ゴンになったのでクソ親父をぶん殴りに行く 作:GON2929
くじら島にある唯一の船乗り場。
ガヤガヤと波乗りたちが出向に向けて用意し、周囲はひどく騒がしい。
そんな中、屈強な男達の中を場違いな一人の少女が軽快な足どりで進む。
そして船の船員らしき乗組員に声をかけた。
「あの、すみません」
「はいよ、どうした」
「“私“も、船に乗りたいのですが」
「なんだと」
「これ、ハンター試験の受験票です」
ペラりと一枚の紙を差し出す。
船員は、この船が過酷と言われるハンター試験へ向かうルートの一部、そう知っている数少ない人間だった。
毎年沢山の死者を出すハンター試験。
それをこんな小柄な少女が生き延びれるとは思わなかった。
しかし…
「あぁ、乗りな」
少女は、何かを強く目指した決意の表情をしていた。
きっと己が考えているよりハンターにならなければいけない理由があるのだろう。
そんな少女は頭の中で
「(ミトさん、やっぱり来てくれないか)」
育ての親の事を考えていた。
ミトさんから了承を得たゴンは今日、ようやく試験会場へ行く船に乗り込もうとしていた。
ミトさんならきっと見送りに来ると思ったが、彼女は現れなかった。
昨日、彼女は塞ぎ込むように自身の部屋から出てこなかった。
そのためゴンは一昨日からミトさんを見ていない。
そんなに嫌だったの、ミトさん。
私の顔も見たくないぐらい。
諦めて船に乗り込もうとしたその時
「ゴン!!」
聴き慣れた声が自分の名を呼んだ。
「ミトさん!!」
その声を聞き慌てて踵を返す。
急いで走ってきたのだろう、彼女はぜぇぜぇと大きく息を吐いていた。
「ごめんね、ゴン。遅れちゃって」
「ううん、来てくれただけで嬉しいよ」
にこりと、ゴンはミトさんに微笑みかけた。
ミトさんの表情は曇ったままだ。
「ごめんなさい……私ゴンに嘘ついちゃった。
ジンがゴンを捨てたんじゃないの。
私が裁判であなたの養育権を奪いとったの」
「うん、ウソだって気付いてた」
ミトさんは私に嘘をつく時、絶対に私の顔を見ない。
産まれた時から育てられた私は知っている。
唯一ある彼女の可愛い欠点だ。
「それだけじゃないの」
「え?」
ミトさんはゴンの肩を持つと、泣くのを堪えるように顔を伏せた。
「私、あなたが女の子で良かったって思ってた」
「それってどういう意味?」
「……バカよね、男でも女でもゴンには代わりはないのに。
女の子なら、あのジンの血を引いていても、ハンターになるなんて言い出さないんじゃないかって」
あぁそっか
ゴンは理解した。
彼女は、怖かったんだ。
また自分から誰かが遠のいてしまうのが、一人になってしまうのが。
だから嘘をついてまで、ゴンをハンターという単語から引き離したんだ。
ゴンとして生を受けたからじゃない、純粋な自分自身からの感謝の気持ち。
ゴンを育ててくれた、唯一無二の大切な人。
「ミトさん、大丈夫だよ。
あなたは必ず、“俺“が守るから」
ミトさんはゴンの言葉を聞いて一瞬惚けた後、笑って指摘してきた。
「……次“俺“って言ったら容赦しないわよ。
いってらっしゃい」
「行ってきます!!」
嵐を過ぎた船は、ようやく普段の静けさを取り戻そうとしていた。
前世から体験した事がない強烈な揺れを味わっても、ゴンはピンピンしていた。
毎日海と山をコンと一緒に駆け回っていただけある。
体力が無尽蔵に余っているのを感じる。
この嵐で沢山のリタイヤ者が出る中、唯一残った三人が集められた。
き、きたーーーー!
右隣にクラピカ、左隣にはレオリオが並んだ。
見覚えのある光景に思わず心の中で興奮した。
「オレはレオリオという者だ」
「私はゴン!」
「私の名はクラピカ」
原作ではクラピカの作画崩壊が危うい自己紹介シーンだ。
クラピカを見上げると、美少女ならぬ美少年が堂々とそこに存在した。
余りの美形っぷりに思わず目を逸らすと、ガラが良くなさそうな長身の男とサングラス越しに目があった。
原作通りだと、彼は19歳の筈だ。
思っていたよりど迫力の存在感に一瞬たじろいだ。
レオリオはそんなゴン見て特に何も言わなかった。
そして話は進む。
船長から何故ハンターになりたいのかと問われた。
ゴンはすぐさま答えた。
「私は大切な人を守り、親父を探し出すため!」
力一杯答えると、横のレオリオがらすかさずつっこみを入れた。
「おい待てガキ!勝手に答えるんじゃねーぜ!
