ゴンになったのでクソ親父をぶん殴りに行く 作:GON2929
レオリオの独特のオーデコロンの臭いは、数キロ先まで追跡できた。
何とか追い二次試験会場に辿り着くと、気絶したレオリオが木にもたれかかっていた。
ヒソカがここまで運んだのだろう。
わざわざ日陰を選んでくれたのだと考えると、見かけによらず気遣いの出来る男かもしれない(快楽殺人鬼には変わりないが)
物思いにふけっていると、キルアが別方向を見ながら話しかけてきた。
「なぁゴン、すっげぇ音しねぇ?」
確かに、キルアの視線の先にある大きな建物の向こうから、猛獣の呻き声みたいな不快な音が聞こえる。
そちらも気になるが、今はレオリオの容態の方が先だ。
このままでは二次試験までに起きないかもしれない。
「先にレオリオを起こそう」
「…」
キルアはゴンの返事を聞くと、プイッと顔を背けてそのままどこかに去っていってしまった。
「キルア…」
「…つかぬ事を聞くがゴン、あのキルアという少年とは知り合いか?」
キルアの行動に呆けていると、クラピカがレオリオを揺さぶりながらゴンに質問してきた。
「ううん、今日知り合ったばっかだよ」
「そうか……仲が良いのは結構だがあの少年は…
…いいや、何でもない。レオリオ起きろ!!」
気になる間に問いただそうとしたが、直ぐにレオリオの意識が戻った為、それ以上この話を続けることは出来なかった。
「しかしなんでオレこんなケガしてんだ?
どーも湿原に入った後の記憶がハッキリしなくてよ」
「は、はは…どうしたんだろうね…」
レオリオの疑問にゴンとクラピカは曖昧に返した。
レオリオの右頬は腫れあがり酷く痛そうだが、本人はいたって元気そうだ。
ヒソカに殴られたのにも関わらず頑丈な男である。
思い出さない方が良いこともあるだろう。
二人は目を合わせて、湿原での出来事は言わない事に決めた。
二次試験開始の合図が鳴る。
鉄の扉がゆっくり開く。
予想通り二人の試験管が姿を現した。
ソファにふんぞりかえるセクシー美人は美食ハンターメンチ。
そして背後には腹の音を盛大に響かせた大男、ブハラが今か今かと待っている。
キルアが言っていた音の原因はこの人のようだ。
「そんな訳で、二次試験は…料理よ!」
ソファから立ち上がったメンチがそう宣言すると、受験生に動揺が走った。
受験生は口々に嘲笑するが、メンチは少しだけ不機嫌な表情をすると、ブハラと一言言い再びソファに座り直した。
「なるほどな、あの二人を満足させりゃいいってわけか。
つったって料理なんかやったことねーしよ」
「私も本では見たことあるが…課題次第ではこの試験、困難を極めるぞ。
ゴンはどうなんだ?料理の経験はあるのか?」
「うーん、おにぎりぐらいなら…」
「おにぎり?」
「私の故郷の料理っていったら大げさかな。
一番簡単なやつだよ」
「なるほど…つまり三人ともほぼ未経験ってことだな」
不安げな受験生もいる中、ブハラが課題内容を宣言した。
「俺の課題は豚の丸焼き!!」
その言葉に何人かは盛大にズッコケた。
単純な料理にクラピカとレオリオも安堵している。
もちろん原作知識があるゴンは知ってはいたが、彼女にとって問題は次のメンチの課題である。
ここはサクッと豚を仕留めて次に温存したいところだ。
ゴンたちは一先ず手分けして、豚を探しに行くことにした。
豚かぁ…名前は忘れたけど、確か頭が弱点だったよね。
ゴンは森で培った経験を活かして探すことにした。
生息域が広いなら、易いに見つかるはずだ。
しばらく探すと土を掘り起こしたような跡と、足跡が残っていた。
足跡の大きさ的にかなり巨大な筈だ。
まだ真新しい足跡にゴンは警戒して追っていった。
しかし、途中で思いがけず、銀髪の少年に遭遇した。
「キルア…」
「…よぉ、ゴン」
キルアはポケットに手を突っ込み、変わらぬクールな表情で返事を返した。
試験のために豚を探していたというよりかは、まるでその辺りをフラフラと散歩するぐらいの出立だ。
「キルアも豚を探してたの?」
「…まぁな」
自然と二人並んで森を歩いていく。
お互い何か言い出したいのを抑えているような、妙な空気が流れている。
先に切り出したのはキルアだった。
「なぁ、ゴン。何でハンターになりたいと思ったんだ?」
クラピカとレオリオには試験会場に行く道中で、ミトさんの事やカイトのことを沢山話したが、まだキルアには話してなかった。
「親父を探すためと、大切な人を守るためだよ」
「大切な人って、前いってたゴンの育ての親って人?」
「うん、ミトさん。
でも今は、レオリオもクラピカも、そんでキルアも大切だよ!」
「ぶっ!恥ずかしいー事言うなっての!」
ようやく、キルアから笑みがこぼれ落ちた。
こっちを見てくれたことが嬉しくて、笑われてるのも気にせずゴンも笑顔になる。
「オレさぁ、自分の感情を上手く抑えることが出来ないんだ」
空を見上げながら、キルアはポツリポツリと話し出した。
「さっきもさ、オレ突然消えただろ。
あん時ちょっとゴンにイラついてた」
「え」
「オレが話してんのに、気絶しちゃったやつのことばっか心配してるからさ」
「そっか」
キルア的には、ずっと話していたゴンが取られたみたいで嫌だったのだろう。
ようやくキルアの態度に合点がいった。
「ごめんねキルア、でもレオリオも大切な仲間だから心配でさ」
「悪いのは感情制御出来ない、オコサマなオレな」
悪い気が落ちたかのようにキルアの表情は晴々としていた。
言いたいことが言えたからスッキリしたのだろう。
まだ二人が出会って一日も経っていない。
お互いに知らない事が多すぎるのだ。
相互理解が追いつかないのは当然の事だ。
ゴンももう少しキルアを気にかければ良かったと、少し反省した。
「っと、あれかな、豚って」
二人より五メートルくらい離れた先には、巨大な豚がいた。
足跡的に群れで生活する習性だとは思っていたが、思ったより数が多い。
それを見て、ゴンはとある事を閃いた。
「おーい!レオリオー!!」
「おー、ゴンじゃねぇか……なんっだそれは!!」
ゴンとキルアが一直線にレオリオの元へ走ってくる。
その後ろには怒りに燃えた豚の大群を引き連れて。
「豚みつけたよー!!」
「ちょ、待てー!こっちにくんな!」
騒動は近くにいた受験生にも感染していく。
みんな最初は豚の大きさに驚いていたが、これ幸いとハンターの目に変わった。
クラピカも騒動を聞きつけ駆け寄ってきた。
「よく見つけてくれたなゴン!私にも手伝わせてくれ!」
「よっしゃ、ならオレにもついて来い!」
そうしてそれぞれの受験生が豚を誘導すると、全員が豚の討伐に成功した。
ブハラが70匹分を難なく完食した事で、全員が豚の丸焼き試験をクリアすることが出来た。
「おかしい、妙だぞ!?
明らかに奴の体積より食べた量の方が多い!!」
クラピカのこのセリフ好きです…笑