Artistic Shiny Night 作:ランドルト流体
PM11:00、八重洲線。
駐車場からそろり、そろりと二台のマシンが動き出す。
「果穂は私のインテに乗るのは久しぶりだっけ?」
「はい!マニとマフラー替えてからは初めてです!アイドリングでも響くようになりましたね!ちょこ先輩!」
「えへへ、そうかなあ? 高回転での抜けが気持ちよくなったかと!」
神田橋JCTへと向かう園田智代子の操るDC5インテは、零1000チャンバーにスプーンのエキマニ、N1マフラーとNAファインチューンに留まる。自分の身の丈に合ったパワーで頑張るという、彼女なりのポリシーからくるものだ。チャンピオンシップホワイトに、ブロンズのP1レーシングにZⅢというシンプルな出で立ちてあるが、C1ではキレのあるコーナリングを見せる。
「ったく、チョコのやつ、シェイクダウンなんだからあんま調子のるなよ??アタシだって、やっとR1Rの皮むきすら終わったところなんだからよー」
インテの後ろに着くは樹里の駆るイエローのEK9。こちらも吸排気系は智代子と大差ないが、戸田レーシングのクロモリフラホや、1.5ウェイの機械式デフを装着している。後ろからは、凛世と二人で苦労して付けたロールケージの斜交バーが誇らしげに見える。もちろん内装なんてものは無い。リアバンパーも大胆にカットしてあるので、このまま環状に持っていっても遜色ないだろう。
二台の
「っ!!」
気づくと樹里の後ろに31のスイスポが忍び寄っていた。完全に前の二台を意識してるようだ。
「同じFFのNAとして、引くわけには行かねーよな!!」
右側を巡行速度で走っているインテを左から3速で抜くと、後ろのスイスポもついてきた。やはりその気なんだろう。
「わっ、樹里ちゃんが行きました!」
「私もついていきたいけど、樹里ちゃん速いからな~」
「ちょこ先輩、無理はきんもつです!!」
「だよね~ まだタイヤも剥けてないし、今回はパスということで…」
インテを抜いた二台は、霞が関を抜け赤坂ストレートを踏み抜く。夜中のオフィス街にVTECが甲高く響き渡る。
3速9300回転からの4速。それでも6300回転という超高回転エンジンの前には遮るものはない。しかし、後ろのスイスポも負けじとついて来る。
「くそっ、思ったよりペースがあげらんねえ…!」
赤坂ストレートを抜けてからは、思ったほどアザーカーが少なくなく、おいしいところでアクセルを開けられない。煮え切らないでいるうちに、ぴったり張り付かれてしまう。二台は一ノ橋JCTに差し掛かる。アウト側からの合流を考え、左に寄る樹里。次の瞬間、待っていたとばかりに右からスイスポが並びかける。横並びのまま左コーナーをターンしていく。
「くっ…喰ってくれよ…!!曲がってくれ…!!」
ラインの狭く脱出速度があまり乗らないイン側の樹里は苦しい。フロントが喰わなくなれば、スイスポも巻き込み壁に一直線である。喰ってくれと祈りながらステアを切る。軋むボディ、斜になる視線。歯を食いしばって食いしばってやっと出口が見えた。
「!!! よっし!!」
ギィャアァァァァァ!!!!!!
「っっ!!?」
樹里がアクセルを戻すとき、突然右から強烈なスキール音が聞こえた。タイヤを鳴らしながら、ふらふらとアウトに膨らんでいくスイスポ。樹里は加速体制に入り、立ち上がるがスイスポはどんどん膨らんでいく。どうやら立ち上がりにある合流レーンをエスケープにして立ち上がるようで、アクセルを抜かない。樹里のEKが2/3だけ前に出る。
その時だった。
合流レーンからハイエースが駆けがってくる。左から突っ込んでくるスイスポにビビッてブレーキを踏むも、時すでに遅し。
結果なんて、火を見るより明らかだった。
どうにもできないスイスポは、右サイドをハイエースのフロントにぶつけ、向きを変えて壁に一直線。
ドガッシャァァ!!!!
激しく壁に激突してから、数回横転して静止する。
ぶつけられたハイエースは、右サイドを壁に擦り付けながら停止した。
余りにも一瞬の出来事であったので、樹里はバックミラーでそれとなくぶつかるところしか確認することしかできなかった。山とは違い、不用意に助けようと車を停めることもできない。相手の判断ミスだ、そうだと自分を納得させ、走り去る。しかし、心にわだかまりが生まれ消えなかった。
暫くして、火の手が上がった。