウが自動で開き、何かの申請がやってきた。

 

「フレンド登録とパーティ結成の要請だ」

「……”キリト”……なるほど、”桐”ヶ谷 和”人”だからですね」

 

 凝った名前を考えるんだなと思いつつ、俺はその申請に即OKを出した。

 

「お前は……ヴェル……か。これは何で?」

「鐘って字があるので、鐘からベル。んで、ヴェルになったんすよ」

「へぇ……」

 

 互いに自己紹介を終え、改めてここでペアを組んだ。

 

「さて、ヴェル。これからどうする?」

「どうするって……この世界で死んだらリアルで死ぬって……本当なんすか?」

「どうやら本当らしい。現時点で、もう死者が出たようだ」

「っ!」

 

 息を呑む。茅場の言っていることに間違いはなく。その上、俺の解釈にも間違いはなかったようだ。違っていて欲しいと願っていたが、それは叶わないようだ。

 

「……もう、逃げられないんですね」

「そういう事だ」

 

 まだ信用出来る訳では無い。しかし、和先輩がそこまで言うのなら、いやでも信じるしかないのだ。今この瞬間から、俺は完全に死と隣り合わせの世界へ誘われたわけだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……とりあえず、今は何も動けない。少し時間が経ってから第一層のボス関連の話が浮かび上がるから、それまで死なない程度にレベル上げをしよう」

「…………え、ええぇ!? モンスターと戦うんですか!?」

 

 驚く俺に和先輩はクエスチョンマークを浮かべていた。

 

「? …………そうしないと、死ぬぞ?」

「うっ…………」

 

 当たり前のように呟く和先輩。そんな簡単に「死ぬ」なんて言わないで欲しい。まだこの状況を完全に呑み込めていない俺からしたら、恐怖でしかないからだ。

 

「……分かりました。幸い、和先輩も片手直剣ですよね。レベルはいくつですか?」

「今のところ……4だな」

「…………良かった。同じですね。お互いにレベル上げしていきましょう」

「ああ、それと、キリトな。ここじゃ、本名言うのはマナー違反だぞ」

「あ…………ああ、じゃあ、キリトさん」

 

 キリトさんに連れられ、俺は先程まで足を運ぼうと思っていたフィールドへ出向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 第一層ボスは、俺が不在の間にクリアされたようだ。というのも、キリトさんと共に行くつもりが、途中ではぐれてしまったのだ。

 

「ったく……キリトさんどこに行ったんだよ……」

 

 はじまりの街を探し回る。つい先程、第一層がクリアされたと全体に通達が回った。歓喜の渦の中、俺はただキリトさんの探していた。

 

「ま、まさかやられた……とか……」

 

 いや、余計な考えはよそう。ブンブンと首を振って、嫌な予感を吹き飛ばすと同時に、背後から声をかけられた。

 

「……鐘太?」

「え?」

 

 キリトさんかと思った。しかし、声音が全く違う。恐らく女性だ。それに、キリトさんはSAO内で俺の事を鐘太と呼ばない。

 懐かしい声だった。昔、離婚した時に生き別れした姉の声に似ているのだ。その名前は。

 

「……明日奈……姉」

 

 結城 明日奈。小学生の頃、母の結城 京子に離婚時に引き取られた俺の実の姉だ。

 

「うそ……本当に鐘太なの……?」

 

 近づく。一歩一歩本当に明日奈姉なのか確認しながら。

 しかし、顔は昔見た面影と綺麗に重なった。茶色の鮮やかな長髪と双眸。本当に俺の姉なのか疑うほどの美貌を持っている。

 

「明日奈姉!!」

 

 俺は明日奈姉の元まで駆け寄る。するとその途端、俺は明日奈姉に抱き寄せられた。

 

「良かったよぉ……鐘太がいてくれて…………」

「ああ……俺もだよ……明日奈姉……」

「あんまり容姿変わってないわね。ちゃんとご飯食べてるの?」

「もりもり食べてるさ、明日奈姉に負けないくらいにはね」

「わ、私はそんな食べていません!」

 

 明日奈姉の住んでいる世田谷区とは遠く離れた埼玉県川越市にいるので、会う機会なんてほぼ無かった。だからこそ、この再会は何よりも嬉しかった。

 

 2人でひとしきり再会を楽しんだ後、俺は明日奈姉と共に段差に座った。

 

「えっ!? ボス戦参加したの!?」

「ええ、ある人とパーティ組んでね」

「へぇ、誰?」

「「キリト」っていう人なんだけど、べーたてすたー? っていうものらしくて、さっき他のプレイヤーからすっごい非難されてたの」

「…………キリトさんが!?」

「あら、知り合い?」

「知り合いも何も、1番仲のいい先輩なんだよ」

「あら、そうなのね」

 

 先程から街ゆく人の口から聞こえる「ビーター」というのはキリトさんを指しているのだろうか。

 

「ああ、そういえばキリトさんベータテスターだったな……」

 

 大方、ベータテストで、恐らく攻撃パターンを知っていたのだろう。それで、きっとメンバーに教えるタイミングが無くて、結局メンバーから非難される羽目になったということだろう。

 

