人間という生き物はどこまでも不器用だ。
理性によって本能のままに生きることが出来ない。
それ故に自分にとって何よりも近くにあって大切なものに気づかない。
いや違う、気づいていても直接言葉にするのがどうにも難しいのだ。
そして失ってから後悔する。
本当に馬鹿馬鹿しく思えてくる話だ。
「最後に...貴方がが私の...傍...に...いてくれ...て」
「頼むッ...もうこれ以上は喋らないでくれ!」ポロポロ
でも、だからこそ俺は思う。
「よかっ...た...」ニコッ
「ーーーーッッッ...!!!」
ー人間はどこまでも難しくて儚い生き物だとー
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俺はまた同じ夢を見ていた。
「はぁー...もういい加減忘れろよ...馬鹿らしい」
また自分の見た夢に対して後悔の念を抱く。
だがまだ目を開けてから10数秒。まだ意識は覚醒しきってはいない。
よって、二度寝確定。
二度寝してさっさと忘れよう。
と、思った矢先に徐ろにカーテンが勢いよく開けられる。
初夏の日差しが直に差し込んできて、細めていた目をさらに細めて最早閉じてしまっていた。
「おい、起きろクソ兄貴。もうそろそろ昼になるんだが、昨日の約束はどうしたんだよ」
「っ...あぁ、約束ね、はいはい、ちゃんと覚えていますとも」
何とも実に目覚めの悪い朝だ。
ったく、モーニングコールの大切さを知らんのか。
朝一番の気分でその日1日のモチベーションが大きく左右されるというのに。
でも約束とあっては流石に仕方がないのでゆっくりと身体を起こし、ベットから足だけ下ろして話を聞く体制に入る。
「んで?約束とはなんのことでしたっけ」ハハッ
「やっぱり覚えてねぇのかよ。ちょっと顔が良くて村の女から評判が良いからって、笑って誤魔化せば許されると思うなよ?それは妹である私には効かないぞ」
「さ、さぁ?なんのことだかサッパリだネ!」
当然俺は約束なんて頭からスッポリと抜けてしまっていた。
俺はそういう人間なのだ。
だから俺は内心、仕方がないの一言で片付けることにした。
「チッ...ウザ...まぁいい、私は見た目通り寛大な心の持ち主だからな、今回は、向かいの家のばあちゃんが作ったシナモンパイを貰ってくるだけで許してやるよ」
「え?どの辺が寛容「何か言ったか?」ニコ シナモンパイね、はいはい了解しましたよー」
一瞬笑顔から感じた殺気はきっと気の所為だろう。そう、きっと気の所為だろう。
「い、いやそうじゃなくて、肝心な約束の内容を教えてくれよ」
「はぁ、我が兄ながら情けないったらありゃしねぇ、お前から思い出す気はサラサラ無いようだな、もういっそ私は清々しいしいよ」
そんな事言われても、もとより俺にそんなプライドなんてものはありはしない。
よってこれもスルーする。
「今日は母さん達がいないから私が料理を作る代わりにお前が街の方まで出て買い出しに行く約束だろ?」
「あー...」
そう言えばそんな約束もしたような気がする。
「わかった。んじゃさっそく今から支度するから」
「うーん...?」
「何だよ、いきなり首傾げたりなんかして」
「いや、お前にしてはやけに素直だなーっと思って」
「はぁ、お前から言い出したんじゃないか、流石の俺でも約束ぐらいは守るさ。っていうか俺をなんだと思ってるんだよ」
「情けない童貞ポンコツクソ兄貴」
「......」ピキピキ
一つだけひっじょーに男のプライドに傷をつける単語が混じっていたが、実際その通りなのが現実なのであった。
年齢的にもそろそろ結婚だとか色々考えなきゃいけないのは分かっているのだ。
だが『お前も馬鹿にできないだろ』とは流石に言い返せない現状どうすることも出来ないので、苛立つ気持ちをぐっと抑えて、妹の横を通り過ぎて洗面台へと向かい、鏡の前へ立つ。
「...」
今は寝起きということも相まって、普段以上になよなよしてて情けない顔が更に酷かった。
翡翠色の瞳だけがただひたすらに輝いていた。
少し長めに伸びたツヤのある栗色のくしゃくしゃになった髪をかきあげて、井戸から汲み上げた冷水を顔にぶつける。
多少心臓には悪い気がするが、早く目を覚ますという意味ではこれが1番効果的な気がする。
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身だしなみを整え、街へ出る準備を終えて家を出る。
我が家は狩りをして稼いでいるため、街から少し離れた森の近くに小さい村に家があったりする。
「んじゃ行ってくるな」
「ん、いってらっしゃい」
「え、普通にいってらっしゃいって言われたの数年ぶりぐらいな気がするんだが...どうしたんだ?変なきのこでも食ったのか?」
「うるさいな!早く行けよ!」ガチャン!
