私達は、微小特異点の修正のため、現代の――かつて第六特異点だった場所にレイシフトしたはずですが……ここは、一体どこなんでしょう……。
見慣れない魔物はたくさんいますし、襲ってくるものもいるのですが、あの黄色いコーギーのような魔物などは特に何をするでもなく近寄ってきて……人懐っこく尾を振っていたのでつい撫でてしまいました。
……アルトリアさんやバーサーカーのアルジュナさんも言っていましたが、ここはかなり大気中の魔力の濃度が高いですね。
文明の進歩と神秘の濃度は反比例することが多くあります。ここから見える建物や、通りすがる人々の服装から見るに、文化的には私達の世界、時代と同じくらいに進んでいるはずです。なのに、ここは……これまで私達が旅をしてきた中で言えば、少なくともキャメロットと同程度の濃度はあると思います。
それに、ここを歩く人々は、そこら中にいる魔物に驚いた風でもありません。襲われることもあるのに、です。この世界の人々にとって、ここで起きるようなことは日常的なこと、なのでしょうか……。
……。
私達は特異点だと思ってレイシフトしましたが、ここは、本当は、もしかして――。
……また私達、全部――わぷ!
な、なんですか先輩! 急に――あっ、だめです、そんな、やめてくださ、頬を肉球でこねるのはやめてください! ああっ! コーギー型の魔物のほわんとした顔が間近に……! ああ……っ!
……。……ふう。
……気を使わせてしまって、すみません。
「……一緒にいるよ、マシュ」
――はい。何かあったときは、このマシュ・キリエライト、先輩のサーヴァントとして……ともに戦います。
では、始めましょうか、マスター。
「今日もカレーで優勝していくわね」
はい! では具材を……リンゴは先に切っておくんですね。これは……小さな、モモ、でしょうか。一口サイズでかわいらしいです。そしてこの……なんでしょう、曲がったきのみは……マンゴーのように甘いきのみ? 確かに、この色合いは甘そうな気がしますね。……こちらはカカオによく似ていますが、これは中身だけでなく、この固い外殻ごとですか? なるほど、加熱すると深みのある味になると……。こちらはレモネードブッシュのような形をしていますが……すんすん。エレガントな香りがします!
「うちわをどうぞ」
お預かりします。では、私はこちら側、先輩は向こう側から、ですね。均一に風を送り、素晴らしい炎にしてみせましょう。
「さあ――あおげ!」
うおおおおーー! あおぎます! どうですか先輩! 私ちゃんとあおげていますか! そうですか!ありがとうございます! 先輩の風もとても良いと思います! しかしうちわはいいですね! 軍配のようです! かつての特異点を思い出しますね! ぶおおおおーーぶおおおーーー!
次! おたまをどうぞ!
「まぜろ!」
まぜます! フォーウ! 調理もマシュ・キリエライトにおまかせください! ガチャンガチャン! おたまが! 先輩と私のおたまが! 鍋の中で交戦中です! 料理とはすさまじいですね! 熱っ! 大丈夫です先輩! この程度は想定内です! 戦闘続行です!
「……まごころ こめて!」
もちろんです! 以前ライブラリで見たので正しい知識は得ています! 両手の人差し指と親指で……こう! おいしく……なってください!
……完成しました! どうでしたか、先輩? 私のまごころ注入……我ながら、完ぺきだったと思います!
「それより、冷やさないと……」
少しはねたぐらいなので大丈夫ですよ、お気になさらず。
「大丈夫じゃないよ」
……ありがとうございます。ですが、水場は遠いですし……おや? 何やら青い生き物がこちらに近づいてきますね……。ぬおっとしていて……敵意はなさそうですが。カレーのかおりにつられてきたのでしょうか?
あっ、私の手を……ひゃあ!? つ、冷たい! ……でもひんやりして、気持ちいいです。もしかして、冷やしに来てくれたのでしょうか?
「そうかもしれない……。ありがとう!」
ありがとうございます! よければ、お礼を……あっ、去っていきます……。優しい生き物なんですね。
では、味見をしましょう。
ぺろり。……! リンゴときのみの味が混ざり合って……フルーティで濃厚な甘み! それでいて、後味としてカレー全体を引き締めるような辛味が残って……。先輩も、どうぞ。
「……あまくて美味しい!」
ふふ、お二人が帰ってくるのが待ち遠しいですね。
ご飯が炊ける香りに囲まれながら、ことこととカレーを煮込む……これはこれで、いい経験ですね!
とくせんリンゴ×1
モモン×2
マゴ×2
オッカ×1
ロゼル×1
できたもの:あまくちアップルカレー
おいしさ:ファブニール級!