Artistic Shiny Night   作:ランドルト流体

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Chapter 3

PM11:00、八重洲線。

駐車場からそろり、そろりと二台のマシンが動き出す。

 

「果穂は私のインテに乗るのは久しぶりだっけ?」

「はい!マニとマフラー替えてからは初めてです!アイドリングでも響くようになりましたね!ちょこ先輩!」

「えへへ、そうかなあ? 高回転での抜けが気持ちよくなったかと!」

 

神田橋JCTへと向かう園田智代子の操るDC5インテは、零1000チャンバーにスプーンのエキマニ、N1マフラーとNAファインチューンに留まる。自分の身の丈に合ったパワーで頑張るという、彼女なりのポリシーからくるものだ。チャンピオンシップホワイトに、ブロンズのP1レーシングにZⅢというシンプルな出で立ちてあるが、C1ではキレのあるコーナリングを見せる。

 

「ったく、チョコのやつ、シェイクダウンなんだからあんま調子のるなよ??アタシだって、やっとR1Rの皮むきすら終わったところなんだからよー」

 

インテの後ろに着くは樹里の駆るイエローのEK9。こちらも吸排気系は智代子と大差ないが、戸田レーシングのクロモリフラホや、1.5ウェイの機械式デフを装着している。後ろからは、凛世と二人で苦労して付けたロールケージの斜交バーが誇らしげに見える。もちろん内装なんてものは無い。リアバンパーも大胆にカットしてあるので、このまま環状に持っていっても遜色ないだろう。

二台の楽器(VTEC)は神田橋からC1内回りに入り、三宅坂JCTまでゆっくり流す。時間のわりに速そうなクルマがちらほら走っている。

 

「っ!!」

 

気づくと樹里の後ろに31のスイスポが忍び寄っていた。完全に前の二台を意識してるようだ。

 

「同じFFのNAとして、引くわけには行かねーよな!!」

 

右側を巡行速度で走っているインテを左から3速で抜くと、後ろのスイスポもついてきた。やはりその気なんだろう。

 

「わっ、樹里ちゃんが行きました!」

「私もついていきたいけど、樹里ちゃん速いからな~」

「ちょこ先輩、無理はきんもつです!!」

「だよね~ まだタイヤも剥けてないし、今回はパスということで…」

 

 インテを抜いた二台は、霞が関を抜け赤坂ストレートを踏み抜く。夜中のオフィス街にVTECが甲高く響き渡る。

3速9300回転からの4速。それでも6300回転という超高回転エンジンの前には遮るものはない。しかし、後ろのスイスポも負けじとついて来る。

 

「くそっ、思ったよりペースがあげらんねえ…!」

 

 赤坂ストレートを抜けてからは、思ったほどアザーカーが少なくなく、おいしいところでアクセルを開けられない。煮え切らないでいるうちに、ぴったり張り付かれてしまう。二台は一ノ橋JCTに差し掛かる。アウト側からの合流を考え、左に寄る樹里。次の瞬間、待っていたとばかりに右からスイスポが並びかける。横並びのまま左コーナーをターンしていく。

 

「くっ…喰ってくれよ…!!曲がってくれ…!!」

 

 ラインの狭く脱出速度があまり乗らないイン側の樹里は苦しい。フロントが喰わなくなれば、スイスポも巻き込み壁に一直線である。喰ってくれと祈りながらステアを切る。軋むボディ、斜になる視線。歯を食いしばって食いしばってやっと出口が見えた。

 

「!!! よっし!!」

 

ギィャアァァァァァ!!!!!!

「っっ!!?」

 

樹里がアクセルを戻すとき、突然右から強烈なスキール音が聞こえた。タイヤを鳴らしながら、ふらふらとアウトに膨らんでいくスイスポ。樹里は加速体制に入り、立ち上がるがスイスポはどんどん膨らんでいく。どうやら立ち上がりにある合流レーンをエスケープにして立ち上がるようで、アクセルを抜かない。樹里のEKが2/3だけ前に出る。

 

 その時だった。

 

 合流レーンからハイエースが駆けがってくる。左から突っ込んでくるスイスポにビビッてブレーキを踏むも、時すでに遅し。

 

 結果なんて、火を見るより明らかだった。

 どうにもできないスイスポは、右サイドをハイエースのフロントにぶつけ、向きを変えて壁に一直線。

 

ドガッシャァァ!!!!

 

激しく壁に激突してから、数回横転して静止する。

ぶつけられたハイエースは、右サイドを壁に擦り付けながら停止した。

 

 

余りにも一瞬の出来事であったので、樹里はバックミラーでそれとなくぶつかるところしか確認することしかできなかった。山とは違い、不用意に助けようと車を停めることもできない。相手の判断ミスだ、そうだと自分を納得させ、走り去る。しかし、心にわだかまりが生まれ消えなかった。

 

暫くして、火の手が上がった。

 

 

 

 

 

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