とある魔術の転生者《リンカーネイター》   作:牛丼肉なし

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ほぼ主人公出てこない。


02話 魔術師は塔に降り立つ《2》

 

 

 

 お腹が空いた、とのインデックスの発言により、蒼空達三人は隣にある蒼空の部屋へと移動した。というのも上条の部屋にある食べ物が全滅していたからである。さらにエアコンも機能が停止しており、かなり辛い環境だったので蒼空の部屋へと移動したのだ。

 

 

「ご馳走してくれてありがとうなんだよ。そらはいい人なんだね」

 

 

 蒼空が買い溜めていた冷凍食品の炒飯をペロリと平らげたインデックス。

 

 

「どういたしまして」

「でさー、何だってお前はベランダに干してあった訳?」

 

 

 何故か自分も蒼空の部屋で朝ごはんを食べた上条は再びインデックスに問い掛ける。

 

 

「別に干してあった訳じゃないんだよ?」

「じゃあ何なんだよ? 風に流されて引っかかってたんかお前」

「……似たようなものかも」

 

 

 上条は冗談のつもりで言ったのだが、インデックスからは似たようなものと返ってきた。

 

 

「落ちたんだよ。ホントは屋上から屋上へ飛び移るつもりだったんだけど」

 

 

 屋上? と蒼空と上条は天井を見る。

 

 

 この辺りは学生寮が建ち並ぶ一角だ。蒼空と上条が暮らすこの八階建ての寮と同じようなビルがずらっと並んでいて、ベランダから見れば分かる通りビルとビルの隙間は二メートルぐらいしかない。確かに、走り幅跳びの要領で屋上から屋上へと飛び移ることも出来るとは思う。しかしだ、

 

 

「八階だぜ? 一歩間違えれば地獄行きじゃねーか」

 

 

 上条の言葉通り、誤って落下してしまった場合はタダでは済まないだろう。

 

 

「うん、自殺者にはお墓も立てられないもんね」

 

 

 とインデックスは良く分からない事を言って、

 

 

「けど仕方なかったんだよ。あの時はああする他に逃げ道がなかったんだし」

「逃げ、道?」

 

 

 不穏な言葉に蒼空も上条も思わず眉をひそめると、インデックスは子供のように「うん」と言って、

 

 

「追われてたからね」

 

 

 一瞬、時が止まったかのように静かになった。

 

 

「ホントはちゃんと飛び移れるはずだったんだけど、飛んでる最中に背中を撃たれてね」

 

 

 インデックスは笑っているみたいだった。

 

 

「ゴメンね。落っこちて途中で引っかかっちゃったみたい」

 

 

 自嘲でも皮肉でもなく、ただ上条と蒼空に対して微笑みかけるために。

 

 

「撃たれたって……」

「うん? ああ、傷なら心配ないよ。この服、一応『防御結界』の役割もあるからね」

 

 

『防御結界』って何だろう? 防弾チョッキのことかな? と、蒼空と上条が頭にハテナを浮かべていると、インデックスは新しい服を見せびらかすように立ち上がって回転してみせる。その様子は確かに怪我人には見えない。と言うか、ホントに『撃たれた』のだろうか? 何もかも虚言妄想ウソっぱちの方が現実味があるように思う。

 

 

 しかし、インデックスというこの少女が上条の部屋のベランダに引っかかっていたのは確かなのだ。蒼空からするとらしい、となるが。

 

 

 もし、仮にだ。インデックスが言っていることが本当だとして、彼女は一体『誰に』撃たれたと言うのだろう。

 

 

 蒼空と上条の二人は考える。八階の屋上から屋上へと飛び移るその行為がどれだけ覚悟のいることなのかを。運良くベランダに引っかかっていたという事実を、行き倒れという言葉の裏を。

 

 

 追われていたからね、そうやって微笑んで見せたインデックスの作る表情の意味を。

 

 

 二人はインデックスの事情を知らないし、断片的な言葉の意味も良く分からない。恐らく、インデックスが一から十まで説明したって半分も理解出来ないだろう。

 けれど、たった一つ、七階のベランダに引っかかっていたという、一歩間違えばアスファルトに叩きつけられていたという現実だけは理解することが出来た。

 

 

 上条は一度大きく深呼吸をする。

 

 

「……それで、一体ナニに追われているんだ?」

 

 

 深呼吸と共に浮かんでいた疑問を飲み込んだところで、とりあえず一番気になるところを聞いてみる。

 

 

「うん……何だろうね? 薔薇十字か黄金夜明か。その手の集団だとは思うんだけど、名前までは分からないかも。……連中、名前に意味を見出すような人達じゃないから」

「連中?」

 

 

 今度は蒼空が神妙に聞く。連中ということは相手は集団で、組織だ。うん、と追われているインデックスは冷静に、

 

 

「魔術結社だよ」

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

「まじゅつって……、はぁ、なんじゃそりゃあ!! ありえねぇっ!!」

 

 

 一瞬の間の後に、すぐ隣で響いた上条の叫びに蒼空は思わず耳を塞ぐ。

 

 

「は、え、アレ? あ、あの、日本語がおかしかった、の? 魔術だよ、魔術結社」

 

 

 当のインデックスは、上条の予想外の反応に戸惑っているようだ。

 

 

「英語で言われるとさらに意味が分からん。なに、なーに? それって得体の知れない新興宗教が『教祖サマを信じない人には天罰が下るのでせう』とか言ってお薬飲ませて洗脳したりする危ない機関の事? いやいろんな意味で危険なんだが」

「……そこはかとなく馬鹿にしてるね?」

「あー」

「……そこはかとなく馬鹿にしてるね?」

「────ゴメン、無理だ。魔術は無理だよ。俺も発火能力とか透視能力とか色々『異能の力』は知っているけど、魔術は無理だ」

「……?」

 

 

 インデックスは小さく首を傾げた。

 

 

 恐らく上条が科学万能主義の人間なら『世の中に不思議な事なんて何もないっ!』と否定されると思っていたんだろう。

 

 

 だけど、上条の右手には『異能の力』が宿っている。

 

 

 幻想殺しという、それが常識の外にある『異能の力』であるならば、たとえ神話に出てくる神様の奇跡でさえも一撃で打ち消す事の出来る力を。隣にいる、何故かこちらを恨めしそうな目で見てくる蒼空だってそうだ。『異能の力』をその身に宿している。

 

 

「学園都市じゃ超能力なんて珍しくもねーんだ。人間の脳なんざ静脈にエスペリン打って首に電極貼り付けて、イヤホンでリズム刻めば誰だって回路開いて『開発』できちまう。一切合切が科学で説明できちまうんじゃ誰だって認めて当然だろ?」

「……よくわかんない」

「当然なの! 当然なんだよ当然なんです三段活用!」

 

 

 そう言った上条の頭をスパーンと蒼空がハリセンで叩く。

 

 

「な、何を……」

「さっきから耳元で大声出しすぎなんだよ。ちょっと落ち着け。ちなみにこのハリセンはギャグ的活用です」

 

 

 どこからともなく取り出したハリセンを持って蒼空はそう言った。

 

 

 

 

 

 


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