「なるほどね……ベータテストとチーターで「ビーター」か。いいネーミングセンスだなぁ…………で、肝心のキリトさんは?」

「なんだか、仲良くなる前にどこかへ行っちゃった」

「ああ……そうなんだ……」

 

 次に俺がキリトさんと会うのは、俺のレベルが80を超えてからだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……せぁぁ!」

 

 単発重攻撃、〘ヴォーパルストライク〙。一体しか居ないザコ敵にはこのソードスキルが1番楽に倒せる。

 今俺がいるのは第56層迷宮区。ペアを組んでいた友人と予定が合わなかったので、今日はソロでレベル上げをしに来た。

 SAOが開始されて約1年半。現在は69層までクリアされている。俺は攻略組にも加入していないので、ココ最近はボス戦にすら参加していない。

 装備もだいぶ整った俺はどこのギルドにも入らず、友人と2人でSAOを生き抜いていた。

 明日奈姉に〘KoB ー血盟騎士団ー〙に入らないかと誘われたが、あいにく俺は人とあまり関わりたくないので、それには断ることにした。

 

「こんなもんか……」

 

 素材と経験値が程よく集まり、今日はもう帰ろうとしていた。その時だった。

 

「きゃあああ!!」

「うわぁ!?」

 

 遠くから聞こえた悲鳴に俺はビクッと肩を震わせた。

 

「な、なんだよもう……」

 

 割と冗談ではない悲鳴だったので、俺はすぐさま走り出す。56層はあまり迷わないので楽だ。すぐにモンスターにいる場所を割り当てられる。

 

「だ、大丈夫!?」

「あ、ありがとうございます!」

 

 倒れていたのは、赤髪の少女だった。体を見ると、色々と傷が付いており、〘HPバー〙もイエローゾーンまで達していた。

 

「とりあえずこれ飲んで!」

 

 回復ポーションを渡し、敵に剣を向ける。敵はサムライ系のモンスター。

 

「お、おいおい……56層に置いていいレベルじゃないんじゃないの?」

 

 よく見ると、56層にいた他のモンスターよりも色も違い、剣の攻撃力も高そうだ。最近起きている、モンスターのイレギュラーとはこのことだろう。

 俺の愛剣〘インビジブルメギス〙が紫色に染まり出す。

 片手直剣最上位ソードスキル〘ノヴァ・アセンション〙を繰り出す。

 

「せぁぁああ!!」

 

 10連撃のこの技は、片手剣熟練度が最大値の1000に達したら習得ができる。そう、言わずもがな、俺は片手直剣はマスターしているのだ。

 そして、俺の剣〘インビジブルメギス〙は71層ボスからドロップした唯一無二の最強の剣だ。

 恐らく、攻撃力は並の剣士よりも強い自信がある。あっという間に、10連撃は終わった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 敵の〘HPバー〙は全損していた。チリのように消えていくモンスター。俺はそれを確認して、腰にある鞘に剣を収める。

 

「えっと……大丈夫?」

「あっ、はい! 大丈夫です! ありがとうございました!」

「……君、ギルドには?」

「…………恥ずかしながら……入ってないのですよ……」

 

 赤い髪は肘の高さほどまで伸びており、明日奈姉とよく似た茶色の瞳。単刀直入に言おう。

 

 可愛すぎる。

 

 いや、明日奈姉よりも可愛いんじゃないだろうか。細身の体で、おそらく俺と同じく片手剣使いだろう。あまりレベルは高そうには見えない。

 

「そっか…………まぁ、気を付けてね」

 

 ここで名前とか聞いてもおかしくないかな。フレンド登録しようって頼んでも、変じゃないかな。

 くそっ! ここでヘタレ発動かよ結城 鐘太! お前もうレベル85だぞ! 何に怯えてるんだ。女性経験か? そんなもん無えだろう。

 くっそぉ! もう歩き始めちゃった。俺諦めてその場を後にした。きっと、この先もどこかで会える気もするから。

 俺が角を曲がり、姿が見えなくなる寸前、女の子の方から声をかけられた。

 

「あっ、あの!」

「ふぁ……ふぁい!」

 

 噛んだ。え、何その噛み方。アニメかよ。

 しかし、女の子はそれに気づかなかったのか、そのまま口を開く。

 

「お、お名前と……フレンド登録を……したいのですが……」

「え、ええと…………よ、喜んで……」

 

 これで返事の仕方合ってる? いや、それよりも嬉しさが勝る。まさか、こんな可愛い女の子の連絡先(フレンド)を知れるなんて、明日奈姉に自慢しよ。

 俺はウィンドウから、彼女の名前を見る。しかし、それよりも先に、即○ボタンを押した。

 こうして、俺のフレンドリストに彼女の名が加わった。

 

「えっと……ヴェルって言います」

 

 とりあえず、右手を差し出し、握手を求める。これから友人となる訳だからこれくらいは必要だろう。え? いるよね? 大丈夫だよね? 

 すると、彼女は直ぐに同じ右手を差し出してくれた。

 

 

 

 

 

「レインです! よろしくお願いします!」

 

 

 

 

 初めてレインさんと会った時のこの輝かしい笑顔は今思い出してもニヤケてしまう。

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