協調性のねー奴だな」
「いいじゃん理由を話すくらい」
「いーやダメだね。そもそも理由が多い。
親父を探してる間、その大切な人はどーすんだ?矛盾してんぞ」
矛盾してないし!
ミトさんを守るためにはハンターにならなきゃいけないし。
親父をぶん殴るためにもハンターになって情報収集した方が早いんだよ!
と、いいたい所だがそれは原作知識あっての話し。
それを今レオリオに行ったところでどうにもならない事はわかっていた。
なので可愛く切り返すことにした。
「えへへ、そっか!」
「チッ、これだからガキは」
ニコニコと笑むゴンに苦々しい顔を隠そうともせず、ぞんざいに吐き捨てた後。レオリオは標的をその隣の人物に移す。
「そっちの隣のガキもなんだ。ここは保育所かっての」
「聞き捨てならんな、レオリオ」
「な、おま、年いくつだ!人を呼び捨てにすんじゃねーぞ」
すっかり話の主役から外されたゴンは大人しく事の成り行きを見守っていると、だんだん両サイドから険悪な雰囲気が漂ってきた。
「品性は金で買えないよ、レオリオ」
「…三度目だぜ。
表へ出なクラピカ。薄汚ねぇクルタ族とかの血を絶やしてやるぜ」
「ッ…取り消せレオリオ」
「『レオリオさん』だ」
あっちゃー。
何故志望動機から殺し合いにまで発展するんだ。
少年漫画恐るべし。
甲板に向かう二人に慌てて船長が声をかける。
「オレの試験を受けねー気か、コラ!!」
「放っておこうよ」
「な!」
「『その人を知りたければ、その人が何に対して怒りを感じているかを知れ。』
大切な人が教えてくれた、私の好きな言葉なんだ。」
ミトさんは私が無茶をして怪我をすると、本気で叱ってくれた。
それもこれも私が大事だからだと、そしてこの言葉を教えてくれた。
『人の痛みを知りなさい。
その人を知りたければ、その人が何に対して怒りを感じているかを知ることよ』
この言葉は、いつでも私の胸の奥深くに響いている。
二人にも譲れない痛みがあるから、あれだけ怒っているのだ。
私は引き止めようとは思わなかった。
「あ!」
「ど、どうしたお嬢ちゃん」
突然立ち上がったゴンに船長はびっくりする。
そういえばこのまま行くと船員の一人が事故で海に放り出されるんだった!!
すっかり忘れてた!!
慌てて甲板まで走ると、丁度一人の船員が、不安定な甲板に足をとられ、次いで折れたマストの一部が顔にぶち当たり、海へと投げ出されていた。
「カッツォ!!」
レオリオとクラピカが甲板のふちから手を伸ばすが、あと少しカッツォの足には届かない。
そこにゴンが悠然と二人の間をすり抜け海に飛び込むようにカッツォの足を掴んだ。
それを見た二人は瞬時に判断し、ゴンの足を掴み甲板へ引き摺り込んだ。
「よくやったお嬢ちゃん!!」
口々に船員たちがゴンを褒めたたえる。
良かった、助けられたんだ。
ほっと安堵の息をしたゴンに、突如雷が落とされた。
「何という無謀な!!下は激早の潮のうずで人魚さえ溺れるといわれる危険海流だというのに!!」
「オレ達が足を掴まなかったらオメェまで海の藻屑だぞ!ガキ!!」
「ハハ…」
二人の恐ろしいまでの剣幕に思わずたじろぐ。
そう、二人とも決して悪い人間ではないのだ。
根は優しい善人だからこそ、こうやって見ず知らずのゴンを本気で心配してくれた。
その事がお互いにも伝わったのか、先ほどまでの険悪な雰囲気は鳴りを潜め、互いに謝罪の言葉を口にした。
うん、何はともあれ良かった。
こっから飛ばしてハンター試験にいきます。
キリコさんファンの方すみません...泣
感想などくれたら嬉しいです!
行き当たりばったり連載よろしくお願いします!!