「あ、閉められた」
あんな素直な妹は久しぶりだな。
数年ぶりに戦いから帰ってきた兄がやっぱり少し恋しかったからとか?いやそれはないか。
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街に出てから買い出し自体は思ったより早く終わってしまった。
「なんかこのまま帰るのもなぁ...」
グウゥー...
自分の腹から情けない音が響いた。
「そういえば朝から何も口に含んでないんだよな」
せっかく街に出てきたのだからどうせなら、とそこら辺の食事できる場所に寄ってから帰ることにした。
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とりあえずナポリタンが美味しいとそこそこ有名な店がこの街にあるといつだったか聞いたので、そこに寄ることに決めた。
ドアを開けるとお昼時はもう過ぎたからか、そこそこ人気な店でも席は結構空いてる場所が多かった。
個人的には、こういう場合って逆にどこに座るか迷ってしまうのであまり好ましい状況ではないのだ。
「...ん?あの人は」
ふと1つの席に座って本を読んでいる人物に目がいった。
何となく、いや、その人と少し話をしたくて無意識に自分の体はその席へと向かっていた。
「あの」
近くまで行ってとりあえず声をかけてみた。
「はい?」
その人もこちらに気づいて本を読むのを一度やめ、自分と目が合う。
「あぁ、やっぱり」
「あ、貴方は...」
やはり人違いではなかったようだ。
肩の下まで伸びた絹のようなクリーム色の髪に、少し知的に見えなくもないが少しだけまだ少女らしさが残る横顔。
普段から見ていた魔導ローブではなく、この街に溶け込むようなカジュアルな格好だったため少し気づくのに時間がかかったが、間違いなく彼女は前に旅した大切な仲間の1人だ。
「相席しても?」
「は、はい!どうぞ」
許可を貰って、両手で抱えていた食材を席の隣に置いて彼女の真向かいに座り、早速ナポリタンを注文した。
「えっと、その、まずはお久しぶりです」
「久しぶり...って、クスッ...なんでそんなに畏まってるのさ」
「な、なんでってそりゃあ、あんなことがあったあの旅を終えてから会うのが初めてだからですよ!」
と、彼女はとても焦りながらそう言った。
「あー...なるほどね、まぁ確かに気を遣わせちゃうよな、ごめん。でも俺自身はもう割り切ったつもりでいるから、もう気にしないでくれよ」
「そう言われてもですね...いえ、なんでもないです」
何とか彼女は納得してくれたようだ。いや、ほんとに納得してくれたのだろうか?まぁ今はこれでいいか。
「というか貴方は何故この街にいるのですか?」
「何故ってそりゃあ俺この辺の生まれだってこと言ってなかったっけか」
「うー...確かそんなことも言ってたような...?」
覚えてなかったんかい。
「そっちこそ何でこの街に?まぁ何かしら用があって来たんだろ?」
「あぁ、話すと長いんですけど、その私実はあの旅を終えたあと、魔導協会を脱退したんですよ」
「へぇー...って魔導協会を脱退した!?なんでまた?」
「こ、声がでかいです!本来なら今ここで話せるような内容じゃないんですが...幸い今は他の人も少ないので特別にお話します」
続きは気分で書きます。