原作イベント起こしても独自展開になる気がするけど。
「オトドケー! テガミヲ オトドケー!」
手紙ならば、カラスを使わずともいい気もするが。
よく考えれば、即死の罠だらけの山にある修行場なので、一般の飛脚や配達人にガンバレというのも無理な話なので、これで良いのだろう。
「おお、ご苦労だったな。どれ」
馴染みのカラスだったのか。鱗滝は慣れた様子で豆をやりつつ、足にくくられていた筒を外して手紙を取り出す。
そこはこう書かれていた。
交流戦のお知らせ。
「ほう。入れ替え戦か。久々だな」
隊士の間で、通りがいい方の呼び名を口にした鱗滝だったが、手紙を少し読み進めると、天狗の面の下で眉をしかめた。
もはや現役ではない、一線を退いた身なので気楽に構えていたのだが、そうのん気にしていられない内容があったのだ。
参加者の中に、竃門 炭治郎の名前があり。
そして、竃門 禰豆子の名前が無かったのだ。
ヤッベ。出せってごねるわ。
鱗滝の脳内で、筋肉ムッキムキな身体を一際大きくバンプアップして、そこだけは変わらない可愛らしい顔に笑みを浮かべて。
私も出られますよね、と無言の脅迫をしてくる禰豆子の姿が勝手に想起された。
シュッシュッ、と軽く振られた拳が立てる、空気を切り裂く音まで聞こえるようだ。
「わかっていますよね?」
ボシュッ ボシュッ
幻聴ではなかったようだ。
いつの間にか後ろに立っていた禰豆子が、想像通りの体型で、想像以上のシャドーを繰り出していた。
どうやら手紙の内容を、見られてしまったらしい。
だが鱗滝も、すでに炭治郎以外に十四人もの
この弟子のような、弟子でないような禰豆子の対処にも、徐々に慣れてきていた。
慌てず騒がず、懐から手品のように、抜く手も見せずにヒモ付きの五銭銅貨を瞬時に取り出す。
「あなたは落ち着いてきます。すごく、心が安らかになります。さあ、ワーン、ツー、水の呼吸」
「「すごく落ち着きました」」
実は居たのだが、黙って空気に徹していた長男も巻き込んで、鱗滝必殺の水の呼吸が決まった。
この先ずっとこうやって禰豆子の制御役押し付けられても嫌だし、そろそろ本格的に隠居しようかと考えつつ。
とりあえず今のうちに交流戦に付いて説明しておくか。
そう判断した鱗滝先生の、説明会が始まった。
古くはまだはじまりの鬼がまだ居た頃。彼の一の部下だった、当時の上弦の壱の鬼がはじまりだ。
その上弦の壱は、元は鬼殺隊の柱だったのだ。
鬼を狩り、いずれは滅するべき鬼殺隊の隊士が、それも悪鬼滅殺の文字を刃に刻む柱が鬼になるとは言語道断。
当時はそういう扱いであったのだが。
時代が下り、鬼のトップもオール・フォー・ワンに代替わりして、ヒーロー集団が出来て、鬼と鬼殺隊とがちょっとナアナアになった結果。価値観も若干変わった。
引き抜きとかズルいわ。
そんな感じに、少し…… 少し? ゆるくなったのだ。
ヒーローとヴィランも、ヒーローから闇墜ちしてヴィランになったり、ヴィランがこじらせたり光墜ちしたりでヒーローや、ちょっと違う路線のヴィジランテになったり。
そういう引き抜き合戦や、勧誘、転向争いが激化した時期があって。
最終的には。
引き抜きとかズルいわ。
という結論で、合意した。
だが、はないちもんめ ではないが、トップや幹部なら誰だって人材は欲しい。あの子が欲しいのだ。
そして鬼殺隊も交えて、相談した結果。
そういう結論で合意を見たわけだ。実はお前ら仲いいだろ。
とは言えだ。
オールマイトを引き抜かれたり、柱を持っていかれては、さすがにヒーローも鬼殺隊もたまったものではないし。
オール・フォー・ワンも、それでは面白くない。勝手にゲームの難易度が下がっては興醒めというもの。
なので、最初に この子が欲しい と指名を出しておき、じゃあうちはこの子を出す、と最初にお互いに調整して。
お互いに納得した場合のみに、交流戦が成立する事となったのだ。
なお、ついでだからと指名された者は、参加者を兼ねることと決められた。
3チームで試合をして、トップのチームがドベのチームから一人人材を得る。
一回の交流戦に付き三試合。これがこの世界でのデービーバックファイトである。
ゆえに三連敗した場合に備えて、イケニ… 放出予て… …えーと、敵陣営から指名された人材も三人になるわけだが。
その候補 兼 出場者として、炭治郎の名前が手紙に書いてあったわけで。
「お兄ちゃんは、私が――」
「はいはい水の呼吸、水の呼吸」
だんだん雑に片付けられるようになった妹を見ながら、炭治郎は思った。
いっそヴィランになって、海外に逃亡したらダメかな?
精神的に疲れていたのだろう。
かなり真剣に検討していた炭治郎だったが、その計画は思いがけない事で頓挫してしまう。
「降参! 降参します! 俺、死にたくないんで! 何でもしますから!」
同じ鬼殺隊チームの一人で、まずは俺が出るぜ。と初戦に挑んだ参加者が。
試合開始直後に、いきなり土下座しながら、そう宣言したからだ。
そしてその宣言は、通ってしまった。
先を… 越されたっ…!
二番煎じ… どうあがいても、二番煎じっ…!
次の試合で、降参しても通るかどうかすらも… あやしいっ…
手遅れ… 圧倒的に… 手遅れっ…!
試合の内容が、断崖の上に渡された鉄棒の上を駆け抜けろ、というエクストリーム鉄骨渡りだったせいだろか。
ぐにゃ~ という感じでゆがんだ顔で、福○っぽい口調で炭治郎は絶望した。
こんな事なら、まずは
「「最初に出るべきだった!」ぜ!」
「「んん?」」
自分が口にしたのとほぼ同じセリフが横から聞こえて、炭治郎がそちらを見ると。
向こうも同じ行動をしたのか目が合った。
同じ鬼殺チームの、コンプレスさん だ。
「いや、おじさんは元はヴィランでさあ。こっちに取られちゃって、そしたらモンスターボールを毎日毎日作らされてて、嫌になっちゃってるんだよね」
「そうですか…… いや、俺はなんて言うんですかね。人間関係に、その、疲れちゃった、のかなあ……」
実は何となくです。
そう言いづらかった炭治郎はごまかした。まあ、これも嘘じゃないし。
ていうか、善逸の入ってる不思議玉作ってたの、この人か。
割と重要人物じゃないか。何で交換要員に出してるんだ。
心の中では激しくツッコミを入れていた炭治郎だったが、表にはまるで出さず。
お互い大変だな、と共感と慰めを示してくるコンプレスさんと交流を深めていた。
かつては純粋な少年だった彼も、色々と経験をつんで、大人になったのだ。
色々と始まってから、ひと月くらいしか経ってないけどね。
「しかしうまくやりやがったな、あいつ。名前なんだったっけ?」
「さあ、何でしたっけ? サイコロステーキ とか言ってましたけど、さすがにそれは無いでしょうし」
にこやかに話す彼らは、知らない。
うまく鬼殺隊からイチ抜けして、ヴィラン陣営へと鞍替えした彼が。
実は先日、オール・フォー・ワンにバラバラにされて。
それでもなぜか即死はしなかったので、物は試しと血を与えられて。
そのまま個性 バラバラ に目覚めて生き延びてしまったサイコロステーキ先輩だという事を…!
今回の交流戦が行われることになったのも、彼を合法的に引き抜くためのオール・フォー・ワンの策だったりする。
初戦に参加、いきなり降参というのも、もちろん予定通りだ。
なお鉄棒渡りの結果だが。
ヒーロー側は代々ワン・フォー・オールの継承者に仕える、譜代のヒーロー飯田家の長男という、かなりガチな姿勢で勝ちに行った。
しかしながら。
ヴィラン側は、改造人間の黒霧というワープの個性持ちを出しての、必勝の構えであったわけで。
無事、サイコロステーキ先輩はヴィラン陣営へと異動することになった。
やはり、予定通りだ。
この先、コンプレスを取り返し、ヒノカミ神楽を持つ竃門家長男も手に入れられるのか。
オール・フォー・ワンの予定通りに、事は進んでしまうのか。
といったところで。次回へ